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日本独自の錬金術

本日の日経企業面にも出ていたが、帝国データバンクによればかつてマザーズに上場していたウエディングプロデュース業のモックがとうとうパンクしたとの報があった。

同社で記憶にあるのは、なんといっても東証が第三者割当規制について重い腰を上げる一因になったともいえる十回にも亘る夥しいファイナンスであったとも言えるか。二年前だったか株式併合と組み合わせ、可能枠増枠から本来の上限が殆ど意味の無いモノになった上に少数株主は実質地位を失った件も話題になった。

ちょうどこの頃といえば他の新興市場モノもこの手のファイナンスがある面流行まくっていたし、払い込み完了との報にも係わらず突然の中止発表もあったりでその度に市場も翻弄され、いろいろと個別ではキナ臭い噂話には事欠かなかったなと。

勿論、増資そのものは取締役会決議があれば会社法上認められるものだが、これらを箱にして錬金が行われたのも否めないだろう。機動的な資金調達重視もいいが喰い散らかしが出来るヌケ穴もまた多し、上場制度整備懇談会等もこれら実施した企業が今や大半が市場からその姿を消してしまっている事を重く見るべきだろう。


生まれた1671

本日は大証が金価格連動型上場投信に次いで第二弾目となる、WTI原油価格連動型上場投信(ETF)を上場させた。初日はTOCOMの連日の大幅高も手伝って?当初設定価格に対して4.5%のプレミアムが乗った格好になった。

このETF、先に当欄では5月に少し触れたもので管理会社がシンプレクス・アセット・マネジメント、信託受託者は三菱UFJ信託銀行、指定参加者は日興コーディアル証券と日興シティグループ証券となっているが、新制度導入後に商品先物に直接投資するタイプとしては日本初となる。

しかし昨年にリーマンが破綻し株式が低迷、連れて投信市場からも資金が流出する中でもETFへの資金流入は継続され異彩を放っていたが、こと個人投資家の存在感が際立っているとか。ちなみに今年6月迄の個人の売買金額シェアは外国人を上回る45%を確保、特に今や大証では個人が中核を占めるとか。

そんなわけで直近でもこの大証に上場する金価格連動型上場投信の売買高が7/30には大商い、一日の売買高としては07年8月の上場以来最大となった模様。信託報酬も低い上に機動性や掴み易い点などうまく奏功したのだろうが、CXの主力は長年個人であったがこうしたシェアの変遷を見ていると、商品取引所の御家芸というか聖域も既に侵食されつつあるのは間違いないところであろう。


消えた8735

7月ももう月末という運びだが、今月は8日だったか創業10周年という事で彼方此方の大手紙に載せたSBIグループの全面広告が印象に残っている。

さてその左側にズラリとグループ各社の名前が連なっていたわけだが、SBIフューチャーズの名前は何処を探しても既に見当たらなく、株式市場の方でも今週月曜日の最終売買を以って静かにヘラクレス市場から消えている。

同グループ率いるCEOコメントから時事に載ったモノを時系列でザッと挙げると、当初は「監督官庁は、投資家のための健全な市場を育成していかなければいけないという考えになってきた」とし、その後は「業界は土砂降りの状況」、07年3月期決算時には「真っ暗闇の中でシュリンクしている」とし、08年3月期には「土砂降り状態を抜け出すまで、あと一年かからないところまできている。この間に整理されるものは整理され、淘汰されるものは淘汰され、その中で生き残った会社がパイを分け合う」と述べてはいたものの、その後早々に自らが事実上会社整理の道を選択する結果になった。

以前にも書いたが今回撤退時のコメントは「国民経済に必要な市場だと思って参入したが、そうではなかった。監督官庁に業界を育てようという意識が感じられない」と失望した感を述べている。

確かに外側から見れば斯様にその矛先を向けたくなるのもわからないでもないが、しかし総括してみれば純に必要市場と思ってIPOしその期待を乗せて初日は17万円!という公開価格に対し倍以上の気配値切り上げとなった株価も、結局は業績の大天井を買った格好で株主責任も其れなりのモノに、縦しんば株主でなく委託者としても「24日までに反対売買を行いお取引を結了していただけますよう」と否応なしのお知らせでこちらは委託者責任か?彼らもまた後味の悪いモノが残ったのは否めないところだろうか。


値と質

昨日はSBI証券と楽天証券の手数料引き下げ競争の件について触れたが、インテリア業界でも飛ぶ鳥落とす勢いである大手ニトリの数回に亘る先行した値下げに続いて、昨日は「IKEA」(イケア)が来月から初の値下げに踏み切ると発表している。

このイケア、当欄では数年前に日本の特異とされる購買行動を読めるか否かが焦点になって来るかとして採り上げた事があったが、もっと別な背景からいよいよこの業界でも志向に対応した値下げ競争が口火を切ったような格好になったか。

インテリアなどは世帯数の伸びが鈍化しており、成長産業といい切れないだけに値段だけで勝負してゆくのも或る面賭けか。ましてや今迄ブランドの下に胡坐をかいて?元々が値段に見合わない品質で展開していた向きは、こうした勝ち組みに合せて申し訳程度値下げした程度ではそのお得感が一向に湧いてこないのは間違いないところだろう。

そんなわけでこうした現象も先行とか出始めの頃はいいとしても、彼方此方で挙って値下げ追随となるとそのうち割安感だけで売れなくなるのではないだろうかとの懸念も感じるが、まあ勝ち組みで波に乗っている向きは表面的なコスト勝負の中でもどう生き残るかの手段を知っている筈で、今後の勢力図に引続き注目である。


紙一重

本日は大証や中堅証券に交じってSBI証券の決算発表があったが、今月はこのSBI証券と楽天証券の手数料引き下げ競争がまた俄かに勃発した件があった。21日までの一週間で、実に計6回に亘ったわけだからすごい消耗戦である。

業界は戦々恐々で成り行きを見守るが、投資家としてはデイトレ組中心にこの手の露骨な競争は大歓迎だろうか。そうそう、デイトレといえば今月は早稲田の投資サークルOBのデイトレ集団が株価操作の疑いで証券取引等監視委員会が強制捜査に乗り出していた事も報じられていたなと。

しかし学生の投資サークルも活動のハシリの頃から比べると随分と今では成長?したなと感慨深いものがある。確かに法に抵触した点ではワキが甘かった部分こそあれ、こうしたデイトレで利を産めるテクは貴重ともいえる、商品なんぞこの手は日常茶飯事の常套手段であったし法解釈はホンの紙一重でどう使うか次第、一頃一部企業は人材発掘に善悪問わずこういった輩を狙っていた時期もあったのは事実。

また、FX利益の脱税ではないがこうした事件のその啓蒙効果は可也大きい。変な方向に憧れたら困るがこれで若手の関心がグンと投資関係に高まる部分もあろう、擁護するわけではないがもっと上手い使い道はあろうかと思う次第。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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