まさかの2022年

早いもので今年もあと3日となったが、先に日本漢字能力検定協会が2022年の世相を1字で表す「今年の漢字」は周知の通り「戦」に決定している。ロシアによるウクライナ侵攻や、円安などによる物価高など身近な生活の中での戦い、またサッカーワールドカップの激戦、野球界での記録への挑(戦)を挙げている。この「戦」が選ばれるのは米同時多発テロが起きた2001年以来、2度目となる。

しかし今年はウクライナ問題で明け暮れた一年であったが、民主主義の価値観を共有する国が増えた今世紀においてもはや侵略戦争は起こらないであろうと思われているなかでのロシアの暴挙は兎にも角にもまさかのサプライズであった。この侵攻で世界が分断しているという状況が鮮明になったが、経済面でもロシアと交流してゆく事が自国ファーストを考えるとメリットがあるといったジレンマを抱えている国々があるところが新しい冷戦構図に見える。

力による一方的な現状変更は認めないという国際社会の根本的な原則に関る問題でもあり、これを許される事になるとこれはアジアや日本にとっても外交・経済の面で大きな影響を与える事になりそうだ。またエネルギー高に対してインフレ対応力の弱い日本はどう対応するかも課題だが、この年の瀬にきて安全保障政策の大転換そして矢継ぎ早に原発政策の大転換も唐突に決まった。

コロナがいまだ終息を迎えないなかでのウクライナ侵攻問題の勃発、コロナが社会を大きく変えたように今回のウクライナ危機も世界を大きく変えることになるか否か、何れにしてもウクライナ危機もコロナも一刻も早い終息を迎え来年こそ明るい世になるよう願いを込めて今年はこれで筆を擱きたい。

本年もご愛読ありがとうございました。どうか来年が皆様にとってよい年でありますように。


市場再編と新陳代謝

東証の市場再編から9か月が過ぎたが、本日の日経紙投資情報面の数字でみる2022年では海外の投資マネーを呼び込もうと厳しい上場基準を設けて始動した最上位のプライム市場だが、その1社あたり時価総額が3725億円と100億円強減るなど期待とは裏腹に伸び悩んでいる旨が出ていた。

とりわけ基準未達でも改善へ向けた計画書を提出すれば上場が認められる「暫定組」では約6割の企業の時価総額が減った模様だ。先に当欄ではゼロゼロ融資に絡んで欧米と比較するに新陳代謝が進んでいない旨を書いたことがあったが、上場企業の増減では2001年から2021年まで米は約23%減少しているのに対し日本は逆に46%の増加を見せている。

収益力を高める為に再編等経て上場企業数が減ってきた背景などもあるが増加している日本企業とは対照的だ。それでも数字が伴っていれば問題無いが、例えば営業利益率一つ取っても2021年は米の15%に対して日本は9%と見劣り感は否めない。またPBRで見ても今年の8月段階で1倍割れ企業は米の10%に対し日本は実に47%である。圧倒的な時価総額の差も然りで悲願の海外マネーを引き付けるには新陳代謝のあり方を再考すべきだろうか。


返礼品変遷

昨日の日経紙夕刊一面には「ふるさと納税 焦る大都市」と題し、同社が試算した2021年度の寄付額から住民税控除額を引くなどした流出超過額は東京23区が全区で流出超過となったほか、市町村ではもうここ数年常連組の横浜市はじめ川崎市等の自治体は相変わらず多額の流出となり地方交付税の恩恵の無い大都市圏は引き続き劣勢を強いられている旨が出ていた。

こうした中には制度に批判的な自治体も当然ながら少なくないが、制度の構図自体が変わらないなかで死活問題となっている向きの中には返礼品強化など現実路線に転換するところも出ているという。ところで返礼品といえば最近では以前も書いたように出かけた先の宿や飲食店ですぐに使える電子ギフトなど、地元の経済活性化に直接つながりより手軽に納税が出来るような進化系スタイルも人気となっている。

