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米国債売り・金買い

本日の日経紙商品面には「金銀各差、リーマン波83倍」と題し、金融市場の混乱や地政学リスクを背景に逃避マネーの流入が活発化した金の一方で、産業用の需要比率が高い銀の上値が重くなっている事から両者の価格差がリーマンショック並みの高水準になっている旨が書かれていた。

直近でFRBは追加利上げを急がない方針を示唆し足元のニューヨークの金先物相場は9か月ぶりの高値水準となっているが、もう一つ金といえば中国をはじめとした強硬外交対象国の金保有にも変化が表れている。同国の金保有量は昨年末に1852トンと前月末より10トン増え、その増加は16年10月以来となっている。

その裏で米国債の保有は減少しており昨年10月末で1兆1389億ドルと5ヵ月連続で減少、またロシアもこの1年で約270トンの金を積み増しており昨年末段階での金保有量は2113トンとなっているが、こちらもまた米国債保有量は8割減少となっている。金保有ランキングの6位と7位がこうしたドル離れを探る動きとなっている事で、その余波が金市場に及んでいる格好となっており今後の推移にも目が離せない。


第2弾キャンペーンとか

本日の日経紙マーケット面の銘柄診断には昨日突飛高した事でヤフーが挙げられていたが、同社に絡んではソフトバンクと共同出資するスマホ決済会社のPayPayが昨年12月に続いて2度目の100億円を利用者に還元するというキャンペーンを12日から始める旨を発表している。

このキャンペーン、当欄でも取り上げた通り昨年は上限設定無しという事もあり各店舗で異常な混乱をきたし利用者の殺到によってわずか10日間という短期間で終了した経緯があったが、今回はこうした点を踏まえて1回につき還元額を1000円とするなど上限を設定する旨の説明が為されている。

前回の覚えからこの報が伝わった直後には再度高額消費が伸びるとの思惑でビックカメラ株がいち早く上げ幅を広げたものの、会見で付与上限に言及すると急速にその上げ幅を削り往って来いの展開に、一方で少額商品など日常的利用の拡大が期待出来るとの思惑でユニーファミリーマートHD等は堅調を維持する展開となっていた。

そうした部分もあって加盟店拡大が如何ほどになるのかというところも焦点となろうが、前回も書いたようにいまだ日本ではキャッシュレス決済分野は諸外国に比べて大幅に出遅れている。政府のキャッシュレス対策も各所といま一つ噛み合っていない部分もありこの辺は今後も紆余曲折が予想されるか。


敵対型再び

さて、先週の株式市場ではデサント株が突如として連日のストップ高を演じ何所よりも目を惹いていたが、これは周知の通り伊藤忠商事による同社へのTOB表明を背景にしたもの。この辺に絡んでは本日の日経紙企業面で伊藤忠がデサント株の保有比率を3割から最大4割に引き上げ経営陣の刷新などを求める考えに対して、デサント側はこのTOBに対して反対する方針を固めた旨が出ていた。

毎度この手の報道ではよく見られるパターン通りデサントでは当社が決定・発表したものではないとのコメントを出していたが、当欄でこの件に触れたのは昨年10月にオリックスによる大京へのTOBと共に取り上げた時でどういった幕引きになるかと末尾で書いておいた。

さすがというかジョルジオ・アルマーニやブルガリを日本のマーケットに導入し現在の収益の柱になっているブランドビジネスを確立した立役者が率いる商社だけあって肉食系らしい行動だが、上記のオリックスのパターンとは毛色が違い王子HDの時を彷彿させる敵対型の再来となっており紙戦争の時の三菱商事のようなホワイトナイトが現れるのかどうか引き続き注視しておきたい。


裏?ふるさと納税

本日の日経紙・列島追跡には「基準に反し、返礼に金券」と題し、ここ何度か触れてきているふるさと納税制度における総務省による6月からの基準厳格化を前に静岡県の一部自治体が駆け込み的にお得感の強い返戻品で多額の寄付を呼び込んでいた事がわかり物議を醸し出している旨が載っていた。

一頃のふるさと納税バブルの時はそれこそ返礼率5割超など当たり前で某自治体は換金性抜群の純金製手裏剣を出して来た経緯等もあったがそれは総務省が御触れを出す前の話。今回この頁で挙げられていた小山町はこの町と縁もゆかりもないアマゾンのギフト券を返礼品に加えていた上に、調達額も総務省の求めである3割以下という基準を無視した4割相当としていた事で物議を醸し出したというところ。

