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土用の丑2020

さて本日は土用の丑の日、土用の丑といえばウナギだがこれまで当欄でも度々取り上げた不漁で高騰していた様が今年は国内稚魚の漁獲が6年ぶりに過去最低を記録した昨年から約5倍に増加した上に、中国や台湾などの東アジア全域でもよく獲れている事を背景に末端価格もやや落ち着きを見せた事でその商戦が近年になく活況を呈している旨が彼方此方で報じられている。

確かに今年は各社共に立派なパンフが用意されいつになく早くから予約を募っていた感もするが、漁獲量漁の減少と共にウナギの卸値も毎年の如く高値を更新し蒲焼もウナギならぬ秋刀魚や穴子、はては茄子や蒲鉾を加工したものまで登場したり近年ではパンガシウスなどの珍魚?にまで転用が進んだものだったが再度ウナギのみ並ぶ昔の光景がスーパー等で戻って来たか。

ところでウナギの一服は斯様に一安心だが、一方でウナギの転用にまで使われた上記のサンマが昨年は漁獲量が過去最低を記録し豊洲では真鯛を上回る値が付くなど珍現象が見られたが、今年も先の初セリではこれまでの最高値を更新するなど凡そ慣れ親しい大衆魚のイメージから離れつつある。

国際自然保護連合より絶滅危惧種に指定されるほどのウナギはまあまあ諦め?がつくが、王道の秋の味覚サンマも昨今のこんな背景で乱高下が目立ってきたのは穏やかでない。そういえば秋の味覚といえばマツタケも今月にIUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト最新版にて新たに絶滅危惧種として初めて記載される事になるなど日本人の味覚がまたも遠のく気配だ。


紳士淑女からギャルまで

さて、新型コロナウイルスの影響もあって体力が落ちていたアパレル勢など先のレナウン等に見られるように破綻の道を辿っているが、非上場ながら誰もが知る有名どころで今月は創業200年を超える老舗衣料店の米「ブルックス・ブラザーズ」も店舗の営業休止などが響いて経営破綻した報が舞い込んでいる。

もっとも上記のブルックス・ブラザーズは国内での事業は影響を受けず今年の9月には表参道に新店舗までオープンする予定となっているが、この辺は先にパリの店舗が破綻した仏「フォション」も同様でこちらもまた京都に世界で2件目となるフォションホテル京都を年内にもオープンさせる予定となっている。

ところでアパレルといえばもう一つ、冒頭のブルックス・ブラザーズのように世界的著名ブランドでは無いものの、国内ではある客層?には同じくらいの知名度を誇るブランド「CECIL McBEE」が秋までに全店舗閉鎖との報が先週末に舞い込んでいる。109中心に「アルバローザ」等と共に90年代に一世風靡したものだったがこれまた店舗休業の影響は大きかったか。

しかし、斯様に紳士淑女御用達からギャル御用達に至るまで新型コロナウイルスがトドメを刺すケースが多い。ビジネスモデルの構図が疲弊していた素地があったところとECを先行させて来た向きとの明暗が分かれているものの、アパレルに限らず慣れ親しんだブランドが次々と破綻の憂き目に遭うさまはコロナ禍を背景にしたパラダイムシフトも表しているか。


メッキが剥げた企業たち

さて、NYでは金先物が2011年以来約9年ぶりの高値を付けるなど高騰が続く金相場だが、金といえば中国最大級の金宝飾メーカーで米ナスダックに上場している金凰珠宝が資金調達の担保に入れていたという約83トンの純金が実は金メッキを施した銅であった事が先に発覚し物議を醸し出している。

こんな紛い物を預かった大手信託の中国民生信託はマズいことにこれを裏付けとして信託商品なる金融商品を発行し幅広い向きがこれを購入していた模様だがこの企業、元々は中国人民銀行が所有する金の製造工場というプレミアムがあったあたりに当局色で安心する中国特有のカラーを感じる。

中国人民銀行といえば先の原油暴落で預けていた保証金も一夜にして消え更にマイナス勘定となった原油宝なる金融商品が大問題となったのも思い出すが、ヘッジ等も含め一般からはなんとも見え辛い脆弱な構図が怖く投資家が損失を被ったケースでは同じナスダックの微貸網もまた然り。

これら以外でもポストスタバと謳われ同じくナスダックに上場するラッキンコーヒーもこのコロナ禍のなか不正会計問題が発覚し株価が暴落した経緯があるが、米中対立が鮮明化してきている最中での斯様な不祥事の発覚は資本市場での米中分断を後押しするに十分な効力を持っているといえようか。


TOB機運

本日は地下街を歩いている時に大戸屋を見掛けたが、同社といえば先の株主総会で大株主のコロワイド側から取締役の入れ替え含めた株主提案を受けていたところ8割以上の反対票を集めたファン?の支持等もあってこの株主提案は否決されたが、これに敗れたコロワイドは想定内の如く粛々と大戸屋に対してTOBを実施すると発表している。

