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警鐘

先週は日経夕刊・注目ニュース番付にも出ていた通り米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの報が話題になっていた。レバレッジ取引において追証要請に応じられず、これに絡んでいた日本勢ではプライムブローカーカレッジ取引で野村HDが約2200億円、ほどなくして三菱UFJ証券HDも英子会社で約300億円、新年度になってからやれやれ?とみずほフィナンシャルグループも約100億円規模の損失可能性の発表と報じられている。

このアルケゴス、かつてパラジウムの買い占めで名を轟かせたあのタイガー・マネージメントの出身者の資産管理会社であるが、報じられているところによればそのレバレッジは常識からかけ離れた実に800%とも2000%とも伝えられている。ヘッジファンドなら斯様に無茶なレバはかけられないが詳細のディスクロが求められないファミリーオフィスだからこそ出来た芸当といったところか。

当初は先のゲームストップ株のように個人勢によるポジション狙いの投機的動きがトリガーになったとされ第2のアルケゴスも出ると実しやかに喧伝されていたようだが、それは兎も角も今回上記のような異常なレバレッジ取引が出来たのも金融機関が多額の手数料収入を目当てに取引も人物も高リスクな物に多額の与信を行った点は否めない。

規制・監督当局も事態を注視しているというが、過剰流動性相場が続きボラが大きくなっているなか金融機関のリスク管理体制が問われそこに焦点が集まれば今後金融規制強化の議論に繋がる恐れもあるかもしれない。あのリーマンショックからはや10年以上が経過、当の米では主要株価指数が揃って史上最高値を更新するなか「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の諺を改めて思い出させるような事件が今起きたのは何かの警鐘か。


環境問題とPGM

さて昨日の日経紙商品面では「触媒貴金属 再び最高値圏」と題しガソリン車用触媒に使うパラジウムの国際価格が、自動車生産回復に伴う需要復調のなか主要生産国の供給懸念がにわかに強まった事を背景に、ニューヨーク市場の先物で昨年2月末に付けた史上最高値以来1年1ヵ月ぶりの水準まで急騰している旨が出ていた。

また同じくガソリン車の排ガス触媒に使うロジウムや、電子部品製造や水素生成の際の触媒等に使うイリジウムもエコブームのなか主要国の環境対策強化などを背景に急騰。同紙では5年前比で冒頭のパラジウムは約5倍、上記のロジウムは40倍を超える高騰とあったが、イリジウムもまた然りで約10倍に高騰している。

ところでこれら白金系レアメタルはプラチナの副産物として産出されるが、このプラチナもここ最近は値上がり急で昨年11月から直近までの騰落率では首位のビットコイン、2位の原油に次ぐ3位に付け注目を浴びている。上記レアメタルは電気自動車が本格普及するまでの間のガソリン車温暖化対策を背景としているが、プラチナもディーゼル車の排ガス浄化装置のほか燃料電池車の発電装置向け需要期待が背景にある。

金の下鞘に甘んじてはや数年プラチナも漸く覚醒かといったところだが、いずれにしろSDGsの掛け声が喧しい現代において今後一段と進む持続可能な社会への転換過程で常に付き纏うリスクとしてこれらに不可欠な資源不足の問題があり、これらに対応するべく更なる技術革新などが課題となってこようか。


サブスク彼是

さて鉄道各社の業績下方修正が相次いでいるが、先週末には小田急電鉄が再開発を巡る減損が響いて2021年3月期の連結最終損益が従来予想より赤字幅が拡大しそうだとの発表をしていた。ところでこの小田急電鉄といえば先月にアプリを利用した飲食・物販のサブスクチケットを発売している。

同サービスは税込み7,800円で30日間利用可能、小田急線ターミナル駅などに入る形44店舗が対象で飲食などは3時間間隔を空ければ何度でも利用可能で生花も期間中5回まで提供されるという。鉄道系では先にJR東が1日1本ペットボトル飲料を受け取れるサブスクを試みているが、初回は募集枠に対しその20倍近くの申し込みが殺到した経緯がある。

