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ピンポイント消費

さて、今朝見掛けたTVでは最近のインバウンド需要の傾向をかつての「爆買い」から、「錦鯉」や「ウイスキー」から「ニッカポッカ」等々に狙いを定めてくるというような所謂ピンポント消費の傾向になってきている旨の報道が為されていた。

とはいってもこの辺は以前より世界中のシェフが挙って買いに来る「包丁」や、上記の錦鯉よろしく生物では「秋田犬」から上記のニッカポッカのようにファッションとして注目されている「ランドセル」や「着物生地」等々、一寸思い返しただけでも幾つも過去に報道されていたような気がしないでもない。

ともあれ爆買いの勢いに陰りが出始めホテル稼働率等の数値はそれを如実に表し始めている。日本経済新聞社がまとめた8月都内主要18ホテルの平均稼働率は、79.2%と前年同月より6.2ポイント下がり低下は実に7ヵ月連続となっており、割安プランの販売強化が各所で目立ってきたという。

また、首都圏ほどではないにしろ大阪・名古屋でも稼働率低下が目立つというが、当欄では東京五輪も睨んだ高級ホテル競争について7月に触れたばかりであり、ここからの局面で外資系含めた各社政策にブレはないのか否か引き続きインバウンド動向はこれら稼働率等睨みつつ見てゆきたい。


相互インスピレーション

さてここ一週間で気になった報としては、長らく作者不明とされてきたオランダのライデン国立美術館所蔵の6枚の絵が江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎の肉筆画である事が同博物館の調査でわかったという件か。親交があったドイツ人医師シーボルトから影響を受けた作品群とみられるが、西欧の水彩画技法を真似た異色の作品とか。

葛飾北斎といえばこの間久し振りに会ったピアノ講師をしている知人女性と逢った際にも、ドビッシーが浮世絵が好きで自身の交響曲「海」の楽譜の初版表紙には此処からインスピレーションを得たとして、北斎の富嶽計三十六景の第二十八景[神奈川沖浪裏]を使用、自室にも同じ北斎の絵が飾られていた云々の話をしたばかりであった。

また、印象派の画家も浮世絵に影響を受けた向きが多く、例えばエドガー・ドガは「北斎漫画」を参考にした人物像を描いた事で知られているが、この「北斎漫画」を用いたのはこのドガだけではなく、アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家のエミール・ガレもまた「北斎漫画」の鯉を図案に入れた花瓶を世に送り出すなど挙って自身の作品に浮世絵の要素を取り入れていた。

斯様に世界中の多くの巨匠にインスピレーションを与えてきた北斎も今回の件で同様にまた西欧技法からインスピレーションを得ていたという事が窺える話だが、いずれにせよドビッシー然りドガ然りこの頃のパリの東洋趣味を象徴する話と併せアートの世界は時々こうしたエピソードが舞い込んでくるから面白い。


サイダーの甘い匂い

さて、以前の当欄でも触れていたが今月上旬には東証マザーズ上場の「ALBERT」株の公表前の業績予想を保有する親族らに伝え、損失を回避させた等として金商法違反に問われた元会長の初公判が開かれ起訴内容を認めた旨が報道されていた。

インサイダー取引といえばもう一つ先月も「みんなのウエディング」株でクックパッドによるTOB情報からインサイダー取引をしたとして兵庫県の男性が証券取引等監視委員会から課徴金納付を命じられる件もまた明るみになっている。

更に先週報道されたものには、TOCOMの元市場取引監視委員会委員長を務め同所取締役も務めた元大学教授が、知人の上場企業幹部から得た未公表情報を基にインサイダー取引をして1千万程度の利益を得たとし証券取引等監視委員会が強制調査をしている件もある。

不正な取引を監視する市場取引監視委員会の元トップというのがなんとも皮肉な話だが、斯様にインサイダー情報の甘い匂いに誘われウッカリ手を出しバレてしまう輩は後を絶たないが、本邦の市場もソコソコの利益を得てしまうような取引においては一昔前から比べるに摘発率が格段に高くなったなと感心することしきりだ。


ななつ星上場

本日は先のLINEに次ぐ売出価格4,160億円という大型IPO案件でもある、九州旅客鉄道がはれて上場の運びとなった。差し引き2,000万株以上の買い気配から始まり、注目の初値は9時半過ぎに公開価格2,600円を19.2%上回る3,100円となり、ほぼこれを高値としてあと若干ダレる展開で引けた。

当欄では7月のLINE上場時に年内のIPOで個人に身近な企業で注目を集めそうな物としてこのJR九州を挙げていたが、この日の売買代金は2,736億円と東証一部全体の約13%を占めただけあって、騰勢を誇っていた直近のIPO銘柄群は換金売りの余波か値を崩すモノが散見されマザーズ指数も4日続落となっていた。