予てよりコロワイドの社長は株主総会で失敗したらTOBも辞さないと発言していた通りで今回の間髪を入れずの行動はまさに有言実行、ファン株主とはいえ総会で勝利するよりプレミアムをたっぷり乗せた力ずくのTOBを公表してもらいとっとと市場で売却してもキャピタルゲインを得られ結果的にはラッキーといった向きも一部居ただろうか。

こんな光景を見るに約6割もの手元資金を放出するなどして前田建設に対しさんざん抵抗したのも虚しくTOBを成功されてしまった前田道路を思い出したが、このコロワイドものれんの問題など最近は買収後の勝算があるのかどうか一般から見れば疑問符が付く力ずくのケースが多い。とはいえコロナ禍を背景に斯様な親子上場含めた再編機運の高まりもあり水面下では粛々と他のTOB計画も進行しているか。


DAX構成銘柄破綻

さて、本日の日経紙投資情報面には「空売り、粉飾で見えた意義」と題し、先月に粉飾が発覚し破綻したドイツのオンライン決済大手ワイヤーカードを巡り、不正会計疑惑が報じられた後の株価の急落を巡りドイツやEUの金融当局がこれを問題視し空売り規制に出た件が疑問視されている旨の記事が出ていた。

この企業、その時価総額はドイツ銀行をも上回り日々のDAX寄与度ランキング上位に顔を出していた常連だっただけに破綻は衝撃的だったが、破綻したらすぐさまポスト移動措置が取られるワケでもなく未だDAX構成銘柄にとどまり間接的に投資マネーが流入している点がすごい。

それは兎も角、この破綻劇の裏では冒頭の金融当局もさることながら一部監査法人がその決算書に適正との監査意見を出していたり、また近年急増しているESG投資だがこのスコアを提供する複数の評価機関もこの企業を普通ランクや中間に位置付けていたというからガバナンスをどう捉えていたのか理解に苦しむが、早くからショートに動いていた空売り勢こそ斯様な市場の矯正に一役買っていた存在だったのは否めないところだろう。


時価総額逆転進行形

さて、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月に約7年2ヵ月ぶりの安値水準まで急落した東証REIT指数だが、個別ではその後の戻り局面で物流施設型の日本プロロジスリート投資法人がオフィス型の日本ビルファンド投資法人を上回る局面が出るなど、時価総額トップが初めて交代する逆転劇があった旨が先週末の日経紙にあった。

昨年末には約5,000億円近くもの開きがあった両者だがテレワークの普及でオフィス不要論が喧しくなる一方でネット通販の急速な伸びを背景に鞘が急速に縮小したという構図だが、コロナ禍を背景にしたこの手の勝ち組現象は先月に取り上げた米テスラも代表格で先のトヨタ超えも束の間、今やその時価総額は日本を代表するトヨタ、ホンダ、日産のトップスリーの合計時価総額をも上回る。

こうなると段階的に設定されたそのストックオプションの方も物凄い事になりそうだが、それは兎も角も米では他に半導体大手インテルが同業のエヌビディアに抜かれたり彼方此方で逆転現象が起きている。こんな光景はリーマンショック後を彷彿させるが、コロナ後を先取りする動きは各種指標が示す過熱感を横目で見ながら次の逆転候補を捉えて止まる事はないだろうか。


遡及適用の是非

さて、先週は大阪の泉佐野市がふるさと納税制度の対象自治体から除外したのは違法だとして除外決定の取り消しを求めていた訴訟の上告審判決があったが、注目された最高裁の答えは国の勝訴とした高裁の判決を破棄して決定を取り消し泉佐野市の逆転勝訴が確定するというものであった。

もともとはこの裁判、総務省の後出しジャンケンではないか?といった遡及適用を巡る点が焦点でもあったが、果たして法律上やはり国の裁量がここまで許されてしまうと何でもアリとう事になってしまうというところで待ったとなった格好か。とはいえ泉佐野市も社会通念上の節度を欠いたとされた通り行儀が悪かったのは否めないところで、今後は地場産業など襟を正した勝負で臨むか否かこの辺が注目されよう。

地場産業の開発も知恵の絞りどころだが、最近では首都圏などでこのコロナ禍で売上げが減少した事業者の商品を返戻品に採用したり、飲食店等支援の為の寄附金による基金創設などの動きもあり都内ではその使い道に新型コロナウイルスの感染防止対策を加える動きも出て来ている。

ともあれこの一件で総務省は今月に入って今後の返礼品提供には審査を受ける必要があるもののこの泉佐野市を含む3市町についてふるさと納税制度への復帰を認めると明らかにしているが、今回のケースは総務省が自治体に権限を及ぼす事で動かして来た地方自治の在り方を問うた事例といえるだろうか。


