進まぬ転嫁
さて先週に日銀は1月の企業間で取引するモノの価格動向を示した企業物価指数を発表しているが、前年同月比で8.6%上昇し109.5となっていた。前回当欄でこれを取り上げた時からは小幅に鈍化しているものの、原油など資源価格の高騰や円安などを背景にオイルショックが影響した1980年12月以来の水準で高止まりとなっている。
ところでこの企業物価指数が発表された日に米では1月の消費者物価指数が発表されておりこちらは予想を大きく上振れる7.5%の上昇となっていたが、一方で直近の12月の日本の消費者物価指数は0.5%の上昇と依然として欧米のそれからは低い水準にとどまり企業物価指数との乖離は大きいままの状態が続いている。
この辺は前回も書いた通りで生産者や企業が価格に転嫁出来ていない実態が反映されており、実際に先月末に帝国データバンクが価格転嫁に関して実施した調査では約8割の企業が自社の商品やサービスに原料価格高騰等の影響があるとし、約36.3%が価格転嫁が全く出来ていないとし、全体の価格転嫁率は25.9%と3割を下回る現状が明らかになっている。
このCPI発表前には岸田首相がモノの値上がりに対し賃金の引き上げが行われなければならないと発言していたが、主に下請け中心に供給網全体でコストの適正分担が進まねば賃上げも難しい構図となっており、価格転嫁未達が6割を越える上位業種など消費者が壁になっている実態等と併せこの辺が依然として課題といえようか。