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買い手市場

さて昨日触れたWTI、納会を控えた当限が投機筋等の手仕舞い売りを浴び1999年3月以来ほぼ21年ぶりの安値まで沈んでいた旨を書いたが、その数時間後にはマイナス圏に沈み納会ではまさかの1バレルマイナス37.63ドルで取引を終えている。兎にも角にも価格がマイナスとなるのを見るのは市場初めての事態だ。

既に用船料が数倍に高騰しているとの一部報道にある通り貯蔵施設能力に限界を来すほど原油在庫が積み上がっている様相だが、マイナス圏でロングし納会を迎えた向きには現物と共に現金が受け取れる構図という事はいわばこの現金部分が原油の貯蔵を確保するコスト分という事と捉えられるだろうか。

ところで原油の場合は斯様に貯蔵が可能だが、同じく資源のLNG等はその特性上備蓄が出来ない事が災いし需要が冷え込みを背景にしてそのスポット価格もまた年初から半値以下の水準まで急落の憂き目に遭っている旨が本日の日経紙に出ていた。新型コロナウイルスがエネルギー市場をも侵食してきた格好だが、資源メジャー各社はこの受難にどう向き合うのかその舵取りが注目される。


資源関連の憂鬱

先週末の日経紙マーケット面では「原油、下値不安なお」と題し、先のOPECプラスで世界供給の1割相当の減産を5〜6月に実施する旨を決定したものの実効性そのものを疑う声に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う現物需要の落ち込みで在庫も急増し底入れが見通せない旨が出ていた。

週明け本日の午前中の電子取引においてもWTIは納会を明日に控えた当限が投機筋等の手仕舞い売りを浴び、一時1バレル14ドル台と1999年3月以来ほぼ21年ぶりの安値まで沈むに至り前週末からの下げ幅は2割に達している。期近からズルズルと下げを先導しコンタンゴが解消されない鞘を見るに典型な動きとなっている。

斯様な状況が続くと特に業績への影響が懸念されるのが石油元売りや石油開発という事になるが、大手元売りの想定レートは1バレル55〜60ドルとなっているだけに今月の日経紙・私の履歴書の出光興産など含め対前年実績で半分近くの減益予想となり、また商社の想定レートも更に高い事で各社の苦悩は想像に難くはないが更なる減産が先か株価の灰汁抜けが先か今後も目の離せない展開が続く。


4/30付でCXオンライン事業をサンワード貿易へ譲渡

豊商事は、商品先物取引業等の対面取引に経営資源を選択及び集中させるため、2020年4月30日付けで商品先物取引オンライン事業をサンワード貿易へ譲渡へ。

【日程】
取締役会決議日 : 2020年4月7日(火)
契約締結日 : 2020年4月7日(火)
本事業の譲渡日 : 2020年4月30日(木)
当社での最終取引日 : 2020年4月28日(水)日中立会終了まで

▼ゆたか CX 事業譲渡に関する契約締結のお知らせ


4/10付で第一種金融商品取引業の登録が完了

北辰物産は、2020年4月10日付けで第一種金融商品取引業の登録が完了。これに伴い本年7/27付で大阪取引所に移管される金融商品取引法下での銘柄も引き続き変わらず取引が可能に。

尚、大阪取引所に移管される銘柄の取引のためには、追って所定の手続きが必要で、こちらは今後ご案内とのこと。

▼第一種金融商品取引業の登録につきまして


金のデジャヴ

さて、先週末に米ニューヨーク市場では金の先物価格が約7年半ぶりの高値を付けていたが、これを受け今週はTOCOMに上場する金が1982年3月23日の取引開始以来の過去最高値を更新、また地金小売価格の方も同じく40年ぶりに過去最高値を更新する事となった。40年前といえば年足など広げてみるに直ぐに目に飛び込んでくるあの旧ソ連のアフガン侵攻時だが、昨今のドルとの相関関係の変化も読み取れるか。

こうした構図の裏にはETF経由での資金流入もあるが、WGCが先週纏めたところによると3月末時点の世界の金ETF残高は3185トンと前月末から151トン増加と3ヵ月連続で最高を更新、昨年末比でも298トンの増加を見せ四半期の増加幅としては16年1-3月以来の高水準となった模様。

しかしコロナが猛威を振う前の「全部高」の構図からコロナショックで「全部安」の憂き目に遭ったものの、FRBの資金供給策等から独り驚異の回復力を見せる光景はあのリーマンショック時からその後にも見られた通りで、こんなデジャヴのような光景を見るにやはり未だ完全に解明されていないウイルスを前に拠り所としての安全資産の位置を再認識させられるというもの。


