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止めるに止められず10年

日銀が金融緩和の一環としてETF(上場投資信託)の購入を決めてからはや10年になるが先週の日経紙・オピニオンには「日銀ETF購入10年の功罪」と題し、欧米の主要中銀は手掛けていないこの異形の金融政策の功罪について大手シンクタンクや元米財務次官など有識者がそれぞれの見解を述べていた。

今月に入ってからは1回あたりの購入としては新型コロナ感染拡大前と同程度に落ち着いてはいるものの、今年はこのコロナの感染拡大で3月にその購入額を年6兆円から12兆円に増額、1回の購入額も最大で2004億円まで増やした影響も出て中旬に発表されている累計では6兆2141億円と、従来の最高であった18年の6兆2100億円を既に上回っている。

ETF買い入れの額がここまで増加するとは開始当初は予想だにしなかったが、国債とは性格を異にし満期が無い分買えば積み上がるワケで今や日本最大の株主見通し論まで出るなかこれに付随する様々な副作用が議論の対象に挙がり、コーポレートガバナンスの重要性が謳われる一方これと逆行する政策の特異性が際立つ。

今週の金融政策決定会合においても日銀は引き続き現行の大規模緩和策を維持し新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した一連の政策対応も維持する方針を示すと見られているが、当欄で毎回書いている通りアフターコロナも睨んで出口戦略の具体的な在り方もいよいよ議論されてくるのか否かこの辺も気になるところ。


キメツノミクス

さて本日22日はアニメの日ということらしいが、アニメといえば今や社会現象になっているのがやはり「鬼滅の刃」か。その劇場版無限列車編は公開3日間で興行収入46億円と過去最高となり、また観客動員数も歴代1位に躍り出ている。ちなみに去年大ヒットした「アナと雪の女王2」の同初日から3日間の興行収入が約19億円、「天気の子」は約16億円であったから成る程これは凄い数字だ。

現在までの歴代興行収入ランキング1位は2001年の千と千尋の神隠しで308億円だが果たしてこれを超えて来るかどうかというところだが、これに乗っかる形で各企業は一斉にコラボを企画し今や数えきれないくらいその商品も其々が想定以上の数字を叩き出し、企業以外でも主人公に因んだ地方への巡礼等々でそちらも含めその経済効果は計り知れないとの試算も出ている模様。

斯様な状況から株式市場ではその関連株には一斉に物色の矛先が向けられ、週明けは本命の東宝が約1年の高値水準に買われ年初来高値を更新したほか、鬼滅関連の衣類販売を始めたジーンズメイトもストップ高まで買われ年初来高値を更新、他には関連グッズ販売を手掛けるエスケイジャパンやエディアも揃ってストップ高まで買われる破竹の勢いとなっていた。

このコロナ禍で映画業界も公開延期や密回避の入場制限などの憂き目に遭っていたところへこの救世主の登場、主人公の水の呼吸の伍の型では奇しくも「干天の慈雨」なる慣用句が使われていたがまさにそれといったところか。何れにせよこれら映画館の全面稼働はもとよりこれまでダメージの大きかった各所の経済効果を探る試金石となりそうだ。


BTS依存

さて、先週はK-POPの筆頭格であるアイドルグループBTSが所属する事務所ビッグヒットエンターテイメントが、韓国芸能事務所としては初めて韓国証券取引所に上場した件が話題になっていた。注目された初値は公募価格に対して約2.6倍となり、その後はストップ高まで買われるロケットスタートとなった。

個人の応募が募集枠の実に1100倍以上となっていた事で予想された過熱感だがこれで計算した時価総額はザラバで実に1兆円超、これは日本の同業大手アミューズやエイベックスの約20倍の規模というから正に名の通りのビッグヒットである。とはいえ韓国もまた過剰流動性が渦巻くマーケットだけに翌日は早速20%以上の急落の憂き目に遭っており鉄火場のセカンダリーに飛びついた向きもヤレヤレと言ったところ。

週が明けてなお連日の続落となっていたが、こうなると売上げの9割をこれから数年で順次兵役に就かなければならないメンバーに依存しているという構図も一気に不安の種になってくるというものだが、この上場で斯様な依存体質から脱却出来るかどうか調達資金の活用等がこの辺の鍵になってくるだけに今後が注目されようか。


空箱の是非

昨日はSBG株が米ハイテクセクターのコール大量保有の思惑に絡んで踏み雑じりの7300円まで買われ前週13日に付けた年初来高値ツラの展開となっていたが、同社といえば特別買収目的会社(SPAC)の設立計画について早ければ年内にも数百億円規模で米市場に上場させる見通しであることが報じられている。

このSPACなるもの上場時には事業実態の無い所謂「空箱」だが、未公開企業を見つけて買収し底を存続会社として上場させるもので上場までの期間や手続きを短縮し最短ルートを提供出来る点が魅力だ。米では80年頃からこの手法自体はあったが、例えば今年の7〜9月のIPOによる市場からの調達額のうち半分をSPACが占めるなどここ急増している。

同紙では著名アクティビストがSPAC上場で40億ドルを集めたと書いてあったが、これも当初は30億ドルであったものが応募殺到で切り上がった模様。出資者利益が買収成否に関らず担保される事で斯様な人気だが、間接上場を果たす事で裏上場とのイメージも付き纏うもののコロナ禍で逆風に見舞われた向きも同手法から起死回生の芽もある事などからIPO市場の下支えとしての地位を確立しつつあるか。


日本市場に商機

さて、先週末の日経紙投資情報面には「物言う株主の要求最多」と題して、所謂アクティビストが公にした日本企業への取締役の受け入れや株主還元の強化など新規の提案や要求の件数が、9月末時点で22件と既に昨年の19件を上回り年間ベースの過去最多を上回るなど増加している旨の記事があった。

この辺に絡んでは本日も東京ドームが香港の投資ファンドから社長ら取締役3人の解任を求める通知を受け取った旨が報じられていたが、主戦場の米市場に次ぐのが日本市場となっておりガバナンス改革推進で株主要求の通り易さが以前とは異なる上に、往って来いまで戻っていない株価も商機?と見て同頁にも書いてあったような自社株買い要求に並びガバナンス絡みの提案も増えている模様。

この辺はやはり日本企業の特徴として内部留保の厚さや企業統治改善の伸びしろが大きいところが背景にあるといえるが、株主と企業の攻防もかつて総会屋が蔓延っていたシャンシャン総会の時代とは全く違う意味で今後も激化してくるのは想像に難くなくこの辺の景色も隔世の感を禁じ得ない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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