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コメロンダリング

さて、週刊誌の中でも昔と違って久しく同じ内容を打ち出した記事を見なかったが、今週号の「東洋経済」と「ダイヤモンド」は珍しく揃って「コメ」を取り上げた内容であった。

コメといえば悲願の先物が復活したばかりで上場後には日経紙等でも度々取り上げているのを見掛けたが、市況とは別に東工取との統合撤回の裏で農水省は貴重な天下り先を失いたくなかった云々と牙城を死守した思惑も書かれており、この縁談が総合取引所構想の一歩として真面目に期待していた業界関係者等はこんな特異性に忸怩な思いもあるだろう。

コメ業界自体も昔から魑魅魍魎といわれてきたものだが週刊誌によれば相場上昇下にあっては悪徳業者にとって願ってもない商機とか。現在福島県になぜか他県産の一空袋が大量に集まってきている様などなんとも不安を掻き立てるようなことも書かれてあったが、両誌共に割いた紙面はごくわずかながら先に上場したコメ先物にもやはり触れていた。

両誌共にタイトルは「活況から一転低迷」とか「本格離陸までの高いハードル」と厳しいものであったが、「週刊ダイヤモンド」では東穀取の社長が上場後に早速萎んだ現在の不振については「〜10月になって限月が6本揃ってからが本番と考えてほしい〜」と語っている。全限揃い先限の商いが立てば状況が一変するという思惑か?その辺は分からないが、では先限が如何ほどの商いを集めるかこの辺を注視させていただこう。


今年のワールドウォッチフェア

周知の通りスイスが対ユーロ目標レートを設定し上限以下に抑える為には無制限に為替介入を実施するという大勝負に出た。この辺は後で触れるとして、さてスイスの産業といえばやはり時計、この時期は毎年恒例で三越の「ワールドウォッチフェア」が開催されるが今年も過日一寸覘いてきた。

今年の場合は例年とは一寸違って時計見たさより一番の目的は「カランダッシュ・1010Diamonds」の特別制作モデルの万年筆。なんだ筆記具かと思うだろうが、値段が一億円で其れなりの期間経過すれば早々にスイスに帰国してしまうシロモノだけにこれを見ない手はない。ということで実物だが、消費税だけで500万円の値段もさることながらスイスでも選りすぐりのジュエラーと彫金師の技術の結晶だけに成る程滅多に見られない芸術品の域を超える芸術品であった。

ところで数年前の同フェアでは時計に充分対抗出来るような数千万円クラスの値札をぶら下げて、ラグジュアリーモバイルフォンの「ヴァーチュ」もブースを出展していたのを思い出したが、最近では銀座の直営店が先にヒッソリと閉店し直近では日本の通信事業から撤退と発表し鳴り物入りで登場したわりに何とも不発のまま消えていった感が強い。


金融売り再び

週明けは米市場がレイバーデーにて休場となる中、欧州株式は急落となった。これを映して日経平均も2年4ヶ月ぶりの安値に沈んだが、当の欧州ではRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ)の10%安、バークレイズの5.7%、ドイツ銀行の5.3%安など主力銀行の大幅安が下げを先導した。

日本でもこの波が波及しメガバンクが総崩れ、バスケット取引では100億円規模で金融株中心に欧州ヘッジファンドからの売りが観測されている。ギリシャ支援を巡る先行き不透明感から同国債の保有懸念、また住宅ローン担保証券をめぐり米当局が世界17の銀行を提訴したこともあり、またぞろ金融系に暗雲がたちこめる展開になりつつある。

アップティックやネイキッド等に加重的なルールが延長されている日本でも斯様に再度ショートの攻勢をかけられているが、やはり懸念されるのは先の空売り規制の後遺症だろうか。既にあの米ゴールドマン・サックスは資本不足からCDSを通じ欧州金融機関に弱気のスタンスを取るべきとの姿勢をヘッジファンド等の顧客宛リポートで推奨している。

目先では押さえ込んでも、この「ドラッグ」は流動性低下始めとした様々な副作用が大きいのはいうまでもなく、まだまだこの辺は先行き目が離せない。


グローバル化の波

さて、大証が先週に発表した8月のデリバティブ売買高は前年同期比で11.9%増の2262万枚であったが、これは大震災直後の今年3月の3,047万枚、そしてリーマン・ショック後の2008年10月の2,295万枚に継いで月間では過去3番目の多さだったという。

前回はその前の7月が低水準であったと発表されていたが、目立つのは7/19から翌日の午前3時まで延長された夜間取引の存在か。初月の7月は一日平均で日中取引に対する比率が平均で28.4%であったが、翌8月はこれが4割近くに達し夜間取引の売買高は過去最高を記録している。

この8月にはそれこそトリプルAの格下げやら欧州財政不安やら次から次へとマーケットを揺さぶる材料には事欠かず、まさに夜間延長の稼動時期としては絶妙なタイミングであったとも言えるが、正直ここまで夜間が活性化するとは予想外?という感じもした。しかしながら他の夜間部門も東京金融取引所のくりっく株365が対日中の比率が約5割に膨らんでおり、PTSも夜間が増加傾向と垣根を越え確実に拡大してきているのは事実。

先に書いたETNのように取引形態の多様化と併せ、金融取引のグローバル化はジワジワと個人レベルまで浸透しつつある表れか。ところで夜間取引といえば一足先に昨年からスタートしているTOCOMの夜間取引はどんな状況になっているのだろうか?


ファイナンス銘柄の錬金師

さて、今週はまたぞろファイナンスの動きが活発化してきているのが目立った。先月も新興市場の主力モノではそういった動きがあったが、今週は先ず日本冶金工業が42年ぶりに最大55億円強を調達、これによって新株の追加発行分まで入れると発行済み株式数は25%増える。また翌日には日本カーバイド工業と太平洋セメントが21年ぶりに公募増資を発表、これまた発行済み株式数は前者が最大で22.3%、後者が最大で30%それぞれ増えることとなる。

これら当然の如く株価は即座に反応することになったが、翌日は日本冶金工業は一時東証一部値下がり率トップの急落、日本カーバイド工業は同東証一部値下がり率第4位、太平洋セメントは東証一部値下がり率第2位と何れも大きく値を崩している。震災復旧の用や新規事業の用やらで已む無しの資金需要は理解出来るが、株主は値下がりで大きく損失の弊害を受けることとなる。

この辺に絡んではやはり外資勢中心としたプロ連中と個人の限られた情報力の違いが改めて浮き彫りになる。直近のものでも復配発表やら震災復興需要というテーマを囃して個人が食い付いてきた企業など並行して有力外資勢のショートが異様に急増しておりしかもロングも上手く咬ませているから巷のポジショントークでも材料を良い方へと傾斜させ易い素地まで出来上がってしまう。

ファイナンスに絡んではいろいろ新規制も施行される予定ではあるが、引き受け等の利害関係が常に背景に控える為に、この辺の不公平さは残念だがそう容易には改善しないだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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