ココが悪知恵?を絞ったのは例えばメジャーどころではなく、特設サイトを設けた上で更に当初は週末限定等で返礼率の高いクオカードなどを掲載するなどの細工をしていたところだが、TV等でも担当者が堂々と自論を繰り返していた事でそれなりに腹を括った上での行動だったのだろう。

現在同自治体はふるなびなどでは今月から申し込みを再開した模様だが、大手のふるさとチョイスなどは現在も申し込み不可となっている。駆け込みに絡む問題を以前より指摘してきたが総務省の一括りの通達に「売り」を持たない向きとの格差バランスを取る難しさが改めて浮き彫りになっている。


今年は東北東

来る日曜日は節分だが、先々週あたりから各所で恵方巻の試食を勧められる事が多くなり、今年もまたこのシーズンが来たなと改めて感じる。恵方巻といえば近年はノルマや売れ残り余剰商品の大量廃棄等が社会問題になりつつあり、一部のスーパーで出した「もうやめにしよう」との意見チラシも話題になったのを思い出す。

さてその実態はというとミツカンの調査によれば恵方巻を食べる人の割合は直近では15年がピークで、昨年は61.1%と3年連続で前年を下回るなど微減傾向にあることが発表されている。やはり習慣として根付いているのか西日本が高い傾向にある模様だが、ちなみに私の周りでは豆撒きはやっても毎年恵方巻を食べる向きは皆無である。

こんな事もあってか今年は農林水産省が日本チェーンストア協会など流通業界に対し恵方巻の作り過ぎを控えるようにと異例の要請をするまでになったが、結局のところはスーパーやコンビニの商戦が過熱する一方でその需要が追い付いていないというところだろう。他に蒲焼等も問題になった事があるが食品ロス問題でナーバスになっている昨今、商材を特定して要請するような動きは今後まだ出て来る可能性は高いか。


新形態対応

本日の日経平均は反落となったが、その一因にもなったのが東証マザーズ市場の総崩れか。周知の通り昨日から同市場でダントツの時価総額を誇っていたサンバイオが、新薬開発で地検結果が主要項目を達成出来なかったとの発表で急落した影響で他の創薬ベンチャーも総崩れ、先物は昨日引け後に続いて前場にサーキット・ブレーカーが発動された。

またメルカリやミクシィなどの超高寄与度にまで波及した事でマザーズ指数は取引時間中として15日以来となる900割れまで崩れたが、同指数先物のサーキット・ブレーカーが発動されたのは前回が昨年2月のVIXショック時であるから、改めて新興モノに集中した信用絡みの個人マネーの巻き戻しの怖さを見た感じである。

ところでサーキット・ブレーカーといえば、HFT業者など新たな投資家の存在感が高まっている事に対応し東証は連続的約定気配を見直した制度を年末にも導入する方向だ。同時に大引時売買の成立値幅拡大も検討しているというが、上記の時価総額偏重や急増するHFT業者の台頭等々それに対する対策も都度要求されるマーケットになってきた感がする。


投資案件としての車

昨日たまたま見掛けたWBSでは「スーパーカーが売れるワケ」と題し、国産車が苦戦するなかで超高級クラスの所謂スーパーカーは特に好調な売れ行きを示している旨をやっていた。中でも高級中古車市場の盛り上がりで、元々5,000万円前後で販売されたフェラーリのF50が今や6倍の約3億円で流通している等の例が印象的であった。

これを解説していたのは希少車のオークションを開催している業者だったが、生粋の愛好者というより最近では世界中で投資対象として捉える傾向になってきているという。そういえば先月も大手中古車チェーン店舗をフランチャイズ運営している会社が、フェラーリの売却益を隠すなどで脱税したとして関東信越国税局から法人税法違反容疑で告発された事件を思い出したがなるほど合点がゆく。

真っ当な向きの商機としてもSMBC信託銀行では富裕層一族との取引拡大や富裕層の人が経営している会社の仕事にも携わっていければとの思惑もあり、超富裕層を対象に「高級車信託」なるサービスを展開し始めた旨も紹介されていたが、コンサル大手ナイト・フランクによる調査でもここ十年でワインやコイン等の値上がり率を大きく上回ってきているだけに今後も新ビジネスの商機となりそうだ。


外れ無き案件

今月中旬に当欄では「アクティビストの捉え方」と題し物言う株主について触れたが、物言う株主といえば先週末の日経紙投資情報面には「東芝、株主攻防第2幕へ」と題し、東芝が大型増資で投資ファンドらから6000億円を調達してこの1年での株の売却状況で、増資によって新規発行した株式の約22.8億株の約5割程度が市場の内外で売却されている旨が出ていた。

