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新年度相場

先週末の新年度入りから大きくつまずいた新年度相場だが、週明けの本日も軟調展開となりこれで5日続落である。今年は大発会から大幅な株安に見舞われその後の波乱相場が記憶に新しいだけにその再来を彷彿する向きも出てきたが、振り返ってみると結局15年度は円高・株安の展開であった。

上海株安をきっかけにした中国の景気減速懸念から比較的低リスクとされる円に投資マネーが逃避し、利上げをスタートさせた米の追加利上げシナリオも当初から想定していた通りには進まないとの見方が強くなり円安・株高の構図の巻き戻し現象から上記のような展開になり、チャブつき相場に苦労した向きも少なくなかっただろう。

今年はそんなワケで冒頭のような悪夢の再来を予想する向きも居る一方で、新年度初日の日経紙では夏の参院選をにらんだ景気対策への期待や堅調な米国景気から再度円安・株高に戻ると予想する見方も出ていた。4月は平均上昇率が月の中でも高いというアノマリーもあるが、新年早々ボラの激しさを見せたマーケットだけに何れにせよ目が離せない展開が続くことになるか。


イースター彼是

さて、先の日曜日はキリストの復活を祝う「イースター」であったが、春分の日を過ぎると各所でこのイベントに向けた動きが見られた。とはいえ「ハロウィーン」でバカ騒ぎしていた向きもイースターとはいったいなんぞやと意味もわからずこちらは今一つ乗りきれないという輩もまだ多いか。

しかしながらハロウィーンがあのバレンタインをも凌ぐ経済効果を上げ始めた実績から、各社も近年これに照準を合せて彼是商機に繋げようとする動きが顕著である。国内の大手食品・飲料各社は挙ってイースター関連を売り出し、ホワイトデーの前には卸専門のイメージだった仏ヴァローナがイースターエッグを初めて売り出したのも新鮮だったが、他にも漆器の山田平安堂まで和風イースターを掲げ兎モチーフの品の案内が来ていた。

こうした重い腰を上げ始めた各社の動き以前からTDRあたりはいち早くこのイースターに着目したイベントをやっていた経緯があるが、此処は更に前からハロウィーンイベントを打ち出しその定着の立役者となっただけに、双璧の西のUSJも数年前からイベントを開催するに至っている。

流行の形成もその波及力如何でまた異なったものになって来ると思うが、ちょうどこの期はGW前の消費控えもいわれるなか、経済効果の胸算用から花見と並ぶ春の催事に育ってくるかどうかその関心も高く各所の腕の見せどころとなろうか。


意識付け

昨日の日経紙企業・消費面には日清食品ホールディングスが、同社の株価動向によって提供メニューを入れ替える社員食堂を東京本社に本日オープンする旨が載っていた。身近な社食で株価によって豪華と質素なニュー提供から、社員に企業価値の向上について意識付けする効果を狙うらしい。

株価に連動した企画といえばこれまで某ホテルが日経平均終値プランをやったり、小僧寿しが日経平均終値が前日より上がった場合に中トロを無料で提供するプラン、また大丸東京店なども日経平均終値が高くなれば値引きする株関連動バーゲンなるものを展開した事があったのを思い出す。

ただ日清食品の場合はこの手の商いカラーとは違ってなにやらストックオプションの社食版のような感じもしないではないがランチだけに可也緩い企画か。とはいえそのストックオプションも近年ではバイトなど末端の社員に至るまで権利を配る範囲を広げた例もあり、各社企業価値向上の意識付けは工夫を凝らす例が増えてきたのを実感する。


逆日歩増加の季節

本日の日経平均は3日ぶりに反落とはなったものの、前場にはプラス圏に浮上するなど配当落ちの影響が130円弱と見られていた事を考慮すれば強かったと言えようか。斯様に本日は3月期決算企業の権利落ち日であったが、権利付き最終売買日までのオペ等もあって本日の日経紙には逆日歩銘柄数の増加が書かれていた。

