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憂慮か杞憂か

昨日から一転し往って来いの反発を見せた本日の日経平均だが、週明けの昨日急反落となった背景には前場に日銀がETF買い入れの目安の一つにしているとされるTOPIXが前週末終値に比べて約0.5%下げたにもかかわらずETFの買い入れが為されなかったのも一因とされている。斯様に影響力の強い日銀の買いだが、鯨的存在には東証一部最大の大株主GPIFもある。

このGPIF、先に日本株の基本ポートフォリオを25%で据え置くと公表しているが、約90%のパッシブ運用のうち70%以上をTOPIX連動型のインデックス運用をしているとされる。気になる成績だが今年は新型コロナウイルスの直撃を受け1〜3月の損失額が四半期としては最大に膨らむ見通しという。

こうなると一般的に心配になるのが年金という事になり、先の日経紙にも出ていた通り国債等に振り向けるべきとの慎重論も出てきそうだが、一辺倒では枯渇リスクもありこれまでの累計黒字を考慮するに破綻懸念は杞憂という感もある。こうした時期だけに断片的にスポットで見るのではなく過去と照らし合わせマクロな視点で捉える事も肝要か。


決算事情彼是

さて例年であれば今月下旬から主力大手の決算発表も本格化というところだが、今年の場合はこちらも他と同様に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国内はもとより更に外出制限が厳しくなっている海外での移動制限などによって監査法人による棚卸資産等の確認作業に支障が出ている関係で発表延期企業が続々と出て来ている。

決算延期となると次に影響が出るのは総会という事になるが、諸々の延期でこの株主総会の日程までズレ込むという事になると更に配当など投資家の権利にも影響を及ぼしかねない事態となるだけに、既に東証では配当基準日が事業年度末から変更となる可能性があることの注意喚起を行っている。

しかしさすがに全ての決算処理をリモート対応で賄うのは無理があるとはいえ、冒頭の棚卸資産等の確認作業など12日付け日経紙社説にてドローンを使った在庫確認、証拠書類の電子的代用など代替策云々とも書かれていた通り、テレワークやオンライン学習にオンライン診療然りでこれまでの日常風景が一変し新たな風景への変遷の期が訪れているようにも思える。


国費でマスク?

一昨日の日経紙総合面には「医療用防護服が品薄」と題し、日本でマスクと共に化学防護服の品薄感が強まっている旨が書いてあったが、防護服といえば医療崩壊が著しいイタリアではジョルジオ・アルマーニが使い捨て防護服の製造に着手、またグッチやプラダもマスク生産を始めている等ファッション界が動いているが、高級車勢もフェラーリが人工呼吸器を、またランボルギーニもサージカルマスクの生産を開始している。

さてマスクといえば先月末の閣僚会議で首相が突然マスクを付け始めた違和感から翌日には全世帯に2枚ずつ布マスクを配布すると表明。休業補償や給付金から減税云々が焦眉の急となっているこの期に巨額を割いてのマスク配布に世間では賛否両論喧しいが、米に先駆けて感染が始まっていた日本はその後に感染が始まった米に比べ経済対策から何からスピード感が著しく劣るように見える。

今週は悲鳴にも似た緊急事態宣言要請が各界から出ていた間にも感染者が瞬く間に急増、漸く重い腰を上げ緊急事態宣言を発令するに至ったが、「スピード重視」、「躊躇なく決断」云々繰り返していた割に牛歩感は否めず、経済対策にしても過去最大を謳う割に現金給付一つ取っても国民の約80%がもらえないハードルの高さで規模ありきの遣っ付け感が否めない。

400億円超もの国費を投じ家族全員にも行き渡らない鳴り物入りの布マスクが我々の自宅に届く前に、既にドイツでは5000ユーロの緊急助成金が簡単なオンライン申請からたった2日で振り込まれているのを見るに、都合の悪い文書等々ものすごい勢いで破棄・改ざんで闇に葬る事が出来る機動力を持っているのにこんな危機的場面でそうした力を出さないところが実にやるせない思いだ。


