75ページ目

2021年IPOスタート

さて、先週末には2021年最初のIPOとなる半導体レーザー、網膜走査型レーザーアイウェアを手掛けるQDレーザーが東証マザーズに上場となったが、その注目の初値は買い気配のまま前場を終える人気で後場に入って引け前になって漸く公開価格340円の2.34倍に相当する797円の初値を付けた。

本日も同社は寄り付きからいきなりストップ高とその騰勢は止まることなく破竹の勢いとなった今年の一発目であったが、昨年のIPOを振り返ってみると前半と後半で環境に明暗が分かれたものの、前年比8社増の102社となり07年以来13年ぶりの高水準となった。また日経紙によれば上場初値は公募・売り出し価格の平均2.3倍に達し、15年ぶりの高水準となった模様。

資金吸収額が比較的小粒な企業がマザーズの約7割を占めたという構図もこうしたロケットスタートに一役買ったともいえるが、今年のIPOはといえば概ね前年並みかそれ以上の上場件数が見込めそうなものの昨年延期となったキオクシア等も見込まれる事で小粒一辺倒という感じではなさそう。公開価格と市場価格の大幅乖離は投資家のニンマリ顔と対照的に公開企業側に取っては問題も残るものだが、上記の部分でこれが多少緩和される事になるかどうかこの辺も見ておきたい。


HOTEL Living

さて、今週気になったニュースといえば帝国ホテルが「ホテルに住む」をコンセプトとしたサービスアパートメントの新事業をスタートさせるという報か。既に予約の受付が始まっており客室全体の約一割をこれに充てて一部屋ひと月30泊で月額36万円からというが、130年の歴史を誇る同ホテルでは初めてのサービスという。

この辺の背景にはやはり新型コロナウイルスの感染者数急増による宿泊者数低迷などが想像に難くないが、先にホテル専門の調査会社英STRが発表した2020年12月の国内ホテル平均稼働率はといえば前月から12.1ポイント下落の43%となり、20年通年での稼働率は39.6%と同調査開始以降で最低を記録している。

ところで「ホテル御三家」では他にホテルニューオータニも昨年の夏にワーケーションプランとして30日連泊プランを39万円から販売した経緯があるが、こちらはラウンジで約1500円相当のドリンクが無料のほかパーキングにプールやサウナまで無料のうえ専属アテンダントまで付くのを考慮すれば1日あたり1万円を切りビジネスホテル並みの料金でインペリアルに「住める」という事になる。

単に客室をディスカウントしてセールするのではなく形態を変え新事業として売るあたりにブランディングの上手さを感じるが、一方ではSakuraブッフェで有名だったホテルグランドパレスのように東京オリンピックを前に7月で営業休止を表明したところもある。其々の決断だがともあれ先ずはこの老舗ホテルの新たな挑戦に追随してくる向きがあるのか否かこの辺も注目しておきたい。


蒸し返しの銀

一昨日はロビンフッダーパワーと題し投稿型オンライン掲示板レディットを介した投機的動きが代表的銘柄のゲームストップ始め銀や仮想通貨へまで飛び火した旨を書いたが、昨日の日経紙マーケット面でも「NY銀8年ぶり高値」としてこのレディットの書き込みを切っ掛けにNY銀先物が時間外取引で一時1トロイオンス30ドル台と2013年2月来、8年ぶりの高水準となった旨が出ていた。

ゲームストップなど株式がヘッジファンドと対峙する格好で空売り勢を締め上げろとの掛け声で煽ったなら、こちらのコモディティーも銀市場は銀行に操作されているとかインフレ調整後の銀価格は1000ドルであるべき等々こちらの方は更に荒唐無稽な内容となっておりこれはもうほとんど陰謀論の世界か。

ところでゲームストップ株から銀へ飛び火といはいうものの、寧ろこの銀の方が先で既に昨年の9月に彼らロビンフッダーの買いで急騰した経緯があり当欄でもこれを取り上げている。しかしゲームストップ株との貸借倍率の相違などこの辺の勝手の違いをどう見るか、ちなみにこちらはCFTCが目を光らせているがさて今後彼らを動かす事になるのかどうかこちらも目が離せない。


