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逃げ恥マーケット

このところサプライズな芸能人の結婚報道が散見されるが、先週は日本中がガッキーこと女優の新垣結衣さんと俳優の星野源氏の結婚報道でもちきりになった。5年前に大ヒットし一世を風靡した恋愛ドラマが現実化した格好になったワケだが、この手のパターンは「逃げ恥」放映の近いところでは前年15年の舞台嵐が丘で共演した女優の堀北真希さんと俳優の山本耕史氏なども居る。

ところで業界では話題の芸能人が結婚報道で「○○ロス」と話題になったパターンは翌日の株価に影響があるという相場と絡めたジンクスが以前より実しやかにあるが、なるほど上記の堀北真希・山本耕史両氏の時も翌日は下落、女優の石原さとみさんの時に至っては東証がシステム障害で終日停止追い込まれているのが記憶に新しい。

今回の逃げ恥婚では発表翌時の前場でこそ200円以上安くなる場面があったものの引けは辛うじて小反発となったが、個別では両者が出演しているCM企業9社中6社の株価がご祝儀買いで上昇、他に面白かったのは星野つながり?で星野リゾートが反発、また「可愛ガッキー」と読める?河合楽器まで買い物を集め年初来高値を更新するなどほとんど冗談とも取れる物色劇が展開された。

まあ河合楽器は巣ごもり需要好調から21年3月期通期連結営業利益が前期比18%増で着地の素地が背景にあるとはいえ、近年は一定のワードに過度に反応する頻度が確実に高くなって来た気がする。IT駆使が顕著化している最近ではバズったワードに関連しイナゴ勢が大挙するパターンも多いという表れなのかどうか、何れにせよ最近の環境を表す光景を垣間見た20日の市場であった。


逆鞘の憂鬱

さて、先週の日経紙には「歯科医悩ます「銀歯」高」と題して、 保険診療で代表的な銀歯を作成する仕入れ価格が混ぜ物の一つであるパラジウムの高騰などで近年大きく跳ね上がり、昨年から今年にかけては診療報酬上の告示価格に対する上鞘も顕著となってその鞘分が歯科医側の利幅を大きく圧迫しているという旨がでていた。

現在JIS規格では銀40%以上・金12%以上・パラジウムは20%以上と決められているが、強度を増す為にこのパラジウムは要。ちょうどこの記事が出た後に知人の歯科医師に会う機会があったのでこの辺を聞いてみたら、確かにキャストウェルも数年前は3万前後で調達出来たモノが最近だと9万円前後まで跳ね上がっておりヤレヤレという感じであった。

ただ確かに利幅は大きく減少してはいるものの新聞等で報じられているが如く銀歯の補綴一辺倒で黙って赤字を垂れ流している向きは少ないといい、その辺は近年チタン冠やCAD/CAM冠など保険の適用範囲も広がってきており双方共に選択肢もまた広がってきているだけにこの辺も一括りで酷い惨状というワケではなさそう。

とはいえ一長一短でチタン冠など硬度の面で人によって合う合わないがあり、ならばやはりジルコニアセラミック等がお勧めとなるもののなかなか全ての患者が自由診療に手を出せない部分もある。点数も順次上がってきているとはいえ昨今の市況環境も変わってきており、それらを鑑み公定価格も機動的な対応が必要な状況になってきているのかもしれない。


競争力強化の鍵

昨日の日経紙総合面には「東証、取引時間の延長検討」と題し、東証が仕事帰りの取引機会が増える個人投資家や、時差がある海外投資家の利便性を高めると同時に東証の国際競争力も挙げる狙いから現物株取引で夕方や夜間取引を軸に取引時間の延長を見据え証券会社などと調整を進める旨の記事が載っていた。

後場の時間延長や昼休みの廃止も含めた延長の具体策を練るとの事だが、この昼休み廃止論は今から11年前にも議論された件で、当時の当欄でも「欧米主要取引所は昼休みを設けないのが主流でグローバルな流れからもそういった機運になってきたか。」と書いていた。侃々諤々の末に辛うじて30分の短縮が叶ったが果たして今回は如何に。

