オルタナティブでウイスキー

さて、今月アタマの日経紙・プラス1の「何でもランキング」はウイスキー知識であったが、この低正答率の4位には昨年8月に香港で行われた英競売会社ボナムスのオークションに出品され日本のウヰスキー1本の落札額として当時の世界記録となったサントリーホールディングスの「山崎55年」の落札価格を問う問題が出ていた。

世界的な日本のウイスキーへの評価の高まりでその輸出額は2010年の約17億円から2020年には約271億円とここ10年で16倍に。そのため国内では手に入り難くなった素地のところに、世界中に溢れた過剰流動性資金を背景に図らずも投機の対象となりその熱は上がり続けるばかりだ。ちなみに冒頭の落札価格、答えは驚きの8500万円であったが昨年6月に発売されてからわずか2ヵ月でその値段が約25倍以上に大化けした計算となる。

そういえば16日付の当欄で書いた「逸品会」でも同会限定で「希少ウイスキー4本セット」と称し、山崎25年に竹鶴25年それにクラウニングカスクとマッカラン30年のセットが約130万円で売られていたが、山崎25年だけでも巷の相場はだいたい140~170万円で流通しているワケであるからこれまた投機目線で見たら即買いのそれこそまさに「逸品」だろうか。

今から3年ほど前にも当欄では世界初のウイスキー・インベストメント・ファンドが設定1年で30%を超える評価益を上げていた旨を書いていたが、個別の銘柄では知識も必要になる為にメーカーの株式に投資する動きも見られ、MSCIワールド指数を米英仏の主要ワイン・ウイスキーメーカー5社の平均株価は10年前を1として見た場合、既に5を超え大きく上方乖離しておりオルタナティブ投資の枝葉もまだまだ伸びしろがあるといったところか。


自助努力

今年もふるさと納税で早くもおせちの案内が多彩になってきたが、先週末の日経紙一面には「ふるさと納税 勝者は」と題し、総務省が返戻品競争バブルを重く見て所謂3割ルールなどの規制厳格化を打ち出して以降、一時は制度変更に伴う減収がみられたものの2年連続で増収となった自治体もあるなど特産品を売り出す好機とみて新制度にうまく適応し知恵を絞り受け入れ額を増加させた「勝者」の工夫などが取り上げてあった。

この記事の中には書いていなかったが、返戻品を巡っての総務省と遡及適用などを問うたバトルで記憶に残っているのはやはり大阪の泉佐野市か。昨年は特産品の泉州タオルなどを推していた記憶があるが、直近ではふるさと納税型クラウドファンディングで外部企業を誘致しそこで創られた製品を返戻品とするというふるさと納税によって企業支援をし新たな地場産品を生み出す取り組みなどをスタートさせている。

辛勝した訴訟のその後の動向が注目されていたものだったが、これまで地場産品を「持てる者」だけの有利性が不公平感を燻らせていた問題を斯様な取り組みによって新しい特産品作りというところで格差を埋めてゆく制度になるという期待感はある。一方でこの夏に認定要望を出した関空拠点のLCCで利用できるピーチポイントについては大阪府から認定されなかったようだが、果敢に攻める企画力を背景にした同自治体の動向は今後も目が離せない。


腐っても銀座

先週は国土交通省が纏めた今年7月1日時点の基準地価が発表されていたが、全用途の全国平均は0.4%の下落と2年連続の下落となっていた。住宅地が下げ幅を縮めたのに対し商業地は前年度から下げ幅を広げており、コロナ禍の打撃が大きい飲食店やホテル需要の減退が続き全国で55%にあたる2846地点で下落、大阪圏など中心に下落が目立っていた。

昨年は新型コロナウイルス感染拡大の最中所謂「夜の街」と名指しされ前年比5%のマイナスとなった新宿歌舞伎町が長期にわたる緊急事態宣言などが響き10%以上の下落率で首位に、またコロナ禍によるインバウンド商売の直撃を背景にこちらも前年比5%以上のマイナスで下落率上位二つにランクインしていた銀座もこれに続く2位、3位にランクインしていた。

