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前評判に暗雲

本日の日経紙・一目均衡には、東京証券取引所が4月に実施する市場再編に関してQUICKの2月の株式月次調査で市場参加者の56%が実質的に何も変わらないと回答するなどその前評判に対して散々な旨が書かれていた。その理由として基準未達でも移行できる経過措置の存在や期待を下回る時価総額基準など挙げられていたが、この辺は当欄でも1月に書いた通り。

同頁には消えるジャパンファンドと題してジャパンファンドの数がこの数年で減少している旨も書いてあったが、斯様な骨抜きとも言われかねない市場再編は更に市場再浮上に暗雲漂わせるものになりかねない。ところで前評判に対して散々なモノにもう一つ、東芝がグループ3分割計画を修正し2分割にすると発表した件がある。

物言う株主に忖度しながらすっかり風見鶏に成り下がった経営陣は昨年末の公表からわずか3ヵ月で軌道修正を迫られた格好だが、分割後の中核事業が依然として不透明なままでこちらも暗雲漂う。ともあれ先ずは来月の臨時株主総会で株主の理解が得られるか否かというところが焦点になろうが、まだまだこの先も紆余曲折が予想されるだけに目の離せない展開が続くか。


進まぬ転嫁

さて先週に日銀は1月の企業間で取引するモノの価格動向を示した企業物価指数を発表しているが、前年同月比で8.6%上昇し109.5となっていた。前回当欄でこれを取り上げた時からは小幅に鈍化しているものの、原油など資源価格の高騰や円安などを背景にオイルショックが影響した1980年12月以来の水準で高止まりとなっている。

ところでこの企業物価指数が発表された日に米では1月の消費者物価指数が発表されておりこちらは予想を大きく上振れる7.5%の上昇となっていたが、一方で直近の12月の日本の消費者物価指数は0.5%の上昇と依然として欧米のそれからは低い水準にとどまり企業物価指数との乖離は大きいままの状態が続いている。

この辺は前回も書いた通りで生産者や企業が価格に転嫁出来ていない実態が反映されており、実際に先月末に帝国データバンクが価格転嫁に関して実施した調査では約8割の企業が自社の商品やサービスに原料価格高騰等の影響があるとし、約36.3%が価格転嫁が全く出来ていないとし、全体の価格転嫁率は25.9%と3割を下回る現状が明らかになっている。

このCPI発表前には岸田首相がモノの値上がりに対し賃金の引き上げが行われなければならないと発言していたが、主に下請け中心に供給網全体でコストの適正分担が進まねば賃上げも難しい構図となっており、価格転嫁未達が6割を越える上位業種など消費者が壁になっている実態等と併せこの辺が依然として課題といえようか。


Valentin’s2022

さて来週アタマは毎年恒例のバレンタインデーだが、3連休明けの月曜日と業界ではもっともチョコレートが売れるといわれるカレンダーの並びだけあってそれに向けた商戦も最後の追い込みで喧しい。前哨戦とも言える「サロン・デュ・ショコラ」も今年でかれこれ20回目となったが、コロナ禍にめげず今年も開催されリベンジ消費とも相俟って相変わらずの盛況であった。

リベンジ消費に乗じ他の百貨店でも例えば西武などピエール・エルメとコラボした「茶嘉の道」を33万円で限定販売するなど客単価アップを図っているが、SDGs喧しい世の中だけに総じて今年各社で推し始めたのはビーン・トゥー・バーでもルビーチョコでもなく、環境を意識しフードロス削減にも適ったサステナブルな商品や生産地支援などを意識した環境問題などに配慮したエシカルな商品群か。

例えば上記の西武も高額商品以外にもカカオの生産者の背景などを伝えながら商品を開発しカカオを巡る労働問題に取り組んでいるブランド「マーハチョコレート」が出店、また売上高日本一を誇るバレンタイン催事を開催している高島屋では見た目が原因で廃棄寸前のバナナを使ったトシヨロイヅカの「トリュフ・バナナ」や、小樽ルタオの「ケークオバナーヌ」を販売開始している。

チョコといえばあの大手ロッテも生産地支援を意識したフェアカカオの割合を現在の11%から前倒しで25年には100%に一気に引き上げる予定で、その足掛かりの為に農家の所得向上に努めるチョコのベンチャー企業(ダリケー)の株式を取得したのを思い出す。こうしてみると改めて甘いチョコレートの香りの裏で苦い生産現場が存在している現実を認識させられるが、エシカルに敏感なZ世代など取り込むべくこの手の商戦も変わって来た感がある。


米株マル信解禁

さて、年明けからネット証券などでは米国株式取引のラインナップが充実するなど同分野へのサービス強化が見られているが、若年層を中心に米国株への投資意欲が高まっており投資機会の多様化を進める狙いもあって更に今年の夏からは米国株式の信用取引が解禁される旨が先の日曜日の日経紙に出ていた。

これらのルール改正で日証協や金融庁を動かす原動力ともなったのが上記の若年層の動きで、あるネット証券大手ではここ2年程度で初めて米国株を取引する向きは約7倍に増加し売買代金も17倍に急増、また別なネット系大手では1年間で米国株の取引件数が3.5倍に増加し顧客数も約3倍に伸びたという。

とはいえ国内株のようにストップ制限など設けられていないなど流動性のリスクもあるだけにこのマル信も当初は時価総額条件を満たす大型株等に限定、保証金や維持率共に国内株式と比較して厚く設定される模様。そういった事で山っ気のある向きなど当初は小粒のミーム株など存分に堪能出来るというワケにもいかなそうだが、いずれはこの手のオプション取引なども手軽に出来る日も来るや否や近年の枝葉には隔世の感を禁じ得ない。


ESGモノ増殖

本日の日経紙MarketBeatには「波乱相場が問う選別基準」と題し、昨年12月末時点で世界のESGファンドは5932本となり21年の新規設定が1017本と20年比で14%増えている一方で、ESGの要素を加えておけば投資家から資金を集めやすくなるためESGを冠しているものの環境対応などの実態が分かり難い「名ばかり」ファンドが増加している旨が出ていた。

この辺はブームになった頃からいわれているもので、数年前にも某資産運用大手が新規設定したESGを冠したファンドと他の商品を比較したところその中身は保有上位ベストテンのうち8銘柄が重なっていた事で金融庁のヒアリングを受けた一件もあった事が思い出されるが、昨今の機運で今や企業の多くは何かしらのESG対応を掲げているだけに広義の解釈が都合よく用いられているという事だろう。

欧米ではそのルール作り等に関して先行しているが、日本ではまだこうした分野への出遅れ感は否めないところ。投信などの金融商品はESGに関る資金とその対応等に優れた企業との橋渡し役として不可欠な存在となるだけに、運用会社の目利きが問われるのは勿論のこと今後はそのディスクロの在り方も重要になってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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