124年ぶりの2日節分

さて最近では関東でも彼方此方で恵方巻のCMが喧しくなって来たが、本日は恒例の節分である。恒例とはいえ今年は4日という固定観念がある立春が3日になるという事でその前日にあたる本日が節分になるワケで1897年以来、124年ぶりに通常より1日早い本日2日というのが話題になっている。

もう何十年も立春は4日だっただけに成る程話題にもなろうがそれは兎も角も節分はもともと災厄消除を願うもので「コロナは外!」と今にはピッタリの行事とはいうものの、やはり蜜を避けるために初詣よろしく各地の寺社は境内での豆撒きの催しなどを相次いで中止もしくは大幅に縮小しているのが目立つ。

ところで昨年の当欄では豆撒きで追い立てられる鬼を擁護するようなコラムが増えたり、児童書「おにたのぼうし」など鬼が別な視点から描かれるなど新しい潮流を書いたが、昨年大ヒットし記録を数々の塗り替えた「鬼滅の刃」も元々は鬼も人間で一人ひとり実はバックグランドがあったというような含みを持たせ、一昔前の単純な勧善懲悪の構図とは異なる筋書など現代で流行るモノの流れが変わりつつあるのを感じる。


ロビンフッダーパワー

先週はVIXが高水準に跳ね上がり米株式は乱高下の憂き目に遭っていたが周知の通りこれはレディット等のSNSで連携した個人が、集団で空売り残高を積み上げたヘッジファンド等の踏みを狙い特定銘柄に買いを仕掛けるような過度な投機的な一連の動きを受け金融システム安定リスクの上昇が警戒されてのもの。

代表銘柄のゲームストップ株の株価は年初の17ドルからひと月で347ドルまで約20倍に跳ね上がるなどあまりの過熱ぶりに、これを介する米証券ロビンフット・マーケッツによる一時取引制限を個人投資家らの反発で緩和した際には一日で株価が倍増し、更には銀や仮想通貨へまで飛び火するなど依然として鉄火場だ。この過程で実際に幾つかのヘッジファンドは巨額損失を計上しロビンフッドも金融機関からの借り入れ措置を取っている。

そういえば日本でも所謂掲示板を使って確か今から6年前だったか、かつて大物仕手筋の関係者が新日本理化やルック等を最大で株価5倍化まで煽り約60億円もの売却益を抜いた事件が風説の流布にあたるとして、証券取引等監視委員会が後に金商法の疑いで強制捜査した件が話題になった事があったのを思い出す。

また上記のヘッジファンドの巨額損失を見るにもう一つ思い出すのは、やや飛躍するかもだが1998年に起こった大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻か。今回のようなレディットやロビンフッドといったプラットフォームが個人投資家間の強力な情報交換と取引の手段として普及する一方で、LTCMが巻き起こした金融危機のようなシステムリスクの芽もその副産物として出て来てしまっている点は否めないところ。


残高増と出口論

さて、FOMCでは大規模の金融緩和据え置きを決定し当面緩和策を解消する意向が無いことが再確認されたが、国内では先週の日銀金融政策決定会合後の記者会見で総裁が日銀内で金利操作やETFの運営方法も見直す案が浮上していることから、これに関しては従前の購入枠にとらわれず、必要な時だけ買い入れる形に改める見通しとしている。

日銀といえば新型コロナウイルス対応による資金供給でその資産は昨年末時点で1年前に比べて129兆円増加の702兆円となり、金融市場の安定を掲げたETFは20年の買い入れ額が約7兆円と過去最高となり25%増となっている旨が報じられていたが、昨日の参院予算委員会ではETFによる含み益が12〜13兆円とする試算を明らかにし現時点で全体の枠組みを、そしてその中のETF買い入れを止めるという考えはない旨を同総裁が語っていた。

