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地方への皺寄せ

昨日の日経紙夕刊一面には、企業間で複数の証券取引所に株式を上場させる「重複上場」を解消する動きが加速してきた旨が載っていた。本年度はこれまでに昨年度の29社を3割強上回る39社が新興市場を含めた取引所の重複上場解消を決めたというが、大きなところばかりが記憶にあったので改めて数字を見ると随分と多いものだなといった印象である。

この重複上場については当欄でも2年前に触れたことがあったが、その当時は1999年に1,042社あった重複上場が昨年には773社に減少した旨を書いていたが、その辺の動きが依然として加速しているという構図か。主因としてはやはり上場維持コストという問題になってくるがこの辺はMBOもまた然りといったところであろうか。

さてそうなると地方取引所も一段と厳しい状況になってくるが、好景気のときならいざ知らずこんな時世ではこうした流れは当然か。そういえば余談ながら業界でもMBOを実施したところあり、また地方市場とメインマーケットでトコロ相場を演じた経緯のある企業もあるが、この辺もゆくゆくは一本化の動きへ纏めてくるのかどうか注目したい。


円高と商機

さて、昨日は凪のような相場になってしまったJALを冒頭で挙げたが、それとは逆にこのところボラタイルな相場を演じているのはやはりソフトバンク株か。先週末からの急落のあと本日は一転して急反発を演じているが、イー・アクセスに続く矢継ぎ早の大型買収で最近は紙面を賑わせている。

しかし英ボォーダフォンのときの兆単位の買収もそうであったが相変わらずのレバレッジ買収は凄い。今回もボーダフォンのときとほぼ同額となるがやはり同社社長とは感覚の違う個人株主は戦々恐々、そんな投げもあって直近の株価急落からその時価総額は春先から差が広がっていたKDDIを一気に下回る場面も見られた。

数々の有言実行を成し得てきた氏だけに今回の決断が奏功するのか否か急変動の時価総額と共に注目されるところだが、こんな通信業界以外でも大型買収案件といえば最近は消費関連企業なども積極姿勢を取っている。レコフの集計によれば今年4-9月の消費関連企業のM&A金額は前年同期比51%増といい、やはりこの背景は円高が後押ししている部分が大きいとつくづく、現在水面下で交渉中の案件も近々表面化してくるかどうか今後に注目である。


鎖国継続?市場

本日も株式市場は方向感の無いまま円の弱含みを手掛りに辛うじて小反発となっていたが、先月に上場したJALも上場直後でこそ乱高下を演じたものの、先週からは日足で連日コマを描きすっかりとボラの無いおとなしい銘柄になってしまった。

ところでこのJAL、直近で証券保管振替機構が公表した資料で発行済み株式の約4割を外国人が保有していることが先に判明している。先の売り出しで海外割り当てが25%であるから再上場後の手当てとなるが、航空法によって外国人の議決権割合は三分の一未満に抑えなければならない所謂「外資規制」の問題で規制超過分は配当等一部失う恐れがあるという。

こんな規制は何も航空に限ったことでなく、この辺ザッと挙げてみても「放送法」、「電波法」、「貨物利用運送事業法」等々あり、数年前も英投資ファンドへのJパワー株式の追加取得中止勧告や、豪ファンドの日本空港ビルでもまた似たような経緯があった。他にもタイトなところでは証券取引所なんぞは外国人が議決権の五分の一以上の株式を所有出来ない事になっている。

近年では優先株の無議決権株式なども登場しているが、総じてこの辺に引っ掛かる物には半官・半民だったものが多し。当時諸般の事情があったのかどうか場当たり政策や天下り先確保の用が疑われる向きも多く、本当に民営化の必要性があったのかどうか疑問視される物も多い。海外と違ってスポーツクラブなども上場する素地は皆無で、グリーンメイラーのようなファンドならいざ知らず資本市場開放の流れに逆行した日本市場の鎖国性故の海外からの投資意欲を殺ぐことにならねばよいが。


理屈と現実

今週は東京国際フォーラムにて国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会が東京では1964年以来、実に48年ぶりに開催されている。そんなワケで有楽町界隈は交通規制なんぞで渋滞やら物々しい様も見掛けるが、金融会議といえば先週は大手町でニッポン金融力会議の第一回トップ・シンポジウムも開催された。

この辺に関しては連休明けの日経紙にも載っていたが、この中で某大手証券の社長など日本株は歴史的に極めて割安な水準と強調、メガバンク3行の株式配当利回り平均が4%前後なのに対して、銀行の大口定期預金金利が0.2%台であることを例に挙げ預金からメガバンク株に一定の資金シフトがあってしかるべきだと述べているがそんな言葉も虚しく只管低迷する市場を見るにやはり違和感は拭えない。

こんな理論から今こそ「投資の機熟す」・「貯蓄から投資」と同紙にはタイトルが踊っていたが、今まで何度も書いているように既にこんなところに魅力を感じて株主になる向きが居なくなってしまっているのが事実。東電やオリンパスやシャープに見られるようにかつてのディフェンシブ優良株は無残にも時価総額を急減させ、配当や優待を狙っても斯様に値下がりの代償がそれを遥かに上回ったり突然のファイナンス実施で暴落の憂き目に遭って退場、素直にアップルやグーグルを買って放置している方が遥かに報われているという向きは潜在的に可也居ると思う。

同会議ではメガバンク勢も「サービス顧客回帰」と述べていたが、金融商品をセールスする銀行も他では無料の投資等の商品に高額な販売手数料を当然の如く徴集し、覆面で潜入調査したリポート等を見るに金融知識に乏しい行員がリスキーな金融商品をホイホイ捌いている様子も窺える。

確かに金融業界は総じて顧客と企業が利益相反の構図になっている部分が多いのは事実だが、インサイダー等露骨に顧客の犠牲が糧になるような部分はそろそろ襟を正す時期に来ているのではないか。


ドサクサ紛れの転嫁

本日の日経紙には「惑う欧州年金マネー」として欧米を中心とする世界の年金マネーが長引く低成長・低金利で積み立て不足が深刻化している旨が載っていたが、同じ欄には日本でも過去10年の運用利回りの平均が2%と、加入者への年金給付に必要な予定利回りを下回る逆鞘状態と運用不振が深刻化している旨も載っていた。

斯様な情勢だけに高利回りに飢えた基金があのAIJ投資顧問の餌食になってしまったりする問題など勃発するワケだが、直近では長野県建設業厚生年金基金がこのAIJ投資顧問で企業年金資産の大半を消失させた問題に続き、未公開株運用でも多額の損失を被った旨が明らかにされている。この件では信託銀行、投資顧問もその責務に可也の問題があることが露呈された一件であった。

そんな責任放棄とも取れる行為が指摘されている中にはソシエテジェネラル信託銀行もあったが、数々の損失事件で表面化するパリバと共に何故かこの手に顔を出す頻度がフランス系は高い。まあ、その辺はともかくも上記のようなAIJ問題を引き合いにして最近は厚生年金基金制度廃止方針も出ていたが、誰が見てもおかしな理論でこの表現は混同甚だしいが近年堂々とこうした表現が増えてきているのは一寸不気味でもある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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