そういえば昼休み撤廃論が出た当時は前引け・後場寄りのギャップを狙ってスキャルピングを狙う向きも多数居たものだったがHFT業者が蔓延る現在では随分と光景も変わっている。また当時はコストの問題もあって時間延長が対面メインの中小証券等の反対に遭った経緯があったが時代の流れで当時とは状況も異なってきている。

場が立っていない時間の材料を受けた取引は海外やPTSへという流れだが、PTSは米国の取引量に占める割合が約30%なのに対して日本では双璧の2社合計でも7〜8%程度と振るわない。私設取引も課題を抱え試行錯誤が継続しているが、何れにせよ取引システムの刷新が予定される2024年を睨み大幅な見直しが具現化する否か注目されるところ。


場当たり要請?

さて目下のところ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が鋭意延長中だが、先週末から高級ブランド等の営業を拡大させていたそごう・西武など百貨店大手は都からの要請で20日から当面の間高級衣料売り場を休業すると発表している。実にわずか1週間ほどで再び休業の憂き目に遭った格好だが、他の老舗大手もどう対応すべきか検討しているという。

この辺に関しては当初は「生活必需品」のガイドラインを明確に定めておらず百貨店各社の裁量に委ねられていたものだったが、当欄で何度か取り上げたホテルの大広間で開催される「逸品会」などのイベントなら兎も角も百貨店の高級ブランドフロアで人が密になる光景は考え辛くこの辺も一括りで縛ってしまっている弊害だろうか。

また百貨店といえばテナントで入っている某サロンに施術の予約をしていたところ施術のメニューでもあるものはOK、しかし一連の施術延長線上にある別のメニューはNGでキャンセル扱い要請の電話があった旨の話を知人から聞いたが、当の現場スタッフもこの辺には甚だ疑問を感じているらしい。

生活必需品に限らず予てよりイベント関係は開催OKで美術館や動物園、映画館はNG等という線引きがわかりにくいとの指摘は多く、あまりに場当たり的と都や政府への憤りを感じている向きは多いだろう。人流抑制のエビデンスや宣言解除の目安となる明確な数値の提示も無く、押し付けの要請で振り回すやり方も何れ何処かで限界が訪れようか。


普及への距離感

さて先週はインフレ懸念が売りを誘い日米共に株価が大きく突っ込みを見せたが、株式と共に大きく値を崩したモノにビットコインはじめとした暗号資産もあった。この辺の背景の一つには2月にビットコインを15億ドル購入し翌月には米でEV等の自社製品についてビットコインンによる決済を受け入れ始めたものの、先週に一転してこのサービスを停止表明したところが大きい。

当初年内には米国外にも拡大すると意欲を見せていた話題のサービス導入発表からわずか3ヵ月での方針一転の背景には環境に大きな負荷をかけてはいけないとの理由があったようだが、今朝はテスラの売却否定発言で漸く下げ止まったビットコイン相場も発言直後には約10%ほど下落しテスラ本体も約3%下落し4日続落となっていた。

またマスク氏といえばわずか1ヵ月の間に800%の暴騰を演じた同じ暗号資産のドージコン支援も有名なところだが、こちらも米人気バラエティー番組内で詐欺とを発言したのを受けて同番組放映時間後に3割以上もの暴落を演じている。斯様な急変動を目の当たりにすると、他企業も挙って決済手段としての参入を計画しているもののその普及にはやはり疑問を感じざるを得ないのが正直なところか。

ボラティリティに対する仕組みの構築や関連手数料コスト、盗難リスクの問題等々課題は多いが、SECなどは予てより暗号資産市場へ監視を強めている。また直近では米司法省とIRSが暗号資産交換業者で世界最大規模のバイナンスHDに対してマネロンや脱税などの疑いで情報収集しているとの報も入ってきており先ずはこの辺の動向を注視しておきたい。