統治改革の後押し

本日の日経紙マーケット面には「親子上場 逆説の物色」と題して、コーポレートガバナンス改革が求められる中でコロナショックによって株安が進み、親会社が株式を取得し易くなるとの見立て等から親子上場の解消が私募ファンドなど投資家の新しい物色先として浮上している旨が出ていた。

同紙では大和証券がTOPIXに対する株価騰落率の平均値を18年末100として指数化した結果が書いてあったがもう一つ、TOBで親子上場を解消するケースでは2000年4月以降では発表前からその後60営業日でTOPIXに対して子会社が約30%、親会社でも約10%上回るパフォーマンスを上げたという同証券の調査もあり斯様に物色対象として定番化しつつある。

しかしここ10年くらいでも親子上場は確実に減少してきており、そのペースも速くなってきている感が。ちなみに昨年末時点で親会社が上場している上場企業は273社、14年度末のとの比較でも約10%減少している。企業統治改革はもとより親子上場が増加してきた時と今とでは手元資金や金利など背景も一変しており今後も3解消ペースは衰えないだろうか。


憂慮か杞憂か

昨日から一転し往って来いの反発を見せた本日の日経平均だが、週明けの昨日急反落となった背景には前場に日銀がETF買い入れの目安の一つにしているとされるTOPIXが前週末終値に比べて約0.5%下げたにもかかわらずETFの買い入れが為されなかったのも一因とされている。斯様に影響力の強い日銀の買いだが、鯨的存在には東証一部最大の大株主GPIFもある。

このGPIF、先に日本株の基本ポートフォリオを25%で据え置くと公表しているが、約90%のパッシブ運用のうち70%以上をTOPIX連動型のインデックス運用をしているとされる。気になる成績だが今年は新型コロナウイルスの直撃を受け1〜3月の損失額が四半期としては最大に膨らむ見通しという。

こうなると一般的に心配になるのが年金という事になり、先の日経紙にも出ていた通り国債等に振り向けるべきとの慎重論も出てきそうだが、一辺倒では枯渇リスクもありこれまでの累計黒字を考慮するに破綻懸念は杞憂という感もある。こうした時期だけに断片的にスポットで見るのではなく過去と照らし合わせマクロな視点で捉える事も肝要か。


決算事情彼是

さて例年であれば今月下旬から主力大手の決算発表も本格化というところだが、今年の場合はこちらも他と同様に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国内はもとより更に外出制限が厳しくなっている海外での移動制限などによって監査法人による棚卸資産等の確認作業に支障が出ている関係で発表延期企業が続々と出て来ている。

決算延期となると次に影響が出るのは総会という事になるが、諸々の延期でこの株主総会の日程までズレ込むという事になると更に配当など投資家の権利にも影響を及ぼしかねない事態となるだけに、既に東証では配当基準日が事業年度末から変更となる可能性があることの注意喚起を行っている。

しかしさすがに全ての決算処理をリモート対応で賄うのは無理があるとはいえ、冒頭の棚卸資産等の確認作業など12日付け日経紙社説にてドローンを使った在庫確認、証拠書類の電子的代用など代替策云々とも書かれていた通り、テレワークやオンライン学習にオンライン診療然りでこれまでの日常風景が一変し新たな風景への変遷の期が訪れているようにも思える。


国費でマスク?

一昨日の日経紙総合面には「医療用防護服が品薄」と題し、日本でマスクと共に化学防護服の品薄感が強まっている旨が書いてあったが、防護服といえば医療崩壊が著しいイタリアではジョルジオ・アルマーニが使い捨て防護服の製造に着手、またグッチやプラダもマスク生産を始めている等ファッション界が動いているが、高級車勢もフェラーリが人工呼吸器を、またランボルギーニもサージカルマスクの生産を開始している。

さてマスクといえば先月末の閣僚会議で首相が突然マスクを付け始めた違和感から翌日には全世帯に2枚ずつ布マスクを配布すると表明。休業補償や給付金から減税云々が焦眉の急となっているこの期に巨額を割いてのマスク配布に世間では賛否両論喧しいが、米に先駆けて感染が始まっていた日本はその後に感染が始まった米に比べ経済対策から何からスピード感が著しく劣るように見える。

