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売り子

さて地政学リスクの高まりを背景に国際指標となるNY市場の金先物価格は3月上旬の直近安値に比べて1割高い水準となり、1トロイオンス1,290ドル台と昨年11月以来の1,300ドル台に迫り東京商品取引所の金先物価格も約1ヶ月ぶりに1グラム4,500円を上回る高値を付けるなど金の価格が国内外で一段と上昇している。

ところで金といえば、先週はまたも韓国から重さ3キロの金の延べ板を足の裏に粘着テープで貼り付けて密輸しようとした疑いで大阪市職員らを逮捕した旨の報があった。当欄で最後に金密輸について触れた今年1月の末尾で、今年もこの手の事件モノも折に触れ紙面を賑せる事になりそうであるとしたが先ずはという感じである。

昨年に福岡で6億円相当の金塊が盗まれた事件もこのうち約4億円分が事件後に換金されていた事が先月明らかにされているが、この件も個人情報を隠し換金するためにグループが法人間の取引を装い経営者側も事情を知りながら名義貸しをした疑いが出ている。また末端でも振り込め詐欺の「出し子」ならぬ、所有者に代わり金を売却する「売り子」などの存在等も出てきており当局はじめ危機感は一層増してきている。


新陳代謝の街

先週末の日経紙夕刊の一面を飾っていたのは「大人の銀ブラ 再び」と題して、日本を代表する商業エリアの銀座が相次ぐ商業施設の開業や改装で変貌を遂げつつある旨の記事であった。周知の通り直近では旧松坂屋跡地に銀座最大の商業施設を謳う「GINNZA SIX」の開業を今週は控えている。

前々から東急プラザに負けず劣らず話題になっていたこの銀座最大を謳う施設は、地下6階地上13階建てでその売り場面積は実に約4万7千平方メートル、出店内訳も241ブランドの半数121店は日本での旗艦店の位置付けをしており、初年度は売上高600億円、来館者2千万人を目指すという。

当欄で銀座に触れることになるのは昨年6月に東急プラザ銀座を取り上げた時以来となるが、こうした新商業施設が登場する一方では併せて書いたマキシム・ド・パリ銀座が入っていたソニービル銀座が先月末に51年の歴史に幕を閉じ、プランタン銀座も昨年末に32年の営業を終え社名をマロニエゲートに変更し再出発している。

今から9年ほど前の当欄では街の変遷と題して「銀座は変遷著しく経済を肌で感じ易い街である」と書いた事があるが斯様に新陳代謝は継続している。20年の東京五輪も見据え、内外の観光客を呼び込むため今後も再開発やリニューアルは継続してゆくのは想像に難くないか。


イースター 2017

さて、明々後日の日曜日はキリストの復活を祝う春の祭日「イースター」である。例年エイプリールフールが終了すると各方面から届くDM関係はイースターに絡んだイベントや商品のモノが一気に増え、年々その数も増えつつある感がする。

百貨店・小売大手やTDRやUSJ等のテーマパークはいわずもがなだが、昨年の当欄で取り上げた卸中心のイメージが強かった仏ヴァローナも昨年は初のイースターエッグを売り出したのに続いて今年も限定商品を発売している。此処は有名パティシエによるイースターチョコアート展も主催しインスタ好きにはなかなかいい絵が撮れる穴場になりつつある。

各所の商戦を考察するに近年ハロウィーンからクリスマスまでの空白期を埋める商機の位置づけとしてボージョレヌーボーを担ぐ動きがみられるようになって来たが、これと同様にバレンタインデー・ひな祭り・ホワイトデーの流れからゴールデンウィークまでの空白期を埋める商機の重要イベントとして近年このイースターが位置付けられているのは想像に難くないか。


意見不表明

さて、これまで監査法人からの承認を得られず2度にわたり昨年4月から12月までの決算発表を延期してきた東芝だが、周知の通り昨日は監査法人から承認を得ないまま「意見不表明」として決算の発表に踏み切った。上場企業決算は監査法人承認によって信頼性が保たれている為、承認を得ず発表するのは極めて異例のこと。

今回は監査法人への不信感からまた延期してもいつ合意出来るのかわからず、前例のない3度目の決算発表延期要請となれば上場廃止の懸念も強まる事で監査法人の適正のお墨付き無しで発表に踏み切る事を決めた背景があるが、東証関係者は「夏休みの宿題を白紙で出すようなものだ」と厳しく批判、特設注意下で暗雲漂う。