とはいえ度々触れているように自ずと出口戦略の議論も喧しくなってくるが、当欄で昨年11月にも触れたようにバブル時代に証券会社で大流行?した所謂飛ばしのようなスキームや売却制限を付けた個人への譲渡案等も健在で、各経済シンクタンクの専門家も日銀の財務リスクを回避するべくバランスシートから外す必要があるとして買取機構の創設やNISAやイデコ等の運用先指定で個人へ売却、また分割して企業に自社株として購入してもらう様々な案が出ている。

この前の会見で同総裁はETFの売却を巡る議論について売却は出口の議論の一つなので全く時期尚早だと思うしそういうことは現在考えていないと話していたが、曲がりなりにもETF残高は簿価ベースで35兆円まで膨らんでおり、2%のインフレ目標は未達成ながら更に大きく残高を積み上げる状況ではなくなってきているのは事実で引き続き出口戦略について今後も様々な議論は続くだろうか。


互いの誤算

さて、先週初めの当欄では寒波の影響から暖房用需要が高まった事などで今月に入ってからのスポット価格の上昇で自前の発電所を持たない新電力業者の経営が厳しさを増している旨を書いたが、昨日の日経紙企業面では「新電力、卸値高騰で苦境」と題し地域新電力の中には来月に全事業を停止する向きも出て来た旨が書かれていた。

この頁では地域電力が一日の売り上げに対して1月中旬辺りの調達ではその10倍以上もかかる惨状が綴られていたが、これらの他に本日は新電力の楽天エナジーが同社提供の家庭向けの楽天でんきや法人向け楽天でんきBusinessなどエネルギー関連サービスについて新規申し込みを一時停止する旨も同紙で報じられている。

斯様な市場連動型を謳うモノへ契約した向きもまた然りでこの辺は同じ憂き目に遭うワケで、さながらハイリスクな仕組債等の金融商品でまさかの「ノックイン」してしまったパターンにも似ているか。新電力の中には異常高騰分の料金を会社側が負担したり値引き策を表明したりしている殊勝な向きもある一方で、纏まって経産省への陳情など泣きつく光景を見るに返す返すも先物市場を上手く機能させてゆく重要性を感じる。


悲願の復帰

本日の日経紙社説には自動車生産の予想以上の回復を背景にした半導体不足の深刻化でこの自動車生産が変調をきたしている旨が出ていたが、これを受け大手のルネサスエレクトロニクスが車の走行を制御するマイコン等で値上げを要請、また東芝もパワー半導体など1〜2割の値上げを複数の自動車メーカーと交渉入りしている。

これを受け週明けの両者の株価はルネサスエレクトロニクスが年初来高値を更新、また東芝に至っては一時ストップ高まで買われる暴騰を演じたが、こちらの方は半導体の値上げ云々よりも東京証券取引所の承認を得て今週にも現在の2部から1部市場に指定される事になったとの報が大きいいだろうか。

この突飛高で大株主に犇めく魑魅魍魎のアクティビストも取り敢えずはホッと一息といったところだろうが何れにせよ17年8月に2部落ち?してから約3年半ぶりの悲願の1部復帰、今後はTOPIX組み入れなどによる需給の変化があるや否や、復帰といえども解消すべき課題は依然多くアクティビストの動向と併せまだ目の離せない展開が続くか。


電子化への流れ

さて、先週末の日経紙マーケット面では銅の国際指標であるLME(ロンドン金属取引所)の銅先物相場が高止まりしている旨が出ていたが、中国勢の需要と共に相場高を牽引した投機筋の買い越し残高も金融緩和による余剰資金を背景に積み増しが進み、1月15日時点で4万4千枚弱とLMEの公表値がある18年1月以降で最高水準に達した旨が書かれていた。

ところでこのLMEといえばブローカーが円形に向き合う伝統的な「リング取引」が有名なところだが、昨年3月下旬から新型コロナウイルスの感染防止策としてこの形態は一時中断になっていた。これが先週には終息の兆しが見えないパンデミックを背景に恒常的に取り止め廃止する旨を市場参加者に提案、今後は電子取引システムに一本化する計画の旨が報じられている。