今週は悲鳴にも似た緊急事態宣言要請が各界から出ていた間にも感染者が瞬く間に急増、漸く重い腰を上げ緊急事態宣言を発令するに至ったが、「スピード重視」、「躊躇なく決断」云々繰り返していた割に牛歩感は否めず、経済対策にしても過去最大を謳う割に現金給付一つ取っても国民の約80%がもらえないハードルの高さで規模ありきの遣っ付け感が否めない。

400億円超もの国費を投じ家族全員にも行き渡らない鳴り物入りの布マスクが我々の自宅に届く前に、既にドイツでは5000ユーロの緊急助成金が簡単なオンライン申請からたった2日で振り込まれているのを見るに、都合の悪い文書等々ものすごい勢いで破棄・改ざんで闇に葬る事が出来る機動力を持っているのにこんな危機的場面でそうした力を出さないところが実にやるせない思いだ。


コロナ関連の賞味期限

昨日は新型コロナウイルスの感染対策として企業のテレワーク導入の動きなどに少し触れたが、本日の日経紙市場点描には「在宅勤務関連に思惑買い」と題し、メルコホールディングスやアイ・オー・データ機器など在宅勤務関連需要が期待出来る企業への資金流入が目立っている旨が書かれていた。

ここ戻り急な相場だが疑心暗鬼の戻りの中でも斯様に新型コロナウイルス関連が物色される動きが続き、上記の他にも直近では新型コロナウイルス治療薬として効果が期待され200万人分の備蓄を目指すとした富士フィルムのアビガンの原料となるマロン酸ジエチルを供給するデンカが週を跨いで連続ストップ高と破竹の勢いである。

他に変わり種?では外出自粛の動きからの巣ごもり需要に加え感染症拡大で子育てに不安を抱える人が増加しているとの思惑も囃しオカモトが3月中旬から9営業日連続続伸となり約3割強の上昇を演じるなどしていたが、この手のテーマ株の持続性は新型コロナウイルス終息の如く見極め辛いのは過去の感染症パニックの時と同様か。


災い転じて

さて一昨日に政府は受診歴の無い初診者患者にもスマホ等でのオンライン診療を求めるなどオンライン診療の要件を緩和する方針を固めたが、この辺は本日の日経紙大機小機でも「オンライン化 流れ止めるな」と題し、今回のような有事になって漸く規制が緩和されその対策として活用すべく生きて来る旨が書かれていた。

同じくコロナウイルス対策としてのオンラインといえば、企業のテレワーク導入の動きだろうが、働き方改革の機運が熟していたところに上手く乗れたという感じだ。また長期になった春休みから入学式や始業式を過ぎなお登校出来ない異例ともいえる休校長期化でオンライン学習も彼方此方で急速に脚光を浴び始めてきた感がある。

本邦のこうした動きとは少し毛色が違うが、他に新型コロナウイルスの影響で中国では紙幣を滅菌消毒し密封措置を取るなどしているほか、主力の中国製割り箸や安価のプラスチック製品類など今月あたりから在庫が品薄になるとの観測も一部出ているが前者はキャッシュレス化促進の観点から、また後者もサスナビリティが叫ばれる昨今これを切っ掛けに使い捨て文化を見直す良い機会になる可能性もあるとの解釈も出来るか。


欧米との温度差

先週2日の日経紙朝刊の一面には「テルモ、人工心肺増産」と題し新型コロナウイルスの感染拡大で人工心肺装置の需要が高まるなか、国内最大手のテルモが生産量を現在の倍以上に増やし今後数カ月以内の間に国内の治療施設に100台超の人工心肺装置を供給できるようにする旨が出ていた。

漸く国内もという感じだが、この手では米国はテスラが人工呼吸器をNY工場で生産し世界の病院に向け送料も負担で無償配布する事を発表、GEとフォードモーターも協力し生産開始するほか、英国でもダイソンが人工呼吸器をわずか10日で開発し5000ユニットを製造して英国内外のパンデミックに対する取り組みに寄付する意向を示しているあたり、本業とは別に公共財を製造する社会的使命を担うという観点でやはり欧米は抜きん出ている感が強い。

斯様に上記の通り大手に加え新興企業や異業種企業も巻き込んで動員し増産を急ぐなど産業界が総力戦の構えを見せているが、一方で国内大手企業群の消極的姿勢は否めない。こんな状況下だけに積み上がって来た約460兆円ともいわれる内部留保をがっちり守り抜きたい気持ちも解らないでもないが、かつて松下幸之助氏が言った「企業は社会の公器」という言葉がこんな時にこそ思い出されるもの。