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追随型増資ラッシュ

本日は辛うじて反発したとはいえ依然として冴えない動きが続いている株式市場であるが、昨日に公募増資の発行価格が決定した野村HDが予想以上のカバー観測も募って大幅続伸となっているのが目に付いた。

この野村HD、つい春先に3,000億円近くの増資をしたのは記憶に新しいところで、矢継ぎ早に今度は5,000億円規模の増資であるから30%近くの希薄化を嫌っての一旦のストップ安示現はまあ自然なところだろうが、この二発で計約70%の希薄化となるのを考えるとなんともギリギリのところまでやったなという感は否めない。

しかし先月に「公募増資利用型手法」とした時のコメントで、今年はメガバンク始めとして有力企業が相次いで大型の増資を発表しているとし、直近でも青森銀など地銀やら本日のマツダ等と増資ラッシュが続いているが、はたして一株利益の急減分を埋める方策を各々が持っているのだろうか?

一方で目先ではこんな増資ラッシュでも現在の余剰マネーで充分吸収出来るとする意見も多いが、そうした一部も春先の野村HDの二番手狙いやらで信用買い残の歪な増加という減少が起こるのも想像に難くない。希薄化を撥ね退けるセンチメントに賭けるのもいいが今後ファイナンスを繰り返す金融機関が続出した場合、希薄化以外の需給上の重しがまた出て来る点も考慮して行動すべきであろう。


テーマ探しと環境変化

レイバーデーから明けたNY市場では金が昨年春以来の1,000ドル台を示現、WTIも急騰するなどしてその関連株等本日も物色されていたが、物色テーマといえば昨日の日経紙には「民主党関連」株軒並み下落として民主党圧勝から一週間が経過した株式市況の様子が出ていた。

政策買いなんぞは一応株式市場の王道ではあるものの、何でも買いから個別濃淡相場、そして今後は個別の実現可能性を睨みながら実行段階で後退の動きがればまたそれらプレミアムが剥げるという、銘柄も選別の篩いにかけられる事になろうか。

さて、テーマといえばもう一つ次期モノとして、オリンピック開催地決定を間近に控え東京五輪関連株が注目されているともロイターの記事で見かけた。今年の隅田川花火大会や東京湾大華火祭ではこの五輪誘致を願い花火のテーマもそういったものが多かったが、株式市場では未だこのテーマ自体に無関心な模様。

90年代の長野五輪開催の際には北野建設なんぞが特定筋介入もあってそこそこ化けたものだが、こうした五輪本命の建設関連は民主党の公共事業費削減懸念から寧ろ買いが躊躇されている。まあ当時と違って今では一寸煽ろうものなら、取引所規制やら随分と優秀?になった証券取引等監視委員会の目も気になって昔のような再来は一寸期待出来ないかも知れないが。


公募増資利用型手法

本日の日経紙一面にはJALが国際線の運行業務について外部企業に出資を要請する旨の記事が出ていたが、このJALといえば最近問題になった件で平成18年実施のファイナンスの件において、香港の投資ファンドが空売り等で意図的にフェール交えをしたとして証券取引監視委員会が金融商品取引所法違反の相場操縦行為で摘発要請との報道を見かけた。

要は上板の指値で煽って後ろが付いて来たところでマルにして、途転で畳み掛ける攻勢をした上でフェールをやってのけ払い込みに充てる券面は公募の新株を使ってその鞘を取ったというもの。まああからさまにやるか否かというか、当局も酷いと思ったのだろうがこの手の話は前から折に触れよく聞く件である。

ヘッジファンドなどではこうした手法は通常にあり最近では三井住友FGのファイナンスにおいて、増資の日取りを見越して空売りを一部ロールさせながら売り続け、新株発行価格の決定と共にショートカバーから途転ロングへもってゆく等は類似パターンか。勿論新株が手に入ればそれで払い込むパターンであるが、なんでもJALの場合この空売りで当初の2,000億円調達が1,400億円になったというから穏やかではなかったのだろう。

しかし上記の三井住友以外にも、みずほFG等メガバンク始めとして有力企業が今年相次いで大型の増資を発表しているが、価格決定日に向けての空売り増加傾向は恒常化、大型増資などがあればそれを睨んだ需給要因が相場全体の値動きに繋がるというのもここ近年の特徴になっているだろうか。


互いの温度差

本日の日経平均は4営業日ぶりに反発となったが、先週末の日経紙一面を飾った三井住友と大和が合弁解消へという旨の報で週末急落となった大和も本日はCSの見直しリポート効果もあって5日ぶりの反発となっていた。

この件に関しては4月に当欄では三井住友FGが日興の事業を買収した際に、「〜この件での大和側の混乱は想像に難くないが、今後銀行側がどう調整してゆくのかその手腕が非常に注目されるところ。」とコメントしておいたがなんのことはない、やはり当時から早々に言われていた解消の方向で終ったかという感じ。

一頃は三菱と付き合っていた日興はその後も付き合う相手を変え、シティという相手と別れた段階で証券業務拡大が悲願であった三井住友FGにとってはどうしても付き合いたい相手であったのは事実。今後は品受け?した手前、傘下証券と共に独自の戦略を再構築してゆく事になるがやはり互いに業界の風土に合わなかったか。

これで早くも格付け低下懸念からのトレーディング業務等のカウンターパーティー・リスクの上昇が云われたり、クレジット市場ではCDSにワイドな気配が観測されたりしているが、個々の正念場という問題もさることながら業界再編の流れが後退というか一旦振り出しに戻り他社の動向もまたこれで気になってくるところか。


意図的か偶発的か

鯨幕相場も14日目に入った本日の株式市場は急反落、そんな中で本日の日経紙一面で取り上げられていた日本風力開発がザラバ切り返しで大幅続伸とマザーズ市場で気を吐いていた。ところでこのマザーズであるが、先月末に東証は同市場における上場廃止基準項目追加などを盛り込んだ改革案を公表している。

上場3年を経過するまでに株価が公開価格から9割下落し9ヶ月以内に回復しない場合に上場廃止等だが、これ以外にも東証は上場企業が実施する第三者割当増資に関する八項目の新しいルールを設けて施行の運びになっている。

一ヶ月ほど前に当欄で「機動的な資金調達もいいが喰い散らかしが出来るヌケ穴もまた多し」と書いた件に重い腰を上げるような格好になったものの、これでもまだヌケ穴といえる部分は健在?有利発行なんぞはその発行価額の妥当性をどう判断するか、監査役等に意見を求めるとしているがその算定基準というか匙加減で如何様にもなり、意味があるものか否か疑問視されるのは自然なところだろう。

結果東証側としては、個々に上場企業の自覚を持ち株主権利尊重の経営姿勢を貫くのか自発的判断に任されるなどとこうした文言にルールの限界が見え隠れもしている。しかしこの問題も意図的かそうでないか、本当になるべくしてなったのか客観的に見える部分で外部と当事者が論議するのはその本当の部分が明るみに出てこない限りは永遠に平行線だろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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