土用の丑2021

さて昨日は土用の丑の日であったが、今年の丑の日は東京五輪と重なる事もあり鰻の商戦もスーパーなどでは例年より早くから予約含め注力していた光景が見られた。この東京五輪では開会式向け弁当約4000食が余り処分されたのが物議を醸し出していたが、流通各社は斯様なフードロスの対策の為に予約と共に保存が効く商品開発等にも注力したのが今年は奏功している模様だ。

そんな事もあって株式市場でも上記の通り東京五輪を家で観戦する人が多い事が予測され持ち帰り需要への期待もあってウナギ関連株が上昇、丑の日当日の28日は日経平均が急反落するなか手頃な価格でうな丼を提供する吉野家やG-FACTORYなど逆行高を演じていたほか、水産大手のマルハニチロや日本水産まで逆行高し日本水産に至っては年初来高値を更新していた。

ところでかつては10年で約10倍にも暴騰していた価格だが、シラスウナギは昨年の大豊漁に続いて今年も豊漁でここ数年では不漁で高騰した19年比で4割近く安くなった模様だが、通年消費傾向とも相俟って蒲焼の卸価格も前年同期比で安くなっているというワケではないようだ。

しかしこれまでは上記のように価格高騰を背景とし代替魚や茄子など原料とした様々な安価の代替製品が登場したものだったが、昨今ではSDGsの流れで絶滅危惧種に指定された鰻を敢えて食べない「ウナギフリー」の気運からの代替製品進化も著しい。せめて丑の日はこれらを想いつつ本物を有り難く頂きたいものだが、さて貴方は何れを選びますか?


ESGと中国市場

先週公表された主力企業の決算が事前予想を上回る内容であった事で楽観ムードが広がり今週も週明けから米市場はダウ、S&P500共に史上最高値を更新しているが、折しも五輪期間という事で個別でも米ナイキの株価なども順調に上場来高値を更新している。ところでこのナイキといえばウイグル自治区の問題が記憶に新しい。

同業の独アディダス等と共に強制労働問題に懸念を示す旨の声明を出しウイグルの綿花を排斥しているとの発信が批判を呼び、CM等の契約を結ぶ俳優やモデル等が次々と関係を解消、ファーウェイなどスマホ大手のアプリストアで同社のアプリを検索してもダウンロードする事が出来なくなる事態になった経緯がある。

さて、ウイグル問題の波に呑まれた企業には国内勢ではファーストリテイリングや無印良品など挙げられるが、こちらの株価といえば前者が本日は大幅安で年初来安値を更新、後者も年初来安値まであと僅かに売られている。中国リスクに対し敏感なポジションにある企業間でも上場来高値を更新する向きと年初来安値に沈んでしまう向きありと明暗だが、成長ドライバーを何所に絞るか中国リスクに対し敏感なポジションにある企業の課題だろうか。


場の選択肢

さて一昨日の日経紙総合面には「東証と私設取引、競争促す」と題し、金融庁が個人の株取引を取引所に取り次ぐ際にPTS含めた複数の株価を比較するなど、売買価格を最重視する事を原則として証券会社に求めるなど東証一辺倒であった市場構造の見直しに乗り出す旨の記事が載っていた。

年度内にも金融商品取引法に基づく内閣府令を公布し、上記の通り証券会社が投資家の立場を最優先する方法を示す最良執行方針に価格を最重視する記載を盛り込むよう求める方向で、取引システムの刷新が予定されている2024年を睨んでの見直しが徐々に具現化する方向になってこようか。

国内では先にチャイエックスが米投資ファンドJCフラワーズからアジア進出を狙う米CBOEグローバル・マーケッツ傘下となったが、こことジャパンネクスト証券の双璧でも取引量で見ればせいぜい7~8%水準に甘んじている。メガバンクも食指を動かして来ているが、斯様な構造見直しで先ずはリクイディティーの部分など変化が見られるか否かこの辺を見ておきたい。


各々のメダル

さて、誰の為の何のための大会なのか?と言われ開催だけを目的にしたと揶揄された東京五輪がいよいよ始まった。世界で最も厳しいと強調した感染予防策も選手村は危ないとホテルに逃避する国あり、開会式では天皇陛下が開会を宣言している傍で首相と都知事が着席したままそれを聞く姿が放映され、入場行進ではマスク無しの国ありなど突っ込みどころ満載の祭典が行われた。

とは言えいざ始まってしまうと政治とは別で一斉に応援モードになりメダルの数も気になりはじめる。先に各国が獲得するメダル数を日経紙とフィナンシャルタイムズが予測していたが、その上位予想ベスト5では米の121個から中国、英に続き日本が56個の予想だが、前回のリオ大会で41個のメダルを獲得し参加国では7位がこの予想通りなら過去最多という事になる。

とりわけ気になる金色だが、この土日では柔道女子52キロ級の阿部詩選手、そして兄の一二三選手が日本オリンピック史上初の男女兄妹同日金メダルの快挙で沸いていたが、他にも柔道では男子60キロ級の高藤選手、競泳女子400個人メドレーの大橋選手、そして新競技スケートボード男子ストリートからは堀米選手等が金メダルを獲得している。

ところで五輪中継でメダル授与式に映り込んだ東証一部の「ホウスイ」の文字が思わぬ広告効果を齎したと囃され、本日の同社は前日の約200倍の出来高急増を伴い株価も年初来高値を更新していたが、市場のアノマリーでは10個以上の金メダルで平均株価が上昇するというのもあり、金に王手組がまだ続々と控えているだけに明日以降もこれらと併せ注目してゆきたい。


嗜好から投機へ

さて、エンゼルスの大谷選手の活躍が報じられない日は無いが、この人気熱で昨年夏に約4万円だったトレーディングカードが直近では100万円以上に暴騰しているらしい。ところでトレーディングカードといえば、2017年に約10万円だったポケモンのカードも今年5月のオークションでは310万円と4年で約30倍にも大化けした旨も先の日経紙の記事で見掛けた。

オークションで大化けした事例として今月はゲームソフトも話題になった。任天堂が1996年に発売した家庭用ゲームソフト「スーパーマリオ64」が、11日に米で競売にかけられた156万ドル(約1億7200万円)で落札されたのがそれだ。ちなみにその数日前の9日には「ゼルダの伝説」が87万ドル(約9600万円)で落札され、ゲームソフトの落札額としては史上最高額を記録したばかりであったがこれが数日で塗り替えられたという事になる。

また近年すっかり投機対象と化した定番?のウイスキーも騰勢衰えない。約1年前に香港で開催されたオークションでは当時300万円で発売されたサントリー山崎55年が約8500万円で落札と実に約28倍に大化けしている。最近ではこうしたモノからメーカーにまでその投機熱が広がっており、MSCIワールド指数を米英仏の主要ワイン・ウイスキーメーカー5社の平均株価は既に大きく上方乖離している。

金融緩和でジャブジャブに溢れた世界のマネーがオルタナティブでこうした希少な嗜好品へ向かっているワケだが、先に挙げたNFT(非代替性トークン)などに見られるように日進月歩のIT技術も消費財の金融商品化に大きく貢献しこれがまた個人投資家を投機の世界に誘う循環が効いており、次の大化け候補の争奪戦も既に水面下で粛々と進行している。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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