こうした地域活性化といえば、コロナ禍を受け非航空事業の強化が急務となっているJALやANAなど大手航空会社も特産品プロジェクトや地域で楽しむ体験型返礼品の拡充などに動くなど後押しの動きも出ている。また最近登場してきたモノの中には特産品が少なくとも活用出来るNFTアートなど返礼品の世界は日々進化してきている感がある。

こうした動きを受けフィルターとなるふるさと納税サイト側も都心に返礼品を展示する実店舗をオープンしている。これはアパレルでZ世代に人気のSHEINがオープンした実店舗と同様のスタイルで、それぞれの品にQRコードが付いていてページに飛んで申し込みが出来る。こうしたインフラ整備や地域差による格差が生まれにくい返礼品の登場で自治体側も各々のセンスが問われるようになってくるか。


2022ヒット総括

昨年の今頃に当欄では日経MJのヒット商品番付を取り上げ、東の横綱に「Z世代」が選ばれた際には「~Z世代が象徴しているような消費行動がこれから未来の日本の消費トレンドになっていく可能性もある~」と書いていたが、果たしてというか今年の東の横綱は彼らZ世代に広く浸透した消費行動である「コスパ&タイパ」が選ばれている。

タイパに関しては先月も書籍を10分程度で読めるように要約したサービスやコンビニジムなど企業もこの市場を狙うべく倍速志向への対応を進めている旨を取り上げたが、一方では著作権を侵害したファスト映画訴訟や学生の夏休み課題代行業から企業の新卒採用試験における替え玉受験などタイムパフォーマンス重視が生んだ負の副産物も問題になった。

また西の横綱の「♯3年ぶり」といえば今年は特に新型コロナ禍で中止を余儀なくされていた各地での夏祭りや秋のハロウィーンが再開、また旅行支援から今まさに街を彩っているイルミネーションまで次々と復活した。これらに加え大関のサッカーW杯の経済効果など値上げで家計防衛意識が高まる中でも束の間の財布の紐が緩む場面を作ったといえるか。

飲食の分野では西の大関の「ヤクルト1000」が駅の自販機からコンビニの棚まで一時期は何時見ても売り切れが目立つなど、今年は本当にヒットした感がある。これに触発され他のメーカーからも挙って睡眠の質向上を謳う商品が打ち出されたほか、上記のタイパ絡みで短時間で完全栄養素を摂れる完全メシなど定番商品の進化系が目立った。来年もこれらに加え引き続きコスパ&タイパが経済を活性化するキーワードになってゆくのかどうか注目が怠れない。


効果と弊害

さて、先週の日経紙金融経済面では週末まで「ゼロゼロ融資残ったツケ」と題して連載があった。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業を底支えした実質無利子・無担保のゼロゼロ融資は、今年9月末までに民間と政府系金融機関で計約43兆円の融資が実行されたが、その新規実行も今年で終わり23年には返済開始の山場を迎えることになる。

このゼロゼロ融資、当欄でもこれまで度々取り上げてきたがこうした政策を見ていて思うのが欧米とは違う新陳代謝の構図か。中小企業庁調べでは2019年度の廃業率はドイツ、英国が10%超え、米は8.5%なのに対し日本は5%未満、また開業率の方は英国が10%超え、ドイツやアメリカは9.2%なのに対し日本はこれまた5%未満と新陳代謝が進んでいないことがうかがえる。

こうしたデータから見られるように欧米はゾンビ企業の倒産が増加するたびに新陳代謝が進み経済が強くなってきた経緯がある。それらが整理され競争力があり生産性の高い企業が残ったり、新たに現れるなど結果的に賃金が全体として伸びてゆくという構図にもなっている。リーマン・ショック後にGM等の大企業が破綻したが、この時に返済猶予法を施行した日本と違い米などは事業再生を促すインフラが整っていた点もまた違うか。

おりしもアベノミクスの象徴だった異次元緩和が今週、10年目にして転換点に差し掛かった。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移し今後はゾンビ企業含め企業の利払い増加などを懸念する意見もあるが、低金利の長期化のもと痛み止め政策を続け停滞していた産業の新陳代謝が国際基準へと向かう切っ掛けとなる入り口に来たという感じか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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