72ページ目

遡及適用の是非

さて、先週は大阪の泉佐野市がふるさと納税制度の対象自治体から除外したのは違法だとして除外決定の取り消しを求めていた訴訟の上告審判決があったが、注目された最高裁の答えは国の勝訴とした高裁の判決を破棄して決定を取り消し泉佐野市の逆転勝訴が確定するというものであった。

もともとはこの裁判、総務省の後出しジャンケンではないか?といった遡及適用を巡る点が焦点でもあったが、果たして法律上やはり国の裁量がここまで許されてしまうと何でもアリとう事になってしまうというところで待ったとなった格好か。とはいえ泉佐野市も社会通念上の節度を欠いたとされた通り行儀が悪かったのは否めないところで、今後は地場産業など襟を正した勝負で臨むか否かこの辺が注目されよう。

地場産業の開発も知恵の絞りどころだが、最近では首都圏などでこのコロナ禍で売上げが減少した事業者の商品を返戻品に採用したり、飲食店等支援の為の寄附金による基金創設などの動きもあり都内ではその使い道に新型コロナウイルスの感染防止対策を加える動きも出て来ている。

ともあれこの一件で総務省は今月に入って今後の返礼品提供には審査を受ける必要があるもののこの泉佐野市を含む3市町についてふるさと納税制度への復帰を認めると明らかにしているが、今回のケースは総務省が自治体に権限を及ぼす事で動かして来た地方自治の在り方を問うた事例といえるだろうか。


優待もお土産も

さて、先月にピークを迎えた株主総会については今後その形の在り方など先に取り上げた通りだが、三菱UFJ信託銀行によればこの株主総会で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく来場者へのお土産を取り止める企業が今年は現時点で1394社と前年の2.7倍にのぼる旨も過日の日経紙夕刊一面で取り上げられていた。

ただでさえ新型コロナウイルスによる企業業績への打撃によりこれまで提供してきた株主優待を休止や中止するなど決めた企業が5月末迄に約10社に上る旨も以前に書いたが、総会の招集通知に「当日のご来場はお控えいただきますよう強くお願い申しげます」とか、「お土産のご用意はございません」などそれも赤文字で書かれているのもこれだけを見るとおどろおどろしいものだ。

しかし斯様な株主優待休止からお土産取り止めまでこれら目当ての個人投資家にとってはまさに受難の年となった格好だが、ここ数年持ち合い解消促進の後の受け皿として個人の存在というものもクローズアップされてきた経緯があるだけに各社共に今後はコロナ後を見据えた工夫も求められるところか。


35年連続1位

本日は所用で銀座に行ったが、鳩居堂が視界に入って来た際に今月アタマに国税庁が2020年の路線価を発表していたなと思い出しつつぼんやりそれを眺めた。この鳩居堂は今年も安定の一位で実に35年連続、また全国約32万地点は昨年比で1.6%のプラスとなり5年連続で上昇している。

今年開催される予定であった東京五輪は新型コロナウイルスの影響でオリンピック史上初の延期という憂き目に遭い、インバウンド誘致を睨み争奪戦の様相を見せた銀座界隈のテナントをおさえた向きには肩透かしの一面もあっただろうがそれでもなお再開発や物色の手は水面下で緩むことなく人気と共にこのエリアの新陳代謝は続くか。

ところで斯様なエリアはそれとしてコロナ禍以前に賑わった他の観光地の一部はまた別、今回の路線価上昇の背景には新型コロナウイルス禍の影響が反映されていない1月1日時点という事情があり、そうしたところは営業再開後もなお賑わいがすっかり失せてしまっているところも多いだけにインバウンドを背景に高い上昇率を辿って来たところは先行きの不透明感に戦々恐々だろうか。


7/3より石油スワップ取引4銘柄を当面の間取扱停止へ

北辰物産は、7月3日(金)の夜間立会(7月6日営業日)より当面の間、石油製品現金決済先物取引(石油スワップ取引)の「バージガソリンスワップ」、「プラッツバージ灯油スワップ」、「ローリーガソリンスワップ」、 「プラッツローリー灯油スワップ」の4銘柄の取り扱いを停止。

▼石油スワップ取引4銘柄の取り扱い停止につきまして


鯨二頭

さて、その運用資産が3月末時点で約150兆円にのぼる世界最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、20年1月〜3月の運用損失が新型コロナウイルスの感染拡大が金融市場を直撃した影響を受けて17兆7072億円と四半期で過去最大となり、今後は外債投資を増やす方針との旨の発表をしている。

