和の工芸力

さて先週末で終了となったが、今月は三菱一号館美術館で開催されていた「KATAGAMI Style 世界が恋した日本のデザイン もうひとつのジャポニズム」を観てきた。同美術館へはほぼ一年前の「もてなす悦び展」以来のことだが、完成してまだ日が浅い此処はどちらかというと浜美などのど真ん中路線というよりもテーマ性を持たせたニッチ路線なのが個性的で他と一寸毛色の違いを感じる。

で、今回は日本の伝統的な工芸品・型紙のデザインが西洋の芸術にどのような影響を与え、そして現代に受け継がれているかを紹介する日本初の展覧会という触れ込みであったが、実のところなかなか観る機会のないエミール・ガレのカードテーブルや、同じくドーム兄弟・ルイ・マジョレルのたんぽぽランプが出ているということでこれを目当てに見に行ったというのが正直なところである。

果たしてというかやはりこれらは素晴らしいものであったが、同じ仏系でも珍しいルネ・ラリックの娘シュザンヌの作品や、英系では10年以上も前に見たオーブリー・ヴィンセント・ビアズリーのモノまで展示してあったのは思わぬ収穫であった。その他でも独系のヘルマン・グラートルの壁付水盤などは本当に和テイスト満載の素晴らしい作品でこれまた良い物を見せて貰った。

これら世界中に散らばっている美術館から集めたようだが、斯様にこれだけ拡散するなか各々が型紙の用途を超え各所でインスパイヤーされた向きから新たな芸術が生み出されているとしたらこれは本当に素晴らしく誇らしいことでもある。


大証NYダウ先物開始

さて、今週始めに米CMEは「ミニ日経先物」を06/17に上場することを明らかにしているが、お互いにというか今週月曜日から大阪証券取引所の方では、大証ダウ・ジョーンズ工業株平均先物取引が開始されている。夫々昨年7月の業務提携によって実現したものだが、大証NYダウ先物のマーケットメイカーはなるほどあのニューエッジ・ジャパン証券。

ネット系証券でもこれと同時にこの大証NYダウ先物や、日経平均VI先物取引の取り扱いを始めるところも出ているが、東証一部の売買代金が4ヶ月ぶりに8,000億円を割り込みTOPIXが年初来安値を更新するなか、最近はVIX系などの大商いが逆に目立つ展開でVIX短期のETFなど上場以来の過去最高を上回っている模様だ。

ただどうだろうか、日経平均が今より1,000円ほど上にあった4月上旬とVIX系ETFの価格は今も変わらなく日本のそれは需給先行してしまっている感は否めないか。ETFが軌道に乗り辛い土壌というのは何度か取り上げたことがあったが、取り急ぎ新商品導入ということで目下高レバレッジのETF上場も近いといわれる。そんな土壌の中においてもなお活性化の起爆剤として活躍する商品が今後登場してくるのかどうかこの辺にも注目しておきたい。


技術も情報も

さて、昨日の日経紙夕刊一面には「社員の発明対価に指針」として、政府が決める「知的財産推進計画2012」でサラリーマンが仕事で発明した対価として企業が支払う額について政府が指針を作ることを含めて検討する旨が載っていた。

この辺に関しては当欄でも今月の8日に「人材草刈り場」と題し末尾に、企業の事情が絡みインセンティブの国際標準を考慮するのも難題としたが、政府として漸く重い腰を上げたというところか。また併せて技術流出にも触れたが同計画では新日鉄の機密情報にあたる鋼板製造ノウハウが韓国鉄鋼大手ポスコに流れた問題を受けて防衛策を来春までに纏める事も盛り込むとしている。

この新日鉄問題はポスコのみならず所謂「二次流出」で中国の宝鋼集団にまで及んでいるが、それこそ株のインサイダー情報よろしくその対応には限界があるのは明白。この手の一件はグローバル競争を展開している日本の全産業界にとって間違いなく脅威で、経産省あたりも早急に防衛策を求める声が高まってこようか。先のエルピーダメモリ破綻後に中国勢の影がチラついた経緯があったが、直近ではこれに続き今度はルネサスエレトロニクスが土俵際に立たされている。


食い潰しの果て

さて東京穀物商品取引所の取締役会が明日に控えるなか、先週末の日経紙では同取引所の4商品を来年2月をメドに東京工業品取引所に移管、またコメについては関西商品取引所に移すことで合意した旨が載っていた。ここまでなかなか公式な発表が無いなかで来る株主総会までにその去就を決定するということであったが、大手紙では順次既成事実として最近この手の発表が相次ぐ。

ちなみにこのコメに関して今年2月に当欄では「こんな記事を目にするとイヤでも関西商取が消去法で出てくるワケで〜皆に期待された大型商品であったが、天下り陣の既得権益の具にされていたとしたらそれこそかわいそうな商品〜」とコメントしたことがあったが、いろいろ派生モノも出てきた矢先のコメだけに移った先の処遇が気になるところである。

しかしこれまでなしくずしし的に手持ち不動産、有価証券を順次売却し最後の砦である自社ビルまでも殆ど一存で売却してしまう暴挙と併せ、大風呂敷の事業計画を得意気に謳ってきた様はなんとも酷い。天下り組は食い潰しでも食うに困らないだろうが会員や一般は本当に犠牲者とも言えよう。

迷走の軌跡も板寄せからザラバへ移行、不発に終わってまた板寄せに戻すなどの繰り返し、今回の東京工業品取引所への移管でもコメ上場を期にそれを白紙撤回したかと思えば、不発に終わりまたも白紙撤回したのを撤回するという繰り返し。最近けっこう引用が見られる「1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」というマルクスの言葉があるがなんともなあという感じである。


大山鳴動鼠一匹

さて、今週は国内では月曜日の「金環日食」、そして翌日火曜日の「東京スカイツリー開業」と立て続けにビッグイベント?が並んだが、直近で世界規模のビッグイベントとなったのはやはりあのフェイスブックの上場だろうか。

注目された初値は42.05ドルと公募・売り出し価格の38ドルを約11%上回る水準となったものの、その後はズルズルと急落し物議を醸し出している。同社人気が波及する期待があったジンガやグルーポン等のSNS関連株も急落、フェイスブックのカラ売りは出来なくとも、日本でもジャスダックやマザーズなどの新興市場では先駆してこの関連で買われてきた手垢の付いた銘柄群がゴロゴロ、今週はこれらのカラ売りで軽く一回転が利く始末だった。

ところで史上最悪とまでいわれたこのIPO、上場初日に取引障害という失態を晒したナスダックが現況ヤリ玉に上がってはいるが、寧ろ主幹事のモルガンあたりの方がこれの主因のような気もする。日本でもそうだが初値形成は主幹事のカラーが結構出易く今回はまさにその通例通り、加えてディスクロの不透明さは今後も追求されて然るべきであろう。

踊らされて高値を掴みに行った向きも多かっただろうが、ちなみに以前にも触れた大統領選等の予想市場「イントレード」では同社初値を予想する取引も開始されていた。まあ斯様にトンだケチが付いたものの、曲がりなりにも初値での時価総額は約1,150億ドルとあのマクドナルドを上回るという水準、世界の株式市場が戦々恐々とした不安定な中でこんな超大型上場をこなしてしまうあたりも上記の派生モノと併せ改めて米株式市場の懐の深さをしみじみ感じる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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