47ページ目   商品先物

国力

「山高ければ谷深し」でここ金相場が暴落である。それにしてもこの金、8月に入ってから毎週毎週大台替りを果たし、今週も市場最高値の1,900ドルを突破するなど依然として破竹の勢いである。TOCOM等も大荒れだが、これだけ騒がれる相場もそうそう見られるものではない。

ところで金といえば最近目に留まったのは先の日経紙夕刊一面にあった「金輸出が最高水準」というタイトルだろうか。今や新興国中心とした需要や公的部門も中央銀行の手当てなど世界規模で買い増しの動きがあり、ベネズエラなど金準備を国内に引揚げる動きさえ見せている中で日本は「純輸出国」と今や特異な存在になっている。

ちなみにゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ社によれば、2006年から2010年まで5年連続で金地金の売却量が購入量を上回っているそうだ。連日に亘るマスコミ報道が金製品探しに人々を奔走させ、それを売却して思わぬ小遣いが手に入ったとその代金でショッピングに出掛ける様は、昨日記のように芸能ネタの盛り上がりで平和ボケ?している日本を表しているのかどうかだが、本質的なキャラなのか個人レベルでも内側からの思考を最優先させているからに他ならないからではないか?

高くなれば我先に手放しに動く個人、40年も金の輸入実績が無い日銀、日経紙には「金は歴史的に国力のある国に動くといわれる」とも書いてあったが、いろいろ勘案するに危機感を覚える。


理想と現実

さて、先週に復活上場して初値が付いてからちょうど今日で一週間が経過したコメ先物取引であるが、期待値とは裏腹にやはりというかご祝儀商い後の出来高減少が著しい。ちなみに本日の日中取引では期近出来ず、二番限で91枚、先で386枚の計477枚、当の東穀としては一日5,000枚の採算を見込んでいたらしいがこれでは10分の一にも満たないということになる。

ちょうど本日の日経紙社説には、「コメ先物市場は農協参加を」として農水省や市場関係者は取引の問題点を改め、農協が参加する市場に変えてほしい旨も出ていた。他の大手紙では準備不足は否めないとの記事も目にしたが、証券系の人間から見ると基準値の算出、約定システムそのものが特異でこの辺からおかしいとの指摘もよく聞かれた。

日経紙社説は確かに理想論だがこれが現実のものとなるにはそれこそかなりのハードルがある。統合撤回までに及んだ暴挙の裏には何か勝算があるのかとも思いたいが、何度も書くように市場発展が懸かっているだけにこのコメは他の試験商品と一括りで考えてほしくないところである。


コメ先物復活

周知の通り本日は「コメ」先物が実に72年ぶりにはれて復活となった。注目の寄付は買い気配からいきなりのCB発動、過度な投機性排除の目的もあってCBも当初予定を頑なに固持し初日は値が付かない状況に終った。もともと汚染米の懸念が底流にあったものの、超大物に対するご祝儀なのかどうなのかこの基準値にしてこの気配はけっこう高めに買いが集まったなとの印象。

基準値といえばかつて上場時に出し値そのものが異常に安かった石油製品などフト思い出したがこれもそのパターンなのかどうなのか、先物が買えぬなら「ヤマタネ」や「木徳神糧」の株でも買うかということでこれらは寄付から値が急伸していたが、こんな株式で例えればこの間書いた初値形成に二日かかったIPOモノの「モルフォ」のような展開になるのだろうか?

それは兎も角も、TOCOMの「金」に対して東穀取の「コメ」という位置づけなのだろうか、主務省の取り組み方もこれまでと違いが感じられる分やはり其れなりの主力に育ってゆく素地はあるのだろうか?メディアにしても最近では昨年のTOCOM指数上場の時など報じるところはそれこそ寂しいくらい僅かであったが、今回は何処も商品先物関連では近年に無いくらいの取り上げようである。

マネーゲーム呼ばわりで先物を敵視してきたJA全中の反対も虚しく今回の上場となったが、卸会社の何割かは先物へ参加したい意向を示している。その収益構造からコメが要の一つだったJA全中の猛反対も解らぬではないが、もっと広い意味で農業改革を視野に入れるならこの手の市場は不可欠、市場管理もまたそういった意味で大きく問われよう。


半官半民

さて、ちょうど一週間前には金融庁・経済産業省・農林水産省の副大臣と政務官らが、証券やコモディティなどの金融・商品取引に関する監督・規制を一元化する所謂「総合取引所」構想に絡んだ関係業者からのヒアリングが4ヶ月ぶりに再開されている。

この3省庁は本来であれば6月末までに結論を出す方針であったが、大震災によって協議が中断していた経緯がある。初日は取引員らが対象であったがこの商品界といえば直近で東穀取がコメ先物の上場を控える最中、東工取への農産物市場移管を白紙撤回すると正式発表するサプライズがあった。

このもともとの話は新規上場のコメを含めての移管ということであり、来年の移管を念頭に作業を進めていた東工取は「非常に遺憾で、普通の民間会社同士では考えられない」と会見の席上で不快感を露にしていたが、操り人形の如く方針を発表する東穀取社長を見るに大方察しの通り農林水産省の意向が強く影響しているのだろう。

その思惑については水面下でいろいろなシナリオが喧伝されているが、結局のところ東穀取というのは一応のところ株式会社を標榜してはいるもののいわば半官半民、東工取側の言葉を借りれば「普通の民間会社」とは似て異なるというものだ。日本の将来が懸かる構想で足並みを揃えなくてはならない時期に既得権云々と醜いが、こんなもので総合取引所構想の足を引っ張らないように祈るばかりである。


大山鳴動して鼠一匹

さて、今週は周知の通り欧州や米国の債務問題への警戒感などから、金が10日続伸の末に史上初めて1,600ドル台に乗せた。大台クリヤの度に当欄でも何度か取り上げているが、押し目らしい押し目も入れずに急ピッチな上昇が依然続いている。

そういえば今月の七夕の日には先の4月にCCCP(商品バスケット)の買い推奨打切リポートで話題になったゴールドマン・サックスが、コモディティに対する投資比率を引続き「オーバーウェイト」とするように推奨、投資期間は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で今年後半から2012年に掛けてコモディティのリターンがさらに高まると予想していた。このうち金価格に関しては、米国の低い実質金利を背景に2011年は上昇が続くとの見通しを示している。

今回より一層ナーバスになっているのは欧州というより期限のある米連邦債務の上限引き上げ問題か。これが合意出来ない場合リーマン・ショック以上のパニックが想定されるというが米国債は極めて安定、現実問題として東電じゃないがデフォルトしたらその影響は計り知れず国債増発のプロセスである程度の緊張を持たせたというところか。

危機を煽れば其れなりにマーケットは動きそこでまた商機も出て来るというものだが、そういえば上記のゴ−ルドマン・サックスは直近で第2・四半期の債券・通貨・コモディティ部門のトレーディング収入は53%減少して16億ドルにとどまり、2008年以来の低水準と大幅に落ち込んだことを発表している。同社アナリストが事前にコモディティ価格の下落を警告していた筈だが、トレーディングデスクにはそれが生かされていなかったという事になるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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