国鉄分割民営化では不採算路線を持つお荷物的な存在でIPOはほかのJR3社に随分と遅れをとってしまった感があるが、こうした上場の瞬間を見るにやはり感慨深いものがある。運輸というカテゴリーで見るより同社は不動産ポストといった見方をした方がよいと思うが、いずれにせよ上記JR3社よろしく長期的に株価が育つのか否か今後が注目されよう。


BCP

先週末は鳥取県中部で震度6弱の揺れを観測したとの報が舞い込み、既に住民からの家屋の被害届が1,500件を超す事態となっているが、先の熊本大地震から半年そこそこで再度列島がザワついている。

この手の災害の報が出る度に首都圏でも主要インフラに対する事前対策が話題になるが、奇しくもこの日の日経紙投資情報面には「東証を大阪から遠隔操作」と題し、日本取引所グループが首都圏直下型地震など大規模災害に備えて、2018年3月期中に東京証券取引所の株式取引システムを大阪取引所から遠隔操作する仕組みを整える旨が載っていた。

この辺に関しては最近また「豊洲問題」で引っ張り出されそうな当時の石原都知事が、先の東日本大震災の時に「首都機能のうち証券市場の中心は大阪に移すなど大きな発想力で取り組むべき」と発言したのが記憶に新しいが、JPXは先行して節電策等で業務を大阪本社へ移管するなどしてきた経緯がある。

BCP(緊急時事業継続計画)に関しては現状運行システム等でもバックアップ機能等万全の態勢で臨んでいるところが多いが、思えば上記の元東京都知事発言以来金融インフラに関してのこの分野の整備体制はあまり耳に入ってきていないものの、この課題も焦眉の急を告げるといっても過言ではない状況になってきているのではないだろうか。


メンズ開拓

本日も近所では「日本橋恵比寿講べったら市」が開催されているが、例年この市を境にだいたい肌寒さが増してくる。そういった季節になるとファッション系のDM等も数が多くなってくるが、最近では従来レディスのイメージが強かったフルラ、コーチ等のブランドもメンズの案内が随分と増えてきたように感じる。

この辺は今月上旬の日経MJでも「メンズ市場掘り起こせ!」と題して仏エルメスが伊勢丹新宿本店にメンズ商品を集めた期間限定店を開いた他、仏シャネルや米ティファニーも機能性を重視した男性向け腕時計を投入するなど欧米のハイブランドが男性への販売促進に知恵を絞っている旨の記事が書かれていたのを思い出す。

このエルメスといえば先に当欄でも、来年以降はビジネス環境の先行き不透明感から年間の売り上げ成長見通しを発表しないとしたことを嫌気し株価が9%近く下落した旨を書いたが、インバウンド需要一服の危機感からでリシュモン始めとする値下げ政策等と並行し伸びしろのあるメンズ市場も攻め始めたというところか。


電先延期

さて、今週は東電が柏崎刈羽原発の先行き不安から株価が急落し、直近で新高値を取った省電社も本日は大幅続落するなど電力系がボラタイルな展開となっている。ところで電力といえば、先に東商取は今年度内に予定していた電力先物の上場時期を17年度に先送りする旨を発表している。

電力先物に関して当欄で最後に触れたのが夏場だったが、東商取では1年物から1日物まで分割して取引でき、現物取引にも対応出来るシステムを作成して既に6月に上場企業から商社子会社等まで参加し模擬取引を実施した経緯があるものの、意見が分かれ制度設計が難航している模様だ。

4月から小売自由化がスタートし先物に対する重要性が増している現状下、ここからは市場設計や一本化運用等を鑑みた場合のJEPXとの調整等々こなしてゆかなくてはならない課題も幾つかあるものの、必要不可欠な産業インフラとして来年度の早期上場には期待がかかる。


全自動へ

本日の日経紙一面には「AIで株売買 顧客に提供」と題して、みずほ証券が11月末にも自社開発で株価変動を予測し「安く買い高く売る」ように注文執行のタイミングを調整したAI(人工知能)を搭載した株式売買システムを機関投資家向けに提供し始める旨が載っていた。

個別銘柄ごとの注文状況や売買ボリューム、過去の値動きなどのデータから、株価が30分〜1時間後に現時点と比べてどのくらい上昇・下落するかをAIで予測との事で、ホールセールよりバイナリー等でリテール向けに売れそうな気がしないでもないがそれは兎も角も受託している年金基金や投資信託の運用成績の下支えに繋がる可能性もあるとの事。

先にアナリストリポートを全てAIで解析し投資判断の変更を予測するGSAMの試みや、大手証券のアナリストがカバーしていない中小型銘柄のリポートをAIに投げるといった件も当欄で取り上げた事があるが、これら一本化したモデルが出てきていずれがそれらの競合戦となってくるのは想像に難くないか。


また一つ市場から

先週の当欄では「さが美」や「雪国まいたけ」とそれらに絡む投資ファンドを一寸取り上げていたが、週末に入ってきたニュースには東証一部上場のアデランスが現経営陣と投資ファンドのインテグラルと組みMBO(経営陣による買収)に踏み切るとの発表があった。