こんな逆日歩が意識されるのも配当や優待取りを巡ってのクロスの影響だろうが、優待狙いが高くついてしまった珍事も過去多くあった。例えば話題になったところでは東京ドームの観戦指定席欲しさに数万株を繋いだところ、逆日歩で数十万円のコストがかかってしまったという残念な話など幾つもある。

金融誌やらネットやらでニワカ評論家などが金太郎飴の如く安易なクロスを勧めてきた弊害もあろうが、貸借倍率も読めない向きや制度信用しか知らぬままマル信に手を出す動きが増えればその分それを利用しようとする向きも増える。ヘッジ回避手段も多様化してきた今は様々な選択肢を活用したいもの。


縦割り行政の弊害

当欄では先週火曜日に、日本取引所が17年後半には清算システムを12年ぶりに全面刷新し金利先物などデリバティブ拡充を目指す旨などを取り上げたが、本日の日経紙金融面には「日本取引所、品ぞろえ強化」と題して、上記に絡みデリバティブを増やし株式関連の依存度を抑える事でより安定的な収益拡大を狙う旨が載っていた。

取引所と言えば足元ではLSEグループとドイツ取引所が経営統合に向けての交渉中だが、このドイツ取引所など営業収益の40%強をデリバティブで稼いでいるし、かつてこのドイツ取引所と一度縁談のあった経緯のあるNYSE(ニューヨーク証券取引所)を傘下に持つICE(米インターコンチネンタル取引所)も30%強をデリバティブで稼いでいる。

翻って本邦のそれはわずかに20%弱にとどまり、50%を超える現物株依存の構図はやはり否めない。政府は総合取引所の実現を成長戦略の一つに掲げ、これももうそろそろ10年近くになるが縦割り行政の弊害で実現期待の掛け声も年々虚しさを感じるようになって来た。一部証券系シンクタンクなどTOCOMの脆弱さを引き合いに現実的な選択でJPX主体の市場創設を推す向きも居るが、関係当局の協調は焦眉の急となっている。


産業革命の次

今週は月曜日が振替休日であったが、その日の日経紙面で目立ったのは社説から金融面、科学技術面そして社会面までAIを取り上げた頁が非常に多かった事か。直近でグーグル傘下の企業が開発した人工知能が、世界トップ級のプロ棋士との対局で勝ち越しを見せたのが話題になっているだけに今がやはり旬というワケか。

社説には「筋肉の限界」から解き放った動力革命と対比し、「頭脳の限界」からの解放を挙げていたが確かに自動車、航空機や船舶などは人間の行動範囲を著しく広げた動力革命であった。そこで後者を考えるに常識や欲求、需要などが時折云われるが、欠如している部分は何所だろうかとの議論も絶えない。

既に現在は次のステージで前者の動力革命に頭脳が加わる時代、自動走行時の事故発生賠償など行動の法的責任も課題となっているが、各所の責任の所在が何所にあるか整備も課題か。ほか国民的合意など壁も多いが、試行錯誤の議論のなかで何所までAIに任せるか等の棲み分けの方向性が出てくる事に期待したい。


個人への課題

過日の日経紙法務面には「個人投資家 物言う株主に」と題して、少数株主の意見を経営に反映させる目的で導入された株主提案権の利用が権利意識に目覚めた個人株主の台頭で増えてきている旨が載っていた。

今から二年前ほど前に当欄では「日本版スチュワードシップコードの行動原則がどの程度意識されているのか各社の姿勢も注目されるところ。」と書いたが、昨年はコーポレートガバナンスコードと共に二つのコードが始動となり、このタイミングで鳴りを潜めていた村上ファンドも久し振りに始動したものの他の一件で別の大物と共に再度葬られた感じもする。

このファンドも一頃は新興ファンドなど形態を変えた総会屋かと揶揄された時期もあったが、プロキシーファイトにまで発展する事案ならずとも近年では随分と個人の垣根も低くなったような気がする。総会屋活動が鳴りを潜めアクティビスト・ファンドも悉く司法の壁の前に退場していった今、漸く個人も日の目を見る事が出来るようになり今後は対話のあり方が課題になるか。


