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呪縛?からの脱却

さて、先週は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ等が東芝に対し2兆円超の買収提案をした旨が話題になっていた。東芝といえばつい先月もアクティビストから臨時株主総会開催を要請されエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの提案が可決されたのが記憶に新しいが、これを取り上げた当欄でも末尾にて「~株主構成など大きく変わりその影響から緊張関係が続いている〜」と書いていた。

この株主構成が大きく変わったのは言わずもがな債務超過に陥った危機の際に実施した巨額増資の際の受け皿が背景となっているが、現在の株主構成では半数以上を占める外国法人等のうち実に約25%がアクティビスト。上記の通り彼らとの対立が表面化する現状では株式が非公開になればアクティビストの影響下から脱却を果たせ、経営陣の思い通りのオペが出来るなど確かにメリットがあるというもの。

加えて昨年7月の株主総会では現社長再任の賛成率が57%まで低下しているという現状だが、各紙でも報じられている通り現社長はこの買収提案をしたCVCキャピタルの元会長という経歴、加えて現社外取締役の中にはCVCアジア最高顧問も居る。斯様な背景からアクティビストとの対立で責任問題が及ばないよう自己保身の為に仕掛けたのではとの噂が出るのも致し方無しか。

またフジテレビを傘下に持つフジ・メディアHDが外資規制違反云々でザワついていたが、東芝もこうした問題が絡む可能性もあり政府系金融機関等への協調を謳うのもそうした背景からだろう。他既存株主がどう出るかも気になるところだが何れにせよ株主の利益を考えての行動か否か、その辺が一番の焦点になってくるワケで先ずは今年の株主総会までに一定の方向性が示されるのか否かその辺が注目されるところ。


コロナ禍で変貌 

さて、新年度のスタートを切った今月1日の日経新聞朝刊には新社名になる多くの企業の全面広告が載っていたが、証券会社からも保有株の社名変更の告知メールが届く。スシローGHDなどFOOD&LIFE COMPANIESへとガラリと変るが、アイシン精機はスッキリとアイシンへ、一方で楽天やソニー等は従来の社名にグループが付くこととなった。

これら事業の多角化を物語っているが、上記のソニーなど2021年3月期の業績は純利益が過去最高の1兆円を突破する見通しと好調で、背景には部門別でこれまで要であったところが横這いの一方でやはりプレステ効果でゲームが約3割超、また鬼滅の大ヒットで映画などのコンテンツが利益に寄与する格好が今回は目立っている。

思えばリーマンショック後の低迷期では個人的にこの銘柄も保有株のヘッジでよく空売り対象にしてきたが、空売りといえば10年近く前の取引で売り玉の買い戻しをスロットよろしく単純な縁起担ぎで777円と出しっ放しにしておいたダメ元の指し値が約定した時は驚いたと同時に三桁に沈んでなお下げ止まらないさまに不気味さを憶えたものだ。

そんな時から今や株価は15倍以上に大化け、ショートカバーから途転ロングしなかったのがつくづく悔やまれるが、そんなことは兎も角も製品の売り切り型モデルからゲームや音楽等のサブスクへの移行が奏功した良い例だろうか。当欄でも約1週間前に「サブスク彼是」と題しモノを持たない暮らしが支持される旨を書いたが、デジタル化の加速でこのコロナ禍に躍進する企業群には今後も注目したいところ。


名店の灯がまた・・

さて、昨日の日経紙金融経済面には「消えた需要 老舗も降参」と題し、約230年の歴史を持つ東京・柴又の料亭「川甚」が今年に入って店を閉めたように、コロナ禍を背景とした政府の緊急事態宣言や外出自粛の長期化で宴会や観光客需要が消失などから事業の継続を経営者が諦め廃業や休業が目立ち始める旨が出ていた。

上記の川甚といえば利用した事はなくとも文学好きな向きならこれまで多くのの文豪たちに愛され、例えば夏目漱石の「彼岸過迄」、松本清張の「風の視線」、他にも谷崎純一郎などの小説にも度々登場しているのでその名前は知っているだろうか。老舗といえば過日銀座方面に行った際に152年の歴史を持つ「辨松」もまたこのコロナ禍の影響で昨年幕を下ろしたのを聞かされた。

他にもこの辨松の近所では作家の池波正太郎が好んで通っていた「銀座桜蘭」もひっそりと閉店、この手とは毛色が違うが同じ銀座では50年以上続いたあのアマンドも昨年末に閉店している。つい最近は30年以上続いたタカノフルーツバーもまた先月末で閉店したのも驚きだったが、いずれにせよ老舗の灯がこんなコロナのせいで消えゆくのは何とも忍びないもの。


新陳代謝の差

さて、先日私の友人が購入したテスラがはれて納車となったのだが、このEV大手テスラといえば先週末の日経紙には世界の上場企業約4万6000社の3月末の時価総額上位集計が出ており、主要IT企業GAFAの上位横並びと共に同社は1年前の81位から今年は8位へと大躍進を遂げていた。

これらGAFA勢は昨年の3位から首位に返り咲いたアップルを筆頭に2020年10〜12月期の純利益が最高益となるなどか収益力の高さが際立っているが、こうした背景があるにしろやはり驚くべきは米IT勢5社の時価総額が合計で約8兆ドルに達しこれらで世界の時価総額全体の7%を占める規模になっているという現実か。

以前に当欄でテスラの時価総額がトヨタ自動車の上鞘に出てからわずか半年足らずでトヨタ自動車含む日本を代表するトップスリーのそれをも上回った旨を書いた事があったが、改めてこうした勢力図を見るに主要株価指数構成の入れ替えにも見る事が出来るが如く積極的な新陳代謝がなされているか否か日米の積み重ねの違いを感じざるを得ない。


警鐘

先週は日経夕刊・注目ニュース番付にも出ていた通り米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの報が話題になっていた。レバレッジ取引において追証要請に応じられず、これに絡んでいた日本勢ではプライムブローカーカレッジ取引で野村HDが約2200億円、ほどなくして三菱UFJ証券HDも英子会社で約300億円、新年度になってからやれやれ?とみずほフィナンシャルグループも約100億円規模の損失可能性の発表と報じられている。

このアルケゴス、かつてパラジウムの買い占めで名を轟かせたあのタイガー・マネージメントの出身者の資産管理会社であるが、報じられているところによればそのレバレッジは常識からかけ離れた実に800%とも2000%とも伝えられている。ヘッジファンドなら斯様に無茶なレバはかけられないが詳細のディスクロが求められないファミリーオフィスだからこそ出来た芸当といったところか。

当初は先のゲームストップ株のように個人勢によるポジション狙いの投機的動きがトリガーになったとされ第2のアルケゴスも出ると実しやかに喧伝されていたようだが、それは兎も角も今回上記のような異常なレバレッジ取引が出来たのも金融機関が多額の手数料収入を目当てに取引も人物も高リスクな物に多額の与信を行った点は否めない。

規制・監督当局も事態を注視しているというが、過剰流動性相場が続きボラが大きくなっているなか金融機関のリスク管理体制が問われそこに焦点が集まれば今後金融規制強化の議論に繋がる恐れもあるかもしれない。あのリーマンショックからはや10年以上が経過、当の米では主要株価指数が揃って史上最高値を更新するなか「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の諺を改めて思い出させるような事件が今起きたのは何かの警鐘か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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