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消えぬデフレ圧力

さて、昨日はあの一口サイズで知られる「チロルチョコ」が原材料価格の高騰や物流コストの上昇を理由に1993年以来、29年ぶりの値上げに踏み切る旨の発表があったが、本日も大塚製薬が「オロナミンC」ドリンク等の小瓶ドリンクを原材料価格やエネルギーコストの高騰を理由に11月1日出荷分から25年ぶりに値上げすると発表している。

食品の値上げといえば昨日の日経紙総合・経済面では「食品値上げ「未達」3割」と題し、1月~5月に値上げのあった食料品16品目の動向調査ではメーカーが公表した値上げ幅と7月の店頭価格の前年同月からの上昇率比較では3割にあたる5品目が表明幅の下限にも届いていないなど値上げがメーカーの思うように進んでいない旨が出ていた。

成る程同紙に掲載されていた5品目もさることながら、冒頭のオロナミンCも近所のスーパーで10本入りが500円台で売られているのをつい最近見た。改定では税抜きで120円になるというが、上記の安売りでは一本約60円弱でありメーカー公表の約半値という計算になる。エネルギー価格が否応なしの値上げ断行が為されている一方で、デフレ圧力がいまだ色濃く残るこの業界の構造を垣間見た気がする。


インフレ功罪

先週に総務省から発表になった7月の家庭で消費するモノやサービスの価格の動きを示す指標である消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除いた指数が去年より2.4%上昇した。上昇率の2.4%は消費税増税の影響を除くと13年11か月ぶりの水準で、日銀の目標としている2%を超えるのは4ヵ月連続となる。

斯様に消費者物価指数が2%を超える伸びを続ける中、更に高い伸びとなっているのが企業同士で取引される原材料等のモノの価格である企業物価指数で、先に発表された7月のそれは前年同月比で8.6%の上昇と17カ月連続で上昇、依然として乖離も大きなものとなっており企業側が仕入れコスト上昇分を吸収し価格への転嫁が進んでいない事を示している。

しかし国内事情はそれとして欧米では高いインフレが広がっている。米の7月消費者物価指数は8.5%の上昇、英のそれに至っては10.1%の上昇と40年ぶりの高水準となっている。個別で比較しても日本では目立ったところで電気代が19.6%、ガス代が18.8%の上昇であったが、英のそれは電気代が54%、ガス代に至っては95.7%とケタ違いである。

欧米は景気に勢いがあるので賃上げも進んでおりインフレの良し悪しも難しいところだが、売り上げ増や賃上げ実現という経済の基盤になるのも事実。企業は何とかコスト上昇分を出来るだけ価格に転嫁する事で適正な利益を確保し、少しでもスタッフの賃上げに繋げてゆくなど経済の好循環を作る事を目指すのが引き続き課題となるか。


単元株考

さて、先月末に当欄では東証の株式分布調査で2021年度の延べ個人株主数が8年連続で増加し過去最多となった旨を書いたが、約一週間前の日経紙社説には「1株から日本株を買える制度に改めよ」と題し個人金融資産を投資へと動かすために、政府や取引所、企業は現状で100株からしか買えない日本株の売買制度を1株から買えるように改めるべきとの旨が出ていた。

思えば対面が主流だった一昔前は額面50円銘柄で1000株単位と仕手株に飛び乗る際にも倍々ゲームで膨れ上がる買い付け代金に逡巡したものだが、記憶を辿れば1株単位の銘柄があった当時はそれこそ1株から1000株まで8種類の売買単位が存在し今は市場からその姿を消した誰でも知るところのライブドアなどは1株単位でそれこそ数百円で買えた株であった。

それが今から約4年前に100株に統一されたワケだが、確かに指数への寄与度が高いファーストリテイリングを買うには急反落となった本日の株価でさえ約870万円近くが必要になり、米株では同じく寄与度の高いアップルなど数万円で投資出来るのとは雲泥の差である。文中にもあるようにNISAの啓蒙こそ喧しいものの積立より上限が高い一般でも120万の枠とこの手の銘柄ははるか足元にも及ばない計算になる。