デリバティブ拡充

昨日の日経紙総合面には「金利先物の拡充検討」と題して日本取引所グループが2016年度からの3か年の中期経営計画で、17年後半には清算システムを12年ぶりに全面刷新して多様な商品を上場し易い環境を整え、金利の先物などデリバティブの拡充を目指す旨が出ていた。

既に東京金融取引所では短期金利関連を上場させているが、大証もまた現状で未上場の超長期や中期の金利オプション、短期金利先物等を候補に検討を始めるという。上場のはこびとなれば投資家としてはそれ以外の国債との金利差を利用した裁定取引等が可能になってくる構図だ。

日本取引所のデリバティブの課題については統合当時から当欄で何度も触れているが、いまや先進国取引所の収益の柱はデリバティブが時代の趨勢、取引所間競争はここを押えずして勝ち残りの芽は無いが本邦の場合もう一つそれと並行し、先の税制改正でも叶わなかった損益通算等こちらの整備も望まれるところか。


マクズウェア

今週週明けの日経紙の文化面には「ハマの陶工命浮き彫り」と題して、真葛香山研究家の田辺哲人氏による陶芸家の真葛香山の作品と解説が載っていた。これが目に留まったのもちょうど先月中旬から下旬まで日本橋で「超絶技巧・世界を驚かせた焼き物 真葛香山展」が開催され、私も終盤にこれを観に行っていたという事がある。

日経紙に出ていた作品写真はこの真葛香山の代表作でもある「高取釉高浮彫蟹花瓶」であったが、実物はやはり圧巻であった。もともと私が真葛香山に興味を持ったのもこの作品が、私の好きなエミール・ガレの名作「ストローブ松」や「蜻蛉文脚付杯」、ドーム兄弟の「チューリップ文花瓶」に見られるようなアプリカッション技法を彷彿させるようなものだったからである。

さながらヨーロッパが誇るガラス技法を東洋がポーセリアンでやったようなもので、今にも動き出しそうな写実的造形の完成度に衝撃を受けたものである。他にも茶道具の逸品の数々、三代目の「帆立貝魚柄磁器匙」のような欧州を意識したような焼き物から「乾山意松竹梅大壺」等に実際に生花を生けたコラボ作品まで久し振りに素晴らしい展を堪能出来た。


需要と思惑

本日の日経紙マーケット面には「金先物、上昇に一服感」と題してFOMCを前にして金先物へ利益確定売りが出ている旨が載っていたが、昨日の商品面にはSGX(シンガポール取引所)やSGE(上海黄金交易所)などアジアを中心とした新規参入の金取引が十分に機能していない旨も出ていた。

やはり欧米をコアにして築かれたマザーマーケットの構図を変えるのは容易ではなさそうだが、相場には「需給は全てに優先する」の格言があるが価格に限らず需要が喚起されなければその枝葉の広がりも望めないというところだろうか。

そんな金取引のなかで昨年TOCOMがスタートさせた限日取引の商いが順調とも書かれていたが、次期取引システムへの移行時に金オプション取引の商品設計も変更するなどして再上場に向けた動きも始まっている模様だ。先週は原油のオプション市場を一寸挙げたがこうしたマザーと比較すれば休止状態となっている現状は見る影もない。アジアの覇権を狙う各所の思惑はまだまだ続きそうだ。


地銀ポスト

本日の日経紙マーケット面には「さまよう地銀マネー」と題して日銀のマイナス金利政策により債券投資で窮地に立たされる地銀が、ETFに加えて短期で高配当狙いの株式投資に活路を見出そうとしている旨が書かれていた。

地銀と言えば本日も東証一部に富山第一銀行のIPOがあったが、注目の初値は公開価格470円を6.4%上回る500円でスタートし、意外?に堅調な滑り出しとなった。パッシブファンド物色思惑もあるが、これ以外の地銀全般もメガ同様に先月はつるべ落としのような崩落の憂き目に遭っていただけに本日も全般堅調地合いとなっている。

確かにマイナス金利の重しが今後どの程度まで業績を侵食してゆくのか一概に大手各社のリポートも額面通りには受け取れない部分があるが、逆日歩も可也目立つようになってきた今の株価が一歩先迄完全に織り込んだのかどうか今暫くこの辺を見守りたいところ。