ところで東芝株といえば先月にはシンガポールの投資ファンドであるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、発行済み株式の8.14%を取得し筆頭株主に浮上した事が関東財務局に提出した大量保有報告書で明らかになっているが、今月に入って先週末にはこの投資ファンドが同社株を追加取得した事も明らかになっている。

ディフェンシブポストの雄だった東電からシャープまで近年は東証一部の名門企業でも破綻懸念に晒される事例が多くなったが、これから本決算発表に加え資金繰りから事業売却等々超えなければならない壁が数多控えるなか、政府や銀行団から投資ファンドまでそれぞれの思惑を乗せどういったランディングになるのか注目が怠れない。


電子化の波

さて今月のあたまには臨時株主総会について少し触れたが、株主総会といえば先週末の日経紙には「株主総会 電子化じわり」と題して、東証一部企業の半数近くがインターネット経由で議決権を行使できる仕組みを導入、これによって行使率が前年から増えてきた企業もある旨が書いてあった。

電子投票は一昨年のコーポレートガバナンス導入によって加速してきたが、株式関係の電子化といえば8年前からスタートした株券電子化の時は一寸した衝撃であった。これによって破綻株券コレクターや街金の一部業務等々には支障が生じるハメになったが、一般的ではそれらを凌ぐ紛失・盗難からの解放、発行体側もコストや作業軽減等々になったのはいわずもがなである。

今となってはこの一昔前の株券電子化も随分と前の出来事にも感じてしまうが、今後は斯様に電子化もこの議決権だけではなくインターネットによる招集通知の発送などにも広がりそうで、今後も株主・企業双方の負担軽減を目指して電子化が加速してゆくのは想像に難くないか。


短期志向

週明け本日の日経平均は円高ドル安の一服を手掛かりに買戻しの動きから続伸となったが、先週は米軍がシリアに対してミサイル攻撃をし、各地ではテロめいた事件が起きるなど地政学リスク等の台頭から為替市場ではリスク回避の円買いが進行、株式市場からは資金が流出し投資家の目は安全資産とされる先進国債券や金に向かった。

為替は110円台まで急伸し日経平均は急反発の動きから値を消し一転してマイナス圏に沈む事となったが、オプション市場ではプットの総売買高が昨年の米大統領選の波乱があった昨年11月中旬以来5ヶ月ぶりの高水準となり、PCRも1.30倍と1年半ぶりの大きさだった3月9日の1.31倍水準に並ぶなどまたぞろ下落リスクへの備えの動きが出て来た。

生保等の手当てが目立った180プットなど本日は日経平均反発でプレミアムが先週末の半値以下の水準まで売られていたが、個人物色の活発なETF市場でも先週末の日経レバの商いが膨らみ売買代金は今年最大になった旨も日経紙に出ていた。

上記のデリバティブなど機関投資家のヘッジの用以外にも前後場で倍化する機会の増えてきた近年では個人が一発狙いの単発でエントリーするケースも多くなり、またETFもレバ型の商品多様化から個人の選択肢が飛躍的に増えている。出来高の爆発的な増加で先物等への波及効果も善し悪しだが、個別の回転日数低下と併せ総じての短期志向は先行き不透明感の高まりを如実に表している。


出足順調

さて、ちょうど一週間前の先月30日には「スシローグローバルHD」が再上場を果たした。このスシロー、知名度もあり8年ぶりの再上場という事でそこそこの注目度であったが、蓋を開けてみれば約200万株の売り気配でスタートしその初値は公開価格の3,600円を4.7%下回る3,430円と冴えないスタートとなった。

公開規模が760億円と大きく、そもそも公開価格も仮条件下限で決まっていた事や同じ日に上場した旬なAI関連の「ユーザーローカル」の人気に資金が流れた事も影響した感は否めないか。とはいえ今年公開価格を下回ったモノは同社と「マクロミル」の2社のみで、他は同じく上記のユーザーローカルや「ほぼ日」等25社が大きく公開価格を上回っている。

斯様に今年のIPOの出足は順調で、日経紙によれば1〜3月に上場した企業数は前年同期から約2割増の27社と07年の43社以来の多さという。当欄では約ひと月ほど前にIPO企業の業種の多彩化を書いたが、これらを映してか過去1年間に上場した銘柄の値動きを示すQUICK IPOインデックスも約10年ぶりの高水準で推移、今後のIPOと併せ上場ゴールが死語になってゆくか否かその推移が注目される。


東西の雄

さて、本日からオリエンタルランドでは運営する東京ディズニーランドの大規模な改装に乗り出している。この大規模再開発では映画「美女と野獣」や「ベイマックス」をテーマとする大型施設や新アトラクション、ミニーのグリーティング施設等を整備し2020年春のオープンを予定しているという。

