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国税庁包囲網

さて先週末の日経紙社会面には「海外口座情報189万件入手」と題し、富裕層や企業による国際的な税逃れの監視に力を入れる国税庁が、海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)により2019年分として日本の個人や法人が85ヵ国・地域に保有する口座情報約189万件を入手したと先週に発表した旨が出ていた。

先に国税庁は昨年6月までの1年間に実施した所得税の調査結果を発表しているが、株や不動産などの大口所有者である富裕層に対する調査では85%にあたる4517件で申告漏れ等があり、その申告漏れ所得総額は763億円、追徴税額は203億円と前年度から15%増加している旨が発表されている。

脱税といえばチュートリアルの片割れ芸人も設立した会社が東京国税局から2018年まで約1億2000万円を所得隠しと申告漏れを指摘されまたも吉本がザワつく事態となったが、冒頭の件に絡んでは政府・与党が富裕層の海外に持つ資産について税逃れ対策を強化、今月纏めた税制改正大綱に盛り込み2020年度税制改正に反映する模様。

いずれにしろ昨年に当欄でこのCRSに触れた時点での口座情報が約55万件だったことを考えれば格段に情報増加が著しく、タワマンから高級外車をフィルターとしたモノからインサイダーや仮想通貨の金融モノまで容易に暴かれる時代になってきており当人が思っている以上に富裕層包囲網の世界は日進月歩となっているようだ。


IPOも暖冬

本日も日中はコート要らずの暖かさであったが、予てより暖冬といわれているだけに師走とは思えない暖かい日が多い。この辺に絡んでは本日の日経紙市場点描でも「暖冬予報 お寒い冬関連株」と題し、日経平均に対して冬消費関連株群は軒並みアンダーパフォームとなっている旨が書いてあった。

そんなワケで個人のホットマネーは自ずとIPOなどに向うこととなるが、昨日公開の株主管理プラットフォーム事業のウイルズは初日が買い気配のまま値付かず、上場2日目の本日に公開価格960に対し実に5倍近い4535円で初値を付けている。また同じ日に上場した中小企業向けクラウド会計ソフトのフリーも赤字新興企業ながら公開価格を25%上回る初値を付けるなどそれらを裏付けている。

生き馬の目を抜くソフトバンクが煮え湯を飲まされた米ウィーカンパニーの例もあって赤字新興企業への評価の厳しさは増す一方だが、カネ余りの環境もあってユニコーンも玉石混交の様相となっている。上記のフリーもその規模は今年のIPO市場で2番目の規模となるが、旺盛だった海外投資家需要が今後奏功するのか否かいろいろな側面で試金石となろうか。


商品先物ネット取引取扱い12社最新ランキングを更新

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逆行と大義名分

昨日取り上げた通りニューフレアテクノロジー社を巡ってHOYAと争奪戦を繰り広げているのが同社親会社の東芝だが、この東芝といえば2020年の2月から東証が2部から1部への移行基準を緩和するのを背景に、現在の2部ポストから東証1部への復帰に向けた社内組織を立ち上げ準備を進める模様だ。

世には今なお数十年前の法が旧態依然のまま罷り通っているモノは何も株式に限ったことでは無く数多あるが、この2部市場も1部移行に必要な監査法人の適正意見が付いた有報が5年分と50年前から変っておらず現行の新興市場の2年分と比較し乖離しているところが大義名分としてその背景にある模様だ。

当の東芝にとってはこの基準緩和の機にまさに渡りに船の構図だが、もともと諸々の不祥事が次々と露呈されたにもかかわらず日興コーディアルやオリンパス同様に上場廃止を免れた事も西武やカネボウのそれとは何が違ったのか?とかつて物議を醸し出したものだが、今回の件も大義名分があるものの其れなりの物議を醸し出しそうだ。


同意無き買収

さて、先週末の日経紙には「HOYA、東芝と買収合戦」と題し、東芝が5割の株式を持ち現在完全子会社化に向けて株式の買い増し手続き中の半導体製造装置子会社であるニューフレアテクノロジーに対しHOYAがTOBの実施を発表、大手企業同士が公開市場でTOBを仕掛ける異例の展開となった旨が出ていた。

