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新紙幣と経済効果

今週いつものクリニックに行った際の会計で早くも新紙幣が交ざっていたが、周知のように今月から20年ぶりとなる新紙幣の流通が始まった。流通初日の全国の新紙幣対応の割合はATMなど金融系機器で9割以上、鉄道・バスの券売機で8~9割、一方で食券の自動販売機は5割、飲料自販機は2~3割程度での対応であったが、いずれにせよ新紙幣発行によるATMや自販機の入れ替え等でその経済効果は約1兆6千億円と試算されている。

初日から各金融機関には列を作っている人々がTV等で報じられ、中にはレアモノの記番号狙いで高額両替する向きも居たようだがこれらがそう簡単に一般の手にホイホイ渡るとも思えない。それでも流通初日からヤフオクでは出品禁止のハズのプレミアでも何でもない新紙幣がズラリと並んでいたからなんとも商魂たくましい向きが多いものとつくづく。

其れは兎も角も、ネットワーク社会でキャッシュレスの動きが加速する条件が整った中での新札発行というのはおそらく今までで初めての事か。飲食店等にあってはこれを機に券売機を新しく買い替えるのであればもうキャッシュレスの導入にした方がよいかという動きも広がっており、意外にキャッシュレス化の比率が上がって来るというのが経済効果で見えるのではとの指摘も一部にある。

経産省によれば、日本のキャッシュレス化は2023年度で普及率が39.3%、アジア圏では近隣の韓国が93.6%、中国も83.0%というなかにあって政府の目標である80%の目標には遠く及んでいないのが現状。これらの国に限らずインバウンド客はキャッシュレスに圧倒的に馴染みがあり、キャッシュレス決済は人手不足緩和など含め現場の生産性も上がるなどメリットも大きいだけに今後どの程度構図が変わって来るのかこの辺に注目しておきたい。


異例の都知事選

さて、周知のように東京都知事選では現職の小池百合子氏が都政の刷新を訴えた新人候補を振り切って3選を決める事となった。当初は参議院議員を辞して立憲民主党から出馬した蓮舫氏との一騎打ちになるとされていたが、蓋を開けてみれば小池氏の圧勝に続いたのは若年層中心に支持政党を持たない無党派層の受け皿となった石丸氏が浮上していた。

また同じ日に行われた東京都議会議員の補欠選挙では自民党候補が相次いで敗れたが、政治とカネ問題への不信感が如実に表れたかたちで自民への逆風はますます強まってきている証左か。ところで今回の都議選は史上最多の56人の候補者乱立という異例のものになったが、法の網を潜り抜け大量に候補者を擁立して掲示板が売買されたりモラルを欠く選挙公報や政見放送などの弊害も齎された。

SNSがバズった事などもあり曲がりなりにも投票率は上がったが、こうした結果子どもの通学路に品を欠くポスターが堂々と掲げられこれを媒体として収益を稼ごうとする魂胆がミエミエなモノも出現するなど公選法が想定していなかった事態も物議を醸し出している。供託金含め公職選挙法を見直す意見も当然出始めたが、これがはたして健全で成熟したデモクラシーの姿なのかどうか再考の余地は大きい。

いずれにせよ今回の都知事選では刷新より継続が選ばれることとなったワケだが、東京都知事の重要課題の一つに以前にも書いた東京の国際金融都市構想がある。ちなみに最新の国際金融センターランキングでは日本は19位とアジア圏でも下位に甘んじており、地位向上に向け各所の育成など成長戦略のブラッシュアップが必要になるだけにどういった舵取りをしてゆくのかこの辺り含め今後も注目してゆきたい。


年金の定期健診

先週は老後の生活資金となる「公的年金」の長期的な見通しを5年に1度資産する「財政検証」の結果が公表されている。法律では所得代替率が50%を下回らないようにすることが約束されているが、過去30年と同程度の経済状況が続いた場合で現役世代の平均収入の50%以上は維持出来るとしているものの、その給付は現在よい2割近く目減りする。

そういった事も視野に年金改革案では基礎年金の拠出機関の現行の40年から45年へと5年延長案もあったものの、ただでさえ若年層中心に将来の年金への不振が強いなかこれらの負担増への反発も強く現状では広く国民の理解を得られないと判断し厚労省は見送りを決定している。

