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表向きと内情

さて、当欄では二年ほど前に飛行船から花火大会を見せるビジネスがあり、これが即完売の盛況さをコメントしたことがあったが、衣替えを前にした?昨日この飛行船「ツェッペリンNT号」擁する日本飛行船が破綻した旨の報があった。

美しい夜景と花火大会を満喫できる飛行船遊覧クルーズとしては世界初で、都内の主だった花火大会には殆ど就航していたことから、上記の通り数十分の花火観賞を含む料金が一寸近場の海外旅行に匹敵する料金にも関らず完売人気。昨年は帝国ホテルがスイートルーム宿泊とこの花火クルーズをセットにしたプランを販売したり、最近では晴海ふ頭で遊覧飛行を始めたばかりであったがその裏でけっこう内情はキツかった模様だ。

そういえばこれと同日に破綻した企業にはベッカリイもあったが、赤坂サカスや銀座にもあったレストラン「ヴィラモウラ」の方が解り易いだろうか。このレストランなども人気の影でなかなか内情が見えないだけに難しいが、そういえばミシュランで星を取ったあの「ピエール・ガニエール」も破綻した時は驚いたものだ。

栄枯盛衰は世の習いだが、表面しか見えない素人にはなかなか変化が見えないもの。今も昔もやはり内情に詳しいのが街金筋だったりするのだけは変わらない。


商機とその裏

さて、昨日の日経紙には投信の保有者が負担する管理手数料の上昇が7年連続で続いている旨の記事があった。運用に手間がかかる新興国の株式や債券などで運用する投信の新規設定も相次ぎ、投資対象別ではこれらが最も高かった模様。

さてマクロでの投資対象の多様化は今迄伝えてきた通りであるが、狭義でもこの投信一つ取っても例えば今月設定の大和のインドネシアやらアセットマネジメントのフィリピンなど、また通貨選択型でも上記のインドネシア通貨ルピアや切り上げ期待のかかる中国元など投資対象地域やその選択通貨なども新顔が登場し広がりを見せている。

新興国といえばもう「BRICs」などは定番の域であるが、それ以外にも3年前に当欄で取り上げたベトナム含む「VISTA」、最近では野村が使っている「チャインドネシア」やラテンアメリカ含む「CIVETS」などという造語も「PIIGS」などと同様に登場し、またそこそこな金額が集まるからその需要も無視出来ない。

さて一方の現場だが、当然ながらこの手の新商品売り込みに余念が無いだろう。あまり表面化はしていないものの、若干の含みのあるモノや傷みの浅いモノからこの手へのスイッチを一頃のノルマ合戦の如くせっせと推奨している様が目に浮かぶ。毎月分配型など源泉税分複利でマイナスになる等も指摘される中、解約水準の高さや保有期間の短期化など商機の副産物として気になる記事も多く、この辺も事前に冷静に見る事の出来る目も必要ではないか。


バブル期のノスタルジア

この週末にきて各紙で報道され目に付いたのが、日産が「シーマ」と「プレジデント」の生産を8月に終了するという記事か。なんでも衝突時の安全基準を満たさなくなる事や、今後はフラッグシップモデルを昨年モデルチェンジした「フーガ」に据える戦略などの理由らしい。

国産の類では「プレジデント」などトヨタの「センチュリー」と双璧で、両車ともここの近所にあるあのミシュランでも数年に亘って星を獲得している料亭「濱田家」近辺ではいまだによく待機しているのを見掛けるが、「シーマ」などその登場年度からバブル期の象徴とまで呼ばれたと一部紙では解説している。

さて、ここ最近の報でその姿を消すことになる事になったバブル期の象徴といえばこの車に限った事だけではなく、ホテルの「赤プリ」もその類だろうか。今の中年世代では学生の頃はクリスマスや記念日なんぞは此処などという向きも多かったと思うが、丹下氏の設計でこのロケーションの新館が取り壊しとはけっこう寝耳に水の話であった。