TOBは本日から来月末まで実施されるがそのTOB価格が1株あたり620円と週末の終値480円から29%高の水準という事もあって、週明けのマーケットで株価はTOB価格に鞘寄せする形でストップ高に張り付き、引け後には比例配分狙いから成り行き3,000万株以上の買い物を残している。

さて、アデランスといえばかつてユシロ化学やソトー、ブルドックソース等々でもひと悶着あった米スティール・パートナーズとの対立で09年の委任状争奪戦が記憶に新しいが、同じくMBO提案の経緯がある当のスティール・パートナーズも結局14年までに現物渡し含めたイグジットを完了し撤退している。

そんな経緯を経て株価が今後の経営の足枷にならぬが為のMBOだが、東証一部市場に上場する企業数が年内にも初めて2,000社の大台を超える可能性が高まっているとの観測の裏でこうして冒頭の雪国まいたけ同様に東証一部からまたひとつ銘柄が消えることになる。


白と黒のダイヤモンド

さて、一週間ほど前の日経紙・春秋には密漁で大きな利益が上がる事から、ナマコは「黒いダイヤ」、ウナギの稚魚のシラスは「白いダイヤ」と呼ばれている旨が書いてあったが、同じ食材でもこの時期「黒いダイヤ」といえばやはり世界三大珍味の一つトリュフだろうか?ちなみに旬の短い白は勿論「白いダイヤ」である。

菌茸類といえばこの時期彼方此方の店頭では松茸が誇らしげに鎮座している光景を多く目にするようになり、最近ではカナダ産やブータン産が出てきて国産より随分と安価で流通するようになったが、これらよろしくこのトリュフも一部安価な中国産等が台頭するも松茸と共に人工栽培はほぼ不可能とされる。

ところでかつては人工栽培が不可能なキノコとされた舞茸は、雪国まいたけの創設者による技術確立でこれが可能になったとされている。斯様に長年培ってきたお家芸の技術で今後は松茸やトリュフ等もしかしたらとの期待もかかるが、余談ながらそんな会社も内紛のゴタゴタを経て昨年には米投資ファンドの手に渡り市場からは姿を消している。昨日記の通り、さが美を巡る投資ファンド争奪戦に終止符が打たれた事でふとこんな事を思い出してしまった次第だ。


フィンテックとかTOBとか

本日の日経紙一面には「通貨と同じ位置づけに」と題して、財務省と金融庁がビットコイン等の仮想通貨を買う時にかかる消費税を2017年春をメドになくす調整に入り、仮想通貨をモノやサービスだけでなく支払い手段として明確に位置づけるという旨が書かれていた。

この報道によって本日の冴えない日経平均の中でもロックオンの急伸を始めとして、セレスやGMOメディア等の仮想通貨・フィンテック関連銘柄が再度動意づく展開となっていたが、5月の仮想通貨取引所を登録制とする改正資金決済法が成立しメガバンクも活路を模索し始めている動きのなか利用者増加へ一段と弾みがついてくるか注目。

一方でズルズルと本日も続落し値下がりランキングに入ってきたモノにさが美があったが、これは争奪戦の結果が結局当初のアスパラントグループに落ち着いた事によるもの。二度のTOB価格引き上げも最後は「拒否理由に同意できないが、しかたがない」とニューホライズンもあっけない幕引きであったが今回も内輪の論理優先だったのかどうか気になるところ。


低倍率恒常化

連休明けの日経平均は原油先物上昇を好感し約1ヵ月ぶりに17,000円大台を回復、ショートしている向きは一寸分が悪くなってきたが、先週末の日経紙マーケット面では「貸借倍率4年ぶり低水準」と題し7日時点の貸借倍率が1.04倍と約4年ぶりの低水準となった旨が出ていた。周知の通り貸借倍率はマル信を利用する個人の心理の動向を示す指標の一つであるが、こうした低下傾向がこのところ恒常的になってきている。

ところでこうした低倍率といえば、先の権利付き売買日最終に逆日歩の付く銘柄は646銘柄と2009年47月2日の652銘柄以来およそ7年6ヶ月ぶりの高水準となったが、いまだにやる向きがあるマル信のクロス商いで権利落ち後をしのぐ動きから貸し株が不足したと思われるが、これを跨いで月替り後もなお高水準なのは3月期末の時に見られた光景と同様でもある。

こうした傾向の背景には米大統領選挙や利上げを巡る思惑など外部要因が絡み相場の先行きに対する不透明感が色濃く表れているというのがあるが、もう一つ日銀によるETF買いによって相場が高止まりし個別もなかなかケツ入れの機会を逸しているという内部要因も指摘されており、今後日歩の変化等見ながら一旦解れる場面があるのか否か注目してゆきたい。