もっともその後の株価上昇を勘案するに四半期で過去最大の損失云々はそう心配することもなさそうだがそれにしても約35.5兆円の存在は大きい。これと双璧の鯨的存在に日銀の存在があるが、こちらも先週に東証が公表したところによると日本企業の株主構成で日銀の比率が一段と上昇している旨が週末の日経紙に出ていた。

しかし東証の時価総額が現在約548.2兆円、うち冒頭のGPIFが上記の通り約35.5兆円、そして日銀が約31.2兆円とこの両者で実に東証時価総額の12.2%を占めている歪んだ構図はやはり気になる。形を変えたPKO論からコーポレートガバナンスへの影響論も喧しいが、金融緩和のランディングの在り方としても今後課題となってくるだろうか。


総会もバーチャルへ

先月は株主に総会関係の書類が順次届き株主総会も先週ピークを迎えたが、通常は多くの企業が株主に参加を促す株主総会も、今年は新型コロナウイルスの影響でクラスター発生防止の観点から送られてきた封筒には「株主総会当日のご来場はお控えいただけますようお願い申しあげます」等の一文が印字されているのが各社目立った。

この辺は先に経団連が公表していたガイドラインに即したもので議決権行使に関してもまたインターネットによる議決権の行使を選択するよう推奨されていたが、過日の日経紙夕刊一面にもスマホを使って株主総会で議決権を行使できるサービスを導入する企業が2020年3月末時点で424社と、サービスが始まった18年の3.7倍となるなど増加している旨が書かれていた。

昨年にこれを取り上げた時点ではサービスを開始した企業は約160社と書いていたが、上記の通りとその数は急増しており簡素化による個人参加の上積みで議決権比率が上がっている会社があるのも想像に難くない。これが始まった当初は新型コロナウイルスなど未だこの世に存在もしていなかったと思うが、ここでもまた新型コロナウイルスが総会における形の在り方をも変えてゆく契機となるか。


機能分散論

はや7月入りだが都内の新型コロナウイルスの新たな感染者数が今日は緊急事態宣言解除後として最多を更新、既に東京都が休業再要請をする基準として用いていた指標の数値も超えてきているが、先週に自民党は斯様な感染症などの事態を踏まえ国会や中央省庁、企業、研究機関等が一度に機能不全に陥る事態を防ぐべく首都機能等の分散をめざす議員連盟を立ち上げている。

このコロナ禍では各所のリモートワークなどで地方が俄かにキーワードになってきているが、こうした首都機能の分散・移転に関して本腰を入れて議論されるのは東日本大震災後に沸き上がったのが記憶に新しいところで、その3年後にも政府機関の移転など提言されたもののなかなか進展しなかった経緯がある。

首都機能分散に関しては年内にも具体策を盛り込んだ提言を取りまとめるとしているが、近年のSDGsの流れもあるだけにこの100年に1度ともいわれるコロナ禍でいよいよ一極集中のリスクに対して踏み込んだ議論からコロナ後を見据え現実味を帯びたモノが出て来るのかどうか注目されるところ。


相次ぐ有名処の更生法申請

さて、このコロナ禍の影響で劇団四季など劇場公演が中止になり一部小中学生など芸術鑑賞の授業が残念なことに無くなってしまったところもあるが、長引く劇場上演中止であのカナダのシルク・ドゥ・ソレイユ・エンターテインメント・グループが会社更生手続きに入るとの衝撃的な報が昨日あった。

同劇団といえば「アレグリア」の東京での初回公演に招待された時その演目もさることながらレネ・デュペレの曲にも魅了され、以降日本公演がある度にそれぞれのストーリーを観るのが楽しみであっただけに本当に残念な一件で兎にも角にも更生から一刻も早い興行復活が望まれるところ。

しかしコロナ禍により破綻の憂き目に遭った事例で誰でも知っている有名どころでは直近でも上記以外に高級食材の仏フォションや、米ディーン&デルーカなども衝撃的であった。何れも国内では大手百貨店や一等地に店を構え女子に人気で、幸いに国内事業に影響は無い模様だが著名ブランドをも侵食するコロナウイルスの憎々しさが改めて際立つ。


