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値上げ浸透の壁

今月も大手各社の電気料金やガス料金が更なる値上げとなるが、昨年に発表されていた生活必需品の値上げも今月から具現化する。ザッとみても毎日の食卓に欠かせない食パンが山崎パンはじめ敷島製パン、フジパンなどで平均約4~14%程度の値上げとなり、スナックもカルビーと湖池屋の双璧がポテチなどを順次値上げ、また文房具もコクヨが20品目を平均8%値上げする。

また来月に入るとこれまた食卓に欠かせないパスタやパスタソースなど日清フーズやニップン等で約2~10%の値上げとなり、昨年は専門スーパーまで出来た冷凍食品も味の素はじめニッスイ、マルハニチロなどが約2~20%程度を値上げ、日本ハムもハムやソーセージを5~12%値上げ、Jオイルミルズの食用油やアヲハタのジャム、キッコーマンも約14年ぶりに醤油などが値上げとなる。

これらにとどまらず年後半にはこの値上がり傾向が更に加速すると予測されており、値上げが家計に及ぼす影響は消費税が10%に引き上げられた19年並みに匹敵するともいわれる。依然として消費者の根強い節約傾向が続くなかで今後何所まで値上げが浸透するのかが焦点となるが、先に書いたように十分な価格転嫁も適わない中で企業側も最適なバランスの模索が引き続き課題となってくる。


初売り模様

さて、先週末はマグロの初競りを取り上げたが、大手百貨店4社も先週に初売りの売上高を発表している。昨年は新型コロナウイルスの影響で販売を自粛した福袋が多くの店で店頭販売が本格再開となった事などを背景に、都内の旗艦店ではどこも開店前の行列が前年比で数倍となりその売上高は前年比で2~5割増加したという。

とはいえこの初売りもコロナ禍前の2020年と比べると3割ほどの減少となっており、売り上げ回復の起爆剤として例年より販売を強化しているのが今年本格再開となった上記の福袋で、各社では年末年始に絡んだ重要な商戦になるが今年もコロナ禍が続くと見て「密回避」がキーワードになっているモノが見受けられた。

松屋は昨今流行のサウナに絡めて「サウナでととのう福袋」を展開、西武は瞑想の為の個室「メディテーションポッド」を495万円で販売、高島屋では密を避けるレジャーをテーマに移動式のグランピング用テント「ZERO POD」を190万円で販売するなど各社自宅で楽しめるコロナ禍消費を意識したユニークな品を揃え今年は前年を大幅に上回ったのは間違いのないところだが、何れにせよウィズコロナを睨んだ販売戦略が今年もキーになって来るか。


鮪初セリ2022

さて今週は各所でいろいろな初競りが行われたが、もはや新春の風物詩ともなった恒例の鮪の初競りも昨日豊洲市場で行われた。昨年はコロナ禍で飲食業界が打撃を受けている現状からこれまで8回にわたり1番マグロを落として来たすしざんまいを展開する「喜代村」が落札を差し控えたが、果たして今年も昨年に続いて「やま幸」が1本1688万円でこれを競り落とした。

ところでこの「やま幸」といえば鮪の渡る先は銀座に総本店を構える高級すし店「銀座おのでら」の各店という事になるが、ニューヨークやロサンゼルスなど世界各地に店を構えミシュランの星も獲得しているココは昨年に表参道にて新形態の回転ずしや立ち食い店をオープンしており競り落とした1番マグロは早速ここで破格の値段で振る舞われた。

お祭りとしては喜代村の戦線離脱は寂しい気もするが、かれこれ3年目に突入するコロナ禍の影響で予想以上に中間帯の飲食業界は疲弊しており費用対効果を狙い巨額を投じるのも憚られるというところなのだろう。一方でおのでらのような高級路線もコースでは叶わぬような一貫から気軽に食べられ、客単価も総本店の約六分の一ほどで済む上記のような新形態を展開するなど寿司の空白地帯を狙って果敢に攻める動きが出て来ている点などまた興味深いところだ。


