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同時並走現象

先週は金の国際価格指標となるニューヨーク市場の先物価格は2013年4月以来、6年5か月ぶり高値を付けたが、昨日の日経紙総合面には「ドルと同時上昇リスク回避映す」と題し米中貿易戦争の長期化で景気が減速するとの観測から、金価格が景気の下振れリスクが米国より高い新興国や、ブレグジット問題やイタリア政局への不安が残る欧州でも現地通貨建てで相次いで過去最高値となっている旨が載っていた。

また先週当欄で取り上げたバリック・ゴールド、アングロ・ゴールド、アシャンティなど主要金鉱株の所謂「BAANG株」の昨年末から先月末までの上昇率はダウ工業株30種平均の同期間のそれを大きく上回る旨も書いてあったが、斯様な関連セクターの同時並走は兎も角も教科書的には逆相関とされる株式などのリスク資産との同時上昇が今年は目立つところ。

逆相関を覆す同時並走といえば冒頭の通り、市場規模が大きい基軸通貨ドルの代替投資先とされる金は資産価値が減り難く無国籍通貨の側面がある金とは教科書で逆相関とされるが、これまた昨今はこれらの同時並走が目立つ。従前はレアケースとされた現象が緊張が続く米中両国関係を背景に今年は何所まで続くのか今後も注目が怠れない。


ワールド・ウォッチ・フェア2019

さて、この時期は毎年大手百貨店では恒例の「ワールドウォッチフェア」が開催されるが、今週アタマには今年の三越日本橋のそれも終了した。今年もはや22回目を迎えてそのテーマは「時の邂逅」と題したものであったが、ジュネーブサロン等で発表された新作交えた60ブランドが集結した。

今年は日付で会場を分けた構成で後半はちょうどフェアと合せてリフレッシュオープンの運びとなったウォッチギャラリーであったが、此処では抹茶等が振る舞われ帰りにはワールドウォッチフェアの綺麗な焼印が施された老舗処の和菓子を渡されるなどなかなか気の利いたサービスであった。

ところでこのリフレッシュオープンしたウォッチギャラリーだが、此処を見て真っ先に頭に思い浮かんだのが新宿伊勢丹か。此処のファッションフロアは早くから他に先駆けて仕切りの壁を無くし全てを統一させる脱ブースを図っていたが、そのアイデアはそっくりそのままアートを見て回る感覚で自由に回れるスタイルを導入している。

ここ数年ネット通販等の影響もあって業界縮小が言われるなか、この日本橋を挟んだエリアでは高島屋がウォッチメゾンや本店改装と併せ約160億円を投入した新館をオープンさせ、この三越伊勢丹も14年ぶりの大規模改装と併せコンシェルジュを充実させ原点回帰のおもてなしを肌で感じたが、何れにしても各社の鎬を削る戦略は一段と拍車が掛かっている。


オペレーティング・レバレッジ

本日の日経紙マーケット面には「頼みは実物資産銘柄」と題し、長引く米中対立や世界の金融緩和競争など混沌とした世の中に嫌気が差した投資家が、株式市場などで実物資産を多く保有する銘柄を物色するなど金や不動産などなどの実物資産が頼りにされている旨が書いてあった。

中でも米市場に上場する主要金鉱株はその頭文字から「BAANG」と称され、同紙にはそれらの7月末比や18年末比の株価騰落率が載っていたが何れも下げ相場の中で好調を維持しており、投信番付においてもブラックロック・ゴールド・メタル・オープンなど金鉱企業株で運用する投信は年初来基準価格上昇率ランキングで首位になっている。

金鉱企業は産金コストがほぼ一定な一方で売上げが金価格に比例して増減するという構造上、その個々の株価変動は金価格の数倍となるようなボラタイルなものだけにこれらの投信はさしずめ金ETFをレバレッジ型にしたようなモノだが、このセクターも大手による大規模合併を交えかつて甘んじていた低レベルなパフォーマンスから今や様変わりである。


PTSでマル信

本日の日経紙金融経済面には「株売買 東証集中に風穴」と題しこれまで東証を通してしか売買出来なかった信用取引を、SBIジャパンネクスト証券とチャイエックス・ジャパンの運営するPTS(私設取引システム)に対し金融庁がこの取り扱いを先月末に認可した旨が書かれていた。

PTSのマル信に関しては当欄ではちょうど3年前に東証が閉まっている早朝や夜間も私設取引所などで信用取引が出来るようにする規制緩和に乗り出す旨を取り上げた事があったが、夜間などの時間帯は叶わなかったものの東証と同時間の取引が認められるに至った事でネット証券も挙って取次開始の運びとなる。

マル信といえば前回触れた際も書いたが個人投資家の約7割がこれを利用しているとされており、ネット証券はSOR(スマート・オーダー・ルーティング)サービスを提供する事から競争原理が働き、これら活性化の度合いによってはPTSのネックとなっていたリクイディティーの問題にも繋がってくるだけに今後が注目される。


アマゾンとESG

さて、先週末の日経紙金融経済面では「肉食に及ぶESGの波」と題し、英紙フィナンシャル・タイムズがアマゾン熱帯雨林火災をきっかけに投資家と消費者の両方から食肉業界に逆風が吹いている状況について論じていた旨が書いてあったが、「地球の肺」といわれるアマゾンの状況が深刻化するに至ってESGへの配慮に欠けるといわれる業界には改めて厳しい目が向けられている。

予てより農業関連産業とりわけ畜産業などは温暖化ガスの排出量が多い事で知られ、米でナスダックに新規上場した代替肉ベンチャー、ビヨンド・ミートが株価大化けと共に話題を振り撒くなど昨今は欧米の代替肉ブームの波が各所で波及しつつある件などちょうど一ヵ月前の当欄でも書いているが、この辺からとりわけ若者世代の代用肉指向が高まっている。

一方でそうした世相とは裏腹に同紙では食肉業界全体でサスナビリティーへの対策を怠っているとしているが、そうした事から前回書いた通りこれらESG投資のカテゴリーに括られる企業群は今後サステナブルを意識する動きの余地があり、またこれらから商機の伸びしろも多いということになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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