ハコと有限責任事業組合

さて、こんな萎縮した株式市場で活躍するのは幕間ツナギで仕手株と相場が決まっているが、本日も飽きず?に値上がり率上位にはボロ株がオンパレードである。ところでこの手ではかつてよく商いを集めていた物に東証二部に上場していた井上工業があった。今は無き同社だが、今頃になって約15億円の自己資金を還流させて架空の増資を公表したとして問題になっている。

これに限らず二部や新興ポストは、監査法人から決算レビュー報告書が作成出来ないと通告され上場廃止回避策から怪しい闇錬金に手を染める例が後を絶たなかったがこれもその一つ。架空増資を実施させて新株を入手するスキームは一部の定番で、(●●有限責任事業組合)なるものが彼方此方に乱立していたのは記憶に新しい。

当然ながら魑魅魍魎の金融ブローカーにカネも流れ、闇社会に還流していった流れなど指摘されていたが、同様に東証一部の名門だったオリンパスにも飛ばしで金融ブローカーが介入していたのは軽い驚きであった。しかし今更ながら消滅した二部のこんな小粒の事例で騒ぐということはオリンパスの本当にマズイ部分から視点を逸らさせる狙いもあるのだろうか?とつい勘繰ってしまう。


セールでも食指が動かず

昨日の債券市場では長期金利指標の新発10年物国債利回りが1.065%まで上昇、日経紙などにも載っているように一部では国債先物の新システムが長期金利の上昇を招いたとの説も燻ぶっているが、やはり先のドイツ国債入札不調の余波がこの日本国債にも及んだとの見方も依然多い。

事実、ドイツ10年債券入札の札割れ翌日から連日上昇となっているワケだが、そういえばこの札割れも約35%に応札が無かったというからさすがにこれは酷い。安全?とされている同債がこんな需要不足に陥るのはユーロ導入以来ではないかとも思うが、それだけ今回のソブリンリスクは猛威を振るっているということだろうか。

どんな商品もそれなりのリスクがあるのは当然だが、理論的にはなかなか見られない現象が其処彼処で起きているのも今の特徴で、もっと狭義で見れば株式市場で値決め価格を大きく割り込む銘柄が続出、市場のPBRなんぞもこの世界で1倍ならまだしも0.5以下が大手でもゴロゴロしている。一寸探して見ても保有有価証券等が軽く本体を超える物もあり、ネットキャッシュを時価総額が大きく下回る企業が放置されている市場は不気味極まりない

ソブリンリスク問題も暁の時を迎えアンワイド化ではこんな現象も珍事として語られることになろうが、それが何時になるかは依然として不透明な環境である。


GDPの5割

本日の日経平均は反発しているとはいえ売買代金は前回書いたように依然低水準、先週末の株式市場も東証一部の売買代金は9,018億円にとどまり本日で実に10営業日連続で1兆円を下回っているが、2003年12月から2004年1月にあった11営業日連続以来という約8年ぶりの事でこの更新も指呼の間である。売買代金の減少については先月から顕著になっているが、日和見的な欧州問題に解決策が見出せず右往左往のなか日本株の売買がどんどん手控えられてしまっている。

TOPIXもリーマン・ショック後の安値まであと数ポイントとか言われているが、上記と絡めて東証一部の時価総額も今月に入ってからリーマン・ショック後の250兆円割れ以来、約2年8ヶ月ぶりにこの水準に戻ってきた。震災直前には約330兆円前後あったワケだから随分と蒸発してしまったものだが、個別を見ても今年は代表的なところで「東電」や「オリンパス」、それに「ソニー」や「トヨタ」まで所謂従来ディフェンシブ系という認識のあった企業の崩落が記憶に新しく当然といえば当然か。

