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兆超え再び

さて、先週木曜日の日経紙一面を飾っていたのは「LINE、上場申請」の文字。このLINE、昨年の上場申請の際には注目度と時価総額の高さであのリクルートと共に当欄でも取り上げた事があったが果たして予定通り上場したのはリクルートの方で、このLINEは11月上場がいわれていたものの2ヶ月そこそこで上場見送り発表をした経緯がある。

そんな一件から新年度入り早々の再上場報道は株式市場でも関連銘柄に取っては格好の蒸し返し相場を提供することとなった。ザッと挙げても引けまで寄らずにストップ高比例配分となったアドウェイズ、それにエムアップやメディア工房もストップ高まで買われ、昨日年初来高値を取ってきているネットイヤーグループや本日年初来高値を取ってきているラクーン等々数多くの銘柄の急騰を誘った。

今後は当然ながらここから選別色も強まって来ることになろうが、なにせ月間アクティブユーザー数が約1億8,100万人、14年12月期売上高は863億円、その時価総額は上記の通り1兆円超えともされるだけに一過性の蒸し返しで終わる事はないだろう。また金融機関の入出金、株などの購入も視野に入れているとされるだけに業界としても今後の展開が注目されるところ。


IPO錬金?

さて今週気になったものとしては、一昨日に日本取引所が一部のIPO企業の上場直後の業績下方修正や不正発覚などが相次ぎ市場不信を招いている問題で緊急の対策を公表した件か。証券会社や監査法人と協力し上場時の業績見通しを開示する際に具体的根拠を示すよう企業に求め、主幹事証券にも上場時期が集中しないよう分散を求める旨の内容。

その記者会見では、「3ヶ月で決算数字を黒字から赤字にしてしまうなんて経営者としてはありえない」と直近で上場したスマホゲームのgumiがやり玉に挙がっていたが、取引所も通したでしょ?という疑問はさておき、確かにこれは上場後の株価といいディスクロといいまさに昨年のジャパンディスプレイを彷彿させる酷さであった。

そんなこともあって丁度一週間前の日経紙では、2015年のIPO銘柄17社のうち10社で25日の株価が初値を下回るなど低迷感漂う旨が書いてあったが、関係者の売り逃げも一部噂されるなどやはりセカンダリーが嵌め込みなど錬金場になるようなIPOは問題だろう。ちなみに今月のIPOは10社が予定されているが、新興市場にリスクマネーを供給する市場使命の裏でどう監督してゆくかが今後課題となろうか。


持ち合い解消促進

新年度入りとなった日経平均は日銀短観を受けて続落スタートとなったが、昨日末尾に書いたように2014年度の日経平均上昇率は約3割に上った。本日の日経紙にはこの間株価上昇を牽引した主企業が、値上げ力・訪日外国人増、高ROE・株主還元強化、米景気回復・大型投資の項に分かれて幾つか挙げられていた。

こうした事も寄与して大手銀行5グループと大手生命保険4社が持つ株式の含み益も2015年3月期末で、計18兆1000億円と前期末比で8兆円強増えその増加率は8割に達している。とはいえこうして含み益が膨らむ裏で、近年重視されるROE等の観点からは持ち合い株を保有する合理性が一段と問われるとも日経紙では指摘されている。

先に個別ではH2Oリテイリングが同業の高島屋株の売却を発表しているが、当欄でも先月に15年の変遷と題し「持ち合い合戦の呪縛から解放」と書いている。この辺に関しては再来月から導入されるコーポレートガバナンス・コードで持ち合いに関して中長期的な経済合理性を説明するよう求める件もあり、今後は持ち合い株の最後のあぶり出しが促進される可能性が高くなるか。


この一年

本日はとても暖かく何所も桜が満開となっているが早くも明日からは新年度、4月からはいろいろと変更点があり円安の影響もあって食品類の値上げも各種ある。ちょうど一年前は増税を目前にして彼方此方で駆け込み需要が見られたが、毛色の変わったところで金などもこの類で大手の田中貴金属は3月だけで販売量が前年同期比で5倍以上、石福金属工業も3月は前月比で6割も増えていた。

メタルと言えば本日の日経紙にはパラジウム相場が東京で約4ヶ月ぶりの安値水準になった旨が出ていたが、これも一年前にはウクライナ情勢絡めたロシアの生産への影響や南ア鉱山スト等の影響も重なりCBが発動されるほどの賑わいになっていたのを思い出す。

コモディティーはそれとしてストックの方も大証が大阪取引所として新スタート、またJPX400先物創設を表明したのもこの頃であった。個別ではロボットスーツを手掛けるサイバーダインが上場したのもちょうどこの頃、とこの一年でいろいろな姿を見せてきた株式市場だが2014年度の最終売買日は昨年比で4,379円高、その時価総額は129兆円の増加を見せた。来る新年度はどういった動きを見せるのか引き続き注目される。


ステークホルダーの答え

さて、当欄で「家具屋姫」として今月上旬に書いた大塚家具のプロキシーファイトを巡る騒動だが、先週末に有明で開催された定時株主総会は異例ともいえる注目を集め、周知の通り軍配は娘の社長側にあがり続投が決まることとなった。

この間まさに株価も含めて波乱の約1ヶ月となり、前回も当欄で書いたように父と娘それぞれの世代というかキャラを反映し舌戦を交えたドラマが展開されることになったものの、今回ほどステークホルダーと真摯に向き合う形になったのは創業以来の事ではなかったろうか?

株主総会直前まで大塚家具は新聞に折り込み広告を入れていたが、20日付けのチラシは「快眠ベッドコレクション」と題し、その下のブランド名にはシモンズ等の名門と並びフランスベッドの文字も見られた。同社は直前で会長支持を表明したが苦渋の選択だったのだろうか。ちなみに総会前日の26日付けのチラシのタイトルは「新生活をより素敵に心地よく」であったが、この主要な期である春商戦のエネルギーがこの騒動で消耗された感は否めない。

個人的な感想だが、時として顧客によって態度を変えるような慇懃無礼感漂うその接客姿勢は、一昔前に破綻した某航空会社のCA等にも見られたもので、こういうのが好きな向きにはそこそこ心地の良いものであったかもしれないが、この辺も上記の広告戦略と共に一新されるのか否か、今後の新体制が注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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