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自社株買い模様

月初の日曜日の日経紙1面には「自社株買い7割増」と題し、上場企業が2021年度に取締役会で決議した自社株の買い入れ枠が累計で8兆円超えとなり前年度に比べて68%ほど増えた旨の記事が出ていたが、この辺に絡んでは先月もトヨタ自動車が発行済み株式の0.58%にあたる8000万株、1000億円を上限とした自社株買いを決議していたのが思い出され同社としてはここ1年で3回目の発表となる。

自社株買いといえば米でも先月は6日に複合企業大手GEが取締役会で最大30億ドルの自社株買いを承認、続いて9日にはアマゾン・ドット・コムが最大100億ドルの自社株買いを株式分割と共に承認、また半導体製造装置大手アプライド・マテリアルズも11日、新たに60億ドルの自社株買いを承認するなど大手企業が続々と自社株買いを加速している。

米ゴールドマン・サックスによれば上記の通り年明けから2月末までにS&P500種の採用企業発表の自社株買いが21年1~3月から3割増加、堅調な企業のキャッシュフローをテコに今年の自社株買いは過去最高になる可能性があるというが、本邦勢もコロナ禍の影響もあって2020年度は3.9兆円ほどにとどまっていたものが、冒頭の通りの復調急でリーマン・ショック後の最高だったコロナ禍前の2019年度を上回っている。

斯様に手持ちの現預金が多くROEが低い企業などコーポレートガバナンスを背景に自社株買いに動き易い素地があるものの、一方で岸田総理が自社株買い規制を巡る発言で物議を醸し出したのが記憶に新しいほか、米でも2023会計年度の予算教書には新たな自社株買い規制案が出ておりこの辺の警戒感が足枷にならないかという懸念もあるが引き続きその動向には注目しておきたい。


卯月もまだまだ

新年度となったが、今年に入ってから月初めの当欄では今月から何が値上げになるかが恒例になってしまった。これまで食卓に上がる定番モノや日用品など順次値上げが為されてきたが、今月も首都高の料金が上がるほかカゴメがトマトケチャップを7年ぶりに値上げしハナマルキも味噌や即席みそ汁などをおよそ14年ぶりに値上げするなど○○年ぶりというモノが目立つ。

こうした波は街の嗜好品にも及びスタバが中旬から3年9か月ぶりに7割の商品を値上げ、コージーコーナーもケーキなど生菓子11品目、焼き菓子7品目の全18品目を値上げし、また国民的駄菓子の代名詞と言っても過言ではないあの(うまい棒)も遂に1979年の発売以来、価格を10円に据え置いて来たものを12円に値上げ、実に43年の歴史で初めてという。

こうした中で先の日経紙の全面広告にあったようにイオンがトップバリュなどPBの5,000品目の価格を6月末まで据え置く旨を発表した他、スーパーの西友もPB約1,250商品の価格を6月末まで据え置く旨を発表している。欧米のCPI急上昇と比較するに日本のそれは前年比でみて1%未満とこの差は顕著、遅々として価格転嫁が進まない状況では上記のようなPBの伸びしろに期待も出来るが、斯様な慢性デフレに犯されている状況下が生む商機を考えるに複雑な思いは否めない。


影のキーマン

本日の日経平均は米金融政策を改めて警戒し運用リスクを避ける動きから、グロースはじめとする幅広い銘柄に売りが出て3営業日ぶりに急反落の動きとなった。そんな中で一際目立っていたのがコスモエネルギーHDで寄り付きから買い気配で推移し約13%の値上がりで一気に年初来高値を更新している。

この背景には本日の日経紙一面にも出ていた通り、昨日に提出された大量保有報告書で旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンズが共同保有者とあわせて5.81%の株式を取得し大株主に躍り出た事がある。これまではUAEの政府系ファンドが大株主であったが3月に全株売却で入れ替わり実質的な筆頭株主になった事になる。

ところでコスモエネルギーHDといえば言わずもがな石油大手の一角だが、元売り業界と村上氏といえばかつての出光興産と昭和シェルの経営統合において泥沼化していた出光経営陣と創業家側の対立緩和に一役買った存在なのは有名な話。奇しくもこのシティインデックスイレブンズは現在富士石油の大株主にもなっているだけに、新たな業界再編への思惑も浮上しており今後の両者の行方には目が離せない。


高校生とビジネス

さて改正民法法施行により高校生でも成人年齢が18歳に引き下げられる他、高校の家庭科では今年から新しい指導要領に基づき金融教育の授業が始まる事になるが、そんな高校生を対象としたビジネスコンテストである「キャリア甲子園」のグランプリ決定の全面広告が本日の日経紙で掲載されていた。

同コンテストは協賛企業・団体が出題するテーマに高校生がチームを組んで兆戦するというものだが、挑んだメンバーの中には早々に起業の構想を練っている向きも少なくないだろう。ワタミの渡邊氏が理事長を務める郁分館夢学園などでは、高校生社長輩出を目的とし高校1年生のイベントに起業体験プログラムを設けるなど精力的な活動も見られる。

予てより日本は若年層の起業熱が盛り上がらないとされてきたが、確かに開業率など比較してみると欧米の10%超に対して日本のそれは甚だ心許ない感は否めない。起業も廃業も少ない構図では確かに新陳代謝も覚束無いだろうし、この辺の課題を見据えて早期からの起業家教育の裾野を広げてゆくのも重要なポイントかもしれない。


60年ぶりの市場再編

周知の通り本日は東京証券取引所の再編により誕生した「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の三つの市場での取引初日であった。ネット証券の取引画面も「東証P」や「東証S」等に表記が変わっていたが、結局日経平均は4日ぶりに反発となったものの1日のボラは今年最少を記録、その売買高も1~2月の1日あたり平均から2割程度低い低調スタートとなった。

予てより上場企業の絞り込みに期待をかけていた投資家勢とは裏腹に、基準未達でもプライムに噛り付いていたい企業勢の意を汲んだような骨抜き市場再編とも揶揄されてきた今回の措置だが、この辺は金融審議会でも挙がった投資対象としての機能性と市場代表制を備えた指数が存在しないとした問題点にも絡んで来る。

現在機関投資家の多くがベンチマークとしてきたTOPIXは東証一部全てを対象としているがここ10年で約3割増加と企業数が多すぎる状態は否めなく、同じベンチマークでも米のS&P500等と比較するにその水膨れ感が際立つ。日経紙には日々TOPIXはじめROEなどの基準をもとに銘柄選定したJPX400等が掲載されているが並べてみるとこの10年でもそのパフォーマンスは何れもほぼ差が無い。

今回の再編で東証一部が消えTOPIXも今年後半からは時価総額の小さい企業は順次段階的に外されてゆくというものの、その比率は1%程度とあまり意味が無く日本を代表するマーケットを表すベンチマークとして如何なものかという課題は残る。ただ玉石混合?の経過措置企業の中でも真剣に企業価値向上に目覚めた向きもあり、こうした向きの増加は日本株のパフォーマンスを劇的に改善させる起爆剤にもなり得、将来的にはMSCI等に相当するような” 使える”指数が出てくる可能性にも期待したいところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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