成長双六今は昔

さて、アクティビストとして知られる米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、メディア大手のフジ・メディア・ホールディングスに対し、自身と関連会社が6.55%を保有する同社にMBOを要求する書簡を送ったことが先週明らかにされている。MBOにより会社を非公開化した上でコンテンツビジネスなど放送事業に特化するよう求めるという。

しかしMBOといえばこれまで当欄でもベネッセホールディングスや大きなところでは大正製薬の大型MBOを取り上げてきたが、2023年度の株式取得額は前年度比5倍の1兆4688億円と過去最高になった旨が報じられている。東証の資本コストや株価を意識した経営の要請などを背景に、短期の業績や株価を意識せず中長期の経営改革に取り組みたいというところの非公開化増というところだろうか。

とはいえ全ての企業がMBOでの非公開化により企業価値が劇的に向上するかというとかならずしもそうとは限らないか。過日の日経紙でもアパレルのワールドが取り上げられていたが、同社がMBOを選択したのはちょうどこれが活発化してきた頃の2005年、当時の時価総額は約2444億円だったが、本日の引けでのそれは約683億円と激減している。

業界の誰かが言っていたのを思い出すが、外敵が全く居なくなると動物でも退化してしまう部分があるが企業もまた然り。MBOは小うるさいアクティビスト等の株主から解放され自由な経営が享受出来るが、緊張感の無いぬるま湯ばかりに慣れてしまうと自ら退化してしまう向きも中には出て来ないとは限らない。いずれにせよかつて上場は成長双六のアガリといわれてきたが、こんなところでも隔世の感を禁じ得ない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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