破竹のIPO

さて、米での新型コロナウイルスの感染再拡大により経済活動が再度制限され始めたことなどが投資家心理を冷やし日経平均と共に本日の東証マザーズ指数も3営業日続落となっていたが、そんな中で先週末に上場したECプラットフォーム関連事業のコマースONE HDが2日目にして後場に公開価格1,600円に対し漸く約4.4倍の6,970円で初値を付けたのが目を惹いた。

2か月半ぶりのIPO再開という事で溜まった鬱憤を晴らす?が如く上記のようにロケットスタートのものが目立つが、同じく先週に上場した機械学習を用いた画像認識ソフトのフィーチャーなどは連日の買い気配から上場3日目にして漸く公開価格520に対し実に約9.1倍の4,710円での初値形成と破竹の勢いである。

目下のところマザーズ指数は大引ベースではかれこれ12週間連続の続伸を記録し2003年9月の指数算出開始以来で最長となっているが、先に当欄で書いた通りその時価総額も東証二部を上回ってきている。IPO再開熱の一巡感が台頭してもなおコロナをテコに今後も暫く独り勝ちが継続されるのか否か、この辺には注目しておきたいところ。


新規導入か廃止か

今月に入って23000円台超まで回復した日経平均だが低PBRモノは依然として多い。この辺に絡んでは先週末の日経紙投資情報面にてM&A助言レコフ調べの買収防衛策を新たに導入する企業がPBRの低い企業などを中心に5月末時点で7社と前年を上回り、15年にコーポレート・ガバナンス・コードが採用されて以降で最多となった旨の記事があった。

買収防衛策といえば最近では東芝機械がアクティビスト対策で昨年廃止した買収防衛策を改めて復活させた事例が記憶に新しいが、世の趨勢としては経営者の保身に繋がるなどとして総会での反対票も増加するなど批判が強く、導入済み企業は15年比で4割減となるなど近年では廃止が相次いでいるのが現状だ。

先に政府による安保上重要な日本企業への出資規制強化など為されているが、それがこの
コロナ禍のあおりを受けた春先の株価急落などから他にも技術力を持つ企業を標的とした買収や出資の動きが警戒される。確かにPBRが極めて低いまま放置されている企業側も問題だが、コロナ禍でガバナンスと対企業影響力行使との天秤が改めて注目される。


オンライン商機

さて、春先には新型コロナウイルスの影響から年度替りの卒業式や歓送迎会などが総崩れとなり年間でも最需要期となる花卉需要が急減の憂き目に遭っている旨を書いたが、昨日の日経紙には「捨てられる花を救え」と題し、オンラインを駆使して商機につなげる試みが俄かに熱を帯びてきている旨の記事があった。

廃棄される道を救う試みとしては食品で同じく今年の始めに挙げたフードシァエサービスの「TABETE」などがあるが、他にも余剰食材を購入するクーポンを発行するアプリ「No Food Loss」なども登録店を拡大させており、更には業務用商品などまで含めて扱う「KURADASHI」なども最近は注目を浴びている。

またマーケットに出しても最近は思うような値が付かないのは高級魚類も同じでココもまたEC活用の動きが顕著になってきているが、先行している民間のアクションに農水の更なる強い後押しも望まれるところでオンラインならではの枝葉の広がりが今後も更に顕著になってくるか。


間接効果の恩恵

昨晩はWTIが3月以来の40ドル大台を回復してきたが、先週末の日経紙商品面では原油価格指数に連動するETNの売買が個人マネーの流入で急増、発行体の金融機関が原油先物の持ち高を増加させたことで東商取の原油先物の4月の売買高は前年同月比で4倍以上となるなど取引が急拡大となっている旨が載っていた。

このETNといえば文中に挙げられていた「日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN」が代表銘柄であるが、これまでも原油が数年ぶり安値に沈む度にこのETNが商いを集めて注目されており、その建玉は先週段階で1年前の約4倍に増加し売買代金もまた4月には上場以来の最高を記録している。

原資産の存在も緩和マネーの影響で投資に流入する厚み自体が増し各々数カ月ぶりの高値となっており、他にも先に当欄で取り上げていた野村のインデックスETFなどはWTI暴落に乗じて個人が群がった当時の二桁から三桁へと値段が跳ね上がっている。これらETNやETFなどその設計上から東商取への間接効果は上記の通り無視出来ないものがあるが、今後どの程度商いを集められるのか注目というところか。