この100株単元に甘んじている背景として考えられるのはそれこそ株主管理コストの負担であったり、はたまた上記のライブドア・ショックの際に見られた東証のシステムダウンのトラウマだったりがあるだろうが、システム障害を経て増強が為されている筈だし来年には総会資料の電子提供制度も始まる。「貯蓄から投資」を標榜するのであれば政府もこの辺にこそメスを入れ、企業側も積極的に歩み寄り協力するところか。


時代の一頁

お盆も明けたが、今年はお盆を前にして残念な訃報が立て続けにあった。一人は世界にさまざまな影響を与えたデザイナーの三宅一生氏、独特なプリーツ服で有名だがよく見たところではアップルのスティーブ・ジョブズ氏がプレゼンの際などに着用していた黒のタートルネックが有名だ。もう一人は英国出身の人気ポップ歌手オリビア・ニュートン・ジョンさんである。

どちらも” その世代” の人たちにとっては感慨深いものがある。オリビア・ニュートン・ジョンといえばなんといってもミュージカル映画「グリース」で、サンディを思い浮かべるに当時の記憶が鮮明に蘇る。またミヤケイッセイは80年代に日本で社会的現象となったDCブランドブームの中でもアッパークラス的存在で、私も当時はけっこう無理して念願の一着を手に入れる度に喜びに浸ったものだ。

オリビア・ニュートン・ジョンさんは東日本大震災からの復興を願い被災地での公演も精力的にこなしていた親日家で、広島出身で被ばくを経験し早くからサステナビリティを先見していた三宅一生氏も奇しくも77回目の原爆の日を目前にして逝ってしまったが、共に後世に素晴らしいものを残してくれた存在で今はご冥福をお祈りしたい。


対処療法の行方

さて、ウクライナ情勢の影響が10月の改定に反映される事から価格の大幅引き上げ必至と見られていた小麦価格だが、昨日に首相は政府から製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格を10月以降も据え置くよう指示した。政府による小麦価格の抑制策は14年ぶりで、更にガソリン等の燃料価格抑制策と併せ来月上旬までに追加の物価対策として取りまとめる事にしている。

関係各所も一先ずは安堵というところで確かにガソリン価格がこれ以上高騰しないようにし、小麦が原料のパンや麺類などの値上げ圧力も抑えて家計への負担を和らげる狙いというのはわかるが、対処療法の持続性と輸入価格上昇に伴うコストアップそのものを腕力でもって打ち消し続けるのは価格メカニズムの機能面からみて如何なものかという一部指摘も出ている。

確かに補助金で上昇を抑制しては民間部門おける資源利用効率化の動きを遅らせる事になり、長期的には政府の方針でもある脱炭素の流れにも反する矛盾も出て来る。矛盾といえば日銀のデフレ脱却を目指す金融緩和策とも政策的不調和があり現状の対処療法も苦渋の選択と取れないでもないが、価格メカニズムを生かしながら国産食材のバランス等なども併せ輸入に頼る食材などは抜本的対策が急がれる。


銀座に新旋風

先週の日経MJ紙一面では第50回日本の専門店調査が出ていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を経て消費のトレンドも変化し2021年度はステイホームのライフスタイルが広がり自宅で楽しむ趣味消費が拡大、特に100円ショップ等の売り上げが伸びて全体の売上高は20年度比で3.3%増の6729億円となった旨が書いてあった。

成る程、この手が追い風と言われてみると確かに最近の出店攻勢は嫌でも目に付き、とりわけ銀座エリア等への進出が著しい。銀座のプチプラといえばメルサのワッツくらいしかなかったが、今年の春にはマロニエゲート銀座2にダイソーの旗艦店がオープン、更にその目の前の西銀座デパート2Fには300円アイテムが揃う低価格ショップのスリーコインズプラスが関東最大級の140坪の売り場面積でオープン。

また時を同じくしてワークマンが入ったイグジットメルサには同じフロアに100円ショップのセリアも初出店と、実に駅から数百メートル圏内に続々とプチプラ店の出店が見られた。私も過日マロニエゲートに立ち寄った際にダイソーの旗艦店を見たが、6階フロアをまるまる使った旗艦3店は平日にもかかわらず何所も顧客が犇めき合って活況であった。