そんななか直近ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2023年度の運用実績で収益率が22.67%プラスの45兆4153億円の黒字となり、過去最高を更新した旨が報じられている。本日もTOPIXはザラバで史上最高値を更新しているが、これらに連動するインデックス運用ではこうした株価上昇は追い風で将来の年金支払いをより確実なものにする安心感も生まれるか。

とはいえ公的年金の給付水準は徐々に下がってゆくのが予想されることで老後の備えを少しでも増やす工夫も各々では必要になってくると思われるが、新NISAと並び自分で掛け金を出すiDeCo・イデコなど税制優遇を受けられるものも啓蒙効果で今では認知度も高まり、政府側もこれら利用促進のため更なる優遇措置を考えておりこれら活用を駆使するのも一考か。


約20倍増配の怪?

本日の日経平均はザラバで終値ベースの史上最高値を更新する場面があったものの短期的な過熱感を警戒した売り物に押され続落となったが、そんな中でも先週末のストップ高に続き大幅続伸で目を惹いていたのが東証スタンダードのダイドーリミテッド株か。これは周知の通りで、先週に2025年3月期の年間配当を1株あたり100円に積み増すと発表したのを背景としている。

先月末に株主総会2024として当欄でもその行方が注目されると書いていたダイドーリミテッドだが、総じて会社側が提案した議案は可決され株主の提案は相次ぎ否決というパターンが多かった総会のなかでも同社株は大株主のストラテジックキャピタルが提案した取締役選任案の一部が可決されていた。そこから1週間ほどでこれまでの従来予想の20倍近くにもなる大幅増配を突如として打ち出してきたのはサプライズであった。

しかし目下のところ主力のアパレル事業は11期連続の営業赤字を記録し、希望退職を募りながら虎の子?の不動産を順次切り売りしているような不振が続いているような状況下にあってこの度の大幅増配はヤケクソ感さえ漂う。しかも25年3月期だけでなく27年3月期までの3年間は年100円の配当を基本方針とするというからそれらをマトモに好感し年初来高値を買い上がる光景は逆に不気味に映るというものだ。

ただ取締役選任議案を出したストラテジックキャピタル側はこの度の公表に関し提案したものでも事前に同意したものでもないとのコメントを出しており、同日には旧村上ファンド系の南青山不動産が共同保有者と合せて同社株を大量保有している事も報じられている。近年のアクティビスト提案は企業変革を促す原動力ともなるガバナンスや企業改革に踏み込んだものが賛成票を一定数集めてきただけに、総会直後の今回の発表は一寸これらとは異質に映る感は否めないか。


飽くなき欲望

今週は何年かぶりで以前行った事のある眼科へ行ったのだが、かつて眼科一辺倒であったそのクリニックはボトックスやらレーザー等の美容医療部門が新設され建物も瀟洒なものに変貌していた。ところで美容医療といえば先週末の日経紙社会面では「美容医療トラブル急増」と題し、脱毛や整形といった美容医療を巡るトラブル健康被害の相談が急増している旨の記事があった。

前々からこの手のトラブルはあったが、国民生活センターによると2023年度の美容医療に関する消費者の相談件数は前年度比で1.6倍の6255件と、比較可能な09年以降で最多となり5年前の3倍にも上っているという。美容施術の後の所謂ダウンタイムにコロナ下の外出自粛期間が“渡りに船” ということもあったのかどうかコロナ禍からの増加が顕著になっている。

美容医療の旨味はなんといっても自由診療にある。患者=客?の単価が圧倒的に高額で、ほぼ保険同様の処置でもクリニック側の設定でガッツリと取れるだけに旨味も大きく、この辺が玉石混交を生み出す背景にもなっている。また医師がインフルエンサー化しているケースもあるなどマーケティング手法も自由度が高く、SNS時代の今は特にこうした美容医療のハードルが以前よりぐんと下がってきている。

そういった事で最近では小・中学生でも脱毛するケースが増加しており、某脱毛クリニックではここ5年で脱毛を希望する中学生が8.3倍に増加しているという。さらには3歳から脱毛出来る子ども向け脱毛サロンもあるというから驚きだ。ルッキズムの捉え方は人それぞれ自由だと思うものの、未成年の若年層までこれを助長させるかのような商業目的のマーケティングを見るにつけこの辺の在り方には釈然としないものを感じるものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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