しかしこうなると今や時価総額はGDPの半分規模になっているわけで、教科書的にはこのGDPとの対比がほぼ同規模が自然とされるのを考慮するにある意味危機的状況だろうか。上記の通り売買が低調だから十分なリクイディティーもなく仕方なしに薄い板へぶつけるから値が飛び、それがまた極端な値振れを増徴させるという悪循環になっているが、個人好みのモノなど難平などで下手にマル信なんぞ使っているのか下がる過程での買い残増加が多く見られる。

こんな構造的要因とも相俟ってPBR信者も苦戦を強いられているようだが、こんな状況下で以前は懐かしいPKOやらPLOの実施に出たものだがさしずめ今は日銀のETF買いか。これも月末の2011年度上半期決算で実額が明らかになってくるだろうが、その含み損は目下400億円以上とも一部では指摘されている。このままいけば結局これも間接的には納税者負担で穴埋めという形が避けられないというのはなんともという感じだ。


時間延長効果

さて周知の通り、今週は週明けから東証と大証が現物市場の株券と転換社債型新株引受権の前場の取引終了時間を30分延長している。もともとはゴールデンウィーク明けから実施される予定であったが、例の大震災の影響で電力供給の問題が発生したことで延期されていた経緯がある。

果たしてその効果だが、初日の東証一部の売買代金は7,557億円と今年2番目の低水準となった。まあ殆ど時間延長効果がないというより今月に入ってからはズルズルと売買代金の減少が著しいワケでこの辺はタイミングの問題か、それにしても順次国際標準に変貌を遂げつつあるもののこんな独自の事情もあって滑り出しは紆余曲折である。

もっとも、昼休み時間短縮は今回が初めてでないのは既に以前当欄でコメントしたことがあったが、同様に一昔前の前回の30分短縮でも売買高の増加は見られなかった経緯がある。当時とは違い先物とのアビトラの収益機会が増え、ボリューム増加を期待する向きもあるようだが上記の通りまだまだ未知数。

今回はどうかだが何度も書いているように現状イニシアチブを取れる参加者が不在な今のマーケットでは、結局国内市場が取引をしている時間帯で材料消化は為されず寄付で海外を織り込み、あとはボラの薄い中をどうでもよい国内要因を時価に反映させている日足がコマ連続の状況。こんな状況下では昼休み延長より寧ろ夜間延長の方が現状は効果があるのではないかという感じもするのだが。


再編第二弾までの道のり

さて、先週末の日経紙一面には「東証・大証2段階で再編」として合併比率が大証の時価総額1に対して東証の価値を1.7倍程度に評価と載っていた。その他についてもほぼ事前の観測に沿った内容ではあるものの、最後の焦点であった合併統合比率などより一層具体化してきたことで株価の方も再三の蒸し返しに反発となっていた。

ところで既に【FUTURES PRESS】でも載せている通り、末尾の方には商品取引所などが将来合流する可能性も考慮して持ち株会社の社名は「証券」の文字を入れない日本取引所グループとし、1〜2年程度をかけて両社がシステム統合などに取り組み4事業会社にグループ内を再編と出ている。ただ公取委の審査が長引く可能性も考慮し合併予定時期は当初より延長され今のところ再来年へ、そこから数年かけての再編であるから商取にとってはそれまで体力勝負となるか。

これに関してもともと大証と縁があって注目されている東工取は11年3月期まで単体で3期連続最終赤字を計上、4-9月期赤字脱却ともいわれているものの金への単品依存で厳しい環境には変わりがなく、ここでなんとかしたいのは周りばかりでなく当人も同じところ。ただ実際に東工取のシステムは2014年5月にライセンスが切れ、これまでのような牛歩でコトを運ばれたら可也厳しい状況ともいえる。

そんな折に世界最大のデリバティブ取引所のCMEグループが東工取に取引システムの開発で提携を申し入れていることが先週報道されている。現在世界の再編劇はスピード感をもって進行しており東工取のスタンスも微妙に、対抗案とも取れなくもないCMEの提案は現在進行形の国内再編に影響を与えることになるのかどうかこの辺も見守りたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2011

11

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30