東芝について当欄が触れたのは昨年7000億円規模の自社株買いを実施する方針が伝えられた時だったが、当時は部にこれが売却促進政策思惑も出ていたが果たして今回の売却では先月までに引き受けの殆どを売却した向きは、何れも単純利回りにして約2割の売却益を得てのイグジットとなった模様。

もともと増資自体が有利発行ギリギリの水準とはいわれていたなかで、同紙に出ていた主なファンドリストの中にあったサードポイントは実質1週間程度でこれを捌き、日経紙のリストに出ていない向きでは僅か4日程度で実現益を手に入れたファンドもあった。一方で旧村上ファンド系のエフィッシモ等は保有を続けており攻防第2幕云々と日経紙で書かれているものの、株価も上記自社株買い効果で嵩上げされており何れにせよ美味しいハコであったというところか。


真贋は如何に

さて、当欄でも昨年10月に「価値創造」と題しロンドンを中心に活動する覆面芸術家バンクシーについて触れた事があったが、今週アタマには英西部ウェールズに昨年出現したこの芸術家による環境汚染を風刺した壁画をロンドンの画廊が最低でも10万ポンドで買い上げた旨の報があった。

サザビーズのオークションでは落札と同時にシュレッダーで裁断する演出から上記の環境汚染を風刺した壁画を突如出現させるなど依然として世間をザワつかせているバンクシーだが、そんななか同氏の作品に似た絵が東京港区の防波堤で見つかったとして都は早速描かれた部分を取り外しその真贋を調査する考えを明らかにしている。

いよいよバンクシーの作品が東京にも出現かと話題性十分で、都知事も浮かれて自身のツィッターで東京への贈り物かも?と写真をあげたところ公共物への落書きを容認するのかと早速軽い炎上となっているが、それは兎も角も今後どういった方法で真贋確認するのかまたその結果は如何にとしばらくはワクワクさせてくれそうだ。


今年もいたちごっこ

GOLD NEWSでも出ている通り、昨日に田中貴金属工業が発表した平成30年の資産用金地金の販売量は米中貿易摩擦や英国のEU離脱等のリスクに備える意識の強まりから「安全資産」とされる金に個人の投資資金が流入した結果、前年比35.7%増加の2万4403キロとなり買い取り量は前年比20.7%減の1万7757キロとなっていた。

昨年のドル高加速で夏にかけて金の国際価格が下落、これに伴い国内価格が28年1月以来の安値を付けた事で割安感から8月の月間販売量は実に約4千キロに迫る結果となったという。真っ当な主力業者のデータはこんな感じであるが、一方で今年も都内の買い取り業者で密輸した金塊を換金していた輩が本日千葉県警と東京税関成田税関支署に逮捕された。

手口としては正規輸入を装い自動車サスペンションのバネ部分などに金塊を挟み込んだ上で段ボールに詰め空路で密輸していたというが、押収された220キロというのは一度の押収量としては過去最多という。以前書いた国庫から100億円超が奪われている試算も、今回逮捕された輩の密輸量が計4トンにもなるとみられる事であながち的外れな数字ではなく当局との飽くなきいたちごっこは今年もまた継続しそうだ。


慣行の呪縛

本日の日経紙金融経済面には松井証券や岩井コスモ証券など各証券会社の新たな顧客獲得に繋げるサービスなどが書かれていたが、うち後者の岩井コスモ証券は主流の対面取引を効率化し純増に応じた報奨金のほか手数料収入の一部を得られるものの、金融商品の乗り換えに関わる営業では報奨金を得られなくしている旨が書かれていた。

対面営業の過剰営業防止策ともいえる措置だが、この過剰営業といえば日曜日の読売紙では証券会社が株売買の委託手数料を稼ぐために顧客に株を短期間で買い替えさせる回転売買が横行し、証券取引当監視委員会が今後証券各社への立ち入り検査を強化するなど警戒を強めている旨が書かれていた。

背景には某証券会社による過剰な回転売買で常識を逸脱する手数料を払わされ損失を出した高齢者の例が出ていたが、ネット取引の普及と共に暫くこうした記事を見掛けなかっただけに一寸新鮮であった。ネット取引に不慣れな向きなど根強い需要がある対面取引だが、今の営業マンはスキャルピングなら分かるが仕切りや不抜けなどは知らない向きが普通で未だこうした悪しき慣行が残っている組織は早晩淘汰の道を辿る事になるか。