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必要悪?

本日の日経平均は原油高に加えて円安進行から大幅続伸となったが、先週末の日経紙には「株の高速取引実態監視」と題して、同取引が急激な相場変動に繋がっているとの指摘を踏まえて、金融庁が実態把握に乗り出し新たな規制導入を視野に年内にも方向性を打ち出す旨も載っていた。

HFTに対する規制議論に関してはといえばもうかれこれ6年前くらいから当欄では取り上げているが、IPO延期騒動があった末に昨年上場にこぎ着けた米バーチュ・フィナンシャルなど、2009年から2013年までに同社が出した損失が1238日中わずかに1日だけだったと開示資料で驚愕の内容を出していたが、こんな無敗実例はもはや投資や投機の枠でないだろう。

市場でフラッシュクラッシュなど起こる度に同取引が犯人扱いされて久しく、これらの増加に比例し通常の数十倍もの取引データが流れ込んで起きつつあるシステム障害等もまた然り。今やHFT業者はレイヤリングやクォートスタッフィングなど駆使して成長し、時折監視委員会から「見せ玉」などと判断されて摘発される連中が本当に哀れに思えてくる。

とはいえ市場が大きなショックに見舞われる中でも、こうした向きが受け皿となってリクイディティを提供している部分は否めず過度な規制は時代に逆行するとの意見もある。日進月歩でシステム刷新が進もうが、上記の如く一般投資家に恩恵がおりてこない機会不平等問題と対峙する中で均衡を見出すのは非常に難しい問題だろうか。


思惑交錯

さて原油相場が今週も堅調スタートで、週明け11日のニューヨーク原油先物相場は17日にカタール・ドーハで開催される会合で産油国が「増産凍結」で合意出来るとの期待で2週間ぶりに1バレル40ドルの大台を回復している。もうはまだなりの如く意外に堅調だが、需要が低迷する中それぞれの思惑も交錯し不透明感も依然強い。

いずれにしても会合をにらんで懐疑的な見方も入り混じっての思惑先行でボラタイルな展開になろうが、CTAやヘッジファンド等の投機資金はETF等からの流出が目立つ展開となっていることでトレンド形成とはなっていないとの指摘も一部にはある。

ところで昨年のTOCOMの売買高は前年度に比べて13%増となった模様だが、背景にはこの原油の寄与が大きいだろうか。中盤から上場したゴールドスポット100も寄与しているものの、特に1月、2月の原油売買高は14年前半までの実に10倍増となっている事でやはりETN等の存在は侮れない。

この勢いに乗じて使い勝手のよいオプションなどあればリクイディティも確保出来そうな感じがしないでもないが、そんなことを想うにつくづく大証225オプション市場がスタートした当初を思い出してしまう。


引き際

先週末にはセブン&アイHDがアナリスト向け決算説明会を開催していたが、日経紙一面でも報じられていたように20年以上にわたってグループを率いてきた会長の突然の引退表明で周辺がザワついている。会長人事案が否決された責任を取った格好というが、カリスマ退場に各流通業界トップにもショックの声が上がっている。

土曜日の日経紙・春秋の末尾には「経営者の引き際は難しい」としてダイエー、セゾン、そごう等の名が挙がっていたが、前者は過剰債務の責任を取る形で退任し後者のそごうは逮捕という形で退場と何れのカリスマ経営者も厳しい幕引きが記憶に新しい。もっと広義で見れば大塚家具もそうだっただろうが、人事案含め最後まで事業にコミットしてしまうところは共通事項か。

しかし或る意味取締役会で今回の事案が否決されたという事は、ワンマン?に対する統治機能が社外取締役含め働いたという事にもなるか。コーポレートガバナンスが云われて久しいが、今回の騒動はこれが形ばかりのものではなくファンド勢含めた株主らに説明責任を果たせるかという点でガバナンスが効いた事例ともいえようか。


物価優等生返上

さて、新年度入り1日の日経紙では、値上げのCM歌詞を掲げたあの「ガリガリ君」で有名な赤城乳業株式会社の全面広告が載っていて非常に印象的であったが、世界的な食品需要の変化や物流費の高位安定、原材料やスティックなど包装資材の需給ひっ迫と価格の高騰等が重なり実に25年ぶりの値上げという。

