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提灯か連携か

先週末の日経紙マーケット面では「個人、物言う株主に追随」と題し、先の東芝の定時株主総会で会社側が提案した取締役のうち取締役会議長含む2名の選任案がアクティビストの行動を切っ掛けに否決された事などを背景に、企業を変え得るという事実が広く知れわたった事でアクティビストが対話を求める銘柄に幅広い向きから投資資金が流入している旨が出ていた。

しかしこうした提灯買い?は今に始まった事でなくハゲタカ時代のような一昔前からあり、かつては大量保有報告が表面化し吹いた場面は絶好の手仕舞いの機会だったものだが、最近のこの手のものは積極的にTOBを仕掛けるパターンで価格引き上げが行われるケースもあるなど息が長くなってきている背景もありかつてとは状況も変わってきているようだ。

公募投信でもこうした背景に肖ったモノも登場しているようだが、実際に同頁では4月以降に新たにアクティビストが大量保有を出した主な銘柄の3月末比との株価騰落率の一覧が出ておりベンチマークを上回る銘柄が多数、これら銘柄もアクティビストらの初動期に乗った場合は当然ながらこれをもはるかに上回るパフォーマンスとなっている構図だ。

斯様にアクティビストの審美眼を頼りに提灯でキャピタルゲインなど追究する動きもさることながら最近では世界が驚いた米エクソンの一件に見られるように気候変動を巡る対応強化などアクティビストと連携するケースもあり、国内でも先の定時総会で同様な気候問題を巡りアクティビストに賛同する彼ら以外の共闘も目立つようになってきた光景はハゲタカ時代とは隔世の感を禁じ得ない。


49年の歴史に幕

さて、京王プラザホテルが開業50周年という事で同じく発売50周年となるカップヌードル?と何故かコラボ企画を展開するようだが、この京王プラザホテル開業の翌年に開業した九段下のホテルグランドパレスは開業50周年という節目を前にして昨日で営業を終了しその49年の歴史に幕を閉じる事となった。

皇居の緑をのぞむ好立地にありドラフト会議の舞台にもなった老舗ホテルの退場は衝撃であるが、新型コロナウイルス感染拡大による利用者減少で昨年末から営業休止を決めていたところに2度目の緊急事態宣言がとどめを刺した格好ということになっているものの、他の老舗ホテルよろしく老朽化施設の改修が必要な事も重荷になったのは想像に難くない。

しかしいつまでもあると思うなで、有名ホテルが消えることになる度に例えば赤プリのフォアグラサンドや西洋銀座のエッグベネディクト等々そのホテルで思い入れのあるメニューが頭に浮かぶものだが、差し詰めグランドパレスといえば訪れる度にいただいた舌平目のボンファムや伝統の帆立貝柱のピラフなど他では絶対真似の出来ない味と今更ながらしみじみ思う。

閉館を数日後に控えたスイーツコーナーではこれまた二度と味わえないとばかりに名物のオレンジケーキを予約していた客でごった返していたが、その先には手書きで49年間のご愛顧まことにありがとうございましたとのメッセージボードがポツンと寂しく置かれていた。日本の都市文化の象徴的な拠点がこのコロナ禍でまた一つ姿を消すことになる。


漁夫の利?

昨日はアジア勢として初のJDR(日本預託証券)銘柄であるオムニ・プラス・システム・リミテッドが東証マザーズに新規上場となったが、本日の日経紙金融経済面には「東証、アジア新興の受け皿」と題し東南アジア中心にスタートアップが勃興するなか政情不安な香港を避けたい企業の受け皿として東証が選択肢に浮上するなど海外企業の東証への上場機運が高まっている旨が出ていた。

一頃は米中対立の影響でIPO企業が上場先として香港を選ぶような動きも一時見られたものだが、政治的な不安定感が日増しに増加するなか日本の事業会社との資本・戦略提携や低金利の日本で資金調達を視野に入れる企業にとって東証がより一層現実的な選択肢になってきているという構図だ。