ダイハード4.0の現実化

今週は周知の通り米国最大の石油パイプライン運営コロニアル・パイプラインがハッカー集団らと思われるサイバー攻撃に遭いパイプラインの稼働停止にまで至ったとの報が世間を騒がせていたが、先の水道浄水施設のハッカー攻撃と併せ2007年に公開されヒットしたハッカー集団が金融機関やインフラを狙うという筋書きの映画「ダイハード4.0」が瞬時に思い出された。

14年前の娯楽映画がまさか本当に現実のものになってしまうとは当時は想像もしなかったが、これに限らず本邦企業も先月から今月にかけてだけでもゼネコン大手の鹿島、センサー機器大手のキーエンス、また直近では印刷機大手の小森コーポレーションなど続々とハッカー集団によるサイバー攻撃に遭い金銭の支払いを要求されるなどの被害に遭っている。

本日政府はサイバー攻撃を念頭にサイバー分野の防御力を強化するのが柱の次期サイバーセキュリティー戦略の骨子をまとめ昨日発足が正式に決まったデジタル庁との連携も進める構えだが、台湾など近隣諸国と比較しても先のコロナウイルス接触確認アプリのお粗末さに見られるようにデジタル分野でも心もとないのが現状。一昨日取り上げたワクチン同様にこの分野も後進国落ちと揶揄されぬよう官民共に対策強化が喫緊の課題なのは言うまでもない。


世界経済の覇者

さてインフレ懸念から直近でこそマネーが流出している米のテック株群だが、これらのうち主力のGAFAは先月末までに発表された21年1〜3月期決算ではアルファベットの純利益が1年前の2.6倍、アップルは同2.1倍、フェイスブックも同1.9倍、アマゾンは巣ごもり消費に加えクラウドサービス事業も好調で実に3.2倍と何れの企業も破竹の勢いとなっていた。

というワケではこのGAFAが3ヵ月で稼いだ利益は実に6兆4000億円とまさに前代未聞な数字となり何かと本邦企業と比較するのもあれだが、例えば日本を代表?するトヨタ自動車の昨年の純利益が約2兆円相当として考えると実に同社の3年分の利益をたったの3ヵ月で稼いだ計算になる。

昨年はテスラの時価総額がトヨタ自動車のそれを超えたのも束の間、わずか半年足らずであっという間にこのトヨタ自動車含めた日本を代表する自動車9社をも上回った旨を書いたのを思い出すが、改めて日米の新陳代謝の違いを見せつけられると共にイノベーション力を武器にビジネス拡大を狙っていたかつてのガムシャラさがすっかり色褪せてしまった感は否めない。


株もワクチンも

本日の日経平均は値嵩系への売りなどから4営業日ぶりに急反落となっていたが、先週の日経紙夕刊・投信番付で冒頭に「日本株の上昇率は中・長期で欧米株に見劣りし、いまだ史上最高値を更新できていない。」との一文があった通りでマーケット関係者は一様に口を揃えてこの出遅れを指摘する声が多い。

機関投資家需要含め様々な要因が考えられるが、ワクチン格差や直近の中国問題を挙げる声も多い。ワクチンに関しては昨日の日経紙・インサイドアウトに新型コロナウイルスワクチン開発で日本は米中ロばかりかベトナムやインドにさえ遅れを取っている旨が書かれていたが、果たしてその接種率も惨憺たるものでこの影響がサービス業のPMIなどに色濃く表れているところ。

もう一つの中国問題といえばやはり新疆ウイグル自治区問題だが、日経平均への寄与度の高いファーストリテイリングなどの主力がこうした渦中に居るだけにこの辺が足を引っ張っているか。何れにせよワクチンにしても生産拠点にさえなれない現状を見るに後進国に成り下がったと言われても止む無し。本日の日経朝刊には宝島社の考えさせられる全面広告があったが、マーケットも政治・行政劣化の影響を受けている部分も多分にあろうか。


親超え企業価値

さてGW期間で営業日が2日のみであった先週の株式市場だが、先週末の日経紙投資情報面にて「時価総額でキリンHD超え」と題し取り上げられていた通り、協和キリンの時価総額が同社株の5割を保有する親会社のキリンHDを初めて上回るという所謂「親子逆転」現象が見られた。