そういえば、車、ホテルとくれば、この赤プリから歩いて直ぐのところにあったブティック「ヴェルサーチ」もバブル期象徴のど真ん中であったが、これまた最近日本から撤退している。
斯様にバブルを象徴した物が一つまた一つと消えてゆくのは諸般の事情もあるのだろうが、各々に色々と思い出がある向きにはやはりとても寂しいものと言わざるを得ない。


本来の使命

本日の株式市場は辛うじて小反発となったが、メガバンク一部などは依然として新安値ツラとなるなど弱い展開で、日経平均が小反発する一方でTOPIXが年初来安値更新となる重さはこの辺を象徴しているともいえようか。

このメガバンクといえば、本日の日経紙経済面「金融を問う」には「メガ化」の理想と現実として損害保険業界と共に、巨大になったメガバンクの組織の内部融合や一体化がなお課題として立ちはだかる現状が載っていた。

ファイナンス関連でも現況BIS規制の絡みで増資合戦が繰り広げられているが、何やらこう競争力維持の為に既存株主などまったく視野に入っていないようにも取れる。資本増強も結構だが、今後はそれらに付随する弊害も勘案する場面が訪れるか。

みずほFGなんぞは今月、テレビ東京の女性記者との不倫?が広く国民へ暴露されてしまった過去を持つ某会長を含む三人がそろって退任する方針を固めたが、株主に対する増資理解だけではなく、上記紙にも書かれていた通り業績回復の裏で顧客の満足含め本来の使命は果たせているか再考すべきであろう。


国策土地転がし

本日も日経平均は半年振りに9,500円割れと大幅続落であったが、昨日の上海総合指数は3.5%高と大幅上昇で取引を終えた。これは上海市などが検討している個人住宅の固定資産税導入などの不動産取引抑制策が先送りされるとの観測が浮上したものに因るところが大きいとか。

斯様にこの市場にとっては上海万博なども拍車をかけ不動産は切っても切り離せない関係が出来上がっているが、国単位で見れば実際のところ北京もそうであったように大規模な公共事業を行うに連れて不動産の価値が高まり、政府による開発事業収益はこの北京や上記の上海など既に50%程度にまで及んでいると何処かで見掛けた記憶がある。

もともとの構図が、国有の流動化事業のようなものであり、仕手株の如く右肩上がりで回っているうちはいいがこれらの回転が止まった時が恐く、容易に想像がつくだろう。

ちょうど本日の日経紙には、あのエンロン株の空売りで一躍注目を浴びたニューヨークでヘッジファンドを運営するジム・チェイノス氏の今の標的として中国で不動産開発をしたり、建設資材を輸出したりする世界中の企業を挙げていたが、またも同氏の「先見の明」が証明されるかどうか見守りたい。


アパレル明暗

本日の株式市場はユーロへの警戒感が強く終日冴えない動きが継続されていたが、そんな中でも朝方から大量の買い物を集めてストップ高の比例配分とひとり異彩を放っていたのがレナウンであった。また、思惑からここ物色されていた同族のルックもこれで再度買い物を集める展開に。

ご存知、この休みの間に同社が中国の繊維大手である「山東如意集団」に対して第三者割当増資を実施し、山東如意集団が株式の約4割を取得、同社の傘下に入る見込みとなったのを好感した動きであるが、この通りにコトが運べば中国企業が東証一部上場企業を傘下に収める初のケースとなるのではないか。

この業界も構造的にキツイ。基幹ブランドを擁する同社などはその性格上長年百貨店と共存してきたが、この高い利益率の構図が崩れ最近のアパレルはファミリーセールやら特別招待やらではものすごい値札が付けられている様を見る度に在庫の恐さを改めて認識する。しかし此処もアクアスキュータムを手放し、ダーバンくらいしか記憶に残るブランドが無いが、これで復活劇なるや否や。

日本企業に限らず今やボルボや、ハマーも中国傘下。実しやかに云われる人民元切り上げなど現実のものとなれば、一段と海外株式など手当てし易くなり中国企業のこうした動きがより一層顕著になるのは想像に難くないか。


