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一罰百戒に出来ない事情

さまざまなところが注目していたオリンパスの上場問題であったが、先週末には東証の自主規制法人の臨時理事会が「投資家の判断に重大な影響を与えたとはいえない」と判断し監理銘柄に指定した同社株の上場を維持すると発表、これを受けた本日の同社株は材料出尽くし感が強いながらもお約束の反発となっていた。

重大な判断という部分に関して日経紙には「粉飾は巨額だったが、オリンパスは事業規模が大きいため、投資家に利益水準や業績の傾向を大きく見誤らせたとまではいえない」と載っていたが、近年のライブドアなどを持ち出して考えるにやはり上記の言葉に集約されているだろうか。両者を比較するになんとも釈然としない向きが多いとは思うが、つまり結局は利害関係者の構図が大きく異なったということに尽きると思う。

オリンパスは世界に誇る日本のブランドで金融機関始めとして錚々たる面子が大株主になっている一方で、ライブドアは切り捨て易い?小粒株主の構図。「投資家保護」を謳ってはいても一罰百戒の上場廃止で個人が泣く以外に然程厄介な問題にはならなかったワケだがオリンパスを上場廃止にしてしまうと利害が絡む機関投資家の後処理?も厄介だし、ついでに言えば東証も大商いしてくれる銘柄を減らすことにもなる。

しかしこれでお墨付きとばかりに今後、ラインを超えない粉飾はOKとこれと同様のスキームでインチキやるところも出て来てもおかしくはないだろう。また今回の件では核心の部分が闇に葬られ上場廃止基準の抵触を上手く避ける素地が作られたとの指摘も依然燻るが、こうした天下り組織と癒着する国家権力と穿った見方を避けるにはやはり東証の誰が見ても同一な基準の明確化が必要だろうし、また今回の件の代償?として今後監督責任含め一層監視される厳しさも増そうか。


相違点

昨晩の米株式は良好な経済指標や企業業績を受けて買われ12,500ドル台へと続伸、これは昨年7月末以来約半年ぶりの高値である。またこの辺は欧州株式も同じ歩調となっており、特にDAXなどは順調に値を伸ばしている。

昨年はトリプルAに君臨した米国債格下げショックがあったものの、米国株は昨年年間で約5.5%の上昇と3年連続でプラス、DAXも昨年のボトムを見れば約20%高と悲壮感は感じられない。欧州危機後、ユーロ諸国間の金利差拡大によってドイツなど実質金利はマイナスとなりドイツの内需とインフレ率の押し上げが言われている。マイナス金利といえば米も同様で、どうやらこれらが両者の株に寄与した格好にもなっているか。

ところでトリプルAの格下げといえばかつて上げの起点になっており、1986年のオーストラリア等は典型であったが、その後の1998年の日本も然程影響されずにその後は上げ相場に移行していった。これら踏まえて昨年騒ぎの最中そういった論調はあったのだが果たして株式、ドル、そして米国債揃って一寸したトリプル高となった。

そんな中で現況日本株は出遅れがいわれて久しいが、この辺は上記の通りマイナス金利と実質高金利との違いも大きいだろう。この辺はいわずもがなデフレ選好の日銀政策が方向転換しない限り解決し辛い問題といってもよいだろうか。


政府の押し付け

さて、本日の株式市場は後場から先物も主導し続伸。中身はこのところ低位株が活況だが本日は東電も1億株以上の商いを集めて反発、これは4月から実施する企業向け電気料金の引上げ幅を平均17%と発表、正常化に向けた第一歩として評価されたものだが、この方針も32年ぶりの大幅値上げとなるらしい。

日経紙には他電力と契約もというような記事が出ていたが、この他社にしても構造上はゆくゆくこれに絡んだ件は課題になってくるだろうし、併せて家庭向けも視野に入ってくるのは避けられない問題となってくるか。ところで原発事故で東電と共に売られた原発銘柄の木村化工機もここ急反発してきているが、同じく日経紙には原発を20年延長する例外規定を政府が認める方針と出ていた。

原発というナーバスな素材を巡って、震災後は企業がある面ではスケープゴートにされてきた部分もあったが、ここへきてヒストリカルにみてみると上記の件も果たして二転三転してきている。企業に押し付けられるうちはまだよいが結局政府の確固たるスタンスが見えてこないところこそ問題にすべきだろう。


内輪の課題

本日の日経紙始め各紙では、総合取引所法案を通常国会に提出する方針を固めた旨が載っている。果たしてというか監督権限は金融庁に一本化、商品業界主務省の抵抗もそろそろ限界が見えてきた感もあるがさてここからも紆余曲折があるかどうか。

ところでその商品業界といえば先週末の日経紙にて「東工取、現行システム継続」と出ていた。昨年11月にも一寸触れた通り東工取は2014年5月にライセンスが切れるが、同紙が報じている通り現況では大証との共同化を見送り現状を維持する方針としている。統合の光が見える一方で、両者のシステム案が見えず下手に何れかとの共同戦線を取り辛いという状況下では確かに選択肢も限られようというもの。

同所は先の決算で通期純利益を叩き出しているが、中身はやはりJCCHの貢献に因るところが大きいのは一目瞭然。斯様に脆弱ともいえる構図では何れにせよコストの負担は大きくこの辺とも併せて考えなくてはいけなく、まだまだ個別では模索が続く。


経産省に翻弄される企業

さて、先週末の日経紙一面を飾った記事に、インサイダー取引疑惑で元経済産業省幹部が逮捕された一件が載っていた。この手の疑惑については当欄でも「情報は一流であったが妻の口座を使う等、張り方が三流もいいところでまだまだ素人〜」と書いた事があったが、規模が小さいわりに公職の特権悪用とされているだけ世間の風当たりが強い。

そのインサイダー銘柄となったエルピーダメモリだが、現在再建中の同社は今年3月末まで計450億円の社債償還、金融機関には約500億円の融資返済が必要な他、4月上旬にはメガバンクなどからの協調融資の一部約770億円の返済期日も迫っている。まるでイタリア国債の如くの爆弾を抱えている状況で、産活法適用の期限切れを3月末に控え再建計画の練り直しで産活法の再認定を狙っているが、こんな一件で再認定を主導し辛い雰囲気など出て再建支援に影響が出てくるような事態になればこれは迷惑な話である。

経済産業省が絡む企業といえば渦中の東電なんぞもまた然り、目下のところ再建計画も課題山積みのまま山場を迎えるがそんな中でもこのスキームを巡っては各紙の報道もバラバラのリーク合戦である。これは結局のところ政争の具にされているということで、政府が一枚岩になっていないことの表れというのは疑う余地が無い。

両者共にもはやコンサバ系の投資対象銘柄ではないものの、果たして株価の方は上記を嫌気する格好でボロボロの様相。政府が一枚岩で纏まり、また雑魚クラスのスケープゴートもなければまた株価も違った展開になっていたのかもだが、こんな愚に付き合わされる株主もまた可哀想である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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