冒頭のJDR銘柄が上場した同じ日には東京都が国際金融都市構想の改定案取りまとめに向け有識者懇談会で最終的な議論をしているが、東京が高い評価を受けつつあるとはいえ政府が掲げる米英と匹敵するような国際金融センターになるにはまだ手続き面から税制まで課題はあるものの、同構想へ弾みが付く可能性として斯様なチャンスは確実にモノにしてゆきたいところ。


対象ブランドの差

さて、ふるさと納税などこの季節多くの自治体からシャインマスカットの予約受付の案内が喧しいが、昨日はこのシャインマスカットの苗を開発者である農研機構の許可を得ずネットで出品し販売したとして、改正種苗法が施行されて以降初めて会社員の男を同法違反の疑いで逮捕した旨のニュースがあった。

ブランド農産物を巡ってはこれまで何度か取り上げてきた通りで、上記のシャインマスカットはもとより青森のブランド林檎「千雪」の苗木が中国のネット通販サイトで売られていたり、韓国ではカーリング女子のもぐもぐタイムで有名になってしまった日本独自に開発したブランド苺はじめブランドミカンがもう何十年も前からパクられ流通しているのが現状だ。

日本が数十年かけて開発してきた宝の苗がそれこそ人のパクリしか能の無い連中にわずか100円以下程度の値段で売られているのは本当に心が痛むが、これらが既に大量に生産され廉価販売の流通体制も整っているだけにオリジナルを訴求してゆく障壁にもなろう。自家増殖の絡みで生産者の逡巡もあっただろうが、遅きに失した感のなかでもやはり確実なブランド保護は喫緊の課題で今後もその監視体制が問われようか。


制度改革進展と共生感

今週は株主総会がピークとなるが、先週に行われた注目の東芝の定時株主総会では会社側が提案した取締役のうち永山取締役会議長含む2名の選任案が否決されることとなった。4月に会社を追われた?車谷前社長が上場廃止派ならこちらの永山会議長は上場維持派で知られていたが、これで両派何れもが退場の事態になってしまった。

更には株主総会で選任されたばかりの他社社外取締役も務める投資銀行出身の取締役も新任早々辞任が申し出されるなど大混乱とも言える絵図に。同氏の辞任の背景には上記の永山会議長の手腕を評価しており今回の同氏の選任案否決が大きく関係しているとの事だが、コーポレートガバナンス改革舵取りの同ポストの人材探しは困難を極めるか。

というワケで東芝は近日中に臨時株主総会を開き新しい取締役人事案を提案する見通しだが、原点となった禁断の大型増資で群がったアクティビストとのいばらの道は続く。しかし東芝はもとよりアクティビストが株式を保有する割合は日経平均採用企業で5割を越え、提案を受けた企業も1月から直近迄で20社を超えている様は一昔前のハゲタカ呼ばわりされた時代から隔世の感があり今やどう共生を図るかが意識される時代になっている。


痛し痒しの仮想通貨

さて、今週の日経紙マーケット面の銘柄診断では年初来安値を更新したオンラインゲーム大手のネクソンが出ていたが、年初来安値に沈んだ背景にはこのところ顕著になっている
ビットコインの下落など保有する暗号資産の下落から含み損を嫌気している部分がある。同じ東証一部の業界ではgumiやコロプラなどもまた暗号資産保有企業で知られるところだ。

純投資の向きもあればこうしたデジタルコンテンツ企業の特性で当欄でも取り上げた事のある最近登場してきたNFT(非代替性トークン)の絡みからこの手の扱いが自ずと増加したという背景もあろうが、海外でも今やCEO発言が仮想通貨の乱高下を誘発するテスラをはじめ米ソフトウエアのマイクロストラテジーなども仮想通貨に大きく賭けた投資で有名なところだ。

冒頭のネクソンとgumiとでは含み損と含み益と両者で明暗が分かれてしまった格好だが、冒頭の記事掲載日のビットコイン相場は一時3万ドルを割り込み4月に付けた高値から実に半値まで暴落するなど、保有にはそういった特性を抱え込む事でそこそこのキャッシュリッチ企業でない向きは財務への影響も無視出来ないか。とはいえ時代の流れで今後も暗号資産に絡む企業が増加してくるのは想像に難くないが、上記含め自ずとステークホルダーへの説明責任も不可欠となろうか。


