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金融商品と倫理性

米市場では決算ラッシュであるが、注目のゴールドマン・サックスが20日発表した4-6月期決算は最終利益が6億1300万ドルと前年同期日82%減と大幅な減益になった模様。さて、ゴールドマン・サックスといえば先週末に飛び込んできたニュースには、サブプライム住宅ローン関連の金融商品販売に関して誤った情報で顧客を欺いたとして訴えられていた件の扱いで同社とSECの両者が和解したとの報もあった。

この米当局と金融界の雄との全面対決については当欄でも4月に「ブラックボックス金融商品」として触れた事があったが、結局ゴールドマン・サックスが金融機関による和解金としては過去最高という約480億円を支払う事で決着を見せ、この辺も上記の決算に影響を与えたか。

このケース、各々の立場からはどちらの見解もアリだなと思っていたが、仮にクロということになればデリバティブ物の仕組債でその規模からしてけっこうな損失を出してしまった複数の某有名大学のケースなど、国内モノでも探せば幾つもこれに相当するケースが出て来るワケでその辺も絡んで余計にその行方には注目していたものだ。

また被害者側が所謂プロに当たるケースが多く、この辺もプロ化論議が喧しい中で動向が注目されたが果たして上手い具合に双方面子を保つことになったか。しかしまあ金融商品だけは進化し続けているようだが、改めてプロの領域とリスク説明の限界という問題提議ともいえるケースでもあったとも思う。


高速売買と課題

本日の日経平均は先週末のNY DOWの急反落を映して前場は大幅続落となっていた。さて相場急落といえば先週末の日経紙にはドイツ証券が6/1に先物市場において引き起こした約16兆円分の誤発注について、原因はコンピューターを使った高速売買でのシステムトラブルだったと載っていた。

振り返ってみるとこの日は、開始直後に180枚の売り板が1分間に6,900回も出された結果、9,690円で売り板79万枚、9,700円で売り板28万枚と尋常でない板が並び早々にマルにしたものの、開始直後の僅か1分そこそこで前場のボラを形成、当該証券の手は引け後で5,795枚売りの5,081枚買いであった。

ところでこれに先駆けてはこの一ヶ月ほど前にNY DOWが20分そこそこで600ドル超の急落を演じた事件があり、今回のケースでは値幅制限のロックがあるとはいえ、カバーの発注方法等一歩間違えばこの程度の話題性には十分であろうし、実際に寄与度の大きいものに当たった場合は体感温度としてその下げは値幅制限さえ感じさせないものになるのは既に経験済みである。

また直近でも日経紙にて「東証、また瞬間的乱高下」として別子やオリンパスの瞬間的な株価乱高下の様も載っていた。東証では両銘柄共に誤発注とは認識していないとしているが、こんな瞬間的乱高下はアローヘッド稼動後に幾らでもあった。上記証券の例もそうだが二次的な乱高下に対するセーフティーネットのような物の必要性が問われてくるのは必至か。


立場逆転したねじれ

さて、11日に投開票があった昨年の政権交代後に初の大型国政選挙となった第22回参院選の結果は、下馬評で与党による過半数確保が微妙な情勢といわれていた通り民主党は44議席にとどまる敗北を喫した。

斯様に沈むところあれば躍進するところありだが、三井住友銀顧問の西川氏がコメントしていたように民主バブルがはじけたのも世間の煽りで醸造された部分が大きかった事を思えば至極当然か。相場で例えれば右へ倣えではるか実力以上に買われた銘柄に飛び乗ったら、実態が伴わないことに気付き改めて値位置の高さに怖くなったという感じか。

他にも消費税引き上げ言及やら法人税引き下げ等々意見が出ているが、これ自体は日本電産社長の永守氏がコメントしていたように言及しなければならない問題であるものの、それ以上に他の税負担の公平性采配がまだまだ緩い気がしてならない。法人税問題も然りで、中にはこれを以ってバラマキとする意見もあるのはなるほど頷ける部分もある。

昨年は政権交代で株式・商品など相場環境や業界はどうなるかと記した記憶もあるが、今週はS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)がこの参院選の結果が、日本国債の格付けの潜在的なマイナス要因になるとしており、今回躍進したみんなの党は日銀法に対して独自の持論がある。9月には民主党代表選もあるが、そうした意味でも今後の運営動向に注意していたい。


退潮と躍進

ちょうど一年前の7/14付け当欄では「時価総額下克上」のタイトルでコメントしていたが、本日の日経紙には6月末の株式時価総額で見た世界の企業ランキングが出ており、昨年末と比べると収益の先行きの懸念等などから石油会社など資源関連の退潮が目立つなど、個々で勢力図が変化している旨が目に留まった。

この資源に限らず最近話題になったものの中には、立て続けにヒットを飛ばしている米アップルとマイクロソフトの時価総額が逆転しその主役が交代したのも有名なところ。また急減組としては原油流出事故でほぼ半分となってしまった英BPがあるが、規模こそ違うが昨日書いた国際帝石も株価下落でそうしたパターンか。

けっこう意外だったのは躍進が続いたペトロチャイナなど中国勢の減少があった点か、この辺は東証が今年上期の売買代金で3半期ぶりにアジア首位の座を奪還した裏で、上海証券取引所など35%減と振るわなかったのにも見られるか。

一年前はもっと狭義で国内企業のテーマ別に堅調組と苦戦組の時価総額逆転をコメントしたものだが、世界規模で捉えるとまた違った視点で見えてくる。今回は相対的に日本勢が浮上したが、次回の勢力図はまた変化ありや否や非常に注目である。


懐かしや帝石

昨日は中国のコークスに触れた事もあってザッと資源関連株を見ていたのだが、中でも目立っていたのは前日にストップ安まで叩かれていた国際帝石の急反発であった。ちなみに本日も外資系のレーティングアップ等で見直されて続伸となっているが、ここ直近の下げはダラダラとした下落の最後?に相応しいものであった。

週末にストップ安で東証一部値下がり率トップを演じた背景には、周知の通り公募増資で最大5,872億円を調達すると発表したことがあるが、国内事業会社としては今年最大級の増資である。なにせ新株は最大130万株にのぼり、現在の発行済み株式数が約235万株であることから約55%にもなる計算だから凄い。

もともと同社には以前からファイナンス観測があり、これを読むかのように確信犯的なショートが直近で入っているあたりがなんとも怪しいが、それにしてもかつての野村やNECのファイナンスが普通に見えるほどの希薄化はサプライズであった。

しかし、今まで触れてきた金融系に限らず事業会社も自己資本増強の用が依然強いことを改めて認識。株価下落から時価総額も同社はJXホールディングスに首位の座を譲り渡す事となったが、今後も事業系ではこうした構図が彼方此方で見られる可能性が高いか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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