特に7丁目あたりは飲食街が犇めき合っているだけに下落が最も大きくなっており1年前に比べ地価は9%下落、その下落率も昨年の5.9%から拡大していた。とはいえ路の数本でその光景はがらりと変わり、メインストリートに近い好ロケーションの空き物件は賃料の値下がりを好機と見て勝ち組?の手当が進んでいるのを目にするが銀座ならではの下方硬直性が改めて感じられる。


コロナ禍のスタイル変化

さて、総務省が先週末に発表した8月の全国消費者物価指数は前年同期比で横這いとなり、前月まで12カ月連続で下落していた物価は13ヵ月ぶりに下げ止まった。しかし依然として上がらぬそれが欧米を恒常的に下回っているのが改めて鮮明になるが、同指数といえば先に行われた5年に一度の調査品目の入れ替えで約30品目が追加除外されている。

今回はやはりというかコロナ禍における消費スタイルの変化が見え、ザッと挙げても追加項目にはソファ、クッションが入り、料理の時短傾向という事なのかシリアル、味付け肉、カット野菜、更にはオリンピックで大人気となった冷凍餃子も追加され、コロナ禍によるイベントの中止などを背景に写真撮影代も追加となっていた。

他に目立ったところでは相次ぐ自然災害も多発している事で屋根修理費が追加となり、超高齢社会を反映し葬儀料も追加、近年のジェンダー問題の観点から女児スカート、それに男児用ズボンが除外されこちらは子供用ズボンに統一された。また女性の社会進出で公立・私立の幼稚園保育料が除外され学童保育料が追加されている。

また今月はアップルが恒例のイベントで新型アイフォーンの発表を行っていたが、こうしたスマホの普及で除外項目の方には固定電話や携帯型オーディオプレーヤー、ビデオカメラ、電子辞書、料理の講習代まで除外となっていた。依然としてデフレ脱却は遠い道のりだが、また5年後どういった物が追加され何が除外されているのか気になるところ。


育たない土壌

さて、本日21日は今年7月に米グーグルが主要株主と合意していたところのスマートフォン決済のスタートアップ企業であるPring(プリン)の買収が完了となる日だが、斯様な海外勢による日本のフィンテック企業買収が相次いでいる旨が「国内フィンテック青田買い」と題し先週末の日経紙・金融経済面にも載っていた。

本邦勢の決済サービスといえば頻繁にテレビのCMなどで目にするpaypayはじめとしてd払いや楽天ペイ等々大手の乱立状態にあって、上記のプリンは決済サービスの中では失礼ながら今一つ抜きん出た存在感に欠けるというのが個人的な印象だったが、決済ビジネスへの伸びしろへの高い評価と割安感を背景にガリバー的存在が目を付けて触手を伸ばしたというところか。

ところでグーグルによる本邦勢の買収劇といえば、数年前に日本企業に出資を仰ぐも評価が認められなかったロボット開発スタートアップ企業のSCHAFTを同社が買収したのが記憶に新しいが、斯様に積極的にリスクを取れる国内投資家も少なく足元の利益や実績を重視する根強い傾向にあり、M&AやIPO時の企業価値評価も低くなり易く成長企業が国内で育ち辛い土壌にあるといえるか。

同頁には直近であった米決済大手ペイパル・ホールディングスによる後払い決済のペイディ買収も載っていたが、このペイディもわずか数社という日本の数少ないユニコーン企業の中の一社であった。実際に同社以外のユニコーン企業の中にも既に米有力ベンチャーキャピタル数社から資金調達している向きもあり、今回の相次ぐ買収劇はSCHAFTの事例から数年経ても旧態依然としている日本企業の目利き力の課題が改めて問われるケースであると考えさせられる。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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