世界10大リスク2022

本日の日経紙グローバル市場面には投資ファンド大手ブラックストーン・グループのバイロンウィーン氏の「びっくり10大予想」が出ていたがこれは後述するとして、昨日の日経紙夕刊の総合面には同じく年明け恒例モノで米政治学者イア・ブレマー氏率いるユーラシア・グループの「世界10大リスク」が載っていた。

昨年はバイデン大統領を首位に挙げ米国内政治を最大のリスクとしていたが、果たして今年もまた3位には今秋に行われる米中間選挙が入り、バイデン政権下での米国内の分断や民主主義システムの機能不全が深刻化し次期大統領選に向けた歴史的な転換点になる可能性があるとしている。

また昨日の日経夕刊の一面を飾っていたのは米アップルの時価総額が一時3兆ドルを突破したとの記事だが、2位に挙がったのは巨大ハイテク企業による支配とある。思えば2018年にアップルは1兆ドルを初めて突破しその2年後に倍の2兆ドルの大台超え、更にそこから1年4ヵ月で3兆ドル突破という驚異の大化けだ。ここ一社で実に東証一部の時価総額の半分に迫る凄まじさだが、この巨象に世界経済が振り回される事にならないか確かに脅威でもある。

そして首位には中国のゼロコロナ政策の失敗を挙げており、昨年は著しく成功したかのように見えたこの政策も新たな変異ウイルス・オミクロン株に直面するなか感染を完全に抑制出来ず経済混乱は世界に広がるとしている。コロナ政策もさることながら既に製造業や非製造業のPMIは右肩下がりのトレンドが出来上がっており、景気失速が顕在化してくる不安要因も抱えているだけに今年も注意が怠れないか。


寅は千里を走る

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

周知の通り昨年も引き続き新型コロナウイルスの第三波にと共に始まり相次ぐ変異株に振り回された一年となったが、そんな中で経済活動の再開などを背景にマーケットも記録ずくめとなり、商品の総合的な値動きを示すCRB指数は20年末に比べて40%も高く年間上昇率は1994年以降で最大となった。

外為市場では円が主要25通貨で最弱の値動きとなり115円台に、年末時点で対ドルでは15年以来の下落を演じた。一方で株式は米株に連動する格好で2月にはおよそ30年半ぶりに終値で3万円大台を回復するもあと8月の年初来安値まで失速、ところが政局を睨みながら1ヵ月もしないうちに年初来高値を演じその後も乱高下と非常にボラタイルな動きとなった。

今年の干支は寅。相場格言では「寅は千里を走る」と勢いは良さそうに聞こえ本日の大発会も4年ぶりに急反発の値上がりを演じたが、東証取引再開以来では景気後退や停滞が重なり1勝5敗と十二支ではワーストである。景気や株価が大きく動くアノマリーというがなるほど今年の重要イベントには北京五輪にはじまり韓国大統領選、夏の参院選、そして米中間選挙等々マーケットに関るイベントが多くあるだけに注目の寅年となりそうだ。


2021年度「商品先物ネット取引データ調査・分析結果」を公開

11月末時点で商品先物ネット取引サービスを提供する10社に対し、11月29日〜12月10日の期間で実施した「商品先物ネット取引データアンケート」を集計・分析した結果を本日12月28日に公開しました。総口座数・実働口座数・預り証拠金・月間売買高など各項目別に結果を公開しランキング表示を行っております。

▼商品先物ネット取引各社データ集計結果(2021年10月度)



【調査結果サマリー】
★2021年10月末時点での預り規模はホールセール込で推計約323億円
★2021年10月末時点での総口座数は推計19637口座、実働は推計4471口座
★売買高は2021年10月度は60万枚(ホールセール込)、44万枚(一般対象)

【掲載項目】
[総合]
2021年10月度ネット取引各社取引データ一覧、関連データ業界全体比較
[各種ランク]
総口座数、実働口座数、預り高、売買高、注文件数、口座増加数、口座稼働率、枚数/オーダー、1口座あたり預り・売買高、1担当者あたり預り・売買高

アンケートにご返答頂いた企業・担当者の皆様、お忙しい中ご対応頂き誠に有難う御座いました!


