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池の中の鯨?

週末の日経紙で一寸目に付いたものに経済面の「投信、3週間で販売停止」と題した記事があった。これは野村證券グループの野村アセットマネジメントが先月25日から募集していた投信「日本企業価値向上ファンド」の事だが、月初の当初設定額1,057億円に対して直近の資産は実に1,800億円超の積み上がりを見せていた。

同ファンドは読んで字の如くROE改善が見込める企業等を選び投資するモノだが、これと似たようなキャラのものは昨年から大和や岡三、ニッセイアセットなど各社が設定しており、ニッセイなど設定以来の運用成績はROEを重視した新指数であるJPX400を上回っているという。

他にこれまで販売停止になったものとして思い出すのがちょうど2年前の今頃話題になったJPモルガンアセットの「ザ・ジャパン」があったが、再募集再開でもわずか1週間で再度の募集停止になった経緯があったなと。上記の価値向上ファンドは個別銘柄非公開だが、このザ・ジャパンなど組み入れ銘柄が更にチョウチンを誘いそちらでも話題になったものだ。

一方でこんな動きの裏で急速に人気離散しているのが、かつて国内投信で資産額がトップだった「グロソブ」である。一定額の分配金を支払う毎月分配型の先駆け的な存在であったが、上記のような運用商品の多様化や国債利回り低下から資金流出が長引き今月中旬段階で約12年半ぶりにとうとう1兆円の大台を割り込んでいる。斯様に「旬」なものは移ろい易いが何所までこの傾向が続くのか見守りたい。


如何に持ってもらうか

さて、一昨日の日経夕刊一面では「個人投資家と対話拡大」と題して、有力企業が「対話拡大」などIRの強化に動き自社の株を長く持ってくれる個人を増やし株価の下支えを狙う動きが出てきた旨が載っていた。

この自社の株を長く持ってくれる個人という絡みでは、先週の同紙にて2014年度の株式平均保有期間が8.9ヶ月と前の年度比で3.3ヶ月長くなった旨も出ていたが、14年にNISAが始まったうえ日本企業が増配など株主還元を強め長期投資が報われやすくなってきたためとの指摘もされている。

振り返ってみれば個人の株式保有期間はリーマン・ショックの年まで長期間傾向にあったものだが、この事件以降は「羹に懲りて膾を吹く」の風潮から回転も速くなった事でこれを境にして年を追う毎に短期化が続いていた。この間に企業側も増配など株主増を図る動きを模索していた事が昨今具現化してきた策などから窺える。

こんな機運が背景にあるのかどうか、期末の権利付き最終売買前には先物ショートに現物ロングを組みその後の解消で配当部分を狙う取引も最近では増えてきたという。権利を確保し6月の株主総会に向けての増配思惑が実るかどうか待つといったところだが、今後はキャピタルゲインをもカバーする魅力的な保有特典をどう打ち出せるかこの辺が課題になってきそうだ。


コーヒーカルチャー

さて、暫く行かなかったうちに近所のスタバがいつの間にか改装し小奇麗な店に変身していたが、こういった所謂シアトル系に続いて最近では米国生まれとされるサードウェーブ系のお店も都内ではジワジワと広まってきている。

ところでこのコーヒーといえば約1年前に当欄でもコンビニコーヒーについて取り上げた事があったが、こうした影響も一部にあってインスタントや缶コーヒーが冴えない中でもこの手は拡大を続け、こんなサードウェーブの波に大手飲食企業もグループの子会社や孫会社経由で続々と参入してきている。

もともと淹れ手が手間暇をかけて出す喫茶文化は前から日本にはあったが、こんな光景を見ていると逆輸入のように見えなくもない。確かにこういった中でベリー系の芳香が漂う変わり種などに初めて出逢った時などなかなか新しい感動を覚えたものだったが、こんな広がりで市場拡大の伸び代はまだまだありそうだ。


上場ゴール終焉?

さて、昨日の日経紙・風速計では金融機関が太陽光事業への融資に慎重になってきている旨が載っていた。この太陽光事業と言えば電力関連のベンチャーとして注目されてきたエナリスがあったが、ココは昨年発覚した不適切な会計処理の問題を巡って東証から1月末に特設注意市場銘柄に指定されている。

先の東証記者会見では最近のIPO銘柄の中には数か月で黒から赤に転落させてしまう例もあるという愚行に苦言を呈していたが、既に昨年発覚したこのエナリス問題のあたりから取引所側として何かしらの対策が必要との雰囲気が所内では出ていたようだ。

確かにやり玉に挙げられた企業の他にも数か月で業績を下方修正したり、不明朗な資金の流れが発覚したりした新興企業が多く最近では幹事にまで風当たりが日増しに強くなっていると報じるところもある。既に胴元はもとよりVC等関連機関も厳しい対応に変わってきているというが駆け込みで滑り込んだ向きがこうした部類にならないことを願うところ。


提灯銘柄

週明けの日経平均は売買交錯に方向感定まらず小甘く引けたが、そんな中で本日の値下がり率ランキングの方の上位に入った物には先週先駆して急伸した銘柄群が目立っていた。ACCESSなどもそんな一つだが、これはタワー投資顧問が保有比率を16.07%から14.79%に引き下げたのが材料視されているもの。

この手の提灯モノでは本日は小動きだったものの先週派手に値を飛ばした物として、8日前場で買い気配を切り上げて寄り付きからほぼストップ高の急騰を演じ全市場値上がりランキング上位に踊り出た黒田電気もある。これは7日付けの関東財務局に提出された大量保有報告書で、あの村上世彰氏が同社株を保有している事が判明したことに因るもの。

斯様に中小型の波の中には必ずこうした提灯モノが混じってくるものだが、こうした裏には今月2日に当欄で「IPO錬金?」と題して書いたところの信憑性に乏しい業績予想続出のIPO新興勢の騒動も背景にある。そういった風潮の中で内情把握の思惑が募る著名機関投資家がロングする銘柄への提灯が湧いてくるのも自然な流れと言え、ある意味昨今の疑心暗鬼が生んだ徒花ともいえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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