コロナ関連の賞味期限

昨日は新型コロナウイルスの感染対策として企業のテレワーク導入の動きなどに少し触れたが、本日の日経紙市場点描には「在宅勤務関連に思惑買い」と題し、メルコホールディングスやアイ・オー・データ機器など在宅勤務関連需要が期待出来る企業への資金流入が目立っている旨が書かれていた。

ここ戻り急な相場だが疑心暗鬼の戻りの中でも斯様に新型コロナウイルス関連が物色される動きが続き、上記の他にも直近では新型コロナウイルス治療薬として効果が期待され200万人分の備蓄を目指すとした富士フィルムのアビガンの原料となるマロン酸ジエチルを供給するデンカが週を跨いで連続ストップ高と破竹の勢いである。

他に変わり種?では外出自粛の動きからの巣ごもり需要に加え感染症拡大で子育てに不安を抱える人が増加しているとの思惑も囃しオカモトが3月中旬から9営業日連続続伸となり約3割強の上昇を演じるなどしていたが、この手のテーマ株の持続性は新型コロナウイルス終息の如く見極め辛いのは過去の感染症パニックの時と同様か。


災い転じて

さて一昨日に政府は受診歴の無い初診者患者にもスマホ等でのオンライン診療を求めるなどオンライン診療の要件を緩和する方針を固めたが、この辺は本日の日経紙大機小機でも「オンライン化 流れ止めるな」と題し、今回のような有事になって漸く規制が緩和されその対策として活用すべく生きて来る旨が書かれていた。

同じくコロナウイルス対策としてのオンラインといえば、企業のテレワーク導入の動きだろうが、働き方改革の機運が熟していたところに上手く乗れたという感じだ。また長期になった春休みから入学式や始業式を過ぎなお登校出来ない異例ともいえる休校長期化でオンライン学習も彼方此方で急速に脚光を浴び始めてきた感がある。

本邦のこうした動きとは少し毛色が違うが、他に新型コロナウイルスの影響で中国では紙幣を滅菌消毒し密封措置を取るなどしているほか、主力の中国製割り箸や安価のプラスチック製品類など今月あたりから在庫が品薄になるとの観測も一部出ているが前者はキャッシュレス化促進の観点から、また後者もサスナビリティが叫ばれる昨今これを切っ掛けに使い捨て文化を見直す良い機会になる可能性もあるとの解釈も出来るか。


欧米との温度差

先週2日の日経紙朝刊の一面には「テルモ、人工心肺増産」と題し新型コロナウイルスの感染拡大で人工心肺装置の需要が高まるなか、国内最大手のテルモが生産量を現在の倍以上に増やし今後数カ月以内の間に国内の治療施設に100台超の人工心肺装置を供給できるようにする旨が出ていた。

漸く国内もという感じだが、この手では米国はテスラが人工呼吸器をNY工場で生産し世界の病院に向け送料も負担で無償配布する事を発表、GEとフォードモーターも協力し生産開始するほか、英国でもダイソンが人工呼吸器をわずか10日で開発し5000ユニットを製造して英国内外のパンデミックに対する取り組みに寄付する意向を示しているあたり、本業とは別に公共財を製造する社会的使命を担うという観点でやはり欧米は抜きん出ている感が強い。

斯様に上記の通り大手に加え新興企業や異業種企業も巻き込んで動員し増産を急ぐなど産業界が総力戦の構えを見せているが、一方で国内大手企業群の消極的姿勢は否めない。こんな状況下だけに積み上がって来た約460兆円ともいわれる内部留保をがっちり守り抜きたい気持ちも解らないでもないが、かつて松下幸之助氏が言った「企業は社会の公器」という言葉がこんな時にこそ思い出されるもの。


