JPX日経400先物始動

さて今週は連休明けからJPX日経400の先物がスタートしたが、注目の初日は売買代金が919億円、売買高が71,514枚と順調な滑り出しとなった。これまで日経平均とTOPIXが長年にわたり日本の代表的指数として双璧であったが、このJPX日経400の登場で投資家そして企業もにわかにROEを意識した経営となり、なによりGPIFもこれを運用基準に採用したインパクトは大きい。

先の追加金融緩和で日銀もこのJPX日経400に連動したETFを買い入れ対象に加えたが、当欄でこのJPX連動のETFについて前回触れた6月時点の残高は1,010億円であった。それから5カ月ほどで今や残高は3,000億円に達し約3倍に膨れ上がっているが、ヘッジニーズが高まる中でのタイムリーな上場となった。

また、これまで日経平均とTOPIXでNT倍率に着目した裁定などあったが、最近はTOPIXに対するJPX日経400の比率であるJT倍率なる物差しで趨勢を測るストラテジストも増えてきてこの辺の裾野拡大も期待出来るものの、この先物、当初より取引単位がミニ並みの手軽さに抑えられているので機関投資家のみならず個人投資家まで取引の間口を大きく広げることになろうか。


商品と需要

本日も引き続き外は冷たい雨模様でTVでは12月下旬相当の天気云々とも言っていたが、天気といえば昨日の日経紙には、三井住友海上火災保険が大雪など冬場の天候不順で生じる損失を軽減するデリバティブの販売を本格的に始めるとの記事が載っていた。

この商品、今年あたまの関東地方の大雪被害を踏まえ天候不順による減収リスクを回避したい中堅・中小企業の需要が高まったのに対応したものというが、この三井住友海上火災保険といえばかつて落雷を対象とした「雷デリバティブ」を発売したのが思い出される。またこの類では確か8年前だったか損保ジャパンも暖冬リスク対応デリバティブなる商品もあった。

今回の商品も含めてこれら上記の通り天候不順による減収リスク回避需要の高まりから出た物だが、近年地球温暖化の影響からか異常気象がますます顕著になってきている割にその利用状況は今一つという感も。そういえば東京金融取引所も9年ほど前には天候デリバティブ上場方針を固めていた事があったが、こちらも今後が気になるところ。


新興双璧

連休明けの株式市場は小幅に3日続伸となったが、個別ではオンコリスバイオがストップ高、オンコセラピーも急騰で年初来高値更新とオンコのコンビが仲良く動意づいていた。ところでこれら共にマザーズ銘柄であるが、先週末の日経紙には「マザーズ、代謝する市場へ」と題し、今月で開設15周年を迎えた新興企業向け株式市場の東証マザーズが新陳代謝を促すべく改革に乗り出した旨が載っていた。

ご存じマザーズといえば上記のオンコペア以外にも大物ミクシィを擁する市場であるが、卒業していった企業にはサイバーエージェントや飛び級で卒業したグリーなどこれまたかつてマーケットシェアを握っていた銘柄群が並ぶ。卒業といえば06年のライブドア事件の反省を踏まえ3年前に設けた制度に基づき、上場後10年経過した企業に対し市場選択を促す制度にも触れられていた。

この制度が盛り込まれる直前に当欄では「機動的な資金調達重視もいいが食い散らかしが出来る抜け穴もまた多し」と警鐘を鳴らしたことがあったが、この市場で上場第一号となったニューディールとインターネット総研共に上場廃止となり今は市場にその姿は無く、それ以降も良くも悪くも話題を浚う銘柄が多く輩出されてきた。

今日から先物がスタートしたJPX日経400でも当初はマザーズから2銘柄が選定されていたが、そのうち上記のサイバーが一部昇格となったものの現在はゼロ、同じ新興でもジャスダックとは毛色の違うモノが多いが今後どう棲み分けが為されてゆくのか非常に興味深いところである。


MBO考

今週は週初の日経紙に、「取締役の株主軽視に警鐘」と題しシャルレがちょうどあのリーマンショックの頃に実施したMBOの頓挫で会社に損害を与えたとして株主が当時の取締役に賠償を求めていた件で、神戸地裁が初めて当時の取締役の賠償責任を認める判決を出した旨が載っていた。

MBOといえば近年では先に再上場したすかいらーくや同じ外食の焼肉の牛角を擁するレックスHD、芸能関係ではホリプロや吉本興業、ワインのエノテカやレンタル屋のCCCから引っ越しのアートコーポレーションまで名の通っていた上場企業が一昨年あたりはMBOによって市場から姿を消すパターンが急増した記憶がよみがえる。(そういえば業界のユニコムもMBOで上場廃止の選択をしたなと。)

上記のシャルレは経営陣と一般株主とで価格を巡る思惑があまりにも違った事が問題だったが、このパターンでは出版の幻冬舎もTOB期間に突如として3割もの株式をおさえたケイマン籍のファンドがそれを盾に異議を唱えた件が記憶に新しい。こんな揺さぶりからワインのエノテカのように香りにつられてインサイダ−取引に手を出し摘発された小物まで何かとMBOの舞台裏ではドラマがあった。

この訴訟で問われたのはあまりに株主利益を軽視した取締役の行為という点だが、これらふまえ来年施行予定の改正会社法では取締役には少数株主に配慮して取引内容を承認する等新たな手続きが課されることになる。先には日本版スチュワードシップコードなる行動指針が投資家に導入されつつあるが、株主側に立った行動原則も近年徐々に変わりつつある。


老舗と相乗効果

さて、先週の当欄では「フュージョン料理」と題してユネスコの無形文化遺産に登録されたことで更に世界中で和食ブームに拍車がかかっている旨を書いていたが、和食といえばちょうど先週末の日経紙一面には「老舗料亭「なだ万」買収」と題し、アサヒビールがなだ万を買収する事になった旨が載っていた。

アサヒは料亭経営参画で得たノウハウを外食産業への営業や経営支援に生かしてゆくというが、大手飲料の外食事業買収はサントリーくらいしか聞いたことがなく、アサヒの件はなだ万という名前と併せてけっこう新鮮なニュースであった。

一方のなだ万は営業基盤を安定させ海外への出店を積極化してゆくという。海外といえば日曜日の日経紙でもフランスで輸入規制緩和を受けて和牛が店頭に再び並び始め、国民議会の議員有志は日本酒愛好会を立ち上げるなど和食人気の裾野が広がっている旨が取り上げられており、この辺絡めて機運とみたようだが今後どのような展開になるのか楽しみである。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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