しかしサブスクといえば近年は上記のような食はもとより、ブランド品含めた服や時計、香水から美容サロンの類に最近ではラグジュアリーホテルに至るまで衣・食・住全てが網羅されている。外出も減るなか気に入れば継続、要らなくなれば解約と気軽に借りる感覚とモノを持たない暮らしが現代では本当に支持されるようになったとつくづくという感じだ。


PTSの課題

さて、先週末の日経紙金融経済面には「米CBOE、アジア進出」と題し、米取引所大手CBOE(シカゴ・オプション取引所)を運営するCBOEグローバル・マーケッツが手薄のアジア太平洋地域進出する狙いで、日本のPTS(私設取引システム)であるチャイエックス・ジャパンを米投資ファンドJCフラワーズから買い取り買収する旨が出ていた。

現在日本のPTSは上記のチャイエックス・ジャパンとジャパンネクスト証券だけであるが、日本の株式取引量で見るとPTSはこの2社を合計しても7〜8%程度と米国の約30%からしても見劣り感は否めない。近いところでも先に東証がシステム障害を起こし全銘柄の売買停止に追い込まれた際、渦中のJPXや同システムを請け負った富士通がPTS市場で売り物を浴びていたのを思い出すが如何せんリクイディティーの薄さが指摘されていた経緯がある。

PTSに絡んでは今月にSBIホールディングスと三井住友FGが共同で私設取引所運営会社を設立と先に報じられているが、上記のような不測の事態にこうした代替市場がバックアップになれる為には常日頃から幅広い投資家が参加しそれなりのマーケットシェアが活発に行われていないとこの辺は難しく、やはり取り扱い会員を増やし当欄でも何度か指摘したがマル信の解禁など投資家の裾野を広げリクイディティーを高めてゆくのが喫緊の課題か。


インバウンド下剋上

さて、先週は国土交通省から2021年1月1日時点の公示地価が発表されているが、全用途の全国平均は前年比で0.5%のマイナスと6年ぶりに下落に転じていた。特に都市部の商業地で下落が酷かったのが大阪の所謂ミナミの辺りで道頓堀や難波、心斎橋地区等で5位までは実に20%を超える下落率となっていた。

一方東京圏ではさすがに下落率20%とはいかないまでも、下落率トップであったクラブ街の銀座8丁目は12.8%と10%を超える下落率。これに台東区西浅草2、台東区浅草1、千代田区有楽町1、新宿区歌舞伎町2といずれも10%を超える下落率となっているが、上記のミナミ地区と共に観光地や飲食店などインバウンド需要が消滅してしまった部分が如実に表れた格好。

また同じ関東圏の住宅地もコロナ禍の影響で何所もマイナスとなるなかテレワークの普及で住環境のプライオリティ等から唯一上昇を見せたのが千葉、千葉といえば昨年もネット通販の好調を背景にした物流施設ニーズの高さを映し二桁の値上がりを見せた所もあったのを思い出すが、大手の本社移転や体験型施設等の引き合いもありコロナ禍でこの辺の勢力図も昨年からの塗り替りが継続されている。


成長市場

さて当欄でも何度か取り上げた植物肉だが、今月も大手などからのリリースが目立った。ザッと挙げてもおまめさんで有名なフジッコが「大豆ライス」を開発、いなり寿司やガパオなどに使用してネット通販で販売予定、またプリマハムも大豆を原料とした植物肉を今月から商品化し、ニップンも独自開発した「豆腐ミート」を使った冷凍ボロネーゼパスタを今月から発売している。

変り種ではマルサンアイも今月から豆乳を原料にしたスライスチーズのような「大豆スライス」の販売を開始しているが、これらに先駆け商品化されたモノも当然乍ら多く最近では大手スーパーなどでも本当によくこの手を目にするようになってきた。そのスーパー本体もイオンなど消費者の多様性に応える為に昨年からPBで植物肉市場への取り組みを拡大している。

この手の嗜好は以前でこそ宗教上の理由等が圧倒的であったものの、何れの商品も低糖質・高たんぱくという特性から近年では健康や美容の観点から需要の高まりが顕著だ。また近年のESGの考えが産業界でも広がりを見せ各社共に積極的な取り組みを見せるなか、世界的超低金利による運用難を背景にこうした環境負荷の低い代替食品需要から市場成長性に着目した機関投資家も食指を動かしてきており欧米の後追いが今後加速してくるかどうか注目である。


