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株価も二極化?

さて今月は米ウォルマート株が上場来高値を更新してきたが、先に発表された同社の5-7期決算も既存店売上高が予想を上回り食品やヘルスケア関連など生活必需品を中心に堅調であった。そういった一方で米では節約志向が鮮明になりつつあり、不要不急の裁量消費の一部は我慢しようという二極化の動きが進んでいる模様だ。

この辺は株価にも色濃く表れており、上記のウォルマートの他にマクドナルドも先月には年初来高値を更新してきている一方で通期の予想を据え置いた高級志向のブルーミングデールズを持つ米老舗百貨店メーシーズや、米化粧品大手のエスティ・ローダーも米で高価格帯の売り上げが低迷し今月発表した2023年4-6月期の最終損益は20年4-6月期以来の赤字へ転落、株価も20年4月以来の安値を付けていた。

とはいえ富裕層に関しては株高による資産効果もあり堅調な消費が予想されるだけに振り切って高級に特化している仏エルメスや伊フェラーリ等の需要は安定的だと思うが、それ以外の層はパンデミックで急増した消費者の過剰貯蓄の取り崩しが進んでおり、加えて免除されていた学生ローン返済再開等も背景に今後の個人消費は不透明感が台頭する展開になるか。


初の1万円大台超え

本日、田中貴金属工業が発表した金の販売価格が1グラム10,001円(買取が9,886円)となり史上最高値を更新している。中国経済の減速懸念をはじめインフレ圧力が根強く残る米の金融引き締めが長期化するとの観測から日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いも続いていること等が背景だが、1万円の大台に乗ったのはこれが初の事である。

これでまたTVでは金製品などを中古品買い取り店に売りに来る客の姿を報じる光景が増えそうだが、売り急ぎが目立つ本邦勢とは逆にWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)がまとめたところによると4~6月の金地金・金貨の需要でトルコと中東が80トンと昨年2~3月比で2.7倍に増えている旨が報じられている。

このトルコといえばインフレのなか、足元で通貨リラの下落も止まらず過去最安値圏での推移が続いていることで国民が安全資産として主軸の金を買い進めている。後者の中東もエジプトなど先月の物価上昇率が過去最高となり、通貨のエジプトポンドも対ドルで1年半前に比べ半分の価値に沈んでいるなどトルコと構図を同じにしている。

所謂肌感覚で資産防衛の意識が染みついているといったところだが、各国中銀の純購入量も6月時点で2月以来、4か月ぶりの買い越しに転じている旨を上記のWGCが報じている。特に増加が目立ったところでは8か月連続で保有量を増加させている中国に、ポーランドやウズベキスタンも金買いを進めている模様で、この各国中銀の動きも引き続き注視してゆきたい。


ジャクソンホール会議閉幕

注目のジャクソンホール会議が先週末に閉幕したが、FRB議長は経済情勢次第で追加利上げをする可能性に言及したことで米債券市場では2年債の利回りの上昇が目立つ展開で日米の2年金利差は約5ヵ月ぶり水準まで拡大、これを受けて週明けの為替市場も円安ドル高が進行することとなった。

斯様に日米の金融政策の方向性の違いから日米金利差の拡大を材料にして円売りが続く可能性があり、投機的な円安になって来た場合の現実的な対応は円買い介入か金融政策の変更というところだろうが、一部外資系銀行では仮に日銀が更なる修正に動いた場合の円高インパクトは春先に予測したものより変動幅は小さくなるだろうとの試算だ。

一方で株式の方はタカ派寄りな内容だったとはいえ終点の見える打ち止め期待も交錯し米市場は上昇で反応、週明けの日経平均もこれを受け先週末から往って来い近い急反発を演じることとなったが、いずれにせよ次の焦点は来月のFOMCで来年末の政策金利などその経済見通しには要注目としたい。


都市部飽和状態の業界

ちょうど一週間前にクスリのアオキHDの株主総会が執り行われた。そこで見られたのは物言う株主のオアシス・マネジメントが創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなどの株主提案であったが、この光景は更にそのちょうど一週間前に執り行われたツルハHDの株主総会とほぼ同じものであった。

結果的にこのクスリのアオキHDの株主提案もツルハHDの株主提案も共に否決されることとなったが、オアシスの真の狙いはこの経営体制の刷新だけではなく業界の再編という見方が専らである。このドラッグストア業界で初の大型再編があったのは2021年2月のマツモトキヨシHDとココカラファインの経営統合であった。

このドラッグストア業界に絡んでは昨年当欄でもカインズによる東急ハンズ買収を取り上げた際の末尾で「これに限らずドラッグストアなど他の流通業界の再編も今後ますます加速してゆくのは想像に難くないか。」と書いていたことがあるが、ホームセンターよろしくこちらもオーバーストアが常態化している状況にあり常に再編の噂が絶えない。

ただホームセンター以上に各社の地盤や売りのカラーが違うところが厄介で、そういった意味では上記のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合などは本当に相性の良いマッチングであったのだろうと思う。ちなみに冒頭のオアシス・マネジメントはこのココカラファイン株も大量保有していた経緯がありちゃっかりと売り抜けにも成功しているが、自らが絡める再編の機会を虎視眈々と狙う動きは今後も続くか。


有報に見られる本気度

本日の日経紙投資情報面には「PBRが課題 最多44社」と題し、有報に示す経営課題の項目にPBRに関して記載する企業が2023年3月期決算の上場企業で44社と前期比で42社増え過去5年で最も多かった旨の記事が出ていた。この辺はひとえに東証による低PBR改善の要請を背景にして企業側が資本効率の向上等を目指す姿勢を明確にし始めた表れか。

業種別では平均PBRがそれぞれ約0.6倍、約0.7倍の「鉄鋼・非鉄」で記述する企業が業種全体の15%を占め最も多かった模様だが、昨日のM&Aの話で取り上げたTAKISAWAなど工作機械メーカーもPBR1倍を大幅に割り込んでいる銘柄が目立つ業種だ。他に万年低PBR業種といえば銀行業もあるが、この辺は構造的な違いから他と同じ括りには無理があるか。

とはいえ斯様な企業の本気度?からPBR1倍割れ銘柄は着実に減少傾向にあり、今年の期末で1121社あったそれは今月の上旬には1070社まで減少してきている。自助努力の自社株買い等では低PBR企業ほどバリュエーションが切り上がり是正が顕著であり、冒頭の通り資本効率の向上で水準訂正に動いた場合は指数に対する寄与度も大きくなるだけに今後も引き続き低PBR各社の動きに期待したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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