優待もお土産も

さて、先月にピークを迎えた株主総会については今後その形の在り方など先に取り上げた通りだが、三菱UFJ信託銀行によればこの株主総会で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく来場者へのお土産を取り止める企業が今年は現時点で1394社と前年の2.7倍にのぼる旨も過日の日経紙夕刊一面で取り上げられていた。

ただでさえ新型コロナウイルスによる企業業績への打撃によりこれまで提供してきた株主優待を休止や中止するなど決めた企業が5月末迄に約10社に上る旨も以前に書いたが、総会の招集通知に「当日のご来場はお控えいただきますよう強くお願い申しげます」とか、「お土産のご用意はございません」などそれも赤文字で書かれているのもこれだけを見るとおどろおどろしいものだ。

しかし斯様な株主優待休止からお土産取り止めまでこれら目当ての個人投資家にとってはまさに受難の年となった格好だが、ここ数年持ち合い解消促進の後の受け皿として個人の存在というものもクローズアップされてきた経緯があるだけに各社共に今後はコロナ後を見据えた工夫も求められるところか。


35年連続1位

本日は所用で銀座に行ったが、鳩居堂が視界に入って来た際に今月アタマに国税庁が2020年の路線価を発表していたなと思い出しつつぼんやりそれを眺めた。この鳩居堂は今年も安定の一位で実に35年連続、また全国約32万地点は昨年比で1.6%のプラスとなり5年連続で上昇している。

今年開催される予定であった東京五輪は新型コロナウイルスの影響でオリンピック史上初の延期という憂き目に遭い、インバウンド誘致を睨み争奪戦の様相を見せた銀座界隈のテナントをおさえた向きには肩透かしの一面もあっただろうがそれでもなお再開発や物色の手は水面下で緩むことなく人気と共にこのエリアの新陳代謝は続くか。

ところで斯様なエリアはそれとしてコロナ禍以前に賑わった他の観光地の一部はまた別、今回の路線価上昇の背景には新型コロナウイルス禍の影響が反映されていない1月1日時点という事情があり、そうしたところは営業再開後もなお賑わいがすっかり失せてしまっているところも多いだけにインバウンドを背景に高い上昇率を辿って来たところは先行きの不透明感に戦々恐々だろうか。


7/3より石油スワップ取引4銘柄を当面の間取扱停止へ

北辰物産は、7月3日(金)の夜間立会(7月6日営業日)より当面の間、石油製品現金決済先物取引(石油スワップ取引)の「バージガソリンスワップ」、「プラッツバージ灯油スワップ」、「ローリーガソリンスワップ」、 「プラッツローリー灯油スワップ」の4銘柄の取り扱いを停止。

▼石油スワップ取引4銘柄の取り扱い停止につきまして


鯨二頭

さて、その運用資産が3月末時点で約150兆円にのぼる世界最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、20年1月〜3月の運用損失が新型コロナウイルスの感染拡大が金融市場を直撃した影響を受けて17兆7072億円と四半期で過去最大となり、今後は外債投資を増やす方針との旨の発表をしている。

もっともその後の株価上昇を勘案するに四半期で過去最大の損失云々はそう心配することもなさそうだがそれにしても約35.5兆円の存在は大きい。これと双璧の鯨的存在に日銀の存在があるが、こちらも先週に東証が公表したところによると日本企業の株主構成で日銀の比率が一段と上昇している旨が週末の日経紙に出ていた。

しかし東証の時価総額が現在約548.2兆円、うち冒頭のGPIFが上記の通り約35.5兆円、そして日銀が約31.2兆円とこの両者で実に東証時価総額の12.2%を占めている歪んだ構図はやはり気になる。形を変えたPKO論からコーポレートガバナンスへの影響論も喧しいが、金融緩和のランディングの在り方としても今後課題となってくるだろうか。


総会もバーチャルへ

先月は株主に総会関係の書類が順次届き株主総会も先週ピークを迎えたが、通常は多くの企業が株主に参加を促す株主総会も、今年は新型コロナウイルスの影響でクラスター発生防止の観点から送られてきた封筒には「株主総会当日のご来場はお控えいただけますようお願い申しあげます」等の一文が印字されているのが各社目立った。

この辺は先に経団連が公表していたガイドラインに即したもので議決権行使に関してもまたインターネットによる議決権の行使を選択するよう推奨されていたが、過日の日経紙夕刊一面にもスマホを使って株主総会で議決権を行使できるサービスを導入する企業が2020年3月末時点で424社と、サービスが始まった18年の3.7倍となるなど増加している旨が書かれていた。

昨年にこれを取り上げた時点ではサービスを開始した企業は約160社と書いていたが、上記の通りとその数は急増しており簡素化による個人参加の上積みで議決権比率が上がっている会社があるのも想像に難くない。これが始まった当初は新型コロナウイルスなど未だこの世に存在もしていなかったと思うが、ここでもまた新型コロナウイルスが総会における形の在り方をも変えてゆく契機となるか。