旬なTOB

本日も日経平均は大幅に4日続落と下げ止まらないが、そんななか逆行高の急騰で目立った個別といえば船井電機で比例配分ストップ高となり2,000万株近い買い成り行き買いを残して引けていた。背景にはコンピュータ・ビジネス書籍出版の秀和システムが早期の経営立て直しを目指す同社に対してTOBを実施、918円というTOB価格にサヤ寄せした格好だ。

ところでM&Aといえば2020年の日本で届け出のあったTOBの件数はM&A助言レフコによれば57件と19年比で9件の増加となっていたが、その買い付け金額は19年比で8割も増加し過去最高水準となった模様で、今年に入っても既に1〜2月で17年の年間金額を上回るなど活発している模様だ。

冒頭の船井電機の場合は昨日の取締役会でもこのTOBに賛同する事が決議されている通り敵対的ケースではないが、当欄でも昨年取り上げた前田建設工業による前田道路へのTOBや、今年に入ってからは直近の日本製鉄による東京製綱へのTOBなどいずれも敵対的TOBとなっており最近は従来禁忌とされてきた上場大手間でもこの手のケースが目立つようになった感がある。

昨日も持ち合い株の合理性がコーポレートガバナンスコードを背景に一段と問われる事になると書いたが、斯様な持ち合い解消など背景にM&Aに絡む活動は活発化しており上場企業のみならずアクティビスト本体が中堅どころを狙ってTOBを仕掛けている最中の案件もあるなど喧しく、噂ベースでも水面下で動いている話が複数入ってきており今後もこうした動きはますます顕著化する事は想像に難くない。


炙り出される持ち合い株

さて昨日の日経平均は先週末に続いて600円を超える大幅続落となったが、そんな急落の中でも逆行高し年初来高値を更新していたものにNECがある。顔認証技術を活用して熟練医師でも判断が難しい病変などを高精度で見つけ出す事に成功したとの報が背景にあるが、もう一つ同社といえば香港市場に上場する半導体関連の「華虹半導体有言公司」の全株式売却を先に発表している。

同社はIFRSを採用しているために純利益に変動はないもののその売却益は581億円にのぼる。この手では三菱マテリアルもまたSUMCO株を売却し21年3月期には126億円の売却益を見込んでいるが、斯様に大手の所謂政策保有株の売却が進行しており先週の日経紙には2020年4月から今月中旬までの売却益の合計は20年3月期比で5割増しになった旨が出ていた。

来る東証再編の上場基準も睨んで今後は政策保有株の売却要請も進むと思われるがもう一つ、上場企業の持ち合い株が日本株全体の時価総額の約5%を占めるといわれているなかコーポレートガバナンスコード改定を背景にその保有合理性が一段と問われる事にもなるだけに今後も最後の炙り出しが促進される事になろうか。


金融政策株価明暗

さて先週行われた米FOMCと共に注目された日銀金融政策決定会合は、金融緩和長期化を睨みETFの購入を柔軟にしたり長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力を高める政策修正が行われる事となったが、特に前者のETF買い入れ政策変更は日経平均へのネガティブインパクトが大きく週末と本日の2営業日で1,000円を超える急落をもたらしている。

即ちETFは原則年6兆円としていた縛りを無くしその購入対象は日経平均型を止めTOPIX型に一本化するというものだが、個別では最も高寄与度で吸い上げ顕著とのイメージの強いファーストリテイリングは後場から急変、その株価は97000円台からものの30分程度で90000円スレスレまでの急落を演じ本日も4000円超の大幅続落と2営業日で10000円を超える暴落を演じた。

ネガティブインパクトといえば買い入れ上限据え置きとなったREITの個別もまた軟調展開を強いられたが、一方で許容する長期金利変動幅拡大との決定で貸出事業の収益改善期待から18日は銀行株の急伸が目立ち、翌日の週末は三菱東京UFJFG、三井住友FG、そしてみずほFGのメガバンク群が揃って年初来高値を更新していた。

