Trick or Treat

日経平均株価は引続き大幅続伸で連日の大台替りとなっているが、週明けは一部メガバンクが保有株式下落による自己資本比率低下に対して大規模増資の計画を表明した事で軒並みストップ安まで叩かれた事が印象的だったが、久し振りにメガバンク以外のそれを見たらまあどれも酷い株価になっている。

上場時に当欄でも触れた新生銀行なんぞは何時の間にか100円台にまでなっていたが、そういえば前身であるあの日本長期信用銀行の経営破綻から今月でもう10年も経っている。

余談だが当時は同行の略称LTCBと、同じく破綻したヘッジファンドのLTCMとでLTCコンビとかいろいろ言われたものだが、さしずめ今が旬なイニシャルでは米金融機関から取った「ALM」か、何とも皮肉だが本来ALMは「Asset Liability Management」で資産負債のリスク管理方法を指すらしい。

さて話が逸れたが、これらALMへも為されたようにバブル後は金融機関への公的資金という借金が大きな役割を果たした訳だが、周知の通りこの悪環境で業績も推して知るべしでこの完済もまた遠退く事になるか。

メガバンクとて今年の7月に当欄で「5年後の難物」というタイトルでみずほFGを取り上げた事があったように先を考えるといろいろ懸念材料は多し、相次ぐリップサービスで日経平均株価は急騰しメデタシの報道が多いが対照的にみずほFGのザラバで7日続落等こうしたコアの金融系の弱さは否めず、これらの本格的立ち直りまでは楽観論はどうかなという感じがするが。


コンテンポラリーバブルも崩壊?

さて週中で何か文化モノのネタでもと思ったのだが、そんな時に目にしたのがあの競売大手サザビーズが来月上旬に米NYで実施予定のオークションにてピカソの幻の名作といわれる「アルルカン」の出品が急遽取り止めになった事を明らかにした件。

産経紙によればなんでも昨今の金融危機の影響で落札価格が低くなる可能性を恐れた為とかで、こうしたマーケットでは先月半ばにも高額落札が予想された喜多川歌麿の浮世絵に値が付かなかったり、今月半ばのウォーホル等の現代美術の競売で半数近くが売れ残りとなった模様とか。

この現代美術といえばついこの間までアジア勢中心に現代美術バブル景気到来とか騒がれていたものだが上記のような状況を見ると、まるでよくありがちな「昨今の株式市場の地合い悪化からIPOは已む無く延期する事にしました」とまさに環境が酷似しているか。

おりしも時節は芸術の秋、本日付けの日経紙「春秋」欄には「世界を日本を覆う暗雲をしばし忘れて芸術にひたるのは如何か」と出ていたが、それもこの世知辛い雰囲気の中には一考だろうか。


売り切れ御礼

本日の日経平均は前場で7,000円の大台を割ったあと後場に入って5日ぶりに急反発となったが、自律反発とはいえ本日の日経紙一面にも出ていた緊急市場安定化策の一環としての株空売り禁止制導入に敬意を表し?てか幾分のカバーが入った模様。

まあ周りがどうこうというより先ず国内需給改善主眼というのも無理は無いが、例えば上記の空売り規制にしても昔の所謂「PKO」だの「PLO」なる造語が流行った時代を彷彿させるが、こんな値位置からショートを規制し折角の将来のショートカバーの芽を摘むのはどんなものだろう。

それでも何処かの取引所のようにこの際閉めてしまおうというのよりはマシかもしれないが、売買で成り立つ相場の一方を固めリクイディティを奪うばかりか結局のところ所謂好取組の構築を壊してしまっているようなもので反発してもより自然からかけ離れた人工的な物になってしまう。

また、時価会計の運用緩和にしても企業会計に対する信頼はどうなのというところで、何でも本来想定していない値でしたの一言で説明が付くようになればこれは地雷を静かに埋めてしまうようなものだが、取り敢えず今は何か出しておかなければならない時勢下でそれにタイミングがマッチするか否かのセンチメントだけが頼りといった感じ。

センチメントといえば本日は日本橋から銀座に移動する過程で幾つかのワールドカレンシーショップの前を通ったのだが営業中にも係わらず何処も暇そうな警備員だけが目立つ異様に閑散な光景、よくよく見たら何処も全ての外貨が底を突き売り切れなので受付終了していたという訳だったのだが、皆が右へ倣えで在るものはどう見ても縁が無いカレンシーだろうが全て買い漁るこれまた異様なセンチメントが蔓延している。


週明けから日経平均が26年ぶりのバブル後最安値更新等と他マーケットのインパクトが凄いのでなかなか商品先物も影が薄いのだが、先週末には中部大阪商品取引所が鉄スクラップ先物の活性化を目的に「鉄スクラップ市場利便向上委員会」なる初会合を開催している。

この銘柄、既に2005年の上場時に当欄では「〜どんな業界にも取引慣習というものがあって、一般に商品が新規上場する際にはこの部分を軽視した為に鳴かず飛ばずという経験を既に東穀や東工取もしている。」としたが果たして見ての通りM・Mで辛うじて生かされている状況、先月にニッケルが上場廃止になった際には「さて次は否が応でも鉄スクラップに対する対応が注目される」ともしたが、既報の通りなにやら試験上場期間が一年延長になった模様。

当業者も存続を求める声があるというので直近の納会を見てみたのだが、今月は平穏納会、と言っても残玉さえ存在しない中受け渡しがゼロ、無駄と思いつつ先月も見たが何処を見ても残玉も無く受け渡しはゼロ、いったいデリバリーがあったのは何時だったのだろう?

こんな調子なのでまた酷いのはこの納会当時の新断バラ価格は約3万円半ば、それに対して75,810円の納会価格のこの乖離がどうだろう、これは先月も同じで新断バラが約4万円半ば当時に納会が74,210円、「ニッケルは潰したのに鉄スクラップは何故延命?」とまるで昨今の米金融機関救済劇を見ているようだが、まあ一部で言われているようにいろいろ諸事情があっての事だろうが結局(鉄)クズだろう。


社会貢献商品

さて本日はある案件の中で所謂フェアトレード関連の提案書を拝見させて頂いたのだが、フェアトレードといえば直近で記憶にあるのが独自路線を貫く銀座の松屋か。

過日所用で立ち寄った際に目に付いたのが、夏場まであったDiorアクセサリーコーナーが消えて替りに「SHOKAY」や「Motherhouse」などが出店していた事である。

何れも設立数年で認知度は薄いと思うが、「SHOKAY」はヤクの毛を使ったニット物、「Motherhouse」はバッグ製品で両者とも安定買い付け・委託でチベットやバングラデッシュの生産者を支援するという立派なコンセプトを持っている。

そういえば今年の初めだったか「ワクチン債」なる金融商品について当欄で触れた事があったがこれもSRIでそうした範疇か、こうした金融・ファッション・食品等々、またDMでもCRM(cause related marketing)を謳った物が日に日に増えてきたが個別ではいろいろ個人的に違和感を感じる物あれど各々を通じてのメッセージ効果も期待したいものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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