冒頭のMJ紙では値上げ前の駆け込み需要もあり宝飾品や呉服等も富裕層が牽引し伸びていた旨も載っていたが、顧客の消費形態も高価格帯と低価格帯に二極化してきた感はある。こうした裏で50年以上続いたアマンドも閉店し目抜き通りにあった英国屋も移転を余儀なくされるなど新陳代謝著しい銀座ならではのいつもの光景だが、この手のショップの出店は銀座の活性化にも繋がり或る意味いい転換期ではないかとも思う。


自治体競争狂騒曲

さて、昨日は「世界猫の日」だったそうでふるさと納税で保護猫を支援出来る取り組みや猫に関する返戻品などの案内が来ていたが、このふるさと納税といえば先月末に総務省から発表された2021年度のふるさと納税の寄付額は、8302億円と前年度から23%増え2年連続で過去最高を記録した旨が報じられている。

毎年確実な増加を見せているふるさと納税だが、最近では飲食店の店頭にQRコードが置いてありその場で返戻品扱いのメニューを受け取れたり、アウトレットのフードコートやゴルフ場などで即日使える食事券等の自動販売機が設置されたりと、地元の経済活性化に直接つながりより手軽に納税が出来るような進化形スタイルも続々と増えてきている。

当然の如く連れて住民税の控除額も多くなる計算だが、こちらの21年1~12月の寄付による22年度の住民税控除額は5672億円と前年度に比べて28%多くなった。同控除額が多い自治体常連組の横浜市など今年も首位であったが、住民税減収分のうち地方交付税で補填されない部分でも数十億円と決して少なくない額で市としても看過出来ない数字か。

それでもまだこの恩恵が受けられる自治体はマシな方で、以前にも書いたように地方交付税の恩恵の無い大都市圏など更に頭が痛いところ。一方で対極の自治体等は途轍もない財政効果等を享受し返戻品競争にも一段と拍車がかかっている構図で、制度開始から15年経ってなお還元率を巡るいたちごっこ含め内在する歪も擁したまま今後も狂騒曲は続きそうだ。


序章の最多?

さて、前回は直近で民事再生法を申請したファッションブランドインポーター等を取り上げたが、帝国データバンクが本日公表した調査結果によればエネルギーや原材料など物価高の影響で倒産に追い込まれた所謂「物価高倒産」は、1-7月期で累計116件に達し過去5年で最多となっている。

業種別では燃料費の高止まり等を背景に運輸業の33件がトップとなっていたが、食品関連も26件に達しており直近では身近なところでGINZASIX等でも店舗を構えていた英のホテルショコラも先月末に民事再生法を申請している。SDGsにも意欲的でチョコはもとより美容品からフレグランスまで展開し、周りにもファンが少なくなかった店だったが輸入コストや物価高等には抗せなかったか。

斯様に7月は31件と前年から8割増加し単月では最多となったワケだが早ければ8月にも年間の最多件数を更新する可能性は高く、秋から年末にかけて原材料コストや原油高の問題が更に顕著化する恐れがあるだけに、価格転嫁が難しい中小・零細企業中心に今後卸売りや小売等で更なる負の連鎖をみせる前に政府側の物価高対策など事態は焦眉の急を要している。


ファッションストレステスト

さて、今週は週初めに欧米ファッションブランドインポーターの三崎商事が民事再生法を申請したとの報があった。法人名では業界人でなければピンと来ないが90年代にドルガバを、その後はディースクエアード等のハイブランドを日本に普及させた立役者でもあり、此処のファミリーセール等よく招待があったのでけっこうな驚きであった。

この手のインポーターとは違うがファッションの括りでは3年前にグッチ等のハイブランドを日本に介してきたセレクトショップのサンモトヤマが破綻したのがまだ記憶に新しいが、上記のインポーターなど近年の欧州ハイブランド勢の日本法人設立の動きや対ユーロでの円安進行などが背景となったと見られる。

そういえば欧州のハイブランドといえば先月はドイツのエスカーダがモノによっては8割引きなど信じられない値でセールの案内が来ていたが、果たしてというかそれと前後してココの日本法人の破綻の報が舞い込んで来た。先月の日経紙オピニオン頁ではハイブランドの雄ジョルジオ・アルマーニ氏が新型コロナ禍でのファッション業界についてコメントを出していたが、当に今は業界の慣習を見直すべく課されたストレステストの真っ只中なのかもしれない。


