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貴金属の効用

本日の日経紙マーケット面には「金、投機資金が流出」と題してここ直近で金の国際価格が続落している旨が載っていた。これらファンドの利益確定売りや株安の抱合せリバランス要因との見方だが、世界的な金融緩和の流れから今後は再度上昇基調が回復するとの観測も多い。

さて相場観は兎も角も、貴金属といえば最近はその効用?について目に付く機会が多い。今月の日経「私の履歴書」を執筆している有機化学者根岸英一氏の先週の項では、パラジウムは触媒活性が十分に高いだけでなく結合部位の選択性がほぼ100%で、パラジウム触媒はクロスカップリングに最も適している旨が書いてあった。

このPGM系では先週末にも東大教授らが触媒や燃料電池、電子機器等の材料に使用する白金を効率よくリサイクルする技術を開発した旨の報もあったし、上記の金はその特性を生かしインフルエンザ等のウイルス診断や妊娠検査まで幅広く応用出来るという。再来月には当社等の運営で品川コクヨホールにて「TOKYO GOLD FESTIVAL’12」が開催される予定となっているが、こんなマルチな才能に思いを馳せてフェスタに臨むのもいいかもしれない。


売りの啓蒙

さて、今週の日経ヴェリタスの一面には「売り を究める」とのタイトルとなっている。近年の低迷極める株式市場で「買い」以上に「売り」のあらゆる戦略が重要になってきていることを利食いやヘッジ売り等交えて書いてあったが、昨今漸くこの手の題目が踊るようになってきたなという感じ。

そういえば今月の上旬であったか日経夕刊の「ウォール街ラウンドアップ」には、空売り王とされるグリーンライト・キャピタル率いるディビッド・アイホーン氏の数々の実績が書いてあったが、一方で日本では売りで取った事例の記事といえばインサイダー絡みとか、若しくは踏み上げに遭えば天井知らずで損失無限大といったネガティブな報道ばかりでマトモな戦歴?が紹介されているのは見たためしが無い。

コモディティーを一寸触った向きはショートに対する抵抗は然程感じない場合が多いが、まだ場立ちが居た頃の証券マンなど新規で売りの注文なんぞ取ってくると支店長に烈火のごとく叱られるシーンも多く相場の上手い奴ほどこれで衝突して辞めていった輩は多く、現状でもやはりエントリーはロング一辺倒でショートに関しては一般的にイメージが悪い。

今月の「投資の日」にちなんで諸外国に比べて著しく低迷している本邦市場の現状を幾度か取り上げたが、その土壌もさることながら投資家サイドもまた金融リテラシーの低さは他に比べて否めないところで、特に上記の「売り」に関してはツナギでさえ知らない向きも多くここ数年のインフラの劇的な変化に比べ驚くほどこの分野は旧態依然といった感じである。環境変遷と共にこの辺も今後啓蒙が進んでゆくのかどうか気になるところではある。


回復の鍵

昨日はコスト削減の動きから本邦では重複上場解消が進行している旨を書いたが、株式といえばその取引自体が世界で減少している旨を昨日の日経紙一面では載せており、2012年7-9月の売買代金は約7年ぶりの低水準に落ち込んでいるという。3極の追加金融緩和政策で市場への資金供給は増えているものの、その中身はさっぱりといったところか。

しかしそれでも米国のDOWなどほぼリーマン・ショック前の5年前の水準まで回復を見せており、独や英などもそれを追うような戻りの軌跡を歩んでいるのに対し、方や本邦はこれらと比べるに5年前の半値ほどの水準であり、個別でも主力株で数十年ぶりの安値が続出している有様とその凋落ぶりが鮮明である。

上記の通り世界中で売買代金落ち込みなど不振を極めているという器の間でも、斯様に日本からは株式然り投信然りマネーの流出が著しい空洞化?現象ではこの先が思いやられるというものだが、「投資の日」にも書いたように関係当局がどの程度この辺の環境というか事態を深刻に捉えているかが焦点だろう。

インサイダー取引問題一つ取っても野村證券が実質過去最高額の過怠金云々が喧伝されていたが、過怠金規定上限の5億円を下回る水準としたことには証券会社自身によるインサイダー取引ではないという認識が昨日の日証協の記者会見で言われており、この辺は同協会がこの取引に関わった社員を外務員資格の剥奪も検討としているあたりにも窺える。

ちょうど一週間前には総じて金融業界は顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いとも書いたが、この手の魔女狩り的見せしめで封印してしまうのもまたこの業界の特徴で協会も上記のようにある意味同調している部分等この先自浄されてゆくのだろうか?こうして挙げると幾つでも出てくるが、土壌という部分でこの辺は今後も注目して見て行きたいところ。


地方への皺寄せ

昨日の日経紙夕刊一面には、企業間で複数の証券取引所に株式を上場させる「重複上場」を解消する動きが加速してきた旨が載っていた。本年度はこれまでに昨年度の29社を3割強上回る39社が新興市場を含めた取引所の重複上場解消を決めたというが、大きなところばかりが記憶にあったので改めて数字を見ると随分と多いものだなといった印象である。

この重複上場については当欄でも2年前に触れたことがあったが、その当時は1999年に1,042社あった重複上場が昨年には773社に減少した旨を書いていたが、その辺の動きが依然として加速しているという構図か。主因としてはやはり上場維持コストという問題になってくるがこの辺はMBOもまた然りといったところであろうか。

さてそうなると地方取引所も一段と厳しい状況になってくるが、好景気のときならいざ知らずこんな時世ではこうした流れは当然か。そういえば余談ながら業界でもMBOを実施したところあり、また地方市場とメインマーケットでトコロ相場を演じた経緯のある企業もあるが、この辺もゆくゆくは一本化の動きへ纏めてくるのかどうか注目したい。


円高と商機

さて、昨日は凪のような相場になってしまったJALを冒頭で挙げたが、それとは逆にこのところボラタイルな相場を演じているのはやはりソフトバンク株か。先週末からの急落のあと本日は一転して急反発を演じているが、イー・アクセスに続く矢継ぎ早の大型買収で最近は紙面を賑わせている。

しかし英ボォーダフォンのときの兆単位の買収もそうであったが相変わらずのレバレッジ買収は凄い。今回もボーダフォンのときとほぼ同額となるがやはり同社社長とは感覚の違う個人株主は戦々恐々、そんな投げもあって直近の株価急落からその時価総額は春先から差が広がっていたKDDIを一気に下回る場面も見られた。

数々の有言実行を成し得てきた氏だけに今回の決断が奏功するのか否か急変動の時価総額と共に注目されるところだが、こんな通信業界以外でも大型買収案件といえば最近は消費関連企業なども積極姿勢を取っている。レコフの集計によれば今年4-9月の消費関連企業のM&A金額は前年同期比51%増といい、やはりこの背景は円高が後押ししている部分が大きいとつくづく、現在水面下で交渉中の案件も近々表面化してくるかどうか今後に注目である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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