他にもこの新年度から値上げになる身近なものはザッと挙げてもトマトソースからサントリーのウイスキー、煙草からディズニーパスポートまで多数ある。また上記のガリガリ君の25年ぶりの値上げとほぼ同じく、実に24年ぶりにこの4月から値上げをするものに「塩」もある。

物価の優等生的存在であった物が近年次々とそれらを「返上」してきているが、その代表格であった卵の値上げを当欄で挙げたのが約6年前、3年前にはヤクルトの22年ぶりに値上げを取り上げ、昨年はジョアの23年ぶりの値上げや永谷園の25年ぶり値上げも取り上げた。デフレ脱却を謳う政府には望ましい事なのだろうが、今後も粛々と各方面で進行してゆくのかどうかが注目される。


倣う銀行営業部隊

さて、週明け4日の日経紙金融面では「大手行が投信営業改革」と題して、りそな銀行が投信の販売手数料収入よりも顧客の運用残高を増やした社員を評価したり、三井住友FGは分かり易い商品の情報提供などをグループ各社に求める指針を作るなど大手銀行が資産運用業務の営業改革に乗り出す旨が載っていた。

投信といえば長年営業にとっては転がし易くノルマ商品の代名詞的存在であったが、証券会社に倣えで銀行も挙ってこれの販売に注力してきた経緯がある。こうした過程で複雑な二階建て、三階建てのデリバティブ商品も投入され、販売している行員でさえ仕組みが理解出来ぬままハイリスク商品の特性で後に問題になった例も多かった。

そういったところから上記のような改革案も出てきたのだろうが、この投信も近年では値下げの波が広がっており中には無料を謳う投資家目線の物も少なくない。日銀のマイナス金利政策の導入でこうした部分もますます重要となるなか、長期運用を育む切っ掛けにもなるか否かその姿勢が注目される。


IPO変調

本日も円高が重しになって、日経平均は今年の大発会再来ともいえる実に6日連続安と冴えない展開。地合いの悪い中でもインバウンド関連としての注目度が高まり、連日のストップ高とひとり気を吐く展開が続いていた先週にIPOしたばかりのエボラブルアジアなどもさすがに年初来高値を付けた後は急速に値を崩す展開となった。

ところでこのIPOといえば、先月は一気に6社が新規上場する日があったがこれはリーマンショック前の2007年2月以来の事。うち3社の初値が公開価格を上回った一方で2社が同価格を下回り残り1社は変わらずであったが、それは兎も角も相場の軟調展開も恒常的になるとこの手も荷もたれ感が出てくるというもの。

さて国内では斯様に企業のIPO意欲が高いものの、明けから3月に世界の取引所に新規上場した企業は前年同期比4割減った旨も先月末の日経紙投資情報面に出ていた。上場準備の期間等の長さから相場環境にあまり左右されないという部分もあるが、初値パフォーマンスの悪化など重なってくれば企業側の姿勢にも変化が見られるかもしれず国内事情として注視しておきたい。


新年度相場

先週末の新年度入りから大きくつまずいた新年度相場だが、週明けの本日も軟調展開となりこれで5日続落である。今年は大発会から大幅な株安に見舞われその後の波乱相場が記憶に新しいだけにその再来を彷彿する向きも出てきたが、振り返ってみると結局15年度は円高・株安の展開であった。

上海株安をきっかけにした中国の景気減速懸念から比較的低リスクとされる円に投資マネーが逃避し、利上げをスタートさせた米の追加利上げシナリオも当初から想定していた通りには進まないとの見方が強くなり円安・株高の構図の巻き戻し現象から上記のような展開になり、チャブつき相場に苦労した向きも少なくなかっただろう。

今年はそんなワケで冒頭のような悪夢の再来を予想する向きも居る一方で、新年度初日の日経紙では夏の参院選をにらんだ景気対策への期待や堅調な米国景気から再度円安・株高に戻ると予想する見方も出ていた。4月は平均上昇率が月の中でも高いというアノマリーもあるが、新年早々ボラの激しさを見せたマーケットだけに何れにせよ目が離せない展開が続くことになるか。


イースター彼是

さて、先の日曜日はキリストの復活を祝う「イースター」であったが、春分の日を過ぎると各所でこのイベントに向けた動きが見られた。とはいえ「ハロウィーン」でバカ騒ぎしていた向きもイースターとはいったいなんぞやと意味もわからずこちらは今一つ乗りきれないという輩もまだ多いか。