ロックダウンに戦々恐々

東京ロックダウン決定とのチェーンメールの具現化絶対阻止とばかりにギリギリの状態と判で押したように繰り返す政府だが、先に外出自粛要請が出されて以降首都圏のスーパー等には買い溜めで長蛇の列が出来るさまがまたぞろ目立った。マスクに始まり次はトイレットペーパーなど紙製品の買い占めが起き、今回は食料品や日用品といった感じでいい加減こういった光景に辟易している向きは多いだろう。

こうしたなか農水省は会見を行い食料の供給量は十分にあるとして慌てて買い貯めに走る必要はないとの見解を示したが、上記のマスクなど2月には官房長官が早ければ来週から品薄解消に向かうと発言し、それから1枚も手に入らなかった向きも多いなか1か月経った先週末の会見で同氏が解消には一定程度の時間を要すると涼しい顔で宣う姿を見るに全く持って説得力を欠くというもの。

そういった経緯にマスコミの煽り等も加わりこうした行動が連鎖してしまっている感もあるがマスクと違って食料品等の心配は無いにしろ、東京は全国消費の約4分の1を占めるともいわれるだけに仮の話で首都圏のロックダウンが数週間続いた場合はGDPを約0.5%押し下げ、その影響も五輪延期に並ぶ程になると試算されるだけに最悪の事態にならないのを今は先ず祈るばかりだ。


延長彼是

さて、年度末の日経平均は年度ベースで2017年3月以来となる19,000円割れで年度末を迎える事となったが、新年度入りも下げ幅は一時1,000円超の場面があるなど大幅に3日続落した。一昨日の配当落ち分は200円弱とされるが、今年は新型コロナウイルスの影響で配当基準日が事業年度末から変更となる可能性もあり東証から注意喚起も出ている。

さて、コロナの影響で上記の配当もそうだが優待もまた一昨日の夕刊一面にも出ていたように外食チェーン各社など優待で配布している食事券の有効期限を相次いで延長し始めた。この外食チェーンの中では唯一株価の底堅さが際立つマックが1ヵ月延長、すかいらーくHDは同2ヵ月、物語コーポは同3ヵ月と外出手控えに配慮した形となっている。

ところで新型コロナウイルスの影響による延長といえばもう一つ、東証は新型コロナが原因で企業が債務超過に陥った場合の上場廃止までの猶予期間を1年から2年に伸ばす意向だが、既に株価の急落で時価総額ベースの上場廃止基準に抵触しているモノも中小型系で彼方此方出て来ており終息が現時点では見えてこないだけにこちらの緩和も致し方無しといった感じか。


カバー一巡後

周知の通り昨日は東京五輪・パラリンピック組織委員会が記者会見を行い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期が決まった東京オリンピックの開催日程については来年7月の開幕で決定する見通しとなったが、一時は中止も危ぶまれていただけに先週は五輪関連株の動きが下落から一転してカバーの動きが目立っていた。

さすかに株価が往って来いとなるのは望むべくもないが、日本選手団の公式ウエアや大会ボランティアのユニフォームを独占提供する筆頭格のアシックスはストップ高に張り付き、他にも関連施設の建設を手掛ける大成建設に住友・三菱・三井の各不動産会社、警備のセコムやパナソニック等のスポンサー企業が軒並み高となっていた。

とはいえ延期に伴う違約金や再調達コストなど不透明な部分も否めず、大手シンクタンクでは延期によってGDPベースで1.7兆円程度の経済損失が出るという試算もある。諸外国に比較し何かと対応遅れが指摘されている政府が今後どのような具体的財政政策を打ち出すのか、VIの高止まりやオプション市場もプットのIVから見るに株式市場も二番底を取りに行く懸念が付き纏っているがそうなるか否かそれ如何に関わっているともいえようか。


国内2例目

さて今年の1月に何度か当欄で取り上げた渦中の東芝機械だが、注目されていた同社の臨時株主総会が先週末に開催され株主の過半数の賛同を得て旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスに対する株主防衛策を可決することとなり、これを受けた同社株は先週末日経平均が急反発するなか逆行安を演じていた。