TOBに絡んで直近で取り上げたのは先に書いたぺんてる株を巡るコクヨとホワイトナイト的存在の同業プラスであったが、こちらは公表されているところでコクヨは売買契約が済んでいない0.6%を加えても目標の過半数に達しない事が判明しているが、プラス側と双方で拒否権を持つ長期戦入りが囁かれている。

その辺は兎も角も上場企業同士の争奪戦といえば、この記事に出ていたオリジン東秀を巡るイオンとドンキのTOB合戦の他に記憶に残るモノに北越製紙を巡る王子製紙と日本製紙等のTOB合戦か。この時もまたホワイトナイト的存在の三菱商事が事を収める事となったが、いずれのケースも今後が注目される。

当欄で前回ぺんてる株を巡るTOBに触れた際の末尾では、「〜水面下で敵対的買収案として噂に挙がっているところが複数耳に入って来ており〜」と書いておいたが先ずは早速冒頭の案件が出た。相手側の同意の有無如何に拘ることなく実施が躊躇無く行えるようになったのはコーポレートガバナンス改革等の環境変化に因るところが大きいがさて次は・・


今年の一皿2019

さて、今年も食を巡る調査・研究を行っている「ぐるなび総研」が2019年の世相を最も反映したという今年の一皿を選んでいるが、今年は「タピオカ」が選出されることとなった。去年は選ばれたサバ以外にいろいろと競る候補があったが、今年はそういったモノも思いつかず果たしてといった感じであった。

ここ数年は少子高齢化や健康志向の高まりを背景に一昨年の「鶏ムネ肉」、そして上記の通り昨年は「サバ」という流れが続いていたが今年は一転して高カロリーの炭水化物と不健康?路線になったものだが、準大賞には「発酵食メニュー」が選ばれ曲がりなりにも健康志向のトレンドはカバーされた格好か。

いずれにしても今年で6回目を迎えた今年の一皿、タピ活やタピる等の造語を多用しているSNS世代には第一次タピオカブームなど知る由も無かろうが、日本の食文化の歴史に次も何かのブーム再来があるや否や、ブームを超えて社会現象化する可能性のあるモノの発掘が今も各所で血眼になって行われている。


バイプロ下剋上

さて、本日の日経紙商品面には「パラジウム増産合戦」と題し南アやロシアの主要鉱山会社が、インドや中国で一段と排ガス規制が強化される事などを背景に自動車の排ガス用触媒に使用されるパラジウム需要の伸びに対応すべく他社の買収や新鉱区の開発等で生産能力の増強に動いている旨が書かれていた。

これらの効果が出て供給が増えるのは20年代中盤になるともいわれ当面高値が続く見通しとされるが、国内のETFなども前回触れたのが2月でこの時は三菱UFJ信託の純パラジウム上場信託が50,000円大台に乗せ年初来高値を更新した旨を書いていたが、今月に入ってから同ETFは60,000円大台の乗せての推移となり本日も年初来高値を更新している。

ここ数年のPGM系の推移はまさにバイプロものの下剋上と言っても過言ではない状況であり、スポット市場とは真逆な様相を呈する宝飾市場などはさながらトコロ相場?のような感覚を覚えるものだが、特有の供給制約等も背景に各鉱山会社も生き残りを賭けるなか各々の舵取りが今後も注目されようか。


遺伝資源保護

時節柄お歳暮関係の案内が頻繁に来るようになったが、和牛関係の品は相変わらずバリエーションが豊富だ。ところで和牛といえば一昨日の日経紙一面には「和牛保護へ法整備」と題し、農林水産省が和牛の海外への流出を防ぐために交配に使われる精液や受精卵の転売などを規制する方針の記事が載っていた。

これに関しては当欄でも今年に入ってから取り上げた事があるが、遺伝的な特徴などを知的財産権として守る枠組みは従来無い上にアジアでは和牛人気の高さから前回も書いたようにブランド化が進むフルーツ等と共に和牛受精卵の中国等への流出事件も幾度となく表面化している。

