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中国市場の踏み絵

さて今週はファーストリテイリング傘下のユニクロが、同社製品の生産過程で強制労働が確認された事実はないとするコメントを発表していたが、これは同社のシャツが中国の新疆ウイグル自治区産の綿製品に対する禁輸命令に違反した可能性があるとして米国が輸入差し止め措置を取った事に対するもの。

新疆綿を巡っては同じファストファッション業界のH&Mが新疆ウイグル自治区に工場を持つ企業との取引停止を表明、これが引き金となってあっという間に中国のECから締め出された経緯があっただけにユニクロ同様に衣料品にこの新疆綿を使用している良品計画なども毅然とした使用中止宣言には逡巡している感が受け取れる。

一方でカゴメは今年中に新疆ウイグル自治区で生産された加工品を製品に使用するのを止める事を先月に表明、また日経紙の取材ではミズノやワールドにコックスなど3社も新疆綿の使用を止める事を表明している。これら以外の小売り各社も続々とサプライチェーンの生産履歴の確認の厳格化を打ち出している。

これらの各対応の背景には中国市場への依存度も大きく関係しているのは想像に難くないが、近年の中国市場の特性として政府と国民が外交関係で一体化し連動して動いている感が強い。ESG喧しい昨今、企業は特にSの対応により重要度が増しており中国が成長のドライバーとなる企業には迎合するか切り捨てかまるで踏み絵のような難題だが、何れにせよこのウイグル問題も一つの試金石になるか。


強弱材料併存

さて、今月に入ってから早々に金価格は1800ドルを回復し先週も一段と水準を切り上げはや1900ドルも指呼の間となっているが、先週末の日経紙商品面にも「金ETF、資金流入超に」と題し世界の金ETFが保有する金現物の残高が5月に入り2週間連続で増加し第2週の流入超幅は13.1トンと1月8日以来約4か月ぶりの高水準となった旨が出ていた。

とはいえこの金といえば米の長期金利上昇等を背景としてWGCによれば今年1月〜3月は95億ドルの流出超過となり、四半期では13年4月〜6月以来の大幅流出を演じていた。これが景気回復期待等を背景に市場が予想する将来の期待インフレ率が上昇、その結果名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利が低下し金利が付かない逆相関関係の金には追い風となっている構図。

ただ上記の約1兆円にも及ぶ流出超過の裏で金嗜好の強いインドの輸入関税引き下げや、双璧である中国の春節が需要を喚起するなどの背景からアジアでは残高が増加、欧米投資家の売りにこれらが受け皿として効いた格好といえるか。上記のように強弱材料が併存している下で方向性は見極め辛いものの、何れにせよ環境に左右され難い実需の買いが下支えとして効いている構図には変わりないか。


面従腹背

緊急事態宣言の延長がほぼ確実視されるなか昨日は一般社団法人日本映画製作者連盟が映画館再開の要望について新たな声明文を発表していた。これまで休業の根拠について説明を求めても納得のいく合理的な説明が得られていない中、クラスター発生のエビデンスも無く「なぜ映画館が」と今回の措置に対する平等性への疑問も生じ、また投資資金の回収が絶たれるなど休業が及ぼす甚大な被害の可能性を謳っている。

この辺は先週も当欄で「場当たり要請?」と題して書いた通り目安となる明確なエビデンス無き線引きの曖昧さがストレスを増幅させており、これに先駆けてライブエンタメの4団体も要請撤廃を求めた声明文を発表していたが、何れも政府・自治体の連携も覚束無く納得のゆく回答が得られていないところが不平等感を煽っている部分が大きい。

同じく先に取り上げた百貨店も高級品の解釈を巡って東京都と鬩ぎ合いが続いており、これまた担当者サイドが豪奢品とは具体的に何かと都へ説明を求めたが曖昧な返答にとどまったという。コロナ禍でも富裕層のブランド品への消費意欲は旺盛で百貨店に取ってもこのセクターは売り上げの要、意地になって押しつけ要請を継続させれば何れの業種も面従腹背でいたちごっこの構図になってくるか。


逃げ恥マーケット

このところサプライズな芸能人の結婚報道が散見されるが、先週は日本中がガッキーこと女優の新垣結衣さんと俳優の星野源氏の結婚報道でもちきりになった。5年前に大ヒットし一世を風靡した恋愛ドラマが現実化した格好になったワケだが、この手のパターンは「逃げ恥」放映の近いところでは前年15年の舞台嵐が丘で共演した女優の堀北真希さんと俳優の山本耕史氏なども居る。

ところで業界では話題の芸能人が結婚報道で「○○ロス」と話題になったパターンは翌日の株価に影響があるという相場と絡めたジンクスが以前より実しやかにあるが、なるほど上記の堀北真希・山本耕史両氏の時も翌日は下落、女優の石原さとみさんの時に至っては東証がシステム障害で終日停止追い込まれているのが記憶に新しい。

今回の逃げ恥婚では発表翌時の前場でこそ200円以上安くなる場面があったものの引けは辛うじて小反発となったが、個別では両者が出演しているCM企業9社中6社の株価がご祝儀買いで上昇、他に面白かったのは星野つながり?で星野リゾートが反発、また「可愛ガッキー」と読める?河合楽器まで買い物を集め年初来高値を更新するなどほとんど冗談とも取れる物色劇が展開された。

まあ河合楽器は巣ごもり需要好調から21年3月期通期連結営業利益が前期比18%増で着地の素地が背景にあるとはいえ、近年は一定のワードに過度に反応する頻度が確実に高くなって来た気がする。IT駆使が顕著化している最近ではバズったワードに関連しイナゴ勢が大挙するパターンも多いという表れなのかどうか、何れにせよ最近の環境を表す光景を垣間見た20日の市場であった。


逆鞘の憂鬱

さて、先週の日経紙には「歯科医悩ます「銀歯」高」と題して、 保険診療で代表的な銀歯を作成する仕入れ価格が混ぜ物の一つであるパラジウムの高騰などで近年大きく跳ね上がり、昨年から今年にかけては診療報酬上の告示価格に対する上鞘も顕著となってその鞘分が歯科医側の利幅を大きく圧迫しているという旨がでていた。

現在JIS規格では銀40%以上・金12%以上・パラジウムは20%以上と決められているが、強度を増す為にこのパラジウムは要。ちょうどこの記事が出た後に知人の歯科医師に会う機会があったのでこの辺を聞いてみたら、確かにキャストウェルも数年前は3万前後で調達出来たモノが最近だと9万円前後まで跳ね上がっておりヤレヤレという感じであった。

ただ確かに利幅は大きく減少してはいるものの新聞等で報じられているが如く銀歯の補綴一辺倒で黙って赤字を垂れ流している向きは少ないといい、その辺は近年チタン冠やCAD/CAM冠など保険の適用範囲も広がってきており双方共に選択肢もまた広がってきているだけにこの辺も一括りで酷い惨状というワケではなさそう。

とはいえ一長一短でチタン冠など硬度の面で人によって合う合わないがあり、ならばやはりジルコニアセラミック等がお勧めとなるもののなかなか全ての患者が自由診療に手を出せない部分もある。点数も順次上がってきているとはいえ昨今の市況環境も変わってきており、それらを鑑み公定価格も機動的な対応が必要な状況になってきているのかもしれない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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