2ページ目

資本の歪み

先週末の日経紙ビジネス面には「京成電鉄株、一時8%高」と題し18日に突飛高を演じた京成電鉄株について書かれていたが、この背景には英投資ファンドのパリサー・キャピタルが京成電鉄に対し、筆頭株主として約2割を保有しているオリエンタルランド株の一部を成長投資や株主還元に回すべく一部を売却するように要求していた一件がある。

この京成電鉄、ほんの10年前は保有するOLC株より京成の時価総額が上回っていたものの今や保有するOLC株時価総額は約1兆7000億円、一方で同社のそれは本日の引け時点で約9300億円と1兆円にも満たない。斯様な資本の歪みを巡ってはフジテレビジョンと同社の筆頭株主であったニッポン放送を巡り、アクティビストの村上氏にライブドアも参戦した乱戦が記憶に新しいが「親」超えの上場企業は今も少なくない。

フジテレビとニッポン放送を巡る件ではニッポン放送が株式市場からは姿を消すことになったが、この一件で予てより資本の歪みを抱えている企業へその解消を掲げたアクティビストの出現が言われていたがはやはりという感じだ。上記の一件ではニッポン放送がフジテレビとの株式交換でフジテレビの完全子会社となったが、市場関係者の中には京成もOLCとの合併を推す向きも一部居る。

冒頭のアクティビストの提案通りに持ち株を売却し15%未満まで減らせば持ち分法適用会社から外れ会計上の歪みもはれて解消するワケだが、京成側もさまざまな事情で虎の子のOLCをすんなりと売るとは思えない。とはいえ東証の資本コスト等を意識した経営実現の要請はアクティビストにとって追い風で、目に見えるシナジー効果の無いままの保有継続に対して外部圧力の強まりは想像に難くなく今後の京成側の対応に注目が集まる。


スタンダードという選択

さて、昨年に東証が実施した市場再編だが約2200社あった旧東証一部企業のうち既に自主的にスタンダード市場へ移行したのは338社、これを経て東証はプライム市場への上場基準を満たさない企業に対して無審査でスタンダード市場への移行を認める特例措置を今年設けていたが、申請締切時点の速報から変更なく計177社が明日にスタンダード市場へ移行する。

当初よりプライム市場行きのチケットを手にしながらも敢えてスタンダード市場を選択した向きの株価は総じて主要株価指数をアウトパフォームしていた旨は以前書いた事があったが、取り敢えず未達でも猶予期間はプライム市場のブランドに噛り付きヤレヤレで移行表明した企業のそれは半数以上が下落したというが果たしてという感じだ。

とはいえこうした中でも株主還元はじめ成長戦略投資などに攻めの姿勢を見せている企業に注がれる視線は熱い。斯様に再編からはや1年半を経て絞り込みが進んでいるというところだが、当初よりプライム市場が招待席のような重厚長大企業の中でもJPX150のような新指数の誕生を背景に積極的な株主還元強化に動く向きも出てきているあたりは少しずつ潮流の変化を感じる。

日本の上場企業のROEは現状10%にも満たず、欧州の約16%はもとより米国の約23%よりはるかに低位に沈んでおり、実質PBRにしても現状2%にも満たず米の半分以下の水準に甘んじている。であるから上記のJPX150の基準など米のS&P500は選別せず何処を切り取ってもほぼ成立すると思うが、日本の企業価値を上げるためには引き続き全体の底上げが喫緊の課題か。


プランタン跡地の変貌

さて、一昨日午後に岸田首相は物価高騰の現場を視察するとかで東京都内のスーパー、イトーヨーカドーを訪れているが、何をいまさらという感じでヤレヤレというところだ。ところでスーパーといえば昨日は銀座のマロニエゲートの地下にあのディスカウントスーパーのオーケーがオープンした事が話題になっていた。

何が目当てなのか開店前からビルの外に行列が出来ていたのも驚きだが、オーケーで販売数ナンバーワンを誇る299円のかつ重もしっかり陳列された。先に総務省が公表した8月消費支出は実質2.5%の減少でマイナスはこれで6か月連続、支出を抑えている現状が浮き彫りとなっており節約志向のニーズをとらえようとする波が銀座をも浸食している。