しかしながらハロウィーンがあのバレンタインをも凌ぐ経済効果を上げ始めた実績から、各社も近年これに照準を合せて彼是商機に繋げようとする動きが顕著である。国内の大手食品・飲料各社は挙ってイースター関連を売り出し、ホワイトデーの前には卸専門のイメージだった仏ヴァローナがイースターエッグを初めて売り出したのも新鮮だったが、他にも漆器の山田平安堂まで和風イースターを掲げ兎モチーフの品の案内が来ていた。

こうした重い腰を上げ始めた各社の動き以前からTDRあたりはいち早くこのイースターに着目したイベントをやっていた経緯があるが、此処は更に前からハロウィーンイベントを打ち出しその定着の立役者となっただけに、双璧の西のUSJも数年前からイベントを開催するに至っている。

流行の形成もその波及力如何でまた異なったものになって来ると思うが、ちょうどこの期はGW前の消費控えもいわれるなか、経済効果の胸算用から花見と並ぶ春の催事に育ってくるかどうかその関心も高く各所の腕の見せどころとなろうか。


意識付け

昨日の日経紙企業・消費面には日清食品ホールディングスが、同社の株価動向によって提供メニューを入れ替える社員食堂を東京本社に本日オープンする旨が載っていた。身近な社食で株価によって豪華と質素なニュー提供から、社員に企業価値の向上について意識付けする効果を狙うらしい。

株価に連動した企画といえばこれまで某ホテルが日経平均終値プランをやったり、小僧寿しが日経平均終値が前日より上がった場合に中トロを無料で提供するプラン、また大丸東京店なども日経平均終値が高くなれば値引きする株関連動バーゲンなるものを展開した事があったのを思い出す。

ただ日清食品の場合はこの手の商いカラーとは違ってなにやらストックオプションの社食版のような感じもしないではないがランチだけに可也緩い企画か。とはいえそのストックオプションも近年ではバイトなど末端の社員に至るまで権利を配る範囲を広げた例もあり、各社企業価値向上の意識付けは工夫を凝らす例が増えてきたのを実感する。


逆日歩増加の季節

本日の日経平均は3日ぶりに反落とはなったものの、前場にはプラス圏に浮上するなど配当落ちの影響が130円弱と見られていた事を考慮すれば強かったと言えようか。斯様に本日は3月期決算企業の権利落ち日であったが、権利付き最終売買日までのオペ等もあって本日の日経紙には逆日歩銘柄数の増加が書かれていた。

こんな逆日歩が意識されるのも配当や優待取りを巡ってのクロスの影響だろうが、優待狙いが高くついてしまった珍事も過去多くあった。例えば話題になったところでは東京ドームの観戦指定席欲しさに数万株を繋いだところ、逆日歩で数十万円のコストがかかってしまったという残念な話など幾つもある。

金融誌やらネットやらでニワカ評論家などが金太郎飴の如く安易なクロスを勧めてきた弊害もあろうが、貸借倍率も読めない向きや制度信用しか知らぬままマル信に手を出す動きが増えればその分それを利用しようとする向きも増える。ヘッジ回避手段も多様化してきた今は様々な選択肢を活用したいもの。


縦割り行政の弊害

当欄では先週火曜日に、日本取引所が17年後半には清算システムを12年ぶりに全面刷新し金利先物などデリバティブ拡充を目指す旨などを取り上げたが、本日の日経紙金融面には「日本取引所、品ぞろえ強化」と題して、上記に絡みデリバティブを増やし株式関連の依存度を抑える事でより安定的な収益拡大を狙う旨が載っていた。

取引所と言えば足元ではLSEグループとドイツ取引所が経営統合に向けての交渉中だが、このドイツ取引所など営業収益の40%強をデリバティブで稼いでいるし、かつてこのドイツ取引所と一度縁談のあった経緯のあるNYSE(ニューヨーク証券取引所)を傘下に持つICE(米インターコンチネンタル取引所)も30%強をデリバティブで稼いでいる。

翻って本邦のそれはわずかに20%弱にとどまり、50%を超える現物株依存の構図はやはり否めない。政府は総合取引所の実現を成長戦略の一つに掲げ、これももうそろそろ10年近くになるが縦割り行政の弊害で実現期待の掛け声も年々虚しさを感じるようになって来た。一部証券系シンクタンクなどTOCOMの脆弱さを引き合いに現実的な選択でJPX主体の市場創設を推す向きも居るが、関係当局の協調は焦眉の急となっている。