コロナ禍2021

さて、日本漢字能力検定協会が2021年の世相を1字で表す「今年の漢字」は周知の通り「金」に決定している。今年で27回目となる今年の漢字だが、この「金」は過去の2016年のリオ五輪、2012年のロンドンオリンピック、そして2000年のシドニーオリンピックの時にも選出されておりこれで4度目となった。

コロナが出て来て以降世相を表すこの手のシリーズはどれもこれもコロナ禍絡みが占めていたが、一筋の光明へ期待を込めた感がこの金に見え隠れする気がしないでもない。光明といえばこの時期の風物詩でもある各所でのイルミネーションも、昨年は軒並み中止含みに追い込まれ文字通りクリスマスがサイレンナイトとなったが今年は昨年とは風景が異なる。

先にも書いたように今年はメジャーなところで表参道の欅ライトアップが2年ぶりに復活し、また目黒川沿いでも2年ぶりに目黒川みんなのイルミネーション2021が復活しおよそ22万個のLEDが輝く。丸の内から日比谷ミッドタウンにかけてもいわずもがなで煌びやかなイルミネーションが復活している。

また去年は新型コロナの影響で終夜運転を中止したが、今年は2年ぶりにJR東日本など大晦日から元旦にかけて山手線など首都圏九つの路線で終夜運転を行う。今年もほぼ緊急事態宣言下で終った1年であったがその過ごし方も変わってきた年でもあり、上記のように昨年と違って行事やイベントは中止という事ではなく何とか工夫して実施するという動きが始まっている。

コロナ禍も3年目に突入するが、来年こそほぼ自由に行動出来る明るい世になるよう願いを込めて今年はこれで筆を擱きたい。

本年もご愛読ありがとうございました。どうか来年が皆様にとってよい年でありますように。


要のZ世代

さて、この師走に入ると来年ヒットするのは何かと各所での予想が喧しいが日経紙では今月アタマに2021年の日経MJヒット商品番付を発表している。東西でベストスリーとなる関脇から見てみると東はシン・エヴァンゲリオン劇場版に対して西のイカゲーム、大関は東の東京五輪・パラリンピックに対して西のサステナブル商品、そして横綱の東はZ世代、西は大谷翔平であった。

関脇のシン・エヴァンゲリオンは劇場版シリーズの4部作の完結編で興行収入が100億円超え、イカゲームも配信4週間で世界では1億4000万世帯が視聴と大ヒットだが元は日本の漫画から着想を得ている通りやはり日本エンタメのアイデアは秀逸、とはいえ世界規模のヒットを飛ばし続けているかという点では見劣り?するだけに快進撃を続ける韓国のエンタメ界から学ぶべき点も多いか。

西の大関サステナブル商品はいわずもがなで、来年4月施行の新法を前にその競争軸も価格や機能からサステナブルへ移行しておりこれがどれだけ消費者に受け入れられるかが焦点か。そしてそのサステナブルへの意識や関心が高い世代としても挙がっているのが東の横綱に選ばれたZ世代である。

まさにデジタルネーティブといえるZ世代だが、当欄でも取り上げたルーズソックスから更に各種のエモいモノまでこの番付含め今年の流行りモノはこのZ世代が関わっているモノが多く見受けられたのが印象的だ。Z世代が象徴しているような消費行動がこれから未来の日本の消費トレンドになっていく可能性もあるだけに引き続き注目されるところ。