ブランド化の背景にはTPP発効で安価な輸入牛肉が幅広く流通する事に対する生産側の警戒感もあるが、斯様に日本が総力をあげた成果であるブランドが侵害される経済損失など勘案するにその保護委対策は急務の課題だっただけに今回の新法提出は先ず一歩踏み出したという感じか。


逡巡と駆け込み

さて、金融庁の金融審議会は今月中に東証の市場改革を巡る提言を纏める方針となっているが、当欄でも今年の春先に「肥大化に歯止め」として触れた通り東証1・2部・新興市場の4市場体制を3市場体制に再編、TOPIX(東証株価指数)も銘柄を絞り込む事などが盛り込まれる可能性がある。

この再編話が出始めてからの1年間で他市場から東証一部に移行する企業がその前の1年間と比較し3割急減している旨の記事も過日の日経紙にて見掛けだが、背景には改革後の上場基準が不透明な事も影響している模様だ。一方でこれに適わずともプライム市場で上場維持が叶うとの思惑で駆け込みを目論む動きもあるという。

プライム市場創設について前回も一寸触れておりどういった結論になるのか注目だが、上記の通りTOPIXなどにも着手となればそれこそこれを信奉してきた公的年金のスタンスにも変化が現れるや否や、日銀も日経平均型を減らしてまでTOPIX型を増額し買い進めてきたETFの去就にも今後は関心が向かおうか。


ヘリウム高騰彼是

さて、今週アタマの日経紙科学技術面には「ヘリウム高騰 研究に支障」と題して、超電導などの研究に不可欠なヘリウムが供給不足に陥り2018年度に比べ価格が2倍以上に高騰した事を受けて、研究機関が予算などの都合で入手できず実験を中止するなど悲鳴を上げている旨が出ていた。

さてこのヘリウムといえばかれこれ今から7年くらい前から不足がいわれて久しいが、上記の文中に東大ですら再利用率は9割程度とあったが6年前に東大発ベンチャーが極低温の実験装置向けに液体ヘリウムを循環して再利用する装置を近く販売するといった報があったのを思い出す。

そのプライオリティの高さでは冒頭のような学術的モノには勿論のこと及ばないが、身近な娯楽分野でも例えばディズニーリゾートのエントランス近くで販売されていたキャラバルーンなどこの高騰で販売中止に追い込まれた経緯も記憶に新しい。本邦では完全自給の難しさを露呈している物が数多あるが、今更ながらこんなところにも及んでいるのに改めて気付かされる。


2019年度ネット取引データアンケート調査返答結果

11月28日(木)から12月11日(水)の期間で実施しております「2019年度商品先物ネット取引データアンケート調査」の返答結果をこちらにて掲載して行きます。


※アンケート調査のご案内については28日(木)10:00までに全社配信済みです。もし未達の場合はメールにてお問合せ下さい。

【アンケート回答企業一覧(返答順):9社】
豊商事、北辰物産、フジトミ、コムテックス、岡安商事、サンワード貿易、フィリップ証券、フジフューチャーズ、日産証券、岡地(12/12現在)


中途半端感

今週の日経紙経済教室では「5Gが切り開く未来」と題し、各国で次世代の無線通信網として大きな期待がかる5Gネットワークの整備が急ピッチで進められている旨が連載され、本日のマーケット面・どうなる来年の日本株なる座談会でも野村アセットのインベストメントオフィサーが5G関連銘柄の成長トレンドは今後も続くと述べていた。

ところでこの次世代高速通信に絡んで政府としては今月纏める経済対策でポスト5Gの技術開発助成に2000億円超の基金を創設する模様だが、直近で記憶に新しいのが農林水産業の産業化を狙った農林漁業成長産業化支援機構が複数の投資先不振で累損が100億円規模に膨らみ来年度末にも新規投資業務を停止する方向になった件か。

他に以前にも取り上げたジャパンディスプレイなど日の丸モノの官民ファンドも惨憺たる結果となっており、財務省などは同様に累損が膨らむ他の官民ファンドの業務見直しも急ぐようだが、高技術に対する期待の裏で微妙な金額設定に上記のような二の舞を演じないか一抹の不安が過るのは否めないところ。