双子パンダ

さて、周知の通り今月の4日に妊娠の可能性があることが発表され展示が中止になっていた上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」が、日付が変った深夜に無事に2頭を出産した。この上野動物園では4年ぶりとなるパンダの誕生で、双子というのは初めてのことであり前回のシャンシャンに続いてまたも6月の誕生となった。

早くも何時一般公開になるのか気になるところだが、29年ぶりの子パンダ公開となった前回は両親が中国から貸与された直後の11年度から6年ぶりに450万人を超えたものだったが今回はどうか。しかし思えば両親のシンシンとリーリーの返還期限は今年2月だったものが令和8年まで延長されているが、従来の返還期限の翌月のおめでたであったから実にラッキーであった。

ところでパンダ出産といえば関係者が気になるのは所謂「パンダ銘柄」ということになるが、やはりというか双璧の精養軒と東天紅はいずれも買い気配でスタートしたものの、あと東天紅は寄り天の格好で両銘柄共に大引けは安値引けとなっている。この辺は妊娠報道の際に一度相場を作ってしまったので止む無しという感もあるが、何れにしてもこのコロナ禍の沈滞ムードのなかで光る嬉しい報であったのは間違いない。


鉱山株彼是

先週の日経紙・グローバル市場では金鉱株の米ニューモントやカナダの金鉱大手バリック・ゴールド、また新興国でもパラジウムで4割のシェアを持つロシアのノリリスク・ニッケルや南アフリカのプラチナ大手アングロ・アメリカン・プラチナ株などいずれも5月まで上昇基調であった世界の鉱山株が軒並み調整している旨が出ていた。

鉱山株といえば著名投信の組入れ対象としても定評があり、例えば南ア・オーストラリア等の金鉱企業株式を主要投資対象としたブラックロック・ゴールド・メタルなどその上昇率から投信ランキングで度々取り上げられてきたものだが、昨日の住友金属鉱山の年初来安値更新にも見られる通り商品の一服と共に調整色を強めている。

ところで鉱山業界といえば南アのインパラ・プラチナムがカナダのノース・アメリカン・パラジウムを買収したり、中国の紫金鉱業もカナダの金鉱会社コンチネンタル・ゴールドを買収したりとM&Aが粛々と進行しているが、直近で銅相場高騰の牽制を露わにした中国もかつて資源安を好機に積極化してきた経緯がありその先の展望が気になるところでもある。


ETFの存在感

さて、本日の日経平均は米早期利上げの可能性が台頭した事などを背景にザラバではその下げ幅が1000円を超える大幅続落となったが、そんな中で米のVIX指数が警戒ラインといわれる20を約1か月ぶりに上回って来た事を背景に本日の値上がり率10傑には2位のVIX短期先物指数や9位の日経平均VI先物指数がランクインしていた。

また下落幅も上記の通り2月26日以来の大きさとなった事で、日経平均やTOPIXにJPX400系などのダブルインバース型やベア2倍型なども商いを集めていた。これらは言わずもがなETFのラインナップだが、先週末の日経紙・グローバル市場では「ETF残高世界で1000兆円」と題し5月末時点で世界のETF残高が4月末比2.8%増加し初めて9兆ドルを超えた旨が出ていた。

国内でも5月末時点で公募株式投信の残高が過去最高を更新しておりうち4割はETFが占めるなどその存在感が増している様子だが、一時1000円を超えた大幅安ですっかり鳴りを潜めていた日銀も本日は4月以来約2か月ぶりにETFを701億円購入しているなどこの辺も規模膨張に大きく影響しているのは間違いのないところ。

いずれにしても売買の機動性が高いうえ冒頭のようなVIXやVIなど一昔前には叶わなかったモノへ投資出来る枝葉が広がって来たのは感慨深く、金融緩和で膨張するホットマネーの受け皿として今後も対象資産の値上がりと共に資金流入も応分の伸びが継続されるのは想像に難くないか。