保険彼是

今日も昼間の外出が逡巡される暑さであったが、太平洋高気圧の影響で関東甲信では連日にわたり最高気温が40度に迫る記念な暑さとなっている。東京都心でも最高気温が35度を超えて今年13回目の猛暑日となり、1995年、2010年と並び年間の猛暑日の最多記録となったが、この猛暑で「熱中症保険」の加入件数が急増しているという。

俄かに出て来た保険の類といえばこのコロナ禍で一躍脚光を浴び当欄でも取り上げた事のある「コロナ保険」が記憶に新しいが、当日申し込み直後から適用になるというPayPay保険サービスが提供する熱中症お見舞金など既に真夏日を記録した6月下旬には前週比で約6倍にもなったそう。

ところで昨日は3年ぶりに青森のねぶた祭りが再開されたように全国で祭りの再開を見に行く向きも多いと思うが、2月にペイペイアプリで手軽に契約出来るコロナ保険で爆発的な加入件数を記録した損保ジャパン系では旅行の出発前から旅行先での感染というケースまでカバーした「コロナ安心旅行保険」なるモノが販売されこれまた先月は月初比で契約件数が7倍に急増したという。

コロナ保険では想定を上回る支払いから販売停止に追い込まれた向きや、保険金の大幅減額を止む無くされ中には関東財務局から業務改善命令を受けた向きも最近ではあったが、次々と打ち出される俄かお手軽保険はこれら踏まえた万全な商品設計になっているのだろうか?商機と勝算を巡る駆け引きは各社まだまだ続きそうだ。


急務の課題

ちょうど一週間前に当欄で取り上げた最低賃金を巡る厚生労働省の審議会だが、企業が労働者に支払うべき今年度の最低賃金の目安を現在から31円引き上げて全国平均で時給961円とする事が決まった。上昇率は3.3%となり昨年度の引き上げ額28円を上回って過去最大を更新することとなったが、それでもなお政府目標とした1000円の大台には殆どの地域で届かないか。

今年の議論は物価高の影響で労働者側と経営者側では引き上げ額等の主張に隔たりがあり時間がかかったが、先に書いたように原材料の値上がり分を製品価格に転嫁し切れていない中小企業に労働者の割合は集中しておりなかなか厳しい。言うまでも無く賃上げの原資は労働生産性という事になるが、日本の労働生産性はG7中で最下位という状況も変わらないまま。

長引いたデフレで製品やサービスの付加価値が高まらず、景気悪化時に落とし難い所定内給与の引き上げにも慎重で賃上げを進める余力は乏しい構図だ。下請け等で立場の弱い中小企業など企業間での従前の商習慣を見直し物価高を転嫁し易い仕組み作り等々、各企業が最低賃金を払えるだけの環境の後押しなど根本の課題に向き合う必要があるか。


葉月の値上げ

早いもので週末には立秋を迎える葉月入りだが、今月も食品を中心に値上げの波が加速する。本日納品分からでは味の素冷凍食品が家庭用製品47品目を約6~14%の値上げ、この冷凍食品ではニチレイフーズも本日納品分から家庭用冷凍食品の一部を約8~20%値上げし、日清製粉ウェルナもパスタやパスタソースを約2~8%値上げする。

他にも馴染の深いところで江崎グリコのビスコや東ハトのキャラメルコーン等がステルス値上げを併せて実施するほか、電気代も大手4社で更に揃って値上がりし東電では平均モデル料金で前月比247円増、前年同期比では2000円以上のアップとなり、6月に挙げた大手航空会社のサーチャージも過去最高の水準となる。

また街ではファミマも中旬以降に人気商品ファミチキの値上げに踏み切るものの、ココは明日から3週間にわたり惣菜やサンドイッチ類など全20商品を値段据え置きで中身を40%増量する「逆ステルス」?のようなキャンペーンを実施する。既にローソンが定期的に実施しているキャンペーンだが、消費者に如何に受け入れられるかコンビニ各社も戦略が問われる。

帝国データバンク調べでは上場する主要飲食料品メーカーで7月末までに累計1万8532品目の値上げが判明、このうち8月単月での値上げは2431品目に上り単月で初めて2000品目を越えることとなる。このペースで推移すると年内の累計値上げ品目は今月中に2万品目超えが確実視されるが、年初の値上げ実施組も円安を背景とした再再値上げ等が秋以降に集中しているだけにまだまだ身構える構図が続くか。