契約者給付金

さて、本日は「第一生命保険」が今月中旬での株主数が約137万1千人に達したと発表していたが、今月のビッグイベントといえばやはり相互会社の看板を外したこの第一生命保険の上場だっただろうか。上場前のグレー・マーケットでも既に公募価格を上回っていた事もあってか、注目の初値は公募価格の14万円に対して16万円とまずまずの滑り出しであったが、それにしてもこの値で計算した時価総額は1兆6千億円となり、売買代金にしてもさすが凄いものが弾き出されている。

このマンモス規模だけにさかのぼっても張り合えるのは90年代のドコモか80年代のNTTくらいしか見当たらないが、株主数は軽くこれらを上回り勿論国内最多。ところでこのNTTといえばあの抽選結果に沸いた当時を思い出すと、証券界がかける期待も想像に難くはないだろう。まあ、証券界といっても目先オイシイのは幹事の役得でやはりガリバー野村、また割当といってもNTTのような欲しい向きの応募ではないため株式投資の道へ入るのは如何ほどか?

むろん証券界に限らず数百万人の株主には、前政権時代のあの2兆円規模の定額給付金に迫るカネが付与されるわけで、これらが財政を傷めない景気対策?とばかりにGDPの押し上げ効果まで試算されるなど各方面の期待も大きいものとなっている。

しかし景気対策効果にしてもこの情勢下、上記の如く投資に回すよりサクサク現金化し貯蓄に回ると冷めた意見も一方で在る。そもそも同社の株式化自体が先に「再編途上」の項で書いたように内需縮小で収益の成長が楽観視できない事からの戦略転換の意味合いも濃い。他の大手勢は静観の構えも、こうした機動的な資金調達から出て来る新たな戦略に対抗手段を打ってくるのかどうかこの業界も一つのケースとして注目される。


異常気象と商機

本日は天気もよく非常に暖かい一日であったが、思えば今月の所謂「三寒四温」はとにかく極端であったなと。宮崎では4月の観測史上1位タイの低い気温を記録したかと思えば、関東地方でも都心では41年ぶりの積雪となり、桜に雪景色というなんとも風流?な光景が見られた。

そういえば馴染みのクリーニング店へ行っても今年は冬物の持ち込みが極端に減少し保管依頼も今のところ昨年の半分以下との話しであったが、先週末の日経夕刊でも一面はこれらの影響による野菜高騰が載っていた。他にも相場モノではこの時期灯油のスポット相場も4月に入ってからガソリンとほぼ同鞘に並ぶ場面が出現するなどの異常事態も見られた。

昨年の夏には冷夏の影響で各種の仕入れ目論みが大きく狂った経緯があったが、今回も行事の中止やら売れ線の変更やらで各所の苦労は想像に難くないところ。季節感がなくなってくる影響は計り知れないが、はてこれらの対策としてのヘッジを考える向きが如何ほど居ようか。

TOCOMでは石油製品先物が上場しているが、本来であればこんな時にこそもう既に東穀取が取引休止にしてしまった野菜先物など大賑わいして然るべきなのだが、まあしかしこれも放置されたままなんとも不発に終ってしまったのは残念。ただ、行く先天候デリバティブの必要性を考えればマーケットは大きく、商品取引所や損害保険会社などにとって商機なのはいうまでもないだろう。


ブラックボックス金融商品

さて、今週お騒がせだった話題はやはりSECによるG・Sの証券詐欺疑いの追訴であろうか。これのお陰で、株式から為替、そして商品までリスクマネーは一時冷や水を浴びせられ、マネーは国債に避難し多くが右往左往と振り回される展開となった。

この話、かなり以前から彼方此方で喧伝され噂にはなっていたがこの期に再燃するとは政策的なものも感じないわけではないが、問題の商品はサブプライムローンに絡むCDO、所謂合成債務担保証券モノで「アバカス」なるもの。この組成に絡んだのが昨年に当欄でも触れたジョン・ポールソン氏だが、問題は販売した同商品のショートやらCDSやらで利益を上げた疑いで証券詐欺を指摘されているもの。

ポールソン氏といえば鉱山会社と金関連デリバティブファンドも立ち上げコモディティー市場においてもその名は有名だが、商品市場も多少動揺するのだろうか?まあそれは兎も角、こうなると他の金融商品群も痛くもない腹を探られ、またこの結果如何によっては他にCDOを組成している金融機関も影響を受けるのは必至か。

しかしこの一連の報道でボンヤリ思い出されたのが一昔前に流行ったエクスチェンジャブル・ボンドだろうか。所謂EB債だが、高利回りを武器にかつては証券界のヒット商品になったが、満期日のインチキ株価操作やら仕切りモノやらの横行がとにかく酷かった。大体において自分がオプションの売り手に回っているのを認識している向きが購入者の如何ほど居たのであろうか? 

何処の国でも一寸捻ってある甘い香りが漂う金融商品は、プロでも個人でもその対にある存在の性質を先ず確認するのは必須ともいえる。


次世代モノ覇権争い

本日の日経紙商品面では、「太陽電池、価格競争が過熱」として、数年前まで独壇場であった国内企業に、中国と台湾に続いて韓国勢が本格攻勢をかけ始めた旨など取り上げられていた。

太陽電池といえば、昨年は昭和シェルが中期計画において太陽電池事業に積極投資し、利益の半分を太陽電池で稼ぐ計画を打ち出したのが記憶に新しいところ。確か日立系の薄型テレビのパネル工場を買収し転用との事であったと思うが、この関連ではパナソニックも所有するプラズマ・ディスプレー・パネル工場の敷地内に三洋電機の太陽電池工場を建設する検討を進めている事が本日明らかになっている。

斯様に昭和シェルは国内の石油需要が減少し需給ギャップが深刻な状況から、またパナソニックなどはデジタル家電の収益低下から、有望市場へ活路を見出していると思われるが、これらに限らず大手各社始め多くの企業がシェア確立にしのぎを削っている。

次世代クリーンエネルギーというのはテーマが大きいだけに、株式市場でもバッテリー関連銘柄など激しい攻防が繰り広げられてきた経緯があったが、上記の通り独壇場の分野にアジア諸外国の追い上げがキツくなっている様は上記の薄型テレビでも見られた現象。そんな意味でも今後の展開が興味深いところ。


通称パンダの先物取引開始

昨日も触れたようにG・Sショックの影響で昨日はアジア市場も荒れたが、中でも下げが顕著だったのが中国で本土市場では上海総合指数が急落、CSI300指数なども然りで09年8月末以来、最大の下げを記録している。

ところで、中国金融先物取引ではこのCSI300指数を原資産としての先物取引が先週末から始まっている。ちなみに基準値は3399に設定していたが、果たして初日は全4限月が上昇してスタート、出来高も予想以上のものとなっていた。

こちらは当局の規制もあって当面の参加者は個人投資家とはなっているが、将来的にはこうしたデリバティブの登場は投資信託やらETFのアレンジを生み出し、金融商品の幅を大きく広げることから投資環境の変化には大きく寄与することになろう。

デリバティブ成熟市場の国々で規制機運が出ているのとは逆に、中国では前にも触れたナスダックのようなベンチャー物の「創業板」がスタート、続いてマル信の解禁、そして今回の先物取引解禁と次々に標準化が進むが、これらに則して生み出されるニッチビジネスもかつての日本の軌跡を辿るのであろうか?市場を考えればリスクと引き換えに応分に儲かりそうなネタがゴロゴロしている。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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