現引き事情
さて、先週末の日経紙商品面には「現物受け渡し急増」と題して、東京商品取引所の金先物現物受け渡しが先月末時点で2462枚と2015年12月以来の高水準となるなど急増している旨が書かれていたが、その背景には金の先高シナリオが崩れ損失が出る差金決済を避ける投資家が増えた事がある模様。
元々短期の差金決済目的から中長期へスイッチといえば聞こえはよいが、株の信用取引よろしく値下がりの度に段階的に追いかけて来る追証や絶対期日から解放される手っ取り早い処置だけに、それらの回避で現引きする手段を取る向きも居るが要は現物を高値で買った塩漬けという事。
一縷の望みを賭けてか、記事の末尾には来年10月の10%への消費税引き上げ後に売却し増税分2%相当の利ザヤにも期待するような事も書いてあったが、もはや思考もこうなると当初の目的から既に逸れているだろう。それは兎も角も消費税10%での利ザヤ拡大に期待する向きといえばやはり密輸組織だろうか。
直近では大阪拠点の金の密輸グループが大阪国税局の税務調査を受け、香港の密輸業者から報酬として支払われた手数料ほかに対し無申告加算税含む追徴課税額が約8億5千万円に上った記事を見たが、10%の増税では現況から25%も旨みが増すだけに密輸の動きが一段と活発になるのは想像に難くなく政府の対策強化は焦眉の急の事態となってきた。