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善意

本日の大手紙では新入学シーズンを前に、ランドセルの製造・出荷がピークを迎えている旨が報道されていた。そういえば過日、某百貨店でランドセル売り場を見る機会があったのだが、昔は無かったパステルカラーは言うに及ばずゴールドやシルバー等のメタリック系やらクロムハーツ風の装飾を施した物あり、またメーカーも他業種ブランド等多彩な顔ぶれが揃っていた。

さて、このランドセルといえば周知の通り、漫画「タイガーマスク」の主人公等を名乗って児童擁護施設等へランドセル始めとしてその他プレゼントを寄贈する動きが年末あたりから話題である。ざっとだが47都道府県でその数は約300件近くにもなり、ちなみにランドセルは350個以上にも上ったという。

外国の知人と電話していた時にこの話題になり、何故日本人は匿名ばかりなのか非常に奇異に映ると言われたが、諸外国に比べると各段に遅れている寄付文化、秘するが美徳とか寄付は恥ずかしいとかの風潮もあるのだろうが、一部では最も時代性が出ている表現とする向きも居る。

しかしこういった施設の子どもたちへの支援は本来であれば行政の仕事、ばら撒きと言われた子ども手当てはこういった施設には支給されない。政府も漸く同額の補助金を出すようにするなど重い腰を上げたが、厚生省を動かすパワーがあったということだ。一方では双方向の継続的交流が必要だとする問題提議もあるが、幅広い年代をうかがわせるその内容に善意のうねりはまだ心底の優しさが残っていると安堵感も。実体験が社会で共有されつつ文化も変わると思うし、これら問題も日本の寄付文化を発展させるに必要な議論であろうか。


Moral hazard

さて年末からにわかに出ていた問題であったが、本日の日経紙には急激な円高・ドル安で多額の損失が発生している為替デリバティブを保有する中小企業が約19,000社に上ることが、金融庁が銀行に実施した聞き取り調査で明らかになった旨が載っていた。

この商品、パワー・リバース・デュアル・カレンシー債とフラット為替といわれているが、前者には金融機関の期日前解約権がついており、これは地方自治体や財団まで幅広く販売された。フラット為替は所謂為替先物予約で主に輸入企業等に販売されたが、抱き合わせで売った部分やら横並びの思惑もあったのだろうが想像以上に多くの企業が契約していた。

年末にも一度触れたがこうした影響で破綻するパターンも続出しており、昨年は26件と一昨年の7件から急増、この動きを受けて直近ではメガバンク等は本業は健全だが損失が大きい企業対象に資金繰りを支える為の新規融資を実行する対応策を検討する流れになっている。

現況鑑みるにこうした措置も避けられないなと思う反面、気になったのは当該企業からは世論を味方に融資だけでなく損失負担を求める声が出ているという点。今でこそ契約企業からみれば想定外?の円高になったのだろうが、フラット為替など当初に享受した為替差益を棚に上げて損失分は補填してくれとは虫のいい話だ。

相場の損失に「特例」と称して行政が介入してどうこうしたらこれはもうモラルハザードの世界。この分野は今迄散々日本固有の事情で物議を醸し出してきたが、自己責任のあり方が問われる昨今ラインの引き方には十分注意すべきであろう。


さまざまな教訓

さて、今週はあの痛ましい阪神大震災から16年を迎え、神戸市など各地では恒例の追悼行事が営まれていた。被災地の様子は今でも鮮明に思い出すが、マーケット関係では当日でこそ事情を把握し切れていなかった株式市場は小幅安の模様眺めに終ったものの、翌週は週明けから1,000円以上も暴落、これがあの有名な事件となったベアリングス銀行破たんにおいて止めを刺すことにもなった。

さて、この株式暴落といえばもう一つ今週はまた、あのライブドア・ショックがあった日から5年を迎える。この取引所機能がストップしてしまった事件から新興市場は暴落しマザーズ指数など直前の2,800ポイントからズルズルと長い下げ続け255ポイントの安値にまで急落し、新興市場の不信、不審、不振がその辺からダラダラと長引いたものだ。

ただこれも本日の日経紙マーケット面にて「新興市場、売買代金が増加」と載っているように漸く昨年の秋口くらいから一変してきている。ちなみに昨日のジャスダック、マザーズ主要2市場の売買代金合計は664億円と昨年4月23日以来約9ヶ月ぶりの高水準となった。

これには日経平均の上昇に伴って個人の信用余力が大幅に改善されたり、またJASDAQ-TOP20ETFの承認等も刺激になったりで、それなりに素地が整っていたというのもあるが、出遅れ循環という側面もあり再び主力系に物色の矛先が向かってきた時のその資金離散具合も注視したい。この5年間である意味新陳代謝も進み、今後はその背景となった規制等も絡めてこの復活が第一幕だけで終了してしまうのかどうか真価が問われよう。


商品関連株明暗

本日の日経平均は小幅ながら三日続伸となったが、このところ個人の信用評価損率も大幅な改善を見せ個別の材料株乱舞が止まらない。一方で主力の構成銘柄の方だが、ここ最近はブリヂストンがしばしば日経平均値下がり寄与度のランキングに登場している。

これに関しては本日もTOCOM市場でのゴムの急騰に見られる通り、天然ゴム価格の上昇を受けて今後の営業利益は伸び悩むとして野村がレーティングの引き下げを行ったほか、日興も弱気レポートをリリース等の動きがある。

同様にキューピーも食用油の価格上昇が嫌気されて冴えない動きが続いており、また先週末の1/15付け日経紙マーケット欄の「まちかど」では、バレンタインデーを前にして明治HD・森永・モロゾフ等のチョコレート関連企業の株価が騰落率で日経平均を大きく下回る旨も出ていたが、この背景にあるというのがロンドン市場先物で昨年33年ぶりの高値を付けたココアの高騰に加えて砂糖の高騰も影響しているという。

これらの動きは総じてインフレ懸念や世界的な天候不順による商品価格の上昇が業績を圧迫するとみられているところに起因するが、こんな背景から一方でストップ高まで買われるなどの急騰を見せているのは穀物商品指数のETF。この件はまた後述するがこんな株価の二極化はなんとも不気味である。


新興国猛迫

昨日の日経紙には「新・新興国」であるラオスで、上場2銘柄の世界一小さな株式市場が発足した旨が載っていた。初の株式文化スタートということで初々しいが、同所はKRX(韓国取引所)が49%を出資して売買注文の付け合わせや清算・決済など主要システムを全て提供している韓流市場という。

ところで取引所といえば先にWFE(国際取引所連合)が発表した統計によると、2010年の株式売買代金ランキングはトップがニューヨーク証券取引所で2位が米ナスダックOMX、3位が上海証券取引所となっていた。

さて、東証はというと3位の上海に注いで4位、これで09年に続いてアジアでは2年連続で2位であった。その東証の次に位置しているのが新興市場として活況を呈している深セン証券取引所であるが、下半期ではこの深センにも東証は抜かれておりその猛迫ぶりは際立っている。

国際金融市場としての地盤沈下がこのところ燻ぶっている問題だが、近年はMBOの増加や親子上場も少しずつ解消してゆこうとする機運もあり、この辺は国の独自の事情という点もありそうだ。ただ一部特異なオペレーションによって本来の新陳代謝機能がそがれてしまって来た部分なども問題であり、この辺はやはり今後も課題となるだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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