ところでテーマパークといえば今週初めにはこの東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの東西2大テーマパークが昨年の入園者数を発表しているが、TDRが前年度比0.6%減の3千万4千人と2年連続減少となった一方でUSJは同約5%増の1,460万人と3年連続で過去最高を更新と対照的な結果となった。

TDRは天候事情にも左右されただろうが、さすがにライブや限定アトラクションを矢継ぎ早に打ち出すUSJを横目に些かのマンネリ感は否めなくなってきたか。目先では昨日から新キャラも投入したイースターイベントが始まっているが、やはり開業以来最大規模といわれる投資額750億円という今回の改装はTDSの180億と併せ大いに注目されるところ。


それぞれの船出

新年度の仕事始めとなった昨日は主要企業が一斉に入社式を開き、TVのニュース等でもこの辺の様子が多く流れていた。前向きな訓示で華々しく門出を祝う向きもある一方、昨年不祥事や経営問題で揺れたところなどはトップが信頼回復や反省を口にするなど各々明暗を分けていた。

企業によってはこのビッグイベントの前に臨時株主総会というもう一つのビッグイベントがあったところもあるが、新卒採用中止の東芝等はかつてお家騒動で揺れていた当時の大塚家具なみの話題を集め、幕張メッセで開催されたそれは果たしてというか総会屋ではない怒号の飛び交う総会となった。

他にも創業者と経営陣の対立で物議を醸し東芝と共に話題になっていたクックパッドもツイッター等で騒がれていた模様だが、世の環境としては妊活・育児からLGBTまで近年では働き方改革も進みつつあり各企業もそれに対する姿勢もまた問われている。改革で何が変わり新社会人もこの辺をどう見てゆくのか各々の想いを乗せ今年もスタートである。


贈答文化

昨日の日経紙一面を飾っていたのは「株主優待バブル過熱」の題名で、自社製品等を株主に贈る株主優待を導入する企業が続々と増えている旨の記事であった。実施社数は1,300社を超え実に上場企業の3社に1社が実施する現状であるが、配当重視の機関投資家等は不満を強め行き過ぎの弊害を指摘する向きもあるという。

株主優待といえば直近でもちょうど2週間前にマツコが司会の深夜のTV番組で株主優待マニアを取り上げた放映があったが、ココで取り上げた企業の優待狙いクロスが逆日歩責めに遭い44,000円相当の獲得コストが84,000円に跳ね上がった旨も書いてあったが、この辺の事情は当欄でも先月中旬に取り上げている。

こうなってくるとモノによっては繋ぐより二階建だろうとも思える銘柄も出てくるが、その辺は兎も角も優待品の中身がこれまで首位だった食品を抜き金券・ギフト券が最多になった模様。過ぎたるは猶及ばざるが如しなのかこの辺に警鐘を鳴らす動きなどを見るに最近ふるさと納税の返礼品価格上限を3割と要請した総務省が思い浮かぶが、誘致途上の匙加減が難しいのは何所も同じである。


ブランドの壁

さて、今週あたまの日経紙広告特集にはセイコーウォッチ株式会社のグランドセイコーの歴史を辿った広告が織り込まれていたが、今月に入ってからというもの新聞紙上でも同モデルの五段前後でのカラー刷り広告をよく見かけるようになった。

セイコーウォッチ株式会社といえば直近で創業家の現社長が代表権のある会長に就く社長交代の人事を発表、先週末の日経紙では「スイス時計と勝負」と題し抱負を述べていたが、文中には機械式高級時計の代名詞であるスイス勢をどうしても超えられない壁があるとも書いてあった。

スイス勢に伍してゆくとはいうものの、当のスイス時計産業は中国人等の爆買いの衰えで昨年の輸出額は2年連続で減少、その下げ幅は09年以来7年ぶりの大きさという。ちょうど一週間前からスイスでは「バーゼルワールド」が開幕したが、上記の環境から各社は価格帯を下げたモデルの拡充などで需要喚起に躍起になっているのが現状。

今週頭に取り上げたTASAKI然り斯様な状況の中でどうブランド価値を向上させてゆくかだが、確かにモノはこの上無く素晴らしいのに廉価から抜け出せない上に選ばれるのは欧州勢というのが本邦勢の特徴なのは長年否めぬ事実。あのパロディー製品でドタバタ訴訟のフランク・ミュラーは創業から30年にも満たず、超ハイブランドに昇り詰めたリシャールミルに至っては創業わずか16年。この辺をどう見るか、本邦勢には永遠の課題となりつつある。