中部大阪商品取引所解散報道

さて、今週一番気になった話題はやはりFUTURES PRESSカウボーイも既報の通り、「中部大阪商品取引所」が来年1月末をめどに解散する方針を固めたという一部報道であろうか。 これを示唆するかのように奇しくも日経紙商品面では「正念場に立つ 商品取引所」として一昨日からその厳しい現状について書かれていたが、そんな中での解散報道であった。

ところでこの報道に関して当の中部大阪商品取引所は早速プレスリリースをHP上に出してきているが、まあ臨時理事会は来週であるし「そのような内容を決定した事実はありません。」というこのプレスリリース自体はとりたてて騒ぐほどおかしなものではないだろう。
何れにしてもこの辺は3/10付け当欄「報道と企業のポーズ」でコメントしている件の通りか。

閑話休題。中部大阪商品取引所についてはもう何度も触れて来たが、ここ数年をザッと振り返ってみると株式会社化構想、遅きに失した矢継ぎ早な失敗商品の上場廃止、証券取引所とのMOU締結、本部ビル売却や直近では保有するJCCH株式の売却と絵に描いたような一通りの行動であった。またその間には金人気のお零れ狙いで起死回生を賭けた中途半端な金市場の創設などあったものの、このときも当欄では「必要性は?」と疑問を呈していたが、やはり他のパイを奪う単純発想では成功する素地が薄いのである。

大阪商品取引所と合併してから迷走3年、果たして解散する事になるのか否か06年8月の当欄ではこの件について「弱者連合論は未だ他にも最悪なところがあり〜目的が何かがハッキリしていないと全般希薄になってしまう懸念がある」とコメントしていた。
ところで、先週は新生銀行とあおぞら銀行が昨年決めた合併計画の見送りを正式発表したが、市場に追い立てられた消去法的な弱者連合が当初より上手くいかない典型を表したようなこの事例、商品取引所もこれがトリガーとなり一気に再編スピードが速まるのかどうか注目である。


色彩普遍性

本日は丸の内にて所用があったが、そういえば過日丸ビルで人と会った時には1Fのイベントホールの床に色とりどりのポロシャツを敷き詰めて作ったなんともユニークな、「ゴッホの自画像」が展示されていた。

最初は上層階から眺めていたのでポロシャツとは気付かず、もうすぐあのオルセーが始まることでこれのPRか何かでゴッホの自画像なのだろうと思ったが、下で帰り際に通り掛かった際に解った次第。ところでこれはオンワード樫山が印象派の絵画から抽出した色彩を服に取り入れるという「カラーミュージアム・キャンペーン」の一環で、主要ブランドでこれを展開しているという。

ゴッホの「ひまわり」、ドガの「踊りの花形」やルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」など誰もがよく知っている印象派14作品から、各作品に特徴的な数色ずつを抽出し、厳密な色合わせで衣料を製作したとか。しかし色ひとつ取ってみても作品名から指すなんてなんとも洒落ている感覚、そういえば月曜日に書いた米アップルなどもパソコンのカラーにシドニーのビーチの名前を冠したりまた車などのカラーにもこのパターンは多いが、これまたデザイン考察としてコメントした流れともいえるか。

思えばイタリアやフランス始めとして欧州系は昔から服などの色の背景にアートを込めるブランドが多かったが、こういった点で日本などまだまだ開発途上国であると思う。こんな発想が今後各所で広がってゆくのにも期待したいところ。


トコロ相場

昨日の日経紙夕刊社会面には高級果物である北海道夕張メロンの初競りの様子が載っていた。札幌市中央卸売市場での最高値は、2個50万円であった昨年とは桁違いで同150万円にて落札された模様。

さてこの手としては既に店頭に並んで久しい宮崎県名産の「太陽のタマゴ」もまた高級果物の類だが、先月行われたこの初競りは宮崎中央卸売市場では2個入り1ケースが20万円で競り落とされるなど相変わらずの高値で取引が始まったものの、大阪ではこれが5万円、そして東京に至っては十分の一の2万円であった。

