71ページ目   雑記

短信一本化

さて、今週は金融庁が金融審議会の作業部会を開き上場企業が開示する2種類の決算書類を一本化する事を了承している。この見直しは岸田首相が就任時に目玉政策の一つとして打ち出したモノで、金融商品取引法で上場企業に開示を義務付けている四半期報告書を廃止し内容を充実したうえで証券取引所のルールに基づく決算短信に一本化する方針だ。

この四半期開示の是非は2018年にも金融庁のWGで議論が為されたが、市場競争力に影響を及ぼしかねないとの懸念から見送りになった経緯がある。それでも当初は四半期開示の廃止を含め政府内で検討していた模様で、こうした背景には企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念があり企業が長期的な視点に立った経営を行う事が重要との認識があったようだ。

ちなみに欧州でもこの法的義務が廃止になっているところは少なくないが、英などは14年に廃止したもののその後に実際に開示を止めた企業は全体の9%しかなく9割以上が任意で開示を継続している。やはり廃止すれば投資家からは情報開示の姿勢が後退したと受け止められ株価はじめあらゆるところへの悪影響が懸念されるのだろう。

ともあれ上記の長期的視点云々も重要だが仮に廃止のパターンでも単純にこれで長期視点に繋がる訳では無いうえ、日本の大手企業のように社長の任期が短いきらいのあるところを一括りで見直しを図るのは如何なものかという感もある。金融審の作業部会では詳細を詰める為に今夏以降も議論を継続する模様だが、政府としてはガバナンスを通じ企業経営を変革させる流れを尊重すべく制度設計に工夫が求められるところだ。


NATOガイドライン

さて、これまで日本の防衛費はGDP比1%以内を目安としてきたが、先週末の日経紙総合面には「防衛費GDP2%以上に」と題し、政府の国家安全保障戦略などの改定に関する自民党提言の素案としてロシアのウクライナ侵攻や中国の軍備拡張を踏まえ、この防衛費をGDP比で2%以上に増やすよう政府に求める記事があった。

ちなみにNATO加盟国はGDP比2%以上という国防費目標がガイドラインとしてあり、既に欧州各国では続々と国防費を上げる動きが出て来ている。直近ではドイツが米ロッキード・マーチンの戦闘機を数十機購入すると発表され、バイデン政権の国防費拡大見通しとも相俟って同社やグラマン、L3ハリス、ゼネラル・ダイナミクス等々に物色の矛先が向きいずれも先月から今月にかけて史上最高値を更新している。

斯様な光景を見るにESG投資の大義名分もいろいろと修正されそうだが、それは兎も角も確かに東シナ海を巡る緊張に加え一昨日も北朝鮮が日本海に向け戦術核の運用に向けた新型戦術誘導兵器のミサイル2発を発射したとのキナ臭い報が入るなど緊張が高まっているさまを見るに、我が国も憲法第9条の下での安穏とした状況下に警戒感を持つべきで防衛大綱や中期防衛力整備計画等の見直し機運も高まろうか。


イースター2022

さて、来たる日曜日はキリストの復活を祝い春の訪れを祝う「イースター」(東方教会は24日)だが、既に例年の如くラグジュアリーホテル等ではアフタヌーンティーがこれに絡んだものが登場し、ピエール・エルメやジャン=ポール・エヴァンなど今年も新たなシンボルの卵やそれを運んでくるウサギのモチーフの新作チョコレートを展開している。

とはいえ日本ではこれに因んだ商戦にあまり派手さは見当たらないが、米では現在本格化しているイースター商戦は年間の消費動向を占う先行指標として業界では注目されるところで、今年はコロナが完全収束しない中で集いの自粛や一昨日に発表された3月消費者物価指数が約40年ぶりの高水準となった事なども背景に購入活動は20年、21年の過去2年の実績より下回る事が予想されている。

ところで今更ながらイースターで卵がシンボルになっている理由は、卵が命を生み出すものであり復活の象徴とされているからに他ならない。ウクライナのイースターエッグは「ピーサンカ」と呼ばれているが、日々同国の現場の惨状を報道等で見るにつけまさに一刻も早い終結と「復活」を願わずにはいられない今年のイースターである。


食糧インフレの足音

さて、一昨日に製粉業界最古参のニップンは政府が輸入小麦の売り渡し価格を4月に平均17.3%引き上げた事を受け、業務用小麦粉を6月20日分から値上げすると発表している。業務用小麦を巡っては既に製粉トップの日清製粉が値上げ発表をしているが、これで今後も引き続き食料品などの価格に大きな影響を与えるのは想像に難くない。

この辺は言わずもがなウクライナ危機が更に拍車をかけているのが背景だが、10日付の日経紙総合面でも「食糧高騰 アジアに打撃」と題し食料高騰がアジアや他の新興国にも影を落としている旨が出ていた。食糧価格高騰がトリガーになり大規模デモとなったパターンでは11年の「アラブの春」が記憶に新しいところだが、現在の構図もこれと同様で予断を許さない状況だ。

この度のロシアによるウクライナ侵攻は世界中で掛け声になっているSDGsの各動きにも大きな障壁となる事が予想されており、17の目標のうちの一つである2030年までに飢餓をゼロにという目標の達成など暗雲が漂う。FAO(国連食糧農業機関)が先週に発表した3月の世界の食料価格指数は2ヵ月連続で過去最高値を付けているが、食糧インフレが今後様々な事に波及しないのを祈るばかりである。


卯月もまだまだ

新年度となったが、今年に入ってから月初めの当欄では今月から何が値上げになるかが恒例になってしまった。これまで食卓に上がる定番モノや日用品など順次値上げが為されてきたが、今月も首都高の料金が上がるほかカゴメがトマトケチャップを7年ぶりに値上げしハナマルキも味噌や即席みそ汁などをおよそ14年ぶりに値上げするなど○○年ぶりというモノが目立つ。

こうした波は街の嗜好品にも及びスタバが中旬から3年9か月ぶりに7割の商品を値上げ、コージーコーナーもケーキなど生菓子11品目、焼き菓子7品目の全18品目を値上げし、また国民的駄菓子の代名詞と言っても過言ではないあの(うまい棒)も遂に1979年の発売以来、価格を10円に据え置いて来たものを12円に値上げ、実に43年の歴史で初めてという。

こうした中で先の日経紙の全面広告にあったようにイオンがトップバリュなどPBの5,000品目の価格を6月末まで据え置く旨を発表した他、スーパーの西友もPB約1,250商品の価格を6月末まで据え置く旨を発表している。欧米のCPI急上昇と比較するに日本のそれは前年比でみて1%未満とこの差は顕著、遅々として価格転嫁が進まない状況では上記のようなPBの伸びしろに期待も出来るが、斯様な慢性デフレに犯されている状況下が生む商機を考えるに複雑な思いは否めない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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