前田道路と共に時期を同じくしてその行方が注目されていたこのTOBだったが、取締役会ではなく株主総会で有事導入型の買収防衛策の賛否を問うたパターンとしては当時同じくスティール・パートナーズがTOBを仕掛けていたブルドックソースが思い出されるが本件で2例目のケースとなるか。

ともあれこれによって投資ファンド側は実施中のTOBを撤回する見通しとなったものの、既に昨年事前警告型の導入を廃止していた点の問題視やこのガバナンス重視の時世で勝算は低いのではとの観測も一部にあったが、議決行使助言会社間でもこの辺に関して見解は分かれており株主との対話に関し課題を呈するケースとなった事例の一つとなろうか。


史上初の五輪延期

周知の通り今週アタマには新型コロナウイルスによる感染拡大の現状を鑑みIOCは臨時理事会を開き東京五輪・パラリンピックについて延期を含めて検討するとの発表が為されたが、首相とIOC会長の電話会議が速やかに行われ1年程度の延期が決定となった。先週の理事会後には抜本的決断を下す必要はないとの発表があったばかりだが果たしての一転、開催延期は史上初の事となる。

確かにこのところ主役の歴代メダリストなど各国のアスリートや協会が続々と批判を露わにし、強行突破が半ばコンセンサスとなっていたこの東京五輪開催に関してJOCの一部理事からも疑問の声が日増しに強くなりさすがのIOCも世論には抗えず方針を事実上転換せざるを得なかったという感じか。

個人的には経験があるので体操競技に関心があったが、こちらも東京オリンピック出場枠が懸かった来月4日〜5日に開催予定だったワールドカップ東京大会が中止に、更に暗雲漂う来月の全日本選手権もこれまた五輪代表選考にかかわる大会であったが来年へ延期ともなるとこれを一旦外す大会になるのか否か、来季はルール変更の可能性もありこれらと併せ非常に気になるところだ。

またオリンピック同様に4年に一度開かれるサッカー欧州選手権や南米選手権はそれぞれ1年の延期を決定、テニスの全仏オープンも9月に延期となり実に全米オープンの1週間後という驚きの日程が世間をザワつかせたが、オリンピックこそ他人事でなく来年や再来年は既に多くのスポーツの主要国際大会のスケジュールが犇めいており日程調整にどの程度の協力が得られるのだろうか。

ともあれ上記の通り多数のメジャー大会がいち早く延期を決め、当事者や関係者からも非難轟轟の声が上がるなか粛々と聖火リレーを敢行しようとしていた得も言われぬ違和感もこれで一先ず解消へ。目先は日程が何時になるのかが気になるところだが各々の複雑な事情と共に未曾有の試練は始まったばかりか。


アンワインド合戦

本日も日経平均は前日に過去最大となる上昇幅を演じたダウ工業株30種平均を受け、昨日に続いて1,000円超えの急騰を演じて1994年1月以来、26年2か月ぶりの大きさで歴代5位の上昇幅を記録する大幅続伸となった。これで今週に入ってからわずか3営業日で約3,000円も上げたという事になる。

つい先週の日経夕刊投信番付では上昇率上位8本にはズラリと所謂「ベア型」が並び、1位の楽天日本株3.8倍ベアは2週間で104%の上昇となった旨が載っていたが、斯様なアンワインドが発生すると昨日今日の全市場値下がり率ランキング10傑にはズラリとVIXやVI、インバース系ETFのメンツが出揃っていた。

ちなみに昨日ストップ安まで叩かれる憂き目に遭っていたのは先週末に年初来高値を更新したばかりのVIX短期先物指数であったが、本日の値下がりトップは同じくストップ安まで叩かれた日経平均VI先物指数ETNでこれまた先週末には年初来高値を更新していた。このVI、昨日は8日ぶりに急低下したものの本日は日経平均の大幅続伸にもかかわらず上昇に転じ40ポイント台後半を維持しているあたり市場の根強い警戒感は否めないか。