改定で見直し機運

本日の日経紙マーケット面には「物言う株主、親子上場標的」と題し、今月に改定されたコーポレート・ガバナンス・コードが上場子会社に高い統治体制を求めており、保有する小会社に比べ市場での評価が低い親会社はアクティビストの標的になり易いなど株式市場で親子上場銘柄への関心が高まっている旨の記事が載っていた。

ここでは冒頭で小会社の協和キリンが親会社のキリンHDの時価総額を抜いた件が挙げられていたほか同社を含め小会社が医薬メーカーの例が幾つか挙げられていたが、当欄でも先月にこの件を取り上げておりこれら以外でも特に時価総額が親会社パソナグループの5倍超にもなるベネフィットワンなどを挙げていた。

他にも時価総額が親会社ノーリツ鋼機の3倍超にもなるJMDCなど日経紙の一覧に載っていた以外でも挙げれば幾つも出て来るが、確かに親会社の営業利益に占める割合が3割を超えるなど子会社を完全子会社にするメリットが大きいという観点などからはこの一覧に載っていた大日本住友製薬など候補に上がってこようか。

前回は現実味に乏しいものの極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定と成り得るとも書いたが、既にアクティビストによる保有が粛々と進行している企業もありこの度のコーポレート・ガバナンス・コード改定は下鞘に甘んじている企業に改めて説明が求められる契機にもなろうか。


完全オンライン化へ

さて、この時期彼方此方の企業から定時株主総会の招集通知が届くが、今年は殆どが緊急事態宣言下にあった事で当然乍ら昨年に続いて招集通知にもかかわらず今年もまた「新型コロナウイルス感染拡大防止及び皆様の安全・安心の観点から株主総会当日のご来場をお控えいただくようお願い申し上げます。」等の一文が封筒に記されて企業が殆どであった。

斯様な事情から株主総会のオンライン化が課題となっていたが、これまで総会は会場を設置する事を条件にオンラインで行われるのが認められてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ改正産業競争力強化法が参議院本会議で可決・成立した。これによって国の事前確認を受ければ完全オンラインの形式で株主総会が開催出来るようになる。

こうした事で今年の総会ではこれに絡んで定款変更議案を諮る企業も少なくないが、感染症対策はもとよりこれまで何度となく言われてきた僻地開催企業への参加のハードルが無くなるなどメリットも多い一方、セキュリティ含めた通信インフラやなりすましの問題も課題になってくるが、何れにしろこれも以前より議論されていたものの踏み切れなかった件がコロナ禍で背中を押された事例と言えこうしたチャンスは生かしてゆきたいもの。


訳あり銘柄明暗

本日の日経紙・経済政策面には「経産省が頼る首相の一文」と題し、政府が18日に閣議決定する予定の成長戦略の原案にSPAC(特別買収目的会社)の解禁方針が盛り込まれた旨が書いてあったが、これに絡んでは当欄でも今月のアタマに「白紙小切手?」と題し取り上げていた通りでここから解禁に向けて侃々諤々といったところか。

この項の中ではSPACが先行する米国では本来なら上場基準を満たさないような企業が上場するリスクがあるとの一文があったが、昨晩のNY市場ではSPACを通じナスダックに上場した新興電気自動車メーカーのローズタウン・モーターズが今月に入ってから突然製品を生産開始する資金不足に陥り事業継承に疑義が生じているとSECに届けを出した事で約19%安と急落、まさにこれを象徴するような一件が市場をザワつかせていた。

一方でテスラのマスク氏によるビットコイン決済再開表明などから4万ドル回復となった相場を背景に多額のビットコインを保有するマイクロストラテジーは約16%高と大幅高し、ミーム銘柄のAMCエンターテインメントもイナゴ勢の呼びかけで再度浮上し約15%高と市場でも明暗が分かれた格好だが、S&P500種などが史上最高値を更新する裏で何れも問題銘柄の乱高下が実に不気味に映る。