日本でも東証で場立が消えてから今年で21年となるがもし現存していたとしたらやはりこのコロナ禍での取引は憚られ、ましてや笛吹などトンでもないという状況だろうか?LMEの値決めは今後売買高加重平均に基づく仕組みになる見通しだが、相場形成にどのような影響をもたらすかは未知数。何れにせよ140年超の歴史を持つ取引所の欧州最後の伝統的手法もコロナ禍が消滅を促進する事になったという構図になるか。


サステナブルフード

さて、今週は朝のニュース番組で植物肉バーガーを扱う店が増殖している旨が放映されているのを見たが、ザッと挙げてもメジャーなところでロッテリアのソイ野菜バーガー、モスバーガーの植物性素材を使ったグリーンバーガー、フレッシュネスバーガーの大豆パティを使ったグッドバーガー、先月からバーガーキングも大豆ミートを使ったプラントベースワッパーを発売している。

またこれを見て思い出したが、これらと並行して喫茶店チェーンのコメダ珈琲も東銀座にこれまた大豆ミートを使ったハンバーガー等プラントベースに的を絞ったカフェをオープンしており、無印良品も大豆ミートシリーズと謳ってハンバーグ等を店舗や通販サイトでの販売を始めている。

これだけの増殖の背景には環境意識の高さという御立派な理由から健康や低カロリーを意識してというものまで其れなりの需要の高まりが窺える。残念ながら私は一度も口にした事が無いのだが、環境問題解決の大義名分を掲げ昨年は植物肉元年とまで言われぐるなび総研が一年の世相を反映し象徴する食を選ぶ年末の「今年の一皿」でもノミネートされたこの代替肉、何れにせよ一つの選択肢としてある一定数浸透しつつあるのが現状か。


不気味な大量撤退

さて日本政府観光局が本日発表したところによると、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界各国での出入国規制が響き訪日外国人数は推計値で前年比87.1%減と1998年以来、22年ぶりの低水準となり、政府が掲げた20年の訪日客目標の4000万人の10%程度にとどまった。

こうした影響をモロに受けたと見られている件に、4年前に銀座地区最大の複合商業施設と鳴り物入りで松坂屋銀座店跡地にオープンした「GINZA SIX」が4周年を前に先の日曜日だけでファッションやコスメブランドなど14店舗、年末から昨日迄では実に19店舗が閉店しこのゴッソリと抜けた撤退劇に驚きの声が上がっているというのがある。

これに対してGINZA SIX側は4月の4周年の節目に大規模なリニューアルを実施としているが、当初よりインバウンドに大幅な比重を置いたコンセプトだっただけに冒頭の件と併せ如何にもという見方が大半だ。大通りを挟んでGINZA SIXの対面にはユニクロが店を構えているがココはコロナ禍でも業績が好調、新陳代謝激しい銀座は対極が混在するが近隣には同じくインバウンド寄りの東急プラザもあり今後この辺の動向も注目される。


50年ぶり大幅積み増し

本日の日経紙商品面には「外貨準備、埋蔵「金」上乗せ」と題して、造幣局が記念金貨鋳造の為に保管していた金塊を為替介入で得た外貨を運用する財務省の外国為替資金特熱会計が第3次補正予算の成立後に80トン積み増す事で日本が外貨準備の一部として保有する金の量が大幅に増える旨が出ていた。

その背景には上記の第3次補正予算案に盛り込んだ大学ファンドの財源捻出という目的があるが、文中にも出ていた通り80トンもの金塊を市場で一度に売却するケースでの価格への影響と海外流出等が考慮され造幣局、外為特会、そして日銀の三者間での資産融通の構図で市場への金供給が為されるワケではない。

財務省内部でも金塊を円に替え補正予算財源の一部に充てたいという思惑と、外為特会で金資産を持っておきたいというニーズがあった模様だがその辺は兎も角も外貨準備に占める金の割合を巡っては度々話題になる。欧米諸国の高い比率に比べて恒常的に比率が低い本邦勢の大量積み増しの報は話題に値するものの、財源捻出の用以外に継続的積み増しの可能性が薄いだけに一過性のものという事になるか。