そういえば此処の6階には昨年ダイソーの3ブランドのグローバル旗艦店が入居したのが話題を呼んだが、この向かいの西銀座デパートには同じく低価格ショップのスリーコインズの関東最大級旗艦店がオープンしている。そう考えるとプランタンのあった時代から街の景色もここ数年で様変わりという感も。

この低価格?密集エリアからほんの一寸歩いたところでもイグジットメルサには昨年100円ショップのセリアが初出店しており、時を同じくして入ったワークマンは早くも今年新形態のワークマンカラーズの第1号店としてリニューアルオープンを遂げている。富裕層が高額消費を牽引するラグジュアリーブランド勢と、低価格を謳う旗艦店が街に共存し二極化がより鮮明になってきた。


再接近?

先週までにドラッグストア大手5社の2023年6~8月期連結決算が出揃ったが、売上高は5社すべてが伸び4社で純利益が前年同期比で増えていた。新型コロナの5類への引き下げでこれら対策商品の売り上げが落ち込んだものの、猛暑の影響もあり日焼け止めや制汗剤の販売が伸びたことがこれを補った格好になった。

ところでドラッグストアといえば当欄では先にアオキHDやツルハHDの株主総会を取り上げ、所謂物言う株主が創業家の影響が強すぎるとして創業家役員の再任に反対し独自の社外取締役を設けるなど株主提案があった旨を書いたことがあったが、ツルハHDの株主総会では資本業務提携を結んでいるイオンがツルハHD側に寄った格好になった事で接近説が再浮上している。

イオンといえばスーパー再編のみならず数十年も前からこのドラッグストア業界にも根を張ってきたが、9年前にはウエルシアHDを子会社化している。ウエルシアは首位だが、次にツルハHD、そして3位には大手同士の統合で誕生したマツキヨココカラが位置する。仮にウエルシアとツルハHDが統合したらイオン並みのガリバー企業が誕生することになるあたりが思惑だ。

目下のところイオンは業界再編に関しては会社提案による経営体制の下で協議を進める事が適切と淡々としているが、場所によっては同社が出資するドラッグストア同士の競合も発生しており今後も物言う株主の経営改善圧力は弱まる事はないであろうことを考えるとそういった圧力?が結果的にイオンの背中を押し更なる再編に向けての動きが起きるかもしれない。


カタリスト

一昨日の日経紙マーケット面では「株高占う政策株の縮減」と題し、日経平均株価がレンジ相場を脱しバブル崩壊後の最高値を更新する原動力の一つとして、政策保有株の縮減に注目が集まっている旨が書かれていた。冒頭にはアイシンが政策保有株ゼロ化を目指す旨が出ていたが、とりわけ今年は過去にないペースで持ち合い解消が進んでいる。

即ち東京証券取引から発表されている週次統計において投資家主体別売買データの政策保有株の売却を反映する事業法人からの現物株式売却では、10月第1週時点で計4.8兆円に達しているが、同じ時期の過去5年平均が約3兆円程度であったことを考えると今年はこれらを約5割上回るペースで推移していることになる。

これまで株式持ち合いという日本の特異な形態は相手があっての事につきなかなか解消のきっかけが切り出せなかったものだったが、政策保有株を持ち合う双方共にPBRが低い傾向にあったところへ東証が要請したPBR1倍割れ是正等でこの辺のハードルが下がり動きが加速してきたものと思われる。

とはいえ安定株主を欲する企業ニーズはある一定数は残る可能性が高く今後何処まで解消が進むか不透明な部分もあるが、既に先に取り上げたアクティブETFでも「政策保有解消推進ETF」なる商品が登場し解消期待は大きい。特にこれに組み入れられているトヨタグループの持ち合い解消の動向は冒頭のアイシン然り注目が集まっており、引き続き他の事業会社含めた政策保有株の縮減に向けた動きには注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2023

10

1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31