2008年にキリンHDが連結子会社として以来協和キリンの下鞘が通常であったが、昨今のキリンHDはミャンマー政変による事業影響への懸念から右肩下がりが続く一方、協和キリンは骨の病気の治療薬や新薬開発への期待を背景に値位置を切り上げ先週末には年初来高値更新と対照的である。

同紙ではこの手では他にGMOインターネット・GMOペイメントゲートウェイ等も挙げられていたが、これら以外でも例えば大型TOBが成立したNTT・NTTドコモも然り、またパソナグループが株式の50%を保有する傘下のベネフィットワンなどはその時価総額がパソナの5倍超となるなど冒頭の協和キリンどころではない格差だ。

これら極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定とも成り得るワケで、企業価値の逆転現象に対しアクティビスト含めた投資家の視線も厳しくなるにつれ下鞘な時価総額に甘んじている「親」も企業統治の観点含めその身の振り方が問われる場面が出て来る可能性も今後高くなりそうな気がする。


オリジナル証明?

さて、前回は過剰流動性の受け皿となっている現代アートのオークションなどを取り上げたが、もう一つの受け皿として最近話題になっているモノにNFT(非代替性トークン)なるものがある。ちょうど4日の日経紙でも「高騰デジタル資産アートか投機か」と題しデジタルで作成したアート作品や音楽を売買する市場が個人間でも高値で落札されるケースが出て来るなど急速に拡大する旨が出ていた。

このNFT、なんとなくその存在を知ったのが一寸前に世間を騒がせたツイッター創業者の最初のツイートに3億円の値が付いた件か。またあの老舗クリスティーズが現代アートのNFT一作品をオークションにかけたとの報もけっこうな驚きであったが、それが実に約75億円という誰もが知る著名画家並みの値段で落札された報も衝撃であった。

これら巨額の案件はそれとして若手のVRアートやゲーム会社によるトレーディングカードなども瞬時に売り切れる鉄火場市場となっているが、上記の含めこうした熱には当然ながら暗号資産の高騰という背景がある。ブロックチェーンの絡みでビットコインと共に史上最高値を更新したイーサリアムもロスチャイルド・インベストメントがその投信を購入するなど枝葉の動きも顕著になってきている。

しかし普通に考えればデータそのものはコピー出来るモノに付ける値としては本質を無視したようにも思え、暗号資産バブル?終焉まで適正価格という部分に関しては疑問符も付くが、曲がりなりにもオークションにかけ難かったデジタルモノをNFTが解決しクリスティーズでさえテクノロジーを活用し新たしいマーケットに進出している事に改めて時代の潮流を感じるというもの。


投資対象としての受け皿

さて先週の日経紙夕刊でニューアートラボの「草間彌生展」の広告が載っているのを見たが、この草間氏の作品は言わずもがな何所のオークションでも人気で、ちょうど先週末に代官山で開催されたSBIアートオークションは2018年に360万円の値が付いた同氏を象徴する題材の「かぼちゃ(上海南瓜)」が今回約2倍の額の落札となった。

昨今の株高とも相俟って過剰流動性は投資対象の一つとしてアートの世界へもグイグイ侵食してきたが、この辺は当欄で2月に取り上げたニューオータニで開催された「春の逸品会」でも見られた通りで、外商さんが小走りに忙しく行き交う会場内の各ブースでは高額品が続々と成約され顧客が気分良さそうにシャンパングラスを傾けている光景が彼方此方で見られた。

この時も書いたがダイヤのルースから不動産、時計に至るまで現在のマーケットは投資対象としても裾野の広がりを見せ循環も効いており、冒頭のオークションも3ヵ月に1回程度開催されており登録制となっているがこの1年で新たに約2300名が登録したという。過去の金融緩和局面と比べてもコロナ禍でサービス消費に流れ難いぶん、高額品にこの手の富裕層のマネーが向い易い環境となっているだけにまだ対象範囲の伸び代はあるか。