縮図なおせち

さて、今年もまだ残暑厳しい頃から始まった各社のおせち料理商戦だが、今週で大手百貨店各社など御節料理の受付を終了するところが多い。もともとおせち市場はコロナ前から拡大傾向にあったが、今年も旅行や外食の自粛が続くなか昨年以上の勢いで予約が好調で大手百貨店では何所も前年比で大幅な増加を見せている。

今年の売れ筋はコロナ禍などで来店客の減った有名料亭が注力し手掛けた5万円以上の高価格帯商品だそうで、高島屋が扱った25万円超の京都吉兆の三段重など販売初日に売り切れたという。斯様に景気の良いのは料亭の和食にとどまらず、洋食でも今年は松屋がブルガリの手掛けるレストランと組んで40万円の商品を売り出している。

このブルガリおせちはトリュフにキャビア、50年間熟成させたバルサミコなどの高級食材を多用する内容だが、高級食材といえばローソンの100円おせちの今年の目玉はアワビという。企業努力でこの価格を実現出来るのが凄いところだが、この100円おせちも昨年230万個を売り上げるヒットとなっている。昨今のおせち商戦は根強いデフレマインドの中でアッパーミドル層の資金が高額商品に流れ込む縮図的なものを見せてくれる点もまた面白いところである。


異例の呼びかけ

さて、昨日の記者会見で岸田首相は「年末年始に牛乳をいつもより1杯多く飲んで頂く、料理に乳製品を活用頂くなど国民の皆様のご協力をお願いしたい。」などと異例の呼びかけを行っている。首相が特定の農産物の消費を呼びかけるのは異例な事だが、背景にはコロナ禍で消費が落ち込んでいるところに学校給食が休みになる事なども重なり特に今年の年末年始はかつてない規模で余ってしまう事があるようだ。

今から6年くらい前だったかバターが極度な品薄に陥り業務用価格が29年ぶりの高値を記録、株式市場でも六甲バターが上場来高値を更新するなどしたことが記憶に新しいが、これを受け官民挙げて生乳生産増産対策をやってきた効果がここ数年表れていた土壌もある。何の因果かタイミングが悪いというか何れにせよこれらが裏目に出た格好だ。

これを受け対処療法的に明治が今週から牛乳消費を喚起するプロジェクトを開始したり、ローソンでも年末年始の2日間はホットミルクを半額で販売したりと協力体制を敷くが、生乳の余剰問題はこれが初めてではなくつい昨年の5月頃も学校の休校や飲食店営業縮小を受け過度な余剰に陥った経緯がある。それらを鑑みこの1年何が出来たのかというところだが、生産側も飼料価格の高騰が加わる二重苦の状況だけに政府としてもセーフティーネット的なものが喫緊の課題か。


それぞれの決着

さて、先週は最高裁が経営統合を認める司法判断を下した事で関西スーパーマーケットがエイチ・ツー・オー・リテイリング傘下食品スーパーのイズミヤ、阪急オアシスと経営統合し、またSBIホールディングスもTOBの成立に伴い新生銀行を連結子会社にする事となり共に情勢変化の度に株価が乱高下した両者のTOB合戦は幕を閉じた。

はれて当初の予定通りの構図となった新生銀行のTOB劇だが、9月にこれについて触れた時に書いたようにココは公的資金の返済が最大の焦点となってくる。バトンタッチとなった今後が注目されるが、肝心の株価は引けでTOB価格を上回ったのは先週の2日間のみで本日の引けも1800円と心許ないだけに今後の浮揚策に関心が向かうところ。

一方で当初の予定通りにはいかなかったオーケー、今後は保有する関西スーパーマーケットの株を全株売却と報じられているものの会社法に則り買い取り請求権行使という流れになるか。こちらの本日の終値は1034円とTOBを囃した9月の高値からはや半値以下に沈んでいるが、オーケー側の想定としてTOB提示価格が目安になって来る筈だがこちらの業界も再編機運は燻り続けそうだ。