残高増と出口論

さて、FOMCでは大規模の金融緩和据え置きを決定し当面緩和策を解消する意向が無いことが再確認されたが、国内では先週の日銀金融政策決定会合後の記者会見で総裁が日銀内で金利操作やETFの運営方法も見直す案が浮上していることから、これに関しては従前の購入枠にとらわれず、必要な時だけ買い入れる形に改める見通しとしている。

日銀といえば新型コロナウイルス対応による資金供給でその資産は昨年末時点で1年前に比べて129兆円増加の702兆円となり、金融市場の安定を掲げたETFは20年の買い入れ額が約7兆円と過去最高となり25%増となっている旨が報じられていたが、昨日の参院予算委員会ではETFによる含み益が12〜13兆円とする試算を明らかにし現時点で全体の枠組みを、そしてその中のETF買い入れを止めるという考えはない旨を同総裁が語っていた。

とはいえ度々触れているように自ずと出口戦略の議論も喧しくなってくるが、当欄で昨年11月にも触れたようにバブル時代に証券会社で大流行?した所謂飛ばしのようなスキームや売却制限を付けた個人への譲渡案等も健在で、各経済シンクタンクの専門家も日銀の財務リスクを回避するべくバランスシートから外す必要があるとして買取機構の創設やNISAやイデコ等の運用先指定で個人へ売却、また分割して企業に自社株として購入してもらう様々な案が出ている。

この前の会見で同総裁はETFの売却を巡る議論について売却は出口の議論の一つなので全く時期尚早だと思うしそういうことは現在考えていないと話していたが、曲がりなりにもETF残高は簿価ベースで35兆円まで膨らんでおり、2%のインフレ目標は未達成ながら更に大きく残高を積み上げる状況ではなくなってきているのは事実で引き続き出口戦略について今後も様々な議論は続くだろうか。


互いの誤算

さて、先週初めの当欄では寒波の影響から暖房用需要が高まった事などで今月に入ってからのスポット価格の上昇で自前の発電所を持たない新電力業者の経営が厳しさを増している旨を書いたが、昨日の日経紙企業面では「新電力、卸値高騰で苦境」と題し地域新電力の中には来月に全事業を停止する向きも出て来た旨が書かれていた。

この頁では地域電力が一日の売り上げに対して1月中旬辺りの調達ではその10倍以上もかかる惨状が綴られていたが、これらの他に本日は新電力の楽天エナジーが同社提供の家庭向けの楽天でんきや法人向け楽天でんきBusinessなどエネルギー関連サービスについて新規申し込みを一時停止する旨も同紙で報じられている。

斯様な市場連動型を謳うモノへ契約した向きもまた然りでこの辺は同じ憂き目に遭うワケで、さながらハイリスクな仕組債等の金融商品でまさかの「ノックイン」してしまったパターンにも似ているか。新電力の中には異常高騰分の料金を会社側が負担したり値引き策を表明したりしている殊勝な向きもある一方で、纏まって経産省への陳情など泣きつく光景を見るに返す返すも先物市場を上手く機能させてゆく重要性を感じる。


悲願の復帰

本日の日経紙社説には自動車生産の予想以上の回復を背景にした半導体不足の深刻化でこの自動車生産が変調をきたしている旨が出ていたが、これを受け大手のルネサスエレクトロニクスが車の走行を制御するマイコン等で値上げを要請、また東芝もパワー半導体など1〜2割の値上げを複数の自動車メーカーと交渉入りしている。

これを受け週明けの両者の株価はルネサスエレクトロニクスが年初来高値を更新、また東芝に至っては一時ストップ高まで買われる暴騰を演じたが、こちらの方は半導体の値上げ云々よりも東京証券取引所の承認を得て今週にも現在の2部から1部市場に指定される事になったとの報が大きいいだろうか。

この突飛高で大株主に犇めく魑魅魍魎のアクティビストも取り敢えずはホッと一息といったところだろうが何れにせよ17年8月に2部落ち?してから約3年半ぶりの悲願の1部復帰、今後はTOPIX組み入れなどによる需給の変化があるや否や、復帰といえども解消すべき課題は依然多くアクティビストの動向と併せまだ目の離せない展開が続くか。


電子化への流れ

さて、先週末の日経紙マーケット面では銅の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の銅先物相場が高止まりしている旨が出ていたが、中国勢の需要と共に相場高を牽引した投機筋の買い越し残高も金融緩和による余剰資金を背景に積み増しが進み、1月15日時点で4万4千枚弱とLMEの公表値がある18年1月以降で最高水準に達した旨が書かれていた。

ところでこのLMEといえばブローカーが円形に向き合う伝統的な「リング取引」が有名なところだが、昨年3月下旬から新型コロナウイルスの感染防止策としてこの形態は一時中断になっていた。これが先週には終息の兆しが見えないパンデミックを背景に恒常的に取り止め廃止する旨を市場参加者に提案、今後は電子取引システムに一本化する計画の旨が報じられている。

日本でも東証で場立が消えてから今年で21年となるがもし現存していたとしたらやはりこのコロナ禍での取引は憚られ、ましてや笛吹などトンでもないという状況だろうか?LMEの値決めは今後売買高加重平均に基づく仕組みになる見通しだが、相場形成にどのような影響をもたらすかは未知数。何れにせよ140年超の歴史を持つ取引所の欧州最後の伝統的手法もコロナ禍が消滅を促進する事になったという構図になるか。


サステナブルフード

さて、今週は朝のニュース番組で植物肉バーガーを扱う店が増殖している旨が放映されているのを見たが、ザッと挙げてもメジャーなところでロッテリアのソイ野菜バーガー、モスバーガーの植物性素材を使ったグリーンバーガー、フレッシュネスバーガーの大豆パティを使ったグッドバーガー、先月からバーガーキングも大豆ミートを使ったプラントベースワッパーを発売している。

またこれを見て思い出したが、これらと並行して喫茶店チェーンのコメダ珈琲も東銀座にこれまた大豆ミートを使ったハンバーガー等プラントベースに的を絞ったカフェをオープンしており、無印良品も大豆ミートシリーズと謳ってハンバーグ等を店舗や通販サイトでの販売を始めている。

これだけの増殖の背景には環境意識の高さという御立派な理由から健康や低カロリーを意識してというものまで其れなりの需要の高まりが窺える。残念ながら私は一度も口にした事が無いのだが、環境問題解決の大義名分を掲げ昨年は植物肉元年とまで言われぐるなび総研が一年の世相を反映し象徴する食を選ぶ年末の「今年の一皿」でもノミネートされたこの代替肉、何れにせよ一つの選択肢としてある一定数浸透しつつあるのが現状か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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