なんとも極端なトコロ相場であるが、こういったフルーツとか海産物は時折相場のダイナミックさを見せてくれる。そういえば一寸前まで蟹などと共に雲丹の案内があったが、時化の影響で加工量が少なかった後の正常化で大量出荷があり需給バランスの崩れから僅か数週で相場が半値八掛け以下にまで落ちた時もあった。

トコロ相場といえば、昔は株式相場や商品相場もトコロ相場を利用して仕手戦めいた事例などあったが、今や一般が投資する金融界はそういった面での整備が進み、上記のような業者のマーケットでこれらを見るに止まっているあたり少し昔が懐かしく思える今日此の頃である。


デザイン考察

さて、本日の日経紙社説には「今の日本企業は手元の才を十分に生かしているだろうか」という提言?で産業等におけるデザインの重要性にも一部触れていたのを目にした。

この社説の中では独創性を生かした成功例として、日産自動車の「キューブ」や資生堂の「マジョリカマジョルカ」なども挙げていたが、少し前でもデザインの美しさに惹かれその煩い音にさえ目を瞑って「ダイソン」の掃除機などに手を出してしまった向きも多いはず。しかしそのヒットの継続性からもっとも分かり易い事例としてはやはり米アップル社の製品であろうか。

90年代後半に出した「iMac」のヒットで一時は経営危機説も出ていた同社の復活劇は有名な話だが、その後も2000年に入ってからの「iPod」、また一昨年の「iPhone」、そして周知の通りで今年に入ってからの「iPad」と立て続けにその機能性とデザインを武器に市場の話題をさらう快挙を成し遂げている。

スマートフォンの類に限らず今は製造技術の普及化などもあって、複数の会社から似たようなものがどんどん出せるようになったが、そうなると市場原理として競争要因にはコストくらいしかなくなり自ずと価格が崩れてくるのが一般的といわれる。そこで差別化としてはやはりデザインがキーとなってくるが、上記の米アップルなどはトップ陣から深くデザインに関りその他タクティクスも他とは一線を画している感がある。今一度同紙文中にあったデザイン部門を縮小している日本の大手企業など、この辺に再考の余地ありと思うが。


軽油再上場の成否

さて、先週TOCOMで「軽油」が再上場されてから本日でちょうど一週間が経った。連休明けのこのイベントに多少は各紙も触れるのかなとも思ったものの、翌日の日経紙商品面が僅かに小さく報道したのが目に付いた程度で、地味な存在を裏付けるように果たして初日の午前は先限以外の限月が値付かずで、この日の売買高は結局僅かに8枚という寒い結果に終った。

ここで一寸、7年前の上場当時を思い返してみればTOCOMの出し値27,500円から大幅安で寄り一部はストップ安交じりであったものの、初日の出来高は76,000枚超と、当時のガソリンにほぼ並び灯油をも上回り活況であったのを思い出す。
(そういえば蛇足ながら、初日一番に全限に流しで大口の売り物を出したのは、今は無きあのタイコム証券であったなと懐かしい。)

某商社の石油部も積極的に初日からこのクラックをショートに回ったりして其れなりに使ってはいた模様だったが、翌日の出来高は2万枚、その二日後には1万枚を割り込むなどその後の凋落ぶりも激しかったなと。

再上場では、懸案であった脱税を防止する仕組みを作り受け渡し条件を緩和、取引業者をトラック運送会社や小規模の石油販売業者などにも拡大することになったわけだが、実際の現場は先物取引に対する理解がほとんど進捗していないのが現状。 この再上場にあたってTOCOMは売買高の目標を「灯油の三分の二程度」に設定するとしているが、一週間経過した本日の日中取引の出来高は灯油の4,683枚に対して僅かに16枚。

はたして再上場でも同じ轍を踏んでしまうのかどうか、今後を注視したい。