予てより下げ相場の過程でも日銀によるETFの買い入れがパタリと止まった旨でマーケットはその「布石」にザワついていたものだが、やはり次に進む公表となると改めてその反応も顕著になるもの。出口を見据え保有構造の正常化に向けた応分の副作用もあろうが戦略の試行錯誤はまだまだ続くか。


復帰後の道のり 

本日は東芝の筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネージメントとファラロンらアクティビストによる株主提案を審議する臨時株主総会が都内で開催された。同社は先月に2021年3月期の連結純利益見通しを上方修正し配当も上積みすると発表しているが、当欄でも昨年触れたところの定時総会運営を巡っての事務処理等の不適切処理や議決権行使を巡り一部圧力があったとの疑いに絡んだ株主側要求による異例の臨時総会開催となった。

この件でこれまで東芝側は集計作業その他について調査を実施した事で更なる調査の必要性は無いと反対していた経緯があったが、果たしてエフィッシモの提案が賛成多数で可決された。欧米等では電子的議決権行使が主流となっている現代において旧態依然な郵送形式に加え株主総会が集中する特異な形態という問題も背景にあったものの、やはり最も基本的な株主の権利を損ないかねない部分の是正は喫緊の課題ともいえる。

今後は6月の定時株主総会で結果が報告される予定となっているが、一方で昨年11月公表の新経営方針に関してファラロンから出されていた議案に関しては賛成少数で否決された。先にめでたく?二部から一部へ悲願の復帰を果たした同社も再建途上で株主構成など大きく変わりその影響から緊張関係が続いているが、一部復帰が株主との新たな関係を構築する契機になるか否か引き続き注目される。


サイダーとガバナンス

さて、当欄では昨年の11月にドン・キホーテがファミリーマートにTOBを仕掛けた際に当時の社長が知人に自社株の購入を不正に推奨した疑いで東京地検特捜部が動いている旨を取り上げたが、先週に行われた初公判の罪状認否ではその起訴内容を認め知人へのストロングレコメンドであった事が明らかになっている。

末尾では同氏の突然の退任もこの辺が絡んでいたのか否かと書いたが、トップがインサイダーに関与するというレアケースであった。インサイダー取引といえばもう一つ、先週の日経紙法務面にもデンソーとの業務提携に絡みマザーズ上場のモルフォ株を巡るインサイダー取引訴訟の判決も注目を集めている旨が出ていた。

こちらも元役員から従業員持ち株会に目を付けられた社員まで複数名対象となっていたが、一審では金融庁の認定が全面的に否定され一律の線引きに待ったが掛かった格好となった。今後の経緯が注目されるケースだが、何れにせよ企業側のこの手の規制に対する更なる周知徹底含めガバナンス体制の強化が今後も益々求められようか。


媒体の変遷

本日も日経平均は6日続伸となりザラバでは先月25日以来3週間ぶりに3万円の大台に乗せる場面があったが、ちょうど1週間前の日経紙・投資情報面には「下げ経験なくリスク膨張」と題し個人投資家のリスクテークの現状が載っていたがその冒頭にはインフルエンサーが勧めていた銘柄を買ったが塩漬けになったという投資家の話が出ていた。

さてこのインフルエンサーといえば先週はツイッター上で著名な投資家が、ジャスダック上場銘柄の株価を不正に操作したとして金商法違反の疑いで逮捕された旨の報道があったばかり。保証金に絡んでの犯行なのか増担保規制解除目的の操作だったというが、同氏には実に5万を超えるフォロワーが控えており以前より同氏の銘柄には注目が集まっていた経緯がある。

時折金融界にも的を射た?苦言も呈していたが逮捕されてしまっては元も子もない。ネット上での株価操作といえば少し前になるがH・Pで一世風靡した大物仕手筋をバックにチラつかせ煽り数十億も抜いた事件があり現代ならではの仕手戦を見たと思ったものだが、あれから更にネット証券口座は急増しSNSも急速に発達してきた近年では投資家のツールも自ずとそういったモノへ傾斜が著しくつくづく時代の流れを感じざるを得ない。