3ページ目

あれから六年

あの東日本大震災が発生してから先週末でまる6年を迎えた。復興庁によれば避難者は前年比減とはいえ12万3千人に上り、行方不明もいまだ2,553人もいるのが現実だ。例年この時期になると各所でイベントやら物販、募金まで様々な活動が盛んになるが、政府も復興財源など無駄の無いよう予算采配を願いたいところだ。

渦中の東電福島第一原発の廃炉作業に中心的な役割を果たしている東芝も延期した明日の決算発表でさえ流動的なほど綱渡りの状況、膨らみ続ける米WHの損失が支障とならぬかも懸念材料に浮上しているほか、風評被害にしてもいまだ福島産の野菜や和牛、果物に至るまで震災前水準に及ばず伸び悩む状態が続いている。

この辺に関しては星野リゾートの社長など福島県の県名変更の覚悟も已む無しとの意見まで出ているが、一方で多くの企業が被災した東北では経営者の新陳代謝や起業が活発になっている旨も日経特集記事で載っており、電子部品メーカーの向山製作所など私も別な部分で名を知っていただけにその中でも目に留まった。

この会社、本業の陰りを危機と捉え独自のクリーンルーム技術の応用で副業としてスイーツに乗り出し、その品は先月の当欄でも取り上げた「サロン・デュ・ショコラ」で好評を博し今や売上の5割を占める事業に成長している事で有名。遅々として進まぬ懸案が山積みな一方、斯様な新陳代謝の息吹きも着実に芽生えている。


特A増殖の裏で

さて、今週気になった新聞記事といえば週明けの日経紙夕刊一面で「新潟産コシヒカリ43年ぶり安値」と題して、消費減少や39年ぶりの豊作等でこれまで代表格であった新潟産コシヒカリが43年ぶり安値にまで落ち込んでいる旨の記事であった。

また競合するブランド米の増加も背景にあるようだが、確かに最近百貨店の食品売り場等を通る度に新ブランドの売り込みがやたらと多くなった気もする。ついこの間までお偉いさん方が上京しトップセールスしていた新品種の試験品が姿を消し、早くも別の新ブランドの販促に余念がない様を見るに飽食化を感じないわけでもない。

そういえば週明けの日経MJでもコメの格付けである食味ランキングにおいて最高評価に新顔が3県入り、中でも神奈川に至っては初出品で獲得するなど当事者も予想外の結果だった模様で、今年は結局のところ特Aが過去2番目の多さであった旨の記事もあった。

最近では高齢化だけでなく若年層も糖質ダイエット等の流行りから米も敬遠され冒頭の通り消費も落ち込んでいるが、特A獲得で起死回生を狙う向きは多い。ふるさと納税返礼品等も最近ではブランド米の品揃えが各所充実してきているが、その裏で冒頭のように代表格の牙城が崩され業務用不足の問題も出てきた模様で今後これらのバランスをどう取ってゆくかが課題となるか。


時を経て再び

昨日のWBSでは「突然の社長交代劇 三越伊勢丹のカリスマに何が!?」として電撃引退した社長を巡る騒動が放映され、放映では当の社長や幹部らのコメントも度々出てきたが両者が統合したのが約10年ほど前、斯様に業界では近年合従連衡が進むなか一枚岩にはなれなかったというところだが三越の騒動再びという感もある。

三越の騒動といえばやはり三越の女帝といわれた愛人を囲い不当な利益供与をするなどやりたい放題の独裁政治を続けた挙句に解任された岡田社長の事件で有名だが、最近この事件を思い出させてくれたのは先の日曜日付けの日経紙一面・春秋で、38年前にヤマト運輸がこのワンマン社長のやり方に嫌気がさし三越の配送業務から撤退した旨の記事であった。

今、世間で話題になっている経済ニュースでは冒頭の三越トップの電撃辞任と共に昨日の日経紙一面を大きく飾ったヤマト運輸の報があったが、時を経てこの両者がまた違ったそれぞれの事情で大きなニュースになっている様は遠い所で何かしらの因果が感じられなくもない。


国際標準への課題

本日の日経平均は小幅ながら3営業日続落となったが、そんな中で寄与度の高いソフトバンクは中国華為技術製の大画面タブレット発売との発表で動意付く場面が見られた。ところで同社といえば借入金をテコに世界規模のM&Aを駆使した利益の上積みでROEを伸ばしている企業として注目されてきたが先週金曜の日経夕刊一面には「ROE3年ぶり上昇」の見出しが躍っていた。

昨年はタイトルにあるように上場企業のROEが8.3%と3年ぶりに上昇する事となったが、この8%台というのはこれまで機関投資家等が日本株に求める最多株主資本コストでこれの達成で9割超の投資家要求を満たすといわれてきた。丁度この水準をウロウロしていたのが約3年前であったからなるほど昨年の反発でまずまずといった感もある。

ROE等を基準に銘柄を構成しているJPX日経インデックス400も登場し専ら企業評価も自社株買いや増配等で不要資本を如何ほど減らすかの傾向になってきたが、とはいえ国際水準ではお世辞にも遜色ないレベルという状況でもなく今後もコーポレートガバナンス・コード等と併せ今後も如何ほど続伸出来るのかが注目される。


変わり種増加

さて先週末の日経紙投資情報面には「野菜直売や婚礼IPO多彩に」と題して、事業内容でくくった昨年のIPO企業83社が18業種となり、業種数は07年以来9年ぶりの多さになった旨が書かれていた。今年は今月末までに10業種の28社が上場し年間ではその裾野が更に広がりそうとの観測も出ている。

リーマン・ショック後に見られたゲームやバイオ一辺倒の傾向から業種に幅が出てきた背景には東証の上場審査厳格化で収益の先行き見通しが難しいモノの上場が逡巡された事もあるようだが、確かに同紙総合面のインタビューにも載っていたジャスダック上場予定の「ほぼ日」なども変わり種の部類である。

他に昨年も本来であれば秋口のオークネットや、年末には自動運転技術開発のZMPがIPO予定であったように需給とは別に個人が食い付き易いユニーク企業が控えていたものだったが、これらの仕切り直しも含め投資選択肢増加が個人マネーのカンフル